映画『ブレス しあわせの呼吸』は、9月7日(金)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー。
実在した主人公ロビン役に『ハクソー・リッジ』のアンドリュー・ガーフィールドが好演を見せ、献身的に愛した妻ダイアナ役は、ドラマ『ザ・クラウン』のクレア・フォイが務めた本作。
1950年代に首から下が全身麻痺という状態で、余命宣告を受けたロビン。
そんな彼が妻ダイアナや家族、そして多くの仲間とともに笑顔に満ちた生活や、豊かな人生を過ごした実話とはいったい、どのようなものなのか?
CONTENTS
映画『ブレス しあわせの呼吸』の作品情報
【公開】
2018年(イギリス映画)
【原題】
Breathe
【監督】
アンディ・サーキス
【キャスト】
アンドリュー・ガーフィールド、クレア・フォイ、トム・ホランダー、ヒュー・ボネビル
【作品概要】
「ロード・オブ・ザ・リング」や「猿の惑星」シリーズに出演する名優アンディ・サーキスの長編初監督作。全身マヒで余命宣告を受けた夫が、妻や家族とともに幸せな人生を送った実話を描くヒューマンドラマ。
ポリオ病で首から下の全身マヒのロビン役に『ハクソー・リッジ』のアンドリュー・ガーフィールドが演じ、その献身的に愛した妻ダイアナ役はドラマ『ザ・クラウン』のクレア・フォイは務めます。
映画『ブレス しあわせの呼吸』のあらすじ
仲間たちとともにクリケットを楽しむロビン。
彼の容姿の格好よさに釣り合うかのように、持ち前の運動神経良さを見せるのに絶好のチャンスを迎えます。
ロビンは、クリケットの試合フィールドの外で興味なさげに眺める美しい女性ダイアナを見つけます。
大勢から求愛を断ってきた誇り高きダイアナだと、ロビンは友人から諦めろと促されます。
しかし、ダイアナに一目惚れしたロビンは、打者席に立つと、相手チームの投げた球を打ち返します。
球はぐんぐん伸びて、美しいダイアナの頭上を大きく越え、ティータイムを行うために用意されたテーブルにあるティーカップを叩き割ります。
ダイアナの近づいたロビンは、「僕がわるかった、すいません!」。
周囲が高嶺の花だと羨むダイアナに、紳士的なロビンが恋のアピールをするには、十分すぎる予想外のアプローチでした。
その後、ロビンとダイアナのふたりは、運命的に導かれたように恋に落ちました。
そして、ダイアナは、「私にはわかる。彼こそ運命の人よ」と言うと、双子の兄の反対を押し切って、知り合ったばかりで財産もないロビンと結婚します。
やがて、家族や友人の仲間たちに祝福され、結婚した2人は誰もが羨む幸せな日々を過ごしていました。
1958年に茶葉の買い入れを始めたロビンは、ダイアナ伴って買い付けてために、ケニアを訪れます。
まもなくダイアナは妊娠し、幸せを謳歌していました。
ところが翌年になると、突然、ロビンの身体の不調を訴え、病院に担ぎ込まれます。
現地の医師から診断された結果は、ポリオでした。
ロビンは首から下の全身麻痺となり、ベットで安静に過ごし、人工呼吸器なしでは自力で息も出来ないほど酷い症状になり、医師からは余命数カ月と宣告を受けます。
ダイアナは呆然と医師を見つめるしかありませんでした。
1960年、無事に男の子を出産したダイアナは、ロビンを連れて英国に帰国します。
専門病棟に入院し、人工呼吸器に繋がれる日々に、ロビンは「死にたい」と繰り返し、息子の顔も見ようとはしませんでした。
毅然とした態度でロビンを励まし続け、「私には何かできるはず」と訴えるダイアナに、ロビンは「ここから出たい」と懇願します。
ダイアナは覚悟を決め、強い意志のもと、古い一軒家を値切って購入。
人工呼吸器の操作について看護師から学び、「2週間で死ぬ」と断固反対する医師を押し切り、ロビンを退院させます。
その後、ダイアナの双子の兄、息子ジョナサン、それに愛犬のベンジーに迎えられ、ロビンは忘れかけていた心から笑うことを取り戻します。
そんなある日、友人で大学教授テディが人工呼吸器を改良できるのではないかと考えます。
ベビーカーからひらめいロビンのアイデアを得て、テディは人工呼吸器を付きの車椅子を手作りで完成させます。
これに乗り外出ができるようになったロビンは、さらに車椅子が乗せられ自動車の改造を依頼します。
そして、1971年に息子ジョナサンが外国に行ってみたいと言い出すと…。
映画『ブレス しあわせの呼吸』の感想と評価
心に温め続けてきた企画は両親を描くこと
1998年公開の『エリザベス』や、2001年の作品『ブリジット・ジョーンズの日記』など、笑いと感動で見せる作品を世に贈り続けてきた、プロデューサーのジョナサン・カヴェンディッシュ。
彼には長らく温めていた企画がありました。それは自らの両親を描く物語『ブレス しあわせの呼吸』でした。
ジョナサンの父親ロビンは、28歳でポリオを患ってしまうと、首から下が麻痺して人工呼吸器がなければ2分と生きられないほどの境遇でした。
しかし、ジョナサンの思い出のなかに今も生きる両親は、いつも笑顔とユーモア絶やすことがなかったそうです。
常にロビンに傍にいた妻ダイアナは尽きることがない無償の愛を注ぎ込み、また、夫婦を支え続けてきたダイアナの双子の兄や、友人たちとの絆をこの作品では見事に描いています。
