盛岡市在住作家の沼田真佑の処女作『影裏』。
盛岡市出身の大友啓史監督が映画化。ついに2020年公開。
今回の映画化にあたり大友啓史監督は、「震災以前、震災以後。変わらないものと変わりゆくもの。寡黙な東北人の身体の奥底に潜む感情に真正面から触れておきたかった」。とコメントを寄せています。
小説『影裏』は、岩手の美しい自然の描写が特徴的で、2人の男のアンニュイな雰囲気と岩手の神秘的な自然が、物語の世界観を形作っています。まさに岩手の風土が生み出した純文学です。
映画化に伴い出演者には、綾野剛と松田龍平が初共演となりました。実力派2人の演技にも注目です。
映画撮影は、原作の舞台でもある岩手県でオールロケが敢行されました。
2018年の夏に行われた撮影中には、綾野剛を見た!松田龍平を見た!という情報が飛び交いました。
そんな目撃情報を元に、映画『影裏』のロケ地、岩手県盛岡市を紹介します。
CONTENTS
映画『影裏』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督】
大友啓史
【原作】
沼田真佑
【キャスト】
綾野剛、松田龍平
【作品概要】
盛岡在住の芥川賞受賞作家、沼田真佑の処女作『影裏』を、盛岡出身の大友啓史監督が映画化。
赴任先の岩手で知り合った今野と日浅。2人は交流を深めるも、日浅には今野も知らない裏の顔が存在していました。
出演は、今野役に綾野剛、そして日浅役に松田龍平です。
小説『影裏』のあらすじとネタバレ
今野は、会社の転勤で岩手県盛岡市に引っ越してきました。岩手は、とにかく山地が多く、川が多い土地です。
岩手の暮らしも2年が経つ頃には、すっかり川釣りが趣味となっていました。
同僚の日浅とは、釣りに行ったり、一緒に酒を飲んだり、良い友達です。
どちらかと言うと人付き合いが苦手な今野でしたが、歳も近く趣味も同じ、距離感が丁度いい日浅は、唯一の友達と呼べる存在でした。
そんなある日。今野が出勤すると、日浅が会社を辞めていました。自分に何の相談もなく、いなくなった日浅に今野はショックを受けますが、日浅らしいと言えばそうだと受け入れます。
携帯電話を所持していない日浅との連絡手段は途絶え、今野は釣り仲間がいなくなった喪失感を感じていました。
しばらくして突然、今野の元に日浅が訪れます。新しい会社に就職し、スーツ姿で現れた日浅は、ノルマに追われどこか別人のようでした。
日浅に頼まれ互助会に入会した今野は、お礼にと日浅に釣りに誘われます。
また一緒に釣りが出来ると喜ぶ今野でしたが、日浅の攻撃的な態度に怒りを覚えます。再び疎遠になる2人。
2011年3月11日。東日本大震災が起こります。
映画『影裏』のロケ地・盛岡市を訪ねて
2018年夏。映画『影裏』の撮影が岩手県盛岡市内で行われました。
原作に登場する地名や川の名前は、作者・沼田真佑が住む岩手県に実在する場所です。また、地酒の銘柄や飲み屋の名前まで、地元ではお馴染みのものばかりです。
岩手のこと、盛岡のことを知ると、もっと映画『影裏』が面白くなる。そんな盛岡ロケ地情報をお送りします。
盛岡について/釣り場
参考:渋民公園から見える北上川
小説の中で作者は岩手県の描写として、「じつに樹木が豊富な土地で、とにかく山地が多く川が多い。森林の密度も濃厚だから、いたるところに生き物の気配がひしめいている」と紹介しています。
市内から一歩外にでると、田畑が広がり山々がそびえたつ。至る所に渓流釣りのスポットがあります。
山からの川は、盛岡市内にも多く流れ込み、町には橋の数が多いのが特徴です。シーズンともなると町の中でも釣り人を見かけるほど、釣りが盛んな土地でもあります。
主人公の2人が釣りを楽しむ生出川も、実際に存在する川です。盛岡市渋民を流れ、北上川に合流する生出川。ヤマメが釣れると言われる穴場的釣り場です。
生出川は、作者の沼田氏もよく訪れる場所だそうです。
盛岡について/地酒
参考:株式会社わしの尾のツイッター
いわて銀河プラザで、沿岸のお酒の試飲やっています。#sakesakana pic.twitter.com/B6Ll8MnY
— Washinoo (@Washinoo) December 8, 2012
主人公の今野と日浅は、酒飲み仲間でもあります。それも、日本酒を一升瓶を冷やでいける口です。
日浅が初めて今野のアパートを訪れた時、手土産は「鷲の尾」の一升瓶でした。
「鷲の尾」は岩手県八幡平市にあり、創業から190年以上になる老舗の酒蔵です。日浅の性格からすると、昭和のお父さんにも愛され続けた「鷲の尾金印」の一升瓶だろうかと想像が膨らみます。
また、会員になったお礼として、日浅が今野を誘った夜釣りのシーンでは、お隣青森県のお酒「田酒(でんしゅ)」を持参しています。
「田酒」は岩手県でも人気のお酒で、特に女性のファンが多いように感じられます。気高く華やかな味わいは、日浅のチョイスにしてはどこか引っ掛かりを覚えます。
今野に対するお礼の気持ちがこもった「田酒」のようで、実は2人の間によそよそしい距離感が出来たように感じます。日浅が今野に飽きてきたような感覚です。
日浅が、このお酒を選んで持っていったのだとしたら。日浅は、今野のセクシュアリティを知っていたのではないでしょうか?
