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Entry 2023/01/11
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『GINAGINAぎなぎな』あらすじと感想評価。高川裕也の初監督作は“初老の俳優の初映画監督作”をめぐる挫折と希望を描く

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『GINAGINA ぎなぎな』は2023年1月26日(木)~28日(土)渋谷ユーロスペースにて限定一般公開!

ソロモンの偽証』(2015)や『空飛ぶタイヤ』(2018)に出演し、『カンブリア宮殿』『SASUKE』のナレーションで活躍する俳優・高川裕也の初監督作品『GINAGINA ぎなぎな』が、2023年1月26日(木)~28日(土)渋谷ユーロスペースにて限定一般公開されます。

高度経済成長期を過ごした者たちが、間もなく直面する2030年問題と、この先の高齢化社会の行く先を問いかけた中編作品です。

コロナ禍の閉塞感をリアルに映し出した一作。初めての映画作りに挑んだ男がぶち当たった壁とはどんなものだったのでしょうか。

本記事では、映画『GINAGINA ぎなぎな』の見どころを紹介いたします。

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映画『GINAGINA ぎなぎな』の作品情報


(C)2022 Youya Takagawa

【公開】
2023年(日本映画)

【監督・脚本】
高川裕也

【キャスト】
高川裕也、八十川真由野、田村義晃、永宝千晶、元気屋エイジ、鷹野梨恵子、橋本拓也、海部剛史、伊藤俊、鈴木貴丈、森岡弘一郎、小林峻、南千尋、井手泉、辻成哉、入鹿尊 

【作品概要】
ソロモンの偽証』(2015)や『空飛ぶタイヤ』(2018)に出演し、『カンブリア宮殿』『SASUKE』のナレーションで活躍する俳優・高川裕也の初監督作品。

高川自身が主人公の初老の俳優・木村誠役を演じるほか、娘・アサミ役には「スターウォーズ」三部作のレイの吹き替えキャストを担当し舞台を中心に活躍する永宝千晶、雪乃役を文学座の八十川真由野。恵介役を自作『元気屋の戯言』でBSスカパー!「鬼がシネマ」グランプリを獲得した元気屋エイジが務めます。

また本作の音楽には、個性的なステージでライブハウスを席巻する「伴盤ひとり舞台」の藤原愛が参加しています。

映画『GINAGINA ぎなぎな』のあらすじ


(C)2022 Youya Takagawa

コロナ禍のなか俳優・木村は一念発起し、補助金や助成金をあてに小さな映画を作り始めました。仲間やスタッフを集め、主役は仲の良い後輩・恵介を据えます。ところが、肝心のアクションシーンで恵介に全治3ヶ月の大怪我を負わせてしまいます。

恵介のマネージャー・牧からは損害賠償を持ちかけられ、最後の頼みの生活補助金も却下の通知が届きます。木村は撮影延期を決断しますが、それは事実上の中止を意味していました。

そんななか、娘のアサミから久し振りに連絡がきます。離婚間近だった夫との間に子どもができたが、夫には話さず一人で産んで育てると彼女は明かします。

金策に悩みながらも、木村は中学の同窓会に出席。再会した雪乃と話していると、別の友人が弟から宝くじで当たった100万円を預かったと話す声が聞こえてきます。思わず表情を変える木村。

その後、雪乃は夫が経営する製麺工場へ木村を連れて行き、夫に紹介します。しかし、雪乃はすでに夫とは分かれていると木村に言います。

素麺を食べながら、彼女は木村の映画に出資すると言い出し、あるいは自分の会社で雇ってもいいので帰ってこないかと誘いました。

雪乃は自分が体操部であったことを覚えていてくれた木村に、ほかにもなにか自分のことで覚えていることはないかと聞きます。

そして、「これは復讐なの」という謎の言葉を木村に残していきます……。

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映画『GINAGINA ぎなぎな』の感想と評価


(C)2022 Youya Takagawa

初老を迎えた男の新たなる挑戦

不思議な語感のタイトルに感じられますが、「ぎなぎな」とは本作の舞台である三重県・四日市の方言です。

「どうにか」「まずまず」「ゆっくり」という意味を持ち、関西弁でいうところの「ぼちぼちやな」にあたる言葉だという「ぎなぎな」。本作のコピーでも「ぎなぎなしてる場合じゃないのか?!」という形で使われています。

『GINAGINA ぎなぎな』の主人公・木村は初老の俳優で、後輩の居酒屋で働きながら初の映画作りに挑もうとします。コロナ禍という世の中で一念発起し、補助金や助成金をあてに作り始めたものの、主演俳優が大ケガをしたことから損害賠償も請求されて映画は頓挫。

くわえて、娘が別れる予定の夫の子を身ごもり、その子をひとりで生むことを決意したと知り、木村は金策のために改めて頭を悩ませます。

必死の思いで決心し始めた大きな仕事が、様々なトラブルで暗礁に乗り上げるのは、誰しも経験したことがあることでしょう。映画作りへの熱い思いと、厳しい現実。木村のつらい思いに共感するとともに、コロナ禍の重苦しい空気感が身につまされます

その後、同窓会で再会した学生時代のマドンナ・雪乃からの出資の申し出に、驚く木村。雪乃の夫は製麺工場を営んでいましたが、彼女はもう夫とは分かれているのだと木村に言います。

彼女が口にした「復讐だ」という言葉の真の意味はわかりませんが、同場面における雪乃の虚ろな目には、彼女の心の奥にある空洞が映し出されているかのようです。

木村の胸の内では、止まってしまった映画作りへの悲しみ、ケガをさせてしまった俳優への申し訳なさ、ひとりで子どもを産むことを選んだ娘への心配、突然出資を申し出た雪乃への驚きなどの感情が、複雑に絡まり合います

悩み苦しんでいた彼でしたが、周囲の人間から自分とは違う意見を聞かされたことによって新たな価値観に気づき、やがて前を見つめて歩き出します。木村が最後にどんな道を選択するのかに、目が離せなくなり、いつの間にか彼を応援せずにはいられなくなる一作です。

まとめ


(C)2022 Youya Takagawa

初監督を務めた高川裕也自身の姿が、主人公の木村に投影されているかのような映画『GINAGINA ぎなぎな』。同世代の人々になにかを感じ取ってもらいたいという思いから、制作したといいます

思い通りに物事が進まないジレンマの中でも、光に向かって進もうとする男の姿を見て、勇気をもらえる方もきっと大勢いらっしゃることでしょう。

どんな厳しい状況下であっても、人は夢見る権利があるのだということが強く伝わってくる一作です。

映画『GINAGINA ぎなぎな』は2023年1月26日(木)~28日(土)渋谷ユーロスペースにて限定一般公開です。


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