永遠の名作「ロッキー」の精神を見事に継承してみせた大傑作『クリード チャンプを継ぐ男』から3年。
チャンピオンになったアドニスの前に30年前父アポロ・クリードを殺した宿敵が現れる…!
ロッキーシリーズのオールドファン垂涎の企画でありつつ、新たな世代をも勇気づける素晴らしい一作です。
CONTENTS
映画『クリード 炎の宿敵』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Creed II
【監督】
スティーブン・ケイプル・Jr
【キャスト】
マイケル・B・ジョーダン、シルベスター・スタローン、テッサ・トンプソン、フィリシア・ラシャド、ドルフ・ラングレン、フロリアン・“ビッグ・ナスティ”・ムンテアヌ、ラッセル・ホーンズビー、ウッド・ハリス、アンドレ・ウォード、マイロ・ビンティミリア、ブリジット・ニールセン
【作品概要】
「ロッキー」シリーズの精神を受け継ぎつつ新たな物語を始動させ大成功した『クリード チャンプを継ぐ男』から3年。
アドニスとロッキーの師弟前に、かつてリング上で父アポロを殺した男・ドラゴとその息子が立ちはだかる…!
前作の監督ライアン・クーグラーの学生時代からの盟友、スティーブン・ケイプル・Jrが本作を監督し、マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、そしてシルベスター・スタローンが前作に引き続き主人公たちを演じます。
そして宿敵ドラゴを演じるのは『ロッキー4 炎の友情』(1986)でも同役を演じていたドルフ・ラングレン。かつて”人間核弾頭”と呼ばれたアクションスターの30年の時を経た円熟味のある演技にも注目です。
ドラゴの息子を演じるのは本物の現役ボクサー、フロリアン・“ビッグ・ナスティ”・ムンテアヌ。
長寿シリーズ故の因縁の対決は重みが違う!
映画『クリード 炎の宿敵』のあらすじとネタバレ
ウクライナ・キエフ。
かつての天才ボクサー、イワン・ドラゴの息子のヴィクターは、ボクシングの試合で相手を一瞬のうちにマットに沈めました。
それを見ていたアメリカのプロモーター、バディ・マーセルは満足気な表情を浮かべます。
その頃、アメリカではWBCの現チャンピオンのダニエル・ウィーラーと、アドニス・クリードの一戦が始まろうとしていました。
アドニスはデビュー前にスパーリングでウィーラーに負け、父アポロの形見である車ムスタングを取られた因縁がありました。
会場にやってきたアドニスの彼女ビアンカは補聴器をつけます。
彼女の進行性難聴は3年前よりも悪化していました。
控え室にいたアドニスはトレーナーのロッキーからアドバイスを受けてリングに向かいます。
3年前に発症したロッキーの癌はアドニスの献身的介護もあり無事治っていました。
試合が始まり、成長したアドニスはウィーラーを圧倒しKO勝ちを収めます。
ついに父と同じチャンピオンになったアドニスはベルトと一緒にムスタングも取り返しました。
ビアンカにプロポーズをしようとしたアドニスは、ロッキーにアドバイスを求めます。
亡き妻エイドリアンのことを思い出して「俺には過ぎた女房だった」と語るロッキー。
アドニスはビアンカに指輪を見せてずっと一緒にいたいと結婚を申込み、彼女も快諾しました。
数日後、フィラデルフィアの自分のレストランに戻ったロッキーは、見覚えのある巨漢が席に座っているのに気づきます。
かつてソ連のエリートボクサーだったイワン・ドラゴでした。
ドラゴは数十年前に、アドニスの父アポロ・クリードと闘い、彼を試合中に殴り殺していました。
そしてアポロのセコンドで彼を止めずに死なせてしまったのは親友のロッキーだったのです。
その後、ロッキーは敵討ちでソ連に渡り、試合でドラゴを倒した過去がありました。
30年ぶりにロッキーと対面したドラゴは、彼に負けた後、自分が祖国、財産、名誉を失い妻にも逃げられたことを語ります。
ドラゴは唯一残された息子ヴィクターに自分のボクシングスキルを全て叩き込み、ロッキーや自分を見下した人間全てに復讐をするつもりでした。
