今突然、「好きだ」と伝えたらキミは何て言うだろう。
映画『僕の好きな女の子』は、又吉直樹が2017年「別冊カドカワ 総力特集『又吉直樹』」に書き下ろした同名恋愛小説を玉田真也が脚本・監督し、映画化したものです。
2人で会えば些細なことで笑い合って、小突きあったりするのに煮え切らない関係のままで。友人たちにも理解されることはないこの関係が壊れるくらいなら今のままで良い、永遠にキミが好きにならないこともどこかで分かっている純粋な男の子目線の恋愛が描かれています。
片思いや苦しい恋を経験したことがある誰もが、思わず共感してしまうような優しさと切なさが溢れる恋愛映画。2020年8月14日(金)からロードショーされています。
映画『僕の好きな女の子』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【原作】
又吉直樹『僕の好きな女の子』
【監督】
玉田真也
【キャスト】
渡辺大知、奈緒、徳永えり、仲野太賀、荻原みのり
【作品概要】
『僕の好きな女の子』は友達以上恋人未満の曖昧な関係でいる純粋な片思いを描いた恋愛映画。監督・脚本は『あの日々の話』(2018)の 玉田真也。
主人公加藤を演じるのはロックバンド「黒猫チェルシー」のボーカルでもある渡辺大知、ヒロイン美帆役にはドラマ『あなたの番です』(2019)などで知られる奈緒です。美帆の恋人役に仲野太賀、主人公加藤の友人に荻原みのり、美帆の友人に徳永えりなど話題の若手俳優らの演技にも期待できます。
映画『僕の好きな女の子』のあらすじとネタバレ
待ち合わせに向かう主人公・加藤(渡辺大知)に美帆(奈緒)からメッセージがきます。
他愛もないやり取り、思わず顔が綻ぶ加藤は早めに集合場所に着き、改札から出てくるであろう美帆を待ちます。そんな加藤の後ろからそろりそろりと近く美帆の姿が。来ていることに気付きつつも気付かぬふりをする加藤。
自由奔放な美帆と他愛もない話をし、ふざけあったり、突っ込んだりしながら井の頭公園の中を歩いていた2人。
ベンチに座り、公園で弾き語りしているアーティストについてあれこれ話していると、そのアーティストが小さい男の子を連れて2人に近づき、男の子が迷子なので親を見かけなかったかと聞いてきました。
ひょんなことから迷子の子と共に2人は親を探し、親の元まで送り届けます。
その子から「おまえら、付き合っているのか」と言われます。そう言われるのもおかしくないほど2人は仲良くみえます。しかし、美帆は加藤の彼女ではないのです。
夜に突然呼び出され公園で会う前に美帆が好きそうなジュースを買っておいたのに、いざ美帆を前にすると渡せない加藤。好きなのに先に進めないままでいます。
映画『僕の好きな女の子』の感想と評価
又吉直樹さんの優しい視線と玉田真也監督のリアルで繊細な演出で、日常の些細な瞬間、恋愛をしたことがある人なら誰しもが経験をしたような等身大の物語。
純粋すぎて「好き」なのに伝えることが出来ない、今の関係が壊れるくらいならと押しとどめてしまうそんなリアルさが多くの共感をよび、「好き」という感情の切なさ、愛おしさをありありと伝えてくれます。
また、加藤役の渡辺大知さん、美帆役の奈緒さんの絶妙な距離感と小気味の良い会話のテンポ感が見る人の心を揺さぶります。
しかし、この映画はそのようなリアルさだけでは終わりません。ラストでは、冒頭と同じ井の頭公園で、同じ弾き語りのアーティストを登場させ、加藤が奥さんと子供を連れて歩くラストシーンに意味を持たせています。
そのまま数年の月日が流れた現実と解釈するのか、幻想の世界もしくは加藤が脚本を手掛けたドラマのワンシーンなのか、人によって解釈が分かれるでしょう。
ですが、そのラストのシーンを持ってくることによってこの映画が単なる恋愛映画の枠にとどまらない映画となったといえます。
本作は男性目線の恋愛が描かれているため、しばしば女性目線のリアルな恋愛模様を描いた『愛がなんだ』(2019)と比較されます。
どちらも不毛な片思いを描いており、主人公の純粋さが類似しているといえます。
更に本作は吉本興業制作ということもあり、端役でお笑いコンビジャルジャルの後藤淳平さん、福徳秀介さんや、お笑いコンビサルゴリラの児玉智洋さんなど吉本興業の芸人さんが出演しています。
他にも映画『カメラを止めるな!』(2017)で話題となった濱津隆之などミニシアター系の映画でお馴染みの顔ぶれの出演も見所の一つです。
まとめ
本作は純粋で共感を呼ぶ男性の恋愛模様を描いたリアルな映画ではありますが、それだけにとどまらず人々の共感を呼び、更には様々な解釈ができる余地を残した新たな恋愛映画になっています。
少女漫画を原作としたきらきらとした青春恋愛映画が数多くあるなか、本作のような等身大の苦しい片思いを描いた映画も最近増え始めています。
その一つに昨年大きな反響を呼んだ『愛がなんだ』があります