映画『蜜蜂と遠雷』は2019年10月4日(金)より全国ロードショー公開
恩田陸のベストセラー小説を『愚行録』などで知られる石川慶監督が映画化。
松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士、斉藤由貴、鹿賀丈史といった豪華キャストが集結しました。
「音楽の神はいるのか?」「天才とは何なのか?」
絶えることのない疑念の中、それでも音楽に向き合おうとする若きピアニストたちの姿を描きます。
映画『蜜蜂と遠雷』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【原作】
恩田陸
【脚本・監督】
石川慶
【キャスト】
松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士、臼田あさみ、ブルゾンちえみ、福島リラ、眞島秀和、片桐はいり、光石研、平田満、アンジェイ・ヒラ、斉藤由貴、鹿賀丈史
【作品概要】
2017年に“直木賞と本屋大賞の同時受賞”という史上初の快挙を成し遂げ、著者である恩田陸みずからが「映像化は不可能」と語った小説『蜜蜂と遠雷』を映画化。「若手ピアニストの登竜門」と称されるピアノコンクールに挑もうとする4人の若きピアニストたちが、様々な境遇や才能に苦悩しながらもそれぞれに努力する姿を描きます。
物語の中心となる4人の若きピアニストたちは、松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、そして新人ながらもオーディションを勝ち抜いた新星・鈴鹿央士がを演じています。また劇中に登場する架空の楽曲「春と修羅」は、ロンドンを拠点に活躍する音楽家・藤倉大が作曲しています。
映画『蜜蜂と遠雷』のあらすじとネタバレ
3年に1度開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。若手ピアニストが世界に羽ばたく登竜門として注目を浴びるこのコンクールには、今回も優秀ない才能が集まります。
かつて天才少女と呼ばれていたものの、母の死を機に表舞台から姿を消していた天才少女・栄伝亜夜。
普段は楽器店で働き、年齢制限ギリギリながらもコンクールに挑み“生活者の音楽”を目指している高島明石。
本コンクールの優勝候補の一人にして、亜夜の幼馴染みでもあるマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
そして、“音楽の神様”と呼ばれた伝説的ピアニスト・ホフマンの推薦状を携えて現れ、破壊的とさえ言える凄まじい演奏によって審査員たちに衝撃を与えた風間塵。
それぞれが全く異なる出自と環境で生きてきた4人は、一次審査を突破します。
やがて、二次審査。その内容はコンクールのために作曲された課題曲「春と修羅」を題材とし、その後半部では演者自身が即興的に演奏させるというものでした。
テクニックを前面に押し出していくマサルと、自分の日常の生活から音楽を起こしていく明石。その一方で、塵と亜夜はより独創的に後半部を創り上げます。
結果として明石は脱落。マサル、塵、亜夜を含む6名が最終審査に残りました。
コンクール出場の年齢制限により、コンクールへの挑戦する生活を終えた明石。ですが天才たちの領域を垣間見たことで、晴れやかな気持ちの中でその結果を受け入れました。
審査員の間ではマサルが優勢でしたが、かつての天才少女・亜夜がどうやって復活してくるのか、そしてピアニスト・ホフマンから「災厄にも、天からの贈り物にもなる」と評された塵の存在をどう捉えるべきかと議論が白熱していました。
そして最終審査は、実際のオーケストラとの狂騒曲。世界最高峰のマエストロ・小野寺がオーケストラを率いて登場、楽曲に加えて、オーケストラの演奏と競い合っていくこともまた最終審査の大きな課題になっていきます。
映画『蜜蜂と遠雷』の感想と評価
本作の映像化が難しいとされてきた点の一つには、「コンクールに出場し入賞するほどの実力を持つ4人のピアニスト」であるメインキャラクターたちの演奏場面をどう描くのかという問題がありました。
ですが、本作ではその演奏場面を描くため、4人のキャラクターそれぞれにピアニストをスタントダブルとして配役しています。
松岡茉優(栄伝亜夜)は河村尚子。松坂桃李(高島明石)は福間洸太朗。森崎ウィン(マサル・カルロス・レヴィ・アナトール)は金子三勇士。鈴鹿央士(風間塵)は藤田真央。
国際的にも評価されているピアニストたちがそれぞれの演奏場面を演じることで、「コンクールに出場し入賞するほどの実力を持つ4人のピアニスト」そして「全く異なる出自と環境を生きてきた4人のピアニスト」という設定に力強いリアリティを持たせています。
役者と演奏者という違いはあれど、二人で一人の役を演じていたわけです。
また役者班は、演奏者班の所作や持ち道具などのから影響を受けて自身の役作りへと反映させており、どちらかが欠けていたら映画『蜜蜂と遠雷』は決して完成しなかったのは明白でしょう。
さらに、4人のピアニストたちが本作での役を通じて演奏した楽曲アルバムが発表されるなど、本作における演奏者班の重要性は各所で見受けることができます。
まとめ
ピアニストたちをはじめ、小説『蜜蜂と遠雷』に映画化において「音楽の面で一切の妥協を許さない」ということが最重要事項でした。
そこから逃げることなくこだわりを徹底し続けたことで、本作は素晴らしい“ピアニストのための映画”となりました。
ピアニストというキャラクターや楽曲、演奏といったものを映像として具現化させるため、4人の国際的に評価されているピアニストのみならず、最終審査に登場するオースケストラとして東京フィルハーモニー交響楽団が本格参加しています。
もちろん役者班も、全く異なる出自と環境、そしてその中で少なからず共通する「何かが欠落しているが故に天賦の才を持ち合わせている」という性質を、それぞれが異なるアプローチを行うことで演じ分けていきます。
ピアノが鳴っている時と鳴っていない時。天才が演奏している時と演奏していない時での演技の違いも見どころです。
できる限り音響の良い映画館でそのこだわりを体感してほしい映画です。