TVではドラゴ親子のアドニスへの挑戦表明の記者会見が流れており、息子のヴィクターが「ウィーラーはピークを過ぎていた、クリードは俺と戦うべきだ」と語っています。
アドニスたちも会見を見ており、ビアンカは挑発に乗る必要はないと言いますが、アドニスは悩んだ末に挑戦を受けることに決め、ロッキーに報告に行きます。
しかしロッキーは反対。
守るものができたアドニスと、失うものがない野獣のようなヴィクターが戦ったらどうなるか。
彼はかつて自分がタオルを投げずにアポロを見殺しにしてしまったことを悔いており、同じ事が起きるのを恐れていました。
アドニスは頼りにしていた恩師が自分の勝利を信じていないことに激怒。
人生のことを考えろというロッキーに対し、彼は「あんたはどうなんだ!寂しい老人じゃないか!俺が介護をしなきゃ死んでいた!」と怒鳴ります。
それでもロッキーはヴィクターと戦うならセコンドはできないといい、2人は決別してしまいました。
ロッキーはエイドリアンとポーリーの墓参りに行き、フィラデルフィアを離れてカナダに行ってしまった息子ロバートのことを一人語ります。
父と比較されることを嫌がり遠くへ行ってしまった息子に対して今更どんな顔で会いに行けばいいのかと、彼はぼやきました。
アドニスはビアンカにも闘いの意志を告げ、夫婦でフィラデルフィアを離れ、生まれ育ったロサンゼルスに戻ります。
歌手をしながらも難聴が悪化しているビアンカにとっても、レーベルが多いロサンゼルスはいち早く夢を叶えるために最適な場所でした。
アドニスはかつて父が所属していたジムを訪ねます。
経営しているのはアポロのトレーナーだったデュークの息子トニー・“リトル・デューク”・バートン。
かつてのコンビの息子たちは2人でアポロの敵をとろうと誓い、正式にマーセルに対決を受けることを告げます。
その夜、アドニスたちは母メアリー・アン・クリードと久しぶりに会って食事をします。
メアリーはビアンカの様子を見て、彼女が妊娠していると言います。
まさかと思う2人でしたが、検査薬を使うと確かにビアンカは妊娠していました。
自分たちが親になれるか不安を漏らすビアンカをアドニスは励まします。
アドニスはメアリーにもドラゴと戦うことを告げますが、彼女は「あなたの人生なんだから好きにしなさい。ただ私や父さんを戦う言い訳に使わないで。あなたの問題よ」と答えました。
アドニスはリトル・デュークと猛特訓を始めます。
ヴィクターとドラゴも激しいトレーニングを積んでいました。
そしてやってきた試合当日。
アメリカで行われる試合ということもあり、会場はクリード応援一色でした。
ロッキーは中継で自宅からアドニスを見守っていました。
アドニスは試合開始と同時に得意のスピードを活かした連続攻撃を繰り出しますが、ヴィクターは打たれ強く、チャンスを伺っていました。
隙を突いて打ち込んだヴィクターのパンチは予想以上に重く、アドニスは序盤から何度もダウンしてしまいます。
優勢に試合を進めるヴィクターですが、ドラゴは「なんでKOできないんだ」と息子を責め立てていました。
ヴィクターと打ち合いになり、アドニスはボディにとてつもない一撃を食らって肋骨を痛めてしまいますが、彼は絶対に最後まで戦うと言い張り、デュークも止めることはできませんでした。
その後も容赦なくボディを攻め続けられ、アドニスの肋骨は完全に骨折。
アドニスが倒れる瞬間にヴィクターは勢い余って顔面にパンチを入れてしまいます。
倒れた選手に攻撃を加えるのは反則なのでヴィクターは失格となりアドニスのタイトルは守られましたが、彼は意識を失い病院に搬送されました。
アドニスは絶対安静状態となり、寝たきりになります。
そこにロッキーがやってきます。
俺がついていればと謝るロッキーに、アドニスは今更なんだと暴言を吐きます。
ビアンカがアドニスをたしなめますが、ロッキーは病院を出て行きました。
怪我が完治したアドニスはデュークのジムにやってきますが、ガラスに貼られた父アポロの絵を見て、何もせず帰ってしまいます。
ビアンカのお腹は日に日に膨れ、出産が近づいていましたが、難聴が子供に受け継がれたらどうしようと不安を抱いていました。
