映画『藍色少年少女』は2019年7月26日(金)より、アップリンク吉祥寺にてロードショー!
今後映画製作を予定しているシナリオを対象とする、2009年サンダンス・NHK国際映像作家賞のグランプリを受賞した実績を持つ、優れた脚本家でもある倉田健次監督。
長編映画『藍色少年少女』が、ついに劇場公開される事になりました。
子どもたちの優れた演技がつむぐ、感動のひと夏の物語が今、幕を開けます。
映画『藍色少年少女』
【公開】
2019年7月26日(金)(日本映画)
【監督・脚本】
倉田健次
【出演】
遠藤史人、三宅花乃、広澤草、結城貴史、野田幸子、前川正行
【作品概要】
自然豊かな町に住む少年・テツオ。彼はこの町に福島から保養にやって来た、少女・シチカと出会います。
少年少女の出会いは周囲の人々の心を、そしてあの日以来止まったままの、「鼓動(とき」を動かしていきます。そんなひと夏の物語を、モノクロームの映像で描いた作品です。
優れた児童向けの映画や映像作品を集めた、子どもたちの国際映画祭・キネコ国際映画祭2017において、日本作品賞長編部門にノミネート、上映され高い評価を集めました。
監督・脚本を手掛けたのは倉田健次。俳優だけでなく、映画や映像作品の発表に意欲的に活躍する結城貴史と、“ふじのキッズシアター”で演劇を通じ、子どもたちの表現活動の場を支える活動を続けている柳田ありすの2人が、プロデューサーを務め製作された映画です。
映画『藍色少年少女』のあらすじ
神奈川県・藤野で父シゲル(結城貴史)と、妹と共に暮らす少年、星野テツオ(遠藤史人)。自然豊かなこの町は、東日本大震災で被災した福島の子どもたちを「保養活動」として招き入れていました。
今年の夏もテツオの町に、福島の少女シチカ(三宅花乃)がやって来ます。一年ぶりに再会した2人は、福島の子どもたちに披露する演劇、「幸せの青い鳥」の主役に抜擢されます。
どう演じるか頭を悩ませるテツオに、ガラス工芸の職人のミチル(広澤草)は、実際に町へ出て“青い鳥”を探すよう、と劇の登場人物と同じ体験をするようにアドバイスします。
こうして2人は“青い鳥”を探し、町のさまざまな場所へ向かいます。行く先々で様々な人々と出会い、その人生に触れてゆくテツオとシチカ。
こうして出会った人々を、自分たちの手で何とか救おうと力を尽くす少年と少女。やがてシチカが福島に帰る日でもある、舞台の当日がやって来ます。
少年と少女の純真な心は、人々を救うことが出来るのか。そして少年と少女は、自分たちの“青い鳥”を手に入れる事ができたのか…。
映画『藍色少年少女』の感想と評価
“青い鳥”の物語を軸に紡がれる再生の物語
「今、日本に住む我々が学ぶべきは、姿なき絶望よりも、曇りない子どもが描く未来の姿だと私は思っております。」
この映画に対して倉田健次監督は、このようなメッセージを贈っています。
東日本大震災と、それに続く原発事故を体験した少女・シチカ。しかし彼女の背負ったものだけが、映画の中で語られる訳ではありません。
自然豊かな環境の藤野の地で、のどかに暮らす大人たちも、元気よく日々を過ごす子どもたちも、それぞれに人生の綻びと苦悩を抱えていました。
“青い鳥”を探し求める旅の中で、テツオとシチカは子供ならではの視点で、人々の絶望に真摯に向き合い、自分たちの力で必死に解決しようと試みます。
その行動が人々に、そしてテツオとシチカにどの様な変化をもたらしたのか。ぜひ映画を見てご確認下さい。
テーマが一つではない映画
子どもたちが演劇を通じて活動する“ふじのキッズシアター”の、運営の中心人物である柳田ありすの、子供たちの活動を映画を通じて発信したいという思いが、この映画の原点にありました。
2013年2月、柳田ありすが俳優・結城貴史が設立した、映像制作会社KURUWAの映画を映画を見にいった事から、大きく動き出しました。
結城貴史の映画に対する情熱を感じ取った柳田ありすは、彼の製作会社にお願いすれば実現すると確信し、映画を作りたいとの希望を彼に伝えます。
話を聞くうちに、自身もやってみたい企画であると確信した結城貴史。KURUWAのメンバーも賛同し、映画化に向けた具体的な動きが始まります。
