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Entry 2020/01/23
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映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』あらすじと感想評価レビュー。レイチェルワイズとマクアダムスが魅せる“真実の愛”

  • Writer :
  • 山田あゆみ

映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』は2020年2月7日(金)より全国ロードショー。

2020年2月7日(金)公開、同性愛がタブーとされている超正統派ユダヤ教徒の田舎町で、お互いへの愛に苦悩し自由を求めて生きようとする2人の女性の純愛を描いたヒューマンドラマ映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』

ハリウッドの実力派女優、レイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムスがダブル主演を果たしました。

監督は、『ナチュラルウーマン』でアカデミー外国語映画賞を受賞したセバスティアン・レリオ。

共同脚本を務めたのはパヴェウ・パヴリコフスキ監督『イーダ』で2015年アカデミー外国語映画賞など数々の受賞歴のある脚本家レベッカ・レンキェヴィチです。

名実ともに認められた製作陣とキャストによる、愛と信仰に揺れる珠玉のラブストーリーは必見です。
 

映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』の作品情報


(C)2018 Channel Four Television Corporation and Candlelight Productions, LLC. All Rights Reserved.

【公開】
2020年(イギリス映画)

【原題】
Disobedience

【原作】
 ナオミ・オルダーマン「Disobedience」
 
【監督】
サバスティアン・レリオ
 
【キャスト】
 レイチェル・ワイズ、レイチェル・マクアダムス、アレッサンドロ・ニヴォラ
 
【作品概要】
主演のレイチェル・ワイズは『女王陛下のお気に入り』(2018)でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。

レイチェル・マクアダムスは『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた実力者です。

本作はレイチェル・ワイズが原作に惚れ込んで、企画から携わっている意欲作です。

監督は、ワイズがその才能に絶大な信頼をおいているセバスティアン・レリオ。

彼は脚本家のレベッカ・レンキェヴとユダヤ系ホテルに宿泊したり、原作者のナオミ・オルダーマンと超正統派ユダヤ教地区に訪れたりと取材を重ね、1年かけて脚本を書き上げたそうです。

セバスティアン・レリオ監督は、『グロリアの青春』(2013)をジュリアン・ムーア主演でセルフリメイクし、2020年に日本公開予定となっています。

そして『英国王のスピーチ』や『ルーム』の撮影監督ダニー・コーエンが、閉鎖的な町から花開こうとする力強さをリアルに感じさせるカットワークで、観客を引き込みます。

映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』のあらすじ


(C)2018 Channel Four Television Corporation and Candlelight Productions, LLC. All Rights Reserved. 

厳格なユダヤ教徒の集落でラビ(律法学者)を父に持つロニート(レイチェル・ワイズ)は、ユダヤ教の教えに縛られた生活に耐えられず家出をして、NYで写真家として活躍していました。

数十年後、父の死の知らせを受けて久しぶりに故郷を訪れたロニートは、幼なじみで元恋人のエスティ(レイチェル・マクアダムス)と運命的な再会をします。

彼女は同じく幼なじみであったドヴィッド(アレッサンドロ・ニヴォラ)と結婚していたのでした。

久しぶりの再会にかつての恋心を蘇らせる二人でしたが、同性愛を禁じるユダヤ教の集落の人々からの視線は冷たいもので…。

映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』の感想と評価


(C)2018 Channel Four Television Corporation and Candlelight Productions, LLC. All Rights Reserved. 

ユダヤ教コミュニティでの自由とは

本作の原題は「disobedience」。不服従や反抗といった意味です。

冒頭ユダヤ教の儀式中にラビ(律法学者)は「人間には反抗する力があり、自由意思を持つ」と語っています。

しかし、同性愛がタブーとされるユダヤ教コミュニティ内で、相手を自由に愛する権利は与えられていないんです。

そのままの自分でいることで、仕事や昔からの友人や家族との繋がりを失うことになるという恐怖は計り知れません。

冒頭に語られたセリフが最後まで重要なキーワードとなり、多くの人の心に残るだろうものになっています。

同性を愛してしまった女性の「自由と不服従」への苦悩を非常に繊細に描いている本作。

インタビューでレイチェル・マクアダムスはこう語っています。

「深刻なこの世界をちらりと覗ける、性的志向をこのように見据える物語は今まで見たことがありません。語られるべき物語です。」

自分にとっての本当の「自由」とは何か、何に立ち向かうことなのか深く考えさせてくれる貴重な一作となるでしょう。

3人目の主役ドヴィッド


(C)2018 Channel Four Television Corporation and Candlelight Productions, LLC. All Rights Reserved. 

本作でWレイチェルのほかに主演ともいうべき重要な役どころが、幼馴染のドヴィッドです。

彼は、ロニートが町を飛び出してからラビの下で献身的に従事し、精神的息子として信頼を得ていました。黒いハットともじゃもじゃの髭は超正統派ユダヤ人男性の公式な格好です。

彼が良き友人として、良き夫として見せる実直な姿に胸を打たれるはずです。

ロニートとエスティの決断には彼の存在が不可欠で、彼がいたからこそストーリーに奥行きが生まれるのです。

ドヴィッド演じるアレッサンドロ・二ヴォラは、本作でロンドン映画批評家協会賞助演男優賞にノミネートされ、第21回英国インディペンデント映画賞で最優秀助演男優賞を受賞しています。

彼の物静かさの中にある心の揺れ動きに注目するとより本作を楽しめるのではないでしょうか。

まとめ


(C)2018 Channel Four Television Corporation and Candlelight Productions, LLC. All Rights Reserved. 

本作は、レイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムスの大胆なラブシーンが目を惹きますが、自らの信仰や家族、友人との絆に悩むふたりの繊細な演技も光っています。

まるで世界に二人しかいないような、愛し合う者同士の熱情がスクリーンから溢れています。

ふたりの女性の葛藤を通して、単純に恋愛だけでなく家族や友人との絆や未来への希望を感じさせる一作として完成されています。

最近ではLGBTを取り扱った映画が増え、タブーがなくなりつつある現代社会で、本作は単純にタブーを打ち破るだけではない多層的な魅力を持っています。

美しい余韻とともにこの映画の持つ力強さが観た人の心に響くでしょう。

映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』は2020年2月7日(金)から全国公開です。ぜひ劇場でご覧ください。


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