その頃、ヴィクターはアドニス戦失格の汚名を晴らすかのように各試合で圧倒的勝利を収めており、メディアもヴィクター・ドラゴの方がチャンピオンにふさわしいのではないかと報じ始めていました。
ヴィクターの快進撃を祝し政府幹部からロシア本国での会食に招かれたドラゴ親子の前に、かつての妻であり母のルミドラが現れます。
彼らが極貧生活で苦しんでいる間も、政府幹部の娘として裕福に暮らしていたルミドラ。
自分たちを見捨てたルミドラと政治家たちに愛想を振りまいている父の姿を見たヴィクターは、怒りで会場を飛び出します。
ドラゴは彼を追いかけ、「将来のためだ」と言いますが、ヴィクターは納得していませんでした。
アドニスは、誰かと対戦しないとチャンプの資格を失うと協会から通達があったとデュークに伝えられます。
数ヶ月後、ロッキーのもとにメアリー・アンから手紙が届きます。
「あの子のそばにいてあげて」
ある日、アドニスが家に帰ってくるとロッキーが来ていました。
フィラデルフィアからロサンゼルスにやってきたロッキーは自らの人生を振り返り、アドニスの言うとおり自分も人生を考えられていなかったと語ります。
部屋中のトロフィーを見てロッキーは「凄いなアポロは。ただお前もこうなれた。」と言いました。
アドニスは父のようにチャンピオンとして戦えないかもしれない、そして父と同じくドラゴたちに勝てないかもしれないという不安を告げるロッキー。
ロッキーは勝敗よりも大事なものを大切にしろと言います。
そして自分自身の気持ちが一番大事だとも。
アドニスとロッキーが和解したところに、ビアンカが産気づいたという連絡が入りました。
ロッキーは病院の電話から息子ロバートに連絡をしようとしますが、ロバートが出る前に切ってしまいます。
しばらくして無事元気な女の子が生まれました。
アドニスたちは前から決めていたアマラという名前をつけます。
検査の結果、アマラには難聴の症状がありました。
ロッキーはアドニスに「娘は自分を惨めと思っていない。父親もそうであるべきだ。」と語ります。
なれない子育てに奮闘するアドニス夫婦。
ある夜、ビアンカは気分転換にと、アドニスにアマラを預けてスタジオに向かいます。
アマラが何をしても泣き止んでくれなくなり、困ったアドニスはデュークのジムに娘を連れてやってきました。
壁のアポロの絵を見てアマラは少し泣き止みます。
アドニスはサンドバッグを見て思わずスパーリングを始め、何発も打ち込んだあとに雄叫びをあげます。
アマラは泣き止んでいました。
アドニスはアマラを抱きかかえながら「ダメな父親でごめんな」と呟きます。
アドニスは家に帰って、ビアンカにヴィクターと戦うことを決めたと宣言します。
彼は、ロッキーにも家族のためそして自分のためにこそ戦うと言いました。
映画『クリード 炎の宿敵』の感想と評価
作り手の物語とシンクロするシリーズ
本作について語る前にまず「ロッキー」シリーズと前作『クリード チャンプを継ぐ男』について語らせてください。
『クリード チャンプを継ぐ男』は「ロッキー」一作目と同じくまだ何者でもない男が自分の存在を証明するまでの話でした。
しかしアドニスとロッキーには大きな違いがあります。
それは血筋の問題です。
かつてのロッキーはフィラデルフィアのゴロツキでなんにも持っていない人間でした。
その男が「自分はゴロツキなんかじゃない」と証明するために絶対的王者アポロ・クリードと闘い、最後までリングに立ち続ける物語に世界中の人々が感動したのですが、本シリーズの主人公アドニスにはその偉大なアポロの血が流れています。
彼はロッキーとは違う理由で悩んでいました。
父の遺産で裕福に暮らし、一流企業に勤めていたアドニスですが、ポクシングへの情熱が抑えきれず全てを捨ててロッキーに師事しチャンピオンに挑みます。
「このまま普通に暮らしていてもそこそこの人生を送れるけど、でも俺もかつての先人たちのように伝説を残したい。俺も戦いたい!」
このアドニスの思いは、当時まだ一本も映画を撮っていない状態でスタローンのもとに『クリード チャンプを継ぐ男』の企画を持ち込んだ前監督ライアン・クーグラーの思いとシンクロしています。
