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映画『Noise ノイズ』感想評価と内容解説。20代の松本優作監督が切り取る現代社会の問題点

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『Noise ノイズ』は、2019年3月1日からテアトル新宿ほかので順次公開

立場の違う若者3人が、それぞれの理由で集まる街、秋葉原。

若者たち、その周囲の大人の視点から、現代社会のの問題点を問いかける人間ドラマ『Noise 』。

第41回モントリオール世界映画祭、第25回レインダンス映画祭などで、高い評価を得ている映画『Noise ノイズ』をご紹介します。

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映画『Noise ノイズ』の作品情報


(C)2019「Noise」製作委員会

【公開】
2019年3月1日(日本映画)

【監督・脚本・編集・企画・製作】
松本優作

【キャスト】
篠崎こころ、安城うらら、鈴木宏侑、岸建太朗、來河侑希、日向すず、真中のぞみ、川連廣明、武田一人、太田信悟、川崎桜、久住翠希、小林大介、仁科貴、小橋賢児、布施博

【作品概要】
秋葉原通り魔事件をモチーフに、病的とも言える現代社会で生きる人達のドラマを描いた群像劇。

監督は1992年生まれで、23歳の時に長編映画デビュー作となる、本作を撮影した松本優作。

出演にモデルやDJなど、マルチに活躍する篠崎こころ、女優やシンガーとして活躍する安城うらら、舞台や映画で活躍する実力派俳優の鈴木宏侑に加え、小橋賢児や布施博などの実力派キャストが脇を固める。

映画『Noise』あらすじ


(C)2019「Noise」製作委員会
秋葉原で地下アイドルとして活動している、桜田美沙。

彼女は10年前に起きた、秋葉原無差別殺傷事件で母親を亡くし、残された父親との関係が上手くいっていません。

美沙は所属事務所が経営する、女子高生リフレで働きながら、秋葉原での活動を続けています。

女子高生の山本里恵もまた、母親が家を出て行ってしまって以降、父親と会話の無い日々が続いていました。

里恵は高校を中退し、家出をして恋人や仲間たちと目的の無い、荒れた生活を送っています。

配送員のアルバイトをしている大橋健は、母親の深雪と2人で暮らしていました。

深雪は健にお金をせがむなど、だらしない性格をしています。

健は職場の仲間とも打ち解ける事が出来ず、鬱蒼とした想いを抱いていました。

健は、ボイスレコーダーに録音したメッセージで、配達先にいたずら電話をかけるなど、奇行が目立つようになります。


(C)2019「Noise」製作委員会

アイドルとして次のステップが見えない美沙は、所属事務所の山崎に大きな事務所への移籍を提案されます。

大きなチャンスのように思えますが、美沙をずっとマネジメントしてきた高橋は「美沙には、あぁいうキラキラした世界は、違うと思うんですよね」と気が乗らない様子でした。

恋人や父親との関係が悪化していった里恵は、何かを求めて1人で秋葉原へ向かいます。

里恵の父親は、荒れた家庭から逃げるように、美沙の地下アイドルライブへ通うようになりました。

そして、深雪の金銭トラブルに巻き込まれた健は、危険な精神状態のまま秋葉原に降り立ちます。

それぞれが苦悩を抱えて生きる若者たち、一体何処へ辿り着くのでしょうか?


(C)2019「Noise」製作委員会

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映画『Noise』の感想と評価


(C)2019「Noise」製作委員会

「命を奪う行為」について向き合った作品

2008年に起きた秋葉原通り魔事件をモチーフにした本作ですが、扱っている内容は秋葉原通り魔事件だけでなく、同様の無差別殺人事件を松本優作監督が調べ、命を奪う行為について考察した作品となっています。

松本監督の中学時代の同級生が自殺し、同時期に秋葉原通り魔事件が発生した事が、本作を制作するキッカケとなりました。

命を奪う行為が、自身に向かう者と他者に向かう者。

本作のセリフでもありますが、それはYの字で二手に分かれるような事で、その差は紙一重ではないか?

