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Entry 2018/10/26
Update

映画『オボの声』あらすじネタバレと感想。齋藤孝監督と主演・結城貴史の舞台挨拶紹介も

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

挫折を経験し、逃げるように故郷へ戻った元プロボクサーの男を通して、人生の葛藤や苦悩を描いた映画『オボの声』。

人間の挫折と再生を描いた、本作をご紹介します。

映画『オボの声』の作品情報


映画『オボの声』

【公開】
2018年(日本映画)

【監督・脚本】
齋藤孝

【キャスト】
結城貴史、菅田俊、水野美紀、石倉三郎、烏丸せつこ、波岡一喜、田村奏二郎、江藤漢斉、藤井宏之、鈴木舞衣花、青柳弘太、坂東工、小野塚老、石川裕地、笹木彰人、贈人、梅津義孝、宮内勇輝、中山祐太、本村紀子

【作品概要】
映画『ビルと動物園』の齋藤孝監督が、2013年に「松田優作賞優秀賞」に輝いた、自身のオリジナル脚本を映画化。

主演に結城貴史、共演に菅田俊、水野美紀、石倉三郎。

映画『オボの声』あらすじとネタバレ


映画『オボの声』

プロボクサーを目指していた秀太は、練習中のアクシデントにより、ボクシングを辞めます。

その後、秀太は、アルバイトで生計を立てますが、バイト先のラーメン屋でトラブルを起こし退職、その後パチンコ店に通うなど、その日暮らしの生活を送るようになります。

ある日、秀太と同棲している恋人の妊娠が発覚、突然の事に状況が整理できない秀太は、恋人から逃げるように故郷に帰ります。

突然帰郷した秀太に驚いた母親は、いろいろ質問しますが、秀太は何も答えません。

秀太の恋人から連絡が来ますが、秀太は無視を続けます。

ある夜、外出した秀太は、近所で火事が発生している現場に遭遇します。

家の住人は亡くなり、秀太は「オボが鳴いていていた、オボの声を聞くと死んでしまう」と言われ、夜の外出を止められますが、秀太は相手にしません。

ある日、秀太は偶然立ち寄ったガソリンスタンドで、ガスボンベ配送のアルバイトを募集している、張り紙を見つけます。

アルバイトを希望した秀太は、その場で採用され、ベテラン配送員の守義をサポートする形で仕事を開始します。

寡黙な守義は、無駄話を一切しない男で、もともと人付き合いが苦手な秀太とは、終始重い空気が流れます。

そして秀太は、ガスボンベを配送した先の老人に、ある事を聞かされます。

「あんたが一緒に仕事をしている、あの男は人殺しだ」

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『オボの声』ネタバレ・結末の記載がございます。『オボの声』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
秀太は守義との作業を続けますが、配送車に悪戯をされます。

近くを歩いていた男を捕まえ、詰め寄る秀太ですが、守義に止められ帰宅するように言われます。

納得がいかない秀太は、守義に暴言を浴びせます。

「あんた、人殺しなんだろ?」

そのまま帰宅した秀太ですが、母親と揉めて家を飛び出します。

中華料理屋で食事をしながら、秀太は電話で恋人と、子供の事について話し合いますが、気持ちの整理がつかず、目の前の食器を叩き割り、店員に暴行を加え逃げるように立ち去ります。