クーグラーも大好きなロッキーシリーズの一観客に収まらず、挑戦して新たな伝説を作る側に回ったのです。
それは40年以上前、売れない俳優生活を打開するために『ロッキー』の脚本を自ら書いて主演し、スターダムにのし上がったスタローンの姿にも重なります。
そしてアドニスが前作ラストで父アポロの名に恥じない試合をして自分を証明したように、『クリード チャンプを継ぐ男』は大ヒットし『ロッキー』に匹敵する傑作との評価を受け、クーグラーの挑戦は大成功。
2018年には『ブラックパンサー』の監督を務めて記録的大ヒットをさせるなど、一流監督の仲間入りを果たしました。
作り手や作品そのものの立ち位置がそのまま主人公の物語とシンクロしているのがこのシリーズのすごいところです。
しかしアドニスやロッキー、というより「クリード」シリーズにはまだやり残した大きな物語がありました。
それは『ロッキー4 炎の友情』で父アポロを殺したイワン・ドラゴの存在。
そしてアドニスがアポロを超えること。
前作公開時の段階で既にロッキーファンの間では「そのうち仇のドラゴとかその息子と戦ったりするのかな」なんて予想が飛び交ってはいました。
シリーズファンなら誰でも見たいと思う話ですが、本作で脚本も勤めたスタローンはただアドニスがドラゴ親子に復讐をするというような単純な作りにはしませんでした。
勝者と敗者両方に重厚なドラマを作り、今までのシリーズにはなかった要素も入れ、最終的には普遍的な親子の物語を浮かび上がらせるまでに至りました。
そして自ら生み出し40年以上演じてきた分身のようなキャラクターであるロッキー・バルボアの人生をスタローン自身の手で総括しているのも感動ポイント。
さすが名脚本家です。
父を超えるアドニスの物語
アドニスは本作冒頭で父と同じチャンプになりますが、そこから父が倒せなかったドラゴの息子と戦うことになります。
初めて父ができなかったことに挑まなければならないアドニス。
一度父と同じくヴィクター・ドラゴに負け、死の淵を彷徨うくらいの重傷を負ったアドニスが、2度目の対戦で勝つことができたのは何故か。
それは、彼やメアリー・アンのセリフにもあるとおり、アドニスが父親の復讐のためではなく自分の人生のため、そしてビアンカや生まれたばかりのアマラのために戦うことを決めたからです。
33年前にボクサーとしてのピークを過ぎ半分引退していた父アポロは、愛人との間にアドニスを作っておきながらその顔を見ることもなく、自分の力を誇示するためにロッキーの説得も聞かず当時絶対に勝ち目はないと言われていたドラゴと戦って殺されてしまいました。
ある意味自分勝手だった彼には残された妻や親友ロッキー、そして息子アドニスを苦しめてしまった功罪があります。
アドニスは親となり娘と向き合い、彼女のために戦うと決めた段階で既にアポロを超えていたのです。
また砂漠でのトレーニング中、文字通り一度倒れたあと、自分だけの力で再び立ち上がるシーンも死を擬似体験して成長する通過儀礼的意味合いがありました。
最後の試合では父とは違う黒い星条旗のボクサーパンツを履いているのも彼が父を超えたことを表しています。
そして彼がドラゴ親子に勝ったことで父親の功罪を肯定してみせるというのも感動的です。
様々な親子の物語
そして親子の功罪という要素がより色濃いのはかつての悪役イワン・ドラゴと息子ヴィクターの物語。
本作で33年ぶりにシリーズに登場したイワン・ドラゴ役のドルフ・ラングレンですが、彼の実人生もこの映画に色濃く反映されています。
スタローンに見出されて『ロッキー4 炎の友情』の悪役として彗星のごとく登場したドルフ・ラングレンですが、このドラゴ役のインパクトが強すぎたのか中々役に恵まれない俳優人生を送ってきました。
そんな彼に再びドラゴを演じさせたことで虚実の皮膜が薄くなり、ロッキーに負けて33年間くすぶってきた男の悲哀がリアルに反映されて胸に迫ってきます。
スタローンはただ単にドルフ・ラングレンを温情でシリーズに復帰させたわけではなく、作品のドラマをより盛り上げるキャラとして最大級の見せ場を用意しています。