この企画の為に必要な、脚本が書けて子どもに歩み寄れる監督として選ばれたのが、本作監督・脚本の倉田健次。『リトルウィング 3月の子供たち』を手がけた実績を買われて起用されました。
2013年5月、KURUWAのメンバーと倉田健次は舞台となる地、藤野を訪れます。この地で着想を得て脚本を練り始め、子供とは何か、そして子どもをいかなる立ち位置とした物語にするかを、念頭に置いて執筆を開始した倉田監督。
“ふじのキッズシアター”の活動を軸とした、物語を描く事にした倉田監督は、キッズシアターの子どもたちの保護者やOBに、“もしその日に帰れるなら、もう一度やり直したいことは何ですか?”という質問を投げかけます。
その回答の中から、いくつかのエピソードが脚本に盛り込まれます。倉田監督は藤野を舞台に、それぞれの登場人物がテーマを背負った脚本を完成させました。
2013年7月にオーディションが実施、“ふじのキッズシアター”のメンバーから、テツオ役に遠藤史人、シチカ役が三宅花乃に決まり、多くの子どもたちが映画に出演する事になります。
“ふじのキッズシアター”は、プロの子役育成を目的にした劇団ではありません。しかしそれが、本来子どもたちが持っているものを出してくれた、と結城貴史は語っています。
実は映画の製作以前に、スタッフは誰もキッズシアターの舞台を見ていません。芝居がメインではなく、子どもたちのために運営された劇団と聞き、その演技に多くを期待していませんでした。
それが蓋を開けると、柳田ありすの元で育まれた子どもたちの演技にスタッフは大いに驚かされ、この子どもたちなら必ず出来ると信頼して、倉田監督は長回しのシーンを映画に盛り込みます。
参考映像:『藍色少年少女』メイキング2013年夏の風景
こうして2013年夏に撮影された『藍色少年少女』。藤野は東日本大震災後、早期に保養活動を始めた地域であり、撮影前には役者やスタッフも保養活動の手伝いに参加しています。
実際に保養活動に参加した方々の言葉が、映画の中で使用されています。子どもの言葉とは思えない内容に、こんなリアルな言葉は創作できないと語る倉田監督。
シチカを通じて、震災を経験した多くの言葉が語られますが、それは福島の現状というより、子どもたちの現状である、との意図で使用されています。
予算では10日間で撮らねばならないはずが、結局1カ月半かけて撮影されたこの作品。スタッフたちは途中から撮影が楽しくなり、倉田監督もこの予算規模では許されないボリュームで、精力的に撮影を実施します。
これには地元の柳田ありすの尽力だけではなく、撮影中に毎日食事を作るなどしてスタッフを応援してくれた、“ふじのキッズシアター”のお母さん方の協力がありました。この様な経験は藤野以外では無かったと、結城貴史は振り返っています。
更に彼は撮影終了後、映画製作の通じて子どもたちのために、これだけの大人が団結したんだ、と実感したも語っています。この様な製作環境の下で『藍色少年少女』は完成しました。
その後映画祭への出品、渋谷ユーロライブでの特別上映が実施されたこの作品は、映画を見て感動した方から、中学・高校の芸術鑑賞会で上映したいとの声も多数あったとの事です。
多くの思いを込めて製作された作品は、様々な反響を経て今回ロードショーの運びとなりました。
まとめ
昔から多くの映画製作者が、子どもを騙すことは難しい、子どもこそが、本当の作品の良し悪しを見抜くと語っています。
子どもたちが参加し、子どもたちのために作られた『藍色少年少女』は、間違いなく子どもたちが良しと認める作品です。この真摯に作られた作品は、大人には郷愁と同時に感動を、そして涙腺の緩い方には涙を与えてくれる作品です。
日本で製作された子ども向けの映画が、同伴の大人に涙を流させる。その様な作品はアニメ映画には多数ある様に思われますが、実写映画では幾つあったでしょうか。
様々な思いを巡らせる事が出来る様織りなされたストーリーは、単純なお涙頂戴の物語ではありません。併せて笑いを、そして子どもたちから見た大人の滑稽さも描いています。
真夏の神奈川県・藤野で、ひと夏の間に大人と子供が集まって作り上げた、奇跡の様な1本の映画。それをこの夏、鑑賞してみませんか?