映画『ドリームランド』は2021年4月9日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。
映画『ドリームランド』は、『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クイン役で人気に火をつけたマーゴット・ロビーと、「ワイルドスピード」最新シリーズ出演の若手俳優フィン・コールによる恋愛映画です。
アメリカンニューシネマの代表である『俺たちに明日はない』(1967)にインスパイアされた本作は、美しい強盗犯と恋に落ちた若き青年の切なくも情熱的な物語となっています。
映画『ドリームランド』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【監督】
マイルズ・ジョリス=ペイラフィット
【キャスト】
フィン・コール、マーゴット・ロビー、トラヴィス・フィメル、ギャレット・ヘドランド
【作品概要】
脚本に惚れ込んだマーゴット・ロビーが自らの製作会社ラッキーチャンプでプロデュースと主演を務め、映画化を実現。2019年のトライベッカ映画祭にてプレミア上映されました。
ラッキーチャンプ製作映画は、1作目がアカデミー賞3部門ノミネートされた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』、そして2作目が『アニー・イン・ザ・ターミナル』となっており、本作が3作目となっています。
監督のマイルズ・ジョリス=ペイラフィットは、長編デビュー作『As You Are』(2016)でサンダンス映画祭史上最年少の23歳で審査員特別賞を受賞している気鋭の監督です。その才能を見込んだマーゴットによって監督に抜擢されています。次回の監督作として、イギリスの人気コミックが原作のSFアクション『Tank Girl』が予定されています。
脚本はブラックボックスという、まだ映画化されていない優れた脚本がランキングになっているサイトからマーゴットら製作陣が選出したものです。監督のペイラフィットが、この脚本を基に1930年代という時代背景の調査と解釈を深めて本作を作り上げました。
マーゴット・ロビー演じるアリソンに恋する若き青年ユージンを演じたのは、イギリス出身の若手俳優フィン・コール。
ドラマシリーズ「アニマルキングダム」(2016~2021)や、キリアン・マーフィー主演ドラマ「ピーキーブラインダーズ」(2014~2019)に出演しています。映画では、ワイルドスピードシリーズ最新作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』の出演が決まっており、注目株の俳優の一人です。
物語のメインキャラのひとりであるユージンの継父ジョージ役を務めたのは、オーストラリア出身の俳優トラビス・フィメル。人気ドラマシリーズ「ヴァイキング~海の覇者たち~」(2013~2017)でのラグナル・ロズブローク役で知られ、映画作品ではグレタ・ガーウィグ主演の『マギーズ・プラン幸せのあとしまつ』(2015)やアンドリュー・ヘイ監督の『荒野にて』(2017)などに出演しています。
映画『ドリームランド』のあらすじ
1930年代半ばのテキサス。閉塞的で退屈な生活にくすぶっていた17歳のユージン(フィン・コール)は、ケガを負った美しい女性アリソン(マーゴット・ロビー)と偶然出会います。
彼女は、殺人と銀行強盗の容疑で指名手配されている人物でした。
彼女のケガを手当し、話を聞いているうちに次第に惹かれていくユージン。アリソンと一緒にメキシコに逃げる計画を企てます。
しかし、ユージンの継父は、保安官で厳格な男。2人の逃亡は難航を極め……。
映画『ドリームランド』の感想と評価
映像表現の巧みさ
本作は全編にわたって、その映像表現に魅了される作品でした。
『俺たちに明日はない』にインスパイアされた作品ということで舞台は1930年代ながら、とても洗練された印象が残ります。
最も印象的だったのはシャワーシーン。10代で世間知らずなユージンと、彼を子ども扱いしていたアリソンの距離がぐっと近づくシーンです。
2人を映し出す、奥ゆかしさと大胆さを感じられる映像には、目が釘付けになることでしょう。ぜひ注目してみてください。
また、ユージンとアリソンは2人とも過去にある事情を抱えています。それぞれの記憶がよぎるシーンがとてもセンチメンタルに映し出されます。
特にユージンの不安を掻き立てる象徴として使われている砂嵐の映像は、観客にも効果的に不安を抱かせるものとなっています。
また、逃亡中のアリソンが息をひそめ隠れるシーンや、ユージンが警察署に忍び込む緊迫したシーンの効果音が絶妙で、緊張感を巧みに煽っているのも印象的。
ストーリー展開の斬新さよりは、映像によるエモーショナルな表現や繊細なセンスが感じられる作品だと言えるでしょう。
物語を主演ふたりの演技が彩る
過去に『スローターハウス・ルールズ』(2018)で1度共演して以来、3年ぶりの共演となったマーゴット・ロビーとフィン・コール。
主演のふたりの繊細な演技が、物語の切なさをより際立たせています。
危険な恋におちたユージン役を初々しさたっぷりに演じたフィン・コールと、傷心の中どうにか希望を手繰り寄せようとするアリソン役を演じたマーゴット・ロビー。
特に、自らプロデュースを手掛けたマーゴット・ロビーの演技は本作の肝でした。
危険さと脆さをあわせもつアリソンのキャラクターをしっかりと深く理解し演じ切ったことで、物語に奥行きが生まれたと言えるでしょう。
マーゴットと言えば、アメコミ映画の人気キャラクターのハーレイ・クイン役として主演を務めた『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』での活躍が広く知られていますが、大作と本作のようなインディーズ映画を比較して以下のようにインタビューで語っています。
「両方とも大変だわ。大変さの質は違うけど、作品規模の大小にかかわらず映画製作は本当に大変なの。でも間違いなく、やってみる価値がある。観客に映画を観てもらって、意見を持ってほしい。良し悪しは別にして、何らかの形で観客にいろいろと考えさせる映画を作ることができるなら素晴らしいわ」
この発言を受けて改めて言いたいことは、本作は恋愛映画とひとくくりに言えるものではないということです。互いに惹かれあっていくユージンとアリソンの心模様には、恋だけでなく憧れや現状からの解放という願望も込められているからです。
この点は、本作のインスピレーションの元になった『俺たちに明日はない』に通ずるものがあると言えるかもしれません。主人公のボニーとクライドは、はじめから男女の関係だったわけではありません。
特にクライドは女性をうまく受け入れられない男性として描かれていました。その関係性が徐々に変化していく様子が作品の面白さのひとつでもあります。それと同様に本作でもユージンとアリソンの関係は少しづつ変化していきます。
田舎町から逃げ出したい願望を抱えていたユージンの冒険心に火をつけたのは、紛れもなく自由に生きるアリソンでした。しかし、ユージンの純粋さにアリソンも徐々に影響を受け始めるのです。
そして、年齢も経歴も考え方も違うふたりが出会ったことは決して偶然ではなく、運命だったのだと思わせる展開が待っています。
まとめ
『俺たちに明日はない』(1967)では、犯罪と逃亡の先に夢を抱くボニーとクライドの破滅的な絆が描かれていましたが、本作でも主役の2人はまだ見ぬ希望の地をともに目指します。
しかし、そこへ辿り着くには代償を伴います。何を犠牲にし、何を手に入れるのか……。
ユージンとアリソン、2人の行く末を想うと切なさがこみ上げます。新鋭俳優フィン・コールとマーゴット・ロビーの熱演をぜひスクリーンでご鑑賞ください。
『ドリームランド』は2021年4月9日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開。