ドルフもその期待にキャリア最高の演技で答えました。
ドラゴはロッキーに負けて転落した自らの人生を取り戻すため、そして復讐するために、唯一残された息子ヴィクターを復讐の道具として厳しく鍛え育ててきました。
しかし物語終盤、母に見捨てられたヴィクターの闘志が折れて殴られ続けているのを見たドラゴはタオルを投げ込み、勝負よりも息子を優先しました。
このシーンには単にドラゴが親子愛を見せたというだけでなく、かつて自分が無慈悲にリング上で殴り殺したアポロのことも思い出し、33年越しに彼やその家族、親友を失ったロッキーがどんな気持ちだったのか気づかされたという意味合いもあります。
ソ連のエリートボクサーだった頃はサイボーグと呼ばれるほど冷酷で、転落した後も自分の復讐しか考えていなかった男の成長に感動させられます。
彼は試合には負けましたが、かつてアポロを止められなかったロッキーをある意味超えたのです。
対戦相手にここまで大きくドラマを持たせるというのは今までのロッキーシリーズにはなかったことですが、40年以上続いていることの強みを存分に活かしています。
そしてドラゴの息子への愛を見たロッキーは、長年会いに行けなかった息子ロバートのもとへ行く決心をします。
ロバートは父のようにボクシングの素質はなく、ロッキーの息子として比べられるのが嫌でフィラデルフィアを出て行ってしまっていました。
ロッキーにもまた親としての功罪があったのです。
本作のテーマの一つには「親から受け継ぐ物が必ずしも子供にとっていいものとは限らない」ということがあります。
それを象徴しているのがビアンカからアマラに受け継がれた難聴。
しかし、それをどう乗り越えるかは子供や親の生き方次第。
親として成長したアドニスとビアンカなら、娘にもしっかりと向き合っていくでしょう。
ラストでクリード、ドラゴ、バルボア三者三様の親子が禍根を断ち絆を取り戻す様はシリーズ屈指の名場面になっています。
アドニスが父アポロを超えるように本作『クリード 炎の宿敵』は今までのロッキーシリーズがやらなかったこと、できなかったことをしっかりと描いています。
子供が産まれて親になることを一面的にプラスな要素だけで描かないというのも非常に現代的ですし、ロッキーをリング外から見守ることしかできなかったかつてのヒロイン・エイドリアンと違い、ビアンカは歌手という自分の夢を追いかけ、闘いの際にはともに曲を歌いながら入場するなど新しいヒロイン像を見せてくれます。
『ロッキー4 炎の友情』は人気作ではありながらも、当時批評的にはボロカスに叩かれ、ラジー賞も受賞してしまいました。
その息子的存在に当たる本作は、父『ロッキー4 炎の友情』の物語を昇華し、オリジナル要素も足して見事な作品となりました。
まさにこの『クリード 炎の宿敵』という作品のスタンスそのものです。
シリーズ創始者のスタローンやライアン・クーグラーから監督を継承されたスティーブン・ケイプル・Jrも、商業監督デビューにして見事な仕事を見せました。
作り手の物語がそのまま映画の感動に直結しているという点で本作は正統に「ロッキー」シリーズの魂を受け継いでいると言えるでしょう。
まとめ
最後の試合後、リングに上がらず次世代のアドニスを見守っていたロッキーの背中には「CREED」の文字が。
ロッキーの闘いの物語はアドニスに受け継がれ、彼は息子と和解し新たな人生を歩み始めました。
彼はもう走ることはありませんが、彼の魂は次世代に受け継がれ、形を変え、永遠に走り続けるでしょう。
新たなクリード伝説の続きが早く観たいですね。
そしてレジェンド的映画人となったスタローンは後進の育成もしながらまだまだ衰えてはいません。
次回作は自身のもう一つの代表シリーズ「ランボー」を復活させます。
70歳を超えても挑戦を止めない彼の姿に今後も目が離せません。
ちなみにドラゴの元妻ルミドラを演じたのは『ロッキー4 炎の友情』にも同役で出演し、撮影中スタローンと恋におちてその後すぐ離婚したブリジット・ニールセン。
そんな因縁の元妻も物語上の重要な役でしっかり出演させるスタローンの心の広さにも感服です。