そして、荒れた気持ちで車を運転していた秀太は、人を轢いてしまいます。

警察も救急車も呼ばず、その場から逃げた秀太ですが、車には人を轢いた痕跡が残っていました。

次の日、ガスボンベ配送の仕事に出勤した秀太に、社長が「また、オボの声がした」と、新聞で話題になっている事を伝えます。

秀太は再び、守義のサポートとして仕事を開始します。

相変わらず寡黙な守義は、秀太の暴言に一切触れず、秀太にガスボンベの設置方法など、新たな仕事を教えるようになります。

仕事を進めていく秀太と守義は、ある配送先で家主の老人が倒れている所に遭遇します。

救急活動をする守義の指示で、秀太は救急車を呼びますが、間に合わず老人は死亡。

秀太と守義は、警察の事情徴収を受ける事になります。

先に事情徴収を終えた秀太は、警察署内で守義を待ちますが、気持ちが落ち着かず先に配送車へ戻ります。

守義が事情徴収を終えた頃には、日が沈み周囲が暗くなっていました。

それでも配送の仕事を再開しようとする守義に、仕事をしたくない秀太は「オボが出る」と伝えます。

秀太の声を無視するように仕事を続ける守義に、仕方なく付き合う秀太。

仕事を終えた秀太は、守義に立入禁止の山道へ連れて行かれます。

「何処へ行く?」という秀太の質問に、守義は答えます。

「オボの所だ」

日が沈み、暗い山道を守義と共に歩く秀太ですが、いくら歩いても、目的地に到着しません。

秀太は守義に腹を立て、帰ろうとしますが、守義に「逃げるのか?逃げてばかりだから、見えなくなるんじゃないか?」と言われます。

守義の言葉に火が付いた秀太は、山道を歩き続けます。

そして夜が明ける頃、辿り着いた山頂で、秀太はオボの正体を目にします。

人の声を真似する鳥、それがオボの正体でした。

山から戻った秀太は、警察署に出頭し、ひき逃げをした事実を伝えます。

秀太が車で接触した相手は、怪我をしましたが命に別状はありません。

その事を知った秀太は、安堵の表情を見せます。

警察署に拘留された秀太は、独房で1人シャドーボクシングを始めます。

そして、釈放された秀太は、実家を出て恋人の元に戻ります。

映画『オボの声』は15年越しで実現させた作品だった


映画『オボの声』

2018年10月22日、渋谷ユーロスペースのレイトショー終了後に、齋藤孝監督と、主演の結城貴史さんによる飛び入りの舞台挨拶が行われました。

齋藤監督は「秀太のように、逃げ出したくなった時に、この映画の事を思い出してほしい」結城貴史さんは「10年越しの想いが叶った」と語っていました。

映画『オボの声』の企画が始動したのは、約15年前、齋藤監督の自主映画に、結城さんが出演した事に始まります。

齋藤監督は、結城さんに役者の魅力を感じて、当て書した台本を一晩で完成させました。

しかし、その後は映画化に動いてくれる所が見つからず、齋藤監督は、監督業から退いて就職した時期もありましたが、『オボの声』の企画を実現させる為に、監督業に復帰するなど、紆余曲折がありました。

2013年に「松田優作賞優秀賞」を獲り、「主演俳優を他の人でなら」という条件でOKが出た事もありましたが、齋藤監督は結城さんの主演にこだわったそうです。

そして、齋藤監督と結城さんを見守り続けたのが、秀太の恋人を演じた水野美紀さんでした。

そして、2018年に約15年越しの執念を実らせて完成させた『オボの声』は、結城さんの年齢に合わせて脚本を書き換えており、監督や出演者と共に成長してきた作品と言えます。

『オボの声』が上映されている、渋谷ユーロスペースでは、今後もトークイベントが企画されていますので、さらに裏話が聞けるかもしれませんね。

映画『オボの声』感想と評価


映画『オボの声』

本作は全編に渡り、重くて緊張感の漂う作品となっています。

主人公の秀太は、人生の挫折を味わい、新たな目標を持てない男です。

口数は少なく、常に不機嫌な感じでボソボソ喋る秀太の心境を表現する為に、煙草が効果的に使われています。

バイトを辞めた時、恋人との関係に居心地の悪さを感じた時、目的も無く実家に帰った時、秀太は気怠そうに煙草を吸い「辛い現実を少しでも忘れたい」という心境が見えてきます。

全てから逃げてきた秀太は、守義と出会い、「声を聞いたら死ぬ」と噂されていた「オボの声」の正体を目撃します。

その事により、秀太は現実を見つめて向かって行くという「選択肢」を得て、人間として成長するのです。

時には全てを曖昧にして、逃げ出す事も必要ですが、「逃げる」しか知らない事と、「現実に向かう」という選択肢を持った上で、逃げる事を決断する事とは訳が違います。

秀太は、これまでの自分の人生を見つめ直し、現実を受け入れる事を決意するのです。

独房で秀太が、シャドーボクシングを始めるシーンは、これから立ち向かわなければならない、辛いことが予想される現実との戦いを開始した、意思表示のように感じます。

秀太は最後まで、不機嫌な表情を崩しませんが、電車に乗ったラストの秀太は、未来を見つめているように感じました。

まとめ


映画『オボの声』

齋藤監督も言っていましたが、人には逃げ出したい時が必ずあると思います。

そんな時は、別の場所に目を向ける事も必要で、目を向けた先の何気ない出来事が、人を成長させる材料になるのかもしれない、そんな事を感じた映画です。

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