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Entry 2022/11/01
Update

『ピンク・クラウド』あらすじ感想と評価解説。ディストピアの閉塞空間を通して描いた“感情の変化”

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『ピンク・クラウド』は2023年1月27日(金)より全国ロードショー!

突然、世界に訪れた「ピンクの雲」により、閉ざされた空間での生活を余儀なくされる人類。その風景の中に見えたものとは…?


(C)2019 Luminary Productions, LLC.

「ピンクの雲」という脅威をモチーフに、外には一歩も出られず、部屋の中でしか生きられないというディストピアに見える人間の感情を追った『ピンク・クラウド』。

コロナ・ウィルスの感染拡大が始まる前の2019年に、本作が長編デビュー作となったブラジルのイウリ・ジェルバーゼ監督が本作を作り上げました。

映画『ピンク・クラウド』の作品情報


(C)2019 Luminary Productions, LLC.

【日本公開】
2022年(ブラジル映画)

【原題】
A Nuvem Rosa

【監督・脚本】
イウリ・ジェルバーゼ

【キャスト】
ヘナタ・ジ・レリス、エドゥアルド・メンドンサ、カヤ・ホドリゲス、ジルレイ・ブラジウ・パエス、ヘレナ・ベケル

【作品概要】
突然現れた謎の現象「ピンクの雲」により、部屋の中での生活を余儀なくされた人々の姿を、絶望的な思いへと変化していく感情を軸に描いていきます。

本作が長編デビュー作となったブラジルのイウリ・ジェルバーゼ監督が2017年に脚本を執筆、2019年に撮影を行い作品を作り上げました。

映画『ピンク・クラウド』のあらすじ


(C)2019 Luminary Productions, LLC.

ある日世界に突然現れた、毒性を持った正体不明の現象、「ピンクの雲」。やがて、人間はその雲に触れると10秒間で死に至ることが判明します。この事実をニュースが報じると人々の生活は一変、街はロックダウン状態となります。

一夜の関係で知り合ったジョヴァナ(ヘナタ・ジ・レリス)とヤーゴ(エドゥアルド・メンドンサ)も例にもれず高層アパートに引きこもることに。

当初は長くても数週間で収まると思われたこの騒動でしたが、月日が流れこの現象が収束しないことを薄々感じ始めたころ、ジョヴァナとヤーゴは閉塞空間の中で現実的な生活を余儀なくされます。

やがて二人の間には子供も生まれ、父となったヤーゴも新しい生活に適応しているように見えます。

しかし一方で、ジョヴァナの中の歪みは、日々その大きさを拡大していくのでした…。

映画『ピンク・クラウド』の感想と評価


(C)2019 Luminary Productions, LLC.

突然に表れた人類への脅威、そしてその恐怖の中生き残ろうとする人間たち。

本作はその発表の時期がコロナウィルスのパンデミックと時期的にオーバーラップすることからも、「まさにウィルス感染拡大の未来を予見した作品」という所感が多く語られていますが、本作のテーマはもっと普遍的なものであるような印象も見受けられます。

物語上で人類の脅威となるピンクの雲は、そのタイトルイメージなどからはまさにホラームービーで描かれる謎の現象的なもののようにも見えますが、劇中でこれは何らかの象徴的なものとして置かれていると見ることが妥当でしょう。

そして物語の主軸であり、主に描かれているのは、まさにこの脅威によって行動を制限された人類、人々の生活の姿。

人々は最初に、その驚異に戸惑いながらもどこか「不便を楽しむ」的な方向で時を過ごしますが、閉塞された生活環境はそんな人々を徐々に追い詰め息苦しくさせてゆきます。

ここまで見ると、まさに感染症の恐怖により人類が追い詰められていく姿を捕らえたもの、というアウトラインが印象として残ります。


(C)2019 Luminary Productions, LLC.

しかしポイントとして「なぜ人類がこのような状況に陥ったのか」「なぜ人類はこのような生活を余儀なくされたのか」という点を、物語上ではそれほど強く言及していません

その意味で、本作ではもっと局所的なポイントである「オンラインに依存するコミュニケーション社会への危惧」的なイメージが強く浮き彫りにされているようにも見えます。

エンディングに見られる人物の衝動的な行為は、まさしくこの危惧されるイメージを最大限の警告、映像のメッセージとして描いているともいえます。

「ピンクの雲」というショッキングな現象を扱う一方で、閉塞された空間で「いつも通りの生活をしている」つもりでいる人々の日々を描いた物語には、生々しい人間の本心までもリアルに描いており、迫りくる未来への課題を突き付けられたような気分にもなることでしょう。

まとめ


(C)2019 Luminary Productions, LLC.

この作品が発表されたブラジルという国では、コロナ感染が急速に広がりを見せた2020年には、世界第三位の感染者数を排出と、コロナ禍対策において「後進国」的なレッテルを貼られてしまいました。

その意味で本作のような物語がこの国より発表されたという事実は不思議な現象でもあり、見方を変えると「まさに感染拡大で遅れを取った国だからこそに見えたテーマを捕らえた」と感じることができるかもしれません。

物語のエンディングはショッキングなものですが、その理由は案外事象を大半の人が「まさにその通り」「自分でもそうするだろう」と、理解してしまえる空気感を醸し出しているところに見えてきます。

映画『ピンク・クラウド』は2023年1月27日(金)より全国ロードショー

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