映画『ガザの美容室』は、2018年6月23日(土)より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。
パレスチナ自治区に飛び地としてあるガザ地区、それでもオシャレして、メイクして、おしゃべりして、私たちには幸せになる権利がある!
ガザある美容室を舞台に、戦争状態という日常でも逞しく生きる13人の女性たちを描いた作品とは?
1.映画『ガザの美容室』とは
ガザ地区に生まれ育った双子のタルザン&アラブ・ナサール監督による、初長編作品が第68回カンヌ国際映画祭批評家週間に出品され、大きな話題を呼んだ本作『ガザの美容室』。
6月23日(土)より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開されます。
この作品はパレスチナ自治区のガザニアる小さな美容院を舞台に、戦争状態という日常をたくましく生きる13人の女性たちを描いた作品。
本作で長編デビューを飾ったタルザン&アラブ・ナサール監督は映画『ガザの美容室』に込めた思いをこのように語っています。
「ガザ地区の女性たちは、頭からつま先までベールで覆っていて、外の世界の価値観を知らないというような お決まりの姿で描かれる。でも他の地域の女性と同じように、彼女たちは幸せを感じたり悲しんだり、日々のメイクをすることやヘアスタイルについて相談することも、レジスタンスになり得るし、それが人を生きることや希望に向けさせるんだ。戦争中であっても、彼女たちは常に人生を選択している。僕たちは“虐げられたパレスチナの女性”ではなく、人々の暮らしを、死ではなくて人生を描かなきゃならないんだ問題に向き合い、恋もするし、自分の意見も持っている。僕らは、そんな人々の暮らしを映画にしたかったんだ。映画では、外で戦闘が起こっても、女性たちは美容室の中でメイクをしたり、髪形を整えたりしている。誰もが夜の予定に行けることを望み続けてるんだ。恋人との待ち合わせや結婚式なんかをね。彼女たちは変わらず自分たちの日常を生きているわけだからね。レジスタンスは、常に身体的な抵抗を意味するとは限らないんだ」
タルザン&アラブ・ナサール監督のインタビューにある「僕たちは“虐げられたパレスチナの女性”ではなく、人々の暮らしを、死ではなくて人生を描かなきゃならない」という、作家としての姿勢を示しています。
また、「美容室の中でメイクをしたり、髪形を整えたりしている。誰もが夜の予定に行けることを望み続けてる」と述べ、恋人との待ち合わせや結婚式という戦争状態のなかでも未来を生きようとしている女性たちをに注目しています。
本作『ガザの美容室』に私たちは何を見るのでしょう。
実際にパレスチナ自治区のガザに行くことは、そんなに容易なことではありません。
しかし、映画として発信された映像を目撃することは、フレームに切り取られた真実の一部かもしれませんが、ここで描かれたオシャベリ好きな女性たちに安易に目を背けるものではないはず。
本作はカンヌ国際映画祭という世界三大映画祭のほかにも、アメリカのテキサス州で行われたヒューストン・パレスチナ映画祭でも上映されました。
ヒューストン・パレスチナ映画祭で上映された『DEGRADE(邦題:ガザの美容室)』
この映画祭ではパレスチナ人について描いた映画を、人々が分かち合うことを目的にしたフェスティバルで、パレスチナとディアスポラの社会、文化、政治的な苦境を映画という芸術を通して紹介しているようです。
また、ディアスポラというあまり聞き慣れない単語は、元の国家や民族の居住地を離れて暮らさなければならない民族の集団、またはコミュニティなどの離散した自体を示したものです。
2018年6月からの劇場公開される『ガザの美容室』を上映を待ちましょう。
2.映画『ガザの美容室』のあらすじ
フランス版ポスター『DEGRADE』(2015)
オシャレする。メイクをする。たわいないおしゃべりを、たわいない毎日を送る。それが、私たちの抵抗。
パレスチナ自治区のガザ。クリスティンが経営する美容院は、多くの女性客で賑わっています。
ここにいる女性は離婚経験調停中の主婦、ヒジャブを被った信心深い女性、結婚を控えた若い娘、間も無く出産予定の妊婦など、皆それぞれ四方山話に興じて、昼下がりの時間を過ごしていました。
しかし、店内の窓から見える通りの向こうでは銃が発砲され、美容室は戦火の中に取り残されてしまいます。
極限状態のなかにいる美容室の女性たちは平静を装いますが、マニキュアを塗る手は震え、密室状態になった美容室のなかでもで女性同士が口々に諍いを始めます。
すると1人の女性が「私たちが争ったら、外の男たちと同じじゃない」と諌めます。
彼女たちがオシャレをする、メイクをする、たわいないオシャベリを、たわいない毎日を送る。それこそが女性たちの抵抗とばかりに…。
まとめ
ガザで生まれ育った双子のタルザン&ア ラブ・ナサール監督。
2人による初の長編作品ではありますが、戦争状態という日常でも生き生きとする女性たちの姿をワン・シチュエーションで描く映画的な巧みさに秀でているが、それ以上に戦闘に巻き込まれ監禁状態となった人々の恐怖を観客は真実の姿として追体験させてくれる作品なのでしょう。
監督&脚本:タルザン&アラブ・ナサール、キャストにヒアム・アッバス、マイサ・アブドゥ・エルハディ、マナル・アワド、ダイナ・シバー、ミルナ・サカラ、ヴ ィクトリア・バリツカほか。製作はパレスチナ、フランス、カタールの合作映画となっています。
上映時間84分の映画『ガザの美容室』は、2018年6月23日(土)より、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。
早くも上映が楽しみな作品です!要注目ですよ!!