松本監督は10代の頃から、構想を練り上げ、1度社会人を経験しながらも「このテーマに一度きちんと向き合わないと、次に進めない」と感じ、制作された作品が『Noise』です。

3つの視点から語られる物語


(C)2019「Noise」製作委員会

本作のテーマを語る為に、松本監督は被害者と加害者、事件に関係しない人の、3つの視点を用意しました。

被害者視点は、秋葉原通り魔事件で母親を失った美沙と、その父親。

加害者視点は、だらしない母親により、社会的に追い詰められるようになった大橋健。

事件に関係しない人の視点は、母親と離婚した父親の間に、埋まらない確執が生まれ、荒れた毎日を送る里恵。

3人とも、それぞれの苦悩を抱えており、それを隠すように余所行きの自分を取り繕っています。

誰も自身の苦悩を他人に語る事が出来ません。

1番近くにいる親でさえ、3人の苦悩や考え方は理解できていません。

むしろ、親が1番遠い存在になっているのではないかという気がします。

そんな光景を映し出している本作に全く違和感が無く「むしろ、今の時代こうだよね?」と、すんなり受け入れている自分に気が付き、少し寒気がしました。

凄惨な事件が起きた時、マスコミは犯人の人間像をあぶり出そうとします。

しかし、他人に心を開かない事が当たり前の時代、誰に聞いても犯人の余所行きの顔しか分からないのではないでしょうか?

そして、誰の目にも認識されていない何かが積み重なった時、人は命を奪う行為に走ってしまうのかもしれません。

作品内に切り取られた「現代社会の空気」


(C)2019「Noise」製作委員会

本作では、キャストと制作スタッフに若い力が結集し、今の空気を作品に反映させています。

それは細かい部分にも反映されており、個人的には作品の冒頭で、布施博が演じる里恵の父親が、介護をしている自分の父親を診てもらおうと、病院に電話をするシーンが印象的です。

電話先の受付担当は「先生がいない」の一点張りで診察を断ります。

それでも、診察を希望する里恵の父親に「薬を飲ませて対処して下さい」と伝えます。

ですが、里恵の父親は「薬じゃ駄目なんです」と伝えると、受付担当はこう応じます「それは薬が効かないという事でしょうか?」

「そりゃ!そうだよ!」と、こっちが言いたくなるような対応ですが、これは現実社会でも思い当たる事があり、今の空気を感じるシーンとなっています。

そして、このシーンでの受付担当のような、あまりにもマニュアル化され、心を失ったとさえ言える社会が、さらに人との繋がりを遮断し、個人が塞ぎ込む要因を作っているのではないでしょうか?

マニュアル化された社会を描いた、印象的なシーンがもう1つあります。

それは、ある事がキッカケで、健が不動産会社から退去を告げられるシーンです。

ここでの、不動産会社担当者の、あまりにもマニュアル化された対応、相談と言いながら結論ありきで進める一方的な会話。

不動産会社担当者からすれば、健はトラブルでしか無く、迅速にトラブルを処理したかっただけでしょう。

ですが、この後の展開も含めて、マニュアル化されてしまった社会の恐ろしさを感じてしまう場面となっています。

監督は、本作について以下のようなコメント出しています。

事件について、まだ自分の中で明確な答えは見つかっていないですが、この映画を観て頂いた方と一緒に考えて行けたらと思っています。

本作は現代の空気感を切り取っている作品なので、世代や性別、置かれている立場などで捉え方が変わります。

ですが、「何故、こんな事になったのか?」を考える事が大事で、現代社会の人としての在り方を考える、キッカケとなる作品です。

まとめ


(C)2019「Noise」製作委員会

本作は、第41回モントリオール世界映画祭で正式上映されるなど、海外でも注目を集めています。

松本監督は1992年生まれの現在26歳、『Noise』撮影時は23歳です。

今の日本の空気感を反映させて、若い感性で描いた本作が、海外で高い評価を得ているのは、実に意義のある事だと思います。

『Noise ノイズ』で、世界的に評価された松本監督は、第4回 MOON CINEMA PROJECT 座談会にて、このように語っています。

「今は、社会とリンクするような物語を作って、作品の存在の理由、存在価値のあるものを作りたいなと思っています」

若い感性と視点で、今後、どのようなテーマを選んでいくのでしょうか?

注目していきたい監督です。

映画『Noise』は、2019年3月1日よりテアトル新宿ほか、全国順次公開

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