盛岡について/さんさ踊り
参考:岩手県盛岡広域振興局のツイッター
本日、「盛岡さんさ踊り」2日目!
昨日の「岩手県職員チーム」の様子をご覧ください。#18102いわて #盛岡市 #盛岡さんさ踊り pic.twitter.com/TB9cGwUIpB— 岩手県盛岡広域振興局 (@pref_iwate_mori) August 2, 2019
盛岡市では毎年8月1・2・3・4日の4日間「盛岡さんさ踊り」が開催されます。世界一の太鼓パレードとして多くの観光客が訪れるお祭りです。
この「さんさ踊り」のお祭り期間、綾野剛と松田龍平を見た!という情報が飛び交いました。
小説『影裏』では、2人が「さんさ踊り」に出かける下りはありません。これは映画だけのオリジナルのシーンになること間違いなしです。
さんさ踊りパレードのにぎやかな音とお祭りの高揚感の中、控えめに静かに歩く2人の姿が浮かび上がるようです。
盛岡について/東日本大震災
2011年3月11日、東日本大震災が起こります。小説では震災後、沿岸の大津波被害で混乱を期す中、内陸の盛岡市で悶々と過ごす、今野の様子が描かれます。
アパートの孤独な老人の行動や、安否を心配する連絡の数々、離れて暮らす東京の妹への物資支援。日本全体が不安と絶望に飲み込まれていました。
行方不明者の数は、死者数へと変わりながらも増え続け、4月の段階で岩手県で4千人以上とされました。
日浅もそのひとりでした。今野は沿岸に行くでもなく、避難所を探すでもなく、盛岡で馴染みの居酒屋を回り、日浅の姿を探します。
その行動は、家族や親戚、恋人や友達など、身近な人の安否を問う行動とは違うように思います。いなくなったことを認めたくないという心情なのでしょうか。
それでもやはり納得出来なかった今野は、日浅の実家を訪ねることになります。そこで明かされる日浅の生い立ちと影の部分。
今野は日浅の裏の顔を知ってもなお、自分の感覚を信じます。日浅という男に惚れていたのかもしれません。その感情は愛情なのか友情なのかはわからないままです。
映画『影裏』のロケ地を訪ねて/番外編
参考:イタリア料理店Due Maniのインスタグラム
映画『影裏』のロケは、小説に登場しない場所でも行われていたようです。
映画化に伴い、綾野剛と松田龍平が喫茶店でテーブルを挟み向き合う写真が公開されています。この場所は、岩手県一関市にある「ジャズ喫茶ベイシー」。
小説から漂うアンニュイな雰囲気がジャズとも重なり、また色気あふれる2人の俳優がみごとにハマっています。
また、盛岡市を流れる中津川沿いでも目撃情報が上がっています。中の橋近くにある蔦の絡まる外観が素敵な喫茶店「ふかくさ」。
橋の多い盛岡市の中でも歴史ある中の橋。川沿いの道は柳の木が風で揺れ、喫茶店や雑貨屋、美術館が並びとても散歩には良い場所です。
そして、綾野剛がプライベートでも訪れたと言われるイタリア料理のお店「Due Mani(ドゥエ マーニ)」。
岩手の食材を使用したこだわりの料理が定評です。オーナーの人柄で集まる、酒好きによるコラボレーションイベントも乙(おつ)です。
まとめ
盛岡市在住作家の沼田真佑の処女作『影裏』を、盛岡市出身の大友啓史監督が映画化。作品の舞台でもあり映画のロケ地になった盛岡市を紹介しました。
岩手の雄大な自然が美しい描写で書かれた『影裏』の世界が、盛岡の情緒あふれる街を舞台にどのように映像化されるのか。
また、2人の男の名前の付けられない関係性が、綾野剛と松田龍平によってどのように演じられるのか。
映画『影裏』は2020年公開です。