Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2017/11/23
Update

『全員死刑』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の評価解説。小林勇貴監督おすすめ代表作を紹介!

  • Writer :
  • 馬渕一平

実際に起こった大牟田4人殺人事件を映画化!

日本映画史上類を見ない程に過激でぶっ飛んだ映画が誕生!!

主演に間宮祥太朗を迎え、今冬の映画界に話題を巻き起こす!!!

弱冠27歳、小林勇貴監督による『全員死刑』をご紹介します。

以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『全員死刑』の作品情報をどうぞ!

1.映画『全員死刑』の作品情報


(C)2017「全員死刑」製作委員会

【公開】
2017年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
小林勇貴

【キャスト】
間宮祥太朗、毎熊克哉、六平直政、入絵加奈子、清水葉月、落合モトキ、藤原季節、鳥居みゆき

【作品概要】
今年度一番の問題作が日本映画界に殴り込み!

監督を務めるのは『孤高の遠吠』が高い評価を受ける新鋭、小林勇貴。

主演は『帝一の國』や『トリガール!』などイケメン俳優として人気を博す、間宮祥太朗。

実際に起こった大牟田4人殺人事件をベースに未だかつて見たことのないエンタメ作品が誕生。

2.映画『全員死刑』のあらすじとネタバレ


(C)2017「全員死刑」製作委員会

ヤクザの首塚一家は父・テツジ、母・ナオミ、長男・サトシ、次男・タカノリの4人家族。

付き合いのある組でトラブルが起きたため、一番立場の弱いタカノリがその代わりに服役することに。

タカノリは彼女・カオリに待ってるよう伝え、服役前に最後のひと暴れをしました。

2年が経ちタカノリが出所します。

タカノリは、組の経営が行き詰まりテツジが苦しんでいることをサトシから聞かされました。

金回りのいい吉田家に大金が入った金庫があるという噂を聞きつけたサトシは、吉田家に盗みに入ろうとタカノリを誘います。

タカノリはしぶしぶ引き受けサトシと共に吉田家に向かいますが、そこには吉田家の次男・ショウジの姿が。

ショウジを殺すのをためらっていたタカノリでしたが、サトシに強く言われ、ついに決心しました。

タカノリが首を強く絞め、ショウジは息絶えました。

金庫を見つけた二人は、ショウジの遺体と共に金庫を車に運び出します。

運転中にトランクの中でショウジが息を吹き返しました。

目的地に着いたところでトランクを開け、首に縄をかけると今度はサトシとタカノリで両側からショウジの首をきつく絞めました。

完全に息絶えたショウジを重しと共に川に投げ捨て、金庫は家に持ち帰ります。

翌日開けた金庫の中身はわずかな貴金属のみでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『全員死刑』結末の記載がございます。『全員死刑』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
今回の作戦は実はサトシが勝手に計画したことであったため、テツジにバレるとマズいことが判明。