もちろん、自らの両親の物語なだけに、ジョナサンの姿も生まれた時から幼少期、そして青年になるまで登場します。
映画制作することで両親の人生について学びほぐしたジョナサンは、ノスタルジックな思い出話しや、単なる伝記映画とは一線を画した作品に仕上げています。
本作をそこまで高めた要因には、下半身麻痺のロビン役を務めた俳優アンドリュー・ガーフィールドと、献身的に支えた妻ダイアナを演じたクレア・フォイという、2人の演技力の輝きが成せるものでもあります。
脚本を読んで泣いた主演アンドリュー・ガーフィールド
アンドリュー・ガーフィールドは、初めて脚本を読んだ時に号泣し、ロビン・カヴェンディッシュに惚れ込んだそうです。
「この物語に心底感動したんだ。ロビンとダイアナの足跡をたどる、人生のロードマップのように感じたんだ。そして心を大きく動かされた」
アンドリューはこのように語り、ロビン役を引き受けたそうです。
また、妻ダイアナを演じたクレア・フォイは、80歳代となった本人ダイアナ・カヴェンディッシュの虜になったそうです。
「ダイアナと話せるなんて、とても幸運だったわ。彼女にはお孫さんが3人いて、とても充実した人生を送っている。彼女はロビンに対する愛のゆえに、並外れたことをやり遂げた、とても強い女性なの」
このようにクレアは語り、ダイアナ役を演じたことで、演技をする姿勢に変化を感じます。
それまでは女優の仕事は仕事と割り切った考え方をしていたようですが、そのことを改めたそうです。
本作の映画制作を通して、ロビンやダイアナの生き方がクレアに大きな影響を及ぼし、「人生は短いんだ」と教えられたとも語っています。
アンドリューの演技力とアンサンブル
この作品で監督を果たしたのは、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(2001〜03)のゴラム役や、「猿の惑星」シリーズ(2011〜17)のシーザー役を演じた俳優アンディ・サーキスです。
彼はアンドリュー・ガーフィールドの演技に対して、カメレオン俳優であり、努力家だと述べています。
アンドリューがロビン役に成り切るための資料や映像集めに余念がなく、また人工呼吸器をつけるに至るまでも、よくよく研究していたからです。
俳優出身の監督であるアンディが言うのですから、同じ俳優のアンドリューが、いかにロビンという人物に迫る演技法を理解していたかは、想像に容易いでしょう。
実際にスクリーンでのアンドリューの演技は見事なものでした。
かつて、アンドリューは、2010年公開のデヴィッド・フィンチャー監督の作品『ソーシャル・ネットワーク』で。エドゥアルド・サベリン役を務めました。
アンドリューは当初主人公マーク・ザッカーバーグ役のオーディションを受けていました。
しかし実在の人物であるマーク外見の違いから、デヴィッド監督からの薦めでエドゥアルド・サベリン役を演じることになります。
その際にもアンドリューの並外れた演技力をデヴィッド監督が見抜いていたからです。
その後、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ(2012〜14)のピーター役や、『ハクソー・リッジ』『沈黙 -サイレンス-』と、いかに演技力が高い俳優なのかは、スクリーンで発揮され続けています。
本作の中でも、冒頭のロビンが健康であった時、そして、人工呼吸器を付けてからのロビンと、アンドリューが人物に成り切ったパフォーマンスとポテンシャルポテンシャルには唸らされます。
特に人工呼吸器を付けて会話をする仕草や、笑顔の見事なこと。要必見です!
実はアンドリューのこの演技は、周囲にいたキャストである共演者たちとの掛け合いの巧みさだけではありません。
同調を見せたのは、本作タイトルが示した“ブレス”というだけあり、人工呼吸器あっての演技ではないかと信じ込ませる説得力のシンクロを見せています。
それだけに、ロビンが登場する場面では常に人工呼吸器の音が聞こえます。
この人工呼吸器の音にも、映画を見ながら耳をそばだててください。
医者が余命宣告した以上に長く生き抜いた実在のロビンの生命力。そして、アンドリューが役柄に成り切ったモチベーション。
さらには人工呼吸器の機械音という乾いた息づかいが、何とも不可思議な奇跡のアンサンブルを見せてくれたように感じられました。
まとめ
本作は『ブレス しあわせの呼吸』は、映画プロデューサーとして『ブリジット・ジョーンズの日記』などを手がけたのジョナサン・カヴェンディッシュの両親の実話を、自らが製作に乗り出し映画化した作品。
運命の恋に落ち、祝福されて結婚したロビンとダイアナだったが、1959年に出張先のナイロビでポリオに感染したロビンの首から下が動かない麻痺状態になってからの姿と、ロビンとダイアナの“愛の冒険”を描いた作品です。
ご紹介したほかにも、主人公ロビンの行動力を代弁するかのごとく、見事なロケーション撮影を行なった、撮影監督のロバート・リチャードソンのカメラワークも必見です!
さらには、今までに観てきた実在の人物を映画化した作品と一線引くのは、少しだけ紹介されたプライベートフィルム8ミリ映像をご覧になれば、頷けることでしょう。
笑いに満ちた楽しい生活と豊かな人生をロビンとダイアナは、きっとあなたに示してくれるはずです。
まさに“実在した愛の冒険”映画!!ぜひ、お見逃しなく!