事がバレる前にテツジとナオミが吉田家の母・パトラを殺して一家の財産を奪うことを計画しました。

その計画をサトシとタカノリも手伝うことになり、またしても直接手を下すのはタカノリの役目に。

大量の薬でパトラの意識を飛ばし、車の助手席に乗せると、タカノリが後部座席から思い切り首を絞めます。

パトラの遺体をトランクに隠し、首塚一家はそのまま吉田家に向かいます。

すると、ちょうどそこに友人男性を連れた吉田家の長男・カツユキが帰ってきました。

タカノリはテツジから銃を手渡されると、またしても実行犯を任されてしまいます。

ショウジを一緒に探そうという理由をつけて、二人を車に乗せると、人気の無い場所に向かいました。

タカノリは車内で友人男性とカツユキを撃つと、錯乱し、誤ってサトシのことまで撃とうとします。

ショウジを殺めてから、タカノリには幻覚が見えていました。

3人の遺体を乗せた車をそのまま川に沈め、これで全ての方がついたかに見えました。

しかし結局、吉田家から大金は見つからず、テツジは絶望。

無計画な殺人はあっさりと発覚し、首塚一家は裁判にかけられます。

判決が決まり、首塚家は全員死刑になりました。

3.映画『全員死刑』の感想と評価


(C)2017「全員死刑」製作委員会

2004年福岡県の大牟田で起こった「大牟田4人殺人事件」。

金に困ったヤクザの4人家族が、貸付業を行っていた知り合いの一家3人と友人1人を殺め、金品を強奪しました。

裁判の結果、父、母、長男、次男、一家全員共に死刑判決が下されることになりました。

今回の映画は、実行犯である次男の獄中手記「我が一家全員死刑」が元になっています。

ジャンルでいえば実録犯罪ものにあたり、人がそう簡単には死なないリアルさというのは見ていて非常に怖くなるほどでした。

しかし、本作が特筆に値するのはその振り切り方でしょう。

4人が亡くなった凄惨な事件を、なんとエンターテインメントとして撮り、確実にコメディとして演出しています。

いくらなんでも加害者も被害者もふざけすぎだろと思うところすら、実際にあったやり取りというから驚きです。

そこには観る人の倫理観を刺激してくるヒリヒリするような雰囲気はなく、本当にこれ笑っていいのかなというある種の気まずさをこそ味わう不思議な作品でした。

未体験という意味において、この何とも言えない感覚はなかなか味わえないのではないでしょうか。

この映画には思わず吹き出してしまうような数々の名言が溢れていて、「好きなことして稼ぎたいじゃないですかー」や「青春」、「しゃあー」に「最近不景気だからな」などなど。

「ぶっ殺う」からは『凶悪』の「ぶっこむ」が思い出され、一番立場の弱い者が上に振り回されるのは『仁義なき戦い』シリーズを彷彿とさせます。

その振り回される次男タカノリを演じた間宮祥太朗が素晴らしく、この映画を不快感なく成立させていました。

彼のようにルックスがよくて可愛げがあって存在感のある俳優じゃなかったら、おそらく観ているのがもっとキツかったと思います。

薬の売人を描いた『ケンとカズ』でも好演していた毎熊克哉も口だけの嫌な兄貴を見事に体現していました。

そして、監督を務めた小林勇貴はなんとまだ27歳というから驚き。

本作のプロデューサーを務めた西村喜廣や千葉善紀の力も大きいと思いますが、その非凡な才能には大きな期待をしたいところです。

まとめ


(C)2017「全員死刑」製作委員会

劇場から出たロビーに入江悠監督が12月9日公開の『ビジランテ』の宣伝に来ていたのがとても印象的でした。

小林監督と入江監督のどちらもが「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で受賞し、注目を集めた存在。

最近の日本映画は若手から中堅の監督に才能豊かな人材が多く、その数はどんどん増えているような印象です。

入江悠、白石和彌、吉田恵輔、真利子哲也、山下敦弘、呉美保、深田晃司、西川美和、沖田修一、タナダユキ、石井裕也、中野量太、山戸結希などなど。

すでにベテランと言っていい方もいますが、これは映画ファンとして本当に嬉しい状況で、私も監督の名前で観に行くことが増えました。

小林勇貴監督も間違いなく日本映画のこれからを支えていく存在になっていくでしょう。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

Back to Black エイミーのすべて|あらすじ感想考察。イギリスの歌姫エイミー・ワインハウスの伝記ドラマをマリサ・アベラが巧みな演技力で魅せる

27歳で夭折した伝説の歌姫 グラミー賞を5部門受賞したイギリスの歌姫エイミー・ワインハウスの伝記ドラマとなる映画『Back to Black エイミーのすべて』が、2024年11月22日(金)よりTO …

ヒューマンドラマ映画

スラムドッグ$ミリオネア|ネタバレ解説あらすじと結末の感想評価。目潰しで焼く理由に込めたダニーボイル監督からのメッセージとは⁈

ムンバイのスラム出身で無学の青年がクイズ番組で答えを導き出しのは… 過酷で波乱な生い立ちから。 インド・ムンバイのスラム街を舞台に描く社会派エンタテインメントムービー。 原作の小説『ぼくと1ルピーの神 …

ヒューマンドラマ映画

『そして、バトンは渡された』映画原作のネタバレあらすじ。ラスト結末まで娘が選ぶ本当の父親が気になるヒューマンドラマ

映画『そして、バトンは渡された』は、2021年10月29日(金)ロードショー。 第16回本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの小説『そして、バトンは渡された』。 本書を映画化した『そして、バトンは渡された』が …

ヒューマンドラマ映画

映画『テスラ』ネタバレあらすじと評価感想。ラスト結末も【イーサンホークが移民の発明家が歩む生涯を演じる】

愛と人生に裏切られた天才発明家の半生を描いた伝記ドラマ マイケル・アルメレイダが脚本・監督を務めた、2020年製作のアメリカの伝記ドラマ映画『テスラ エジソンが恐れた天才』。 移民としてニューヨークに …

ヒューマンドラマ映画

映画『そして父になる』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【福山雅治×是枝裕和代表作】

是枝裕和監督と福山雅治がタッグを組んだ映画『三度目の殺人』が話題ですね。 その原点といえる是枝監督の代表作『そして父になる』9月16日にフジテレビ系土曜プレミアムで放送。 病院で子どもを取り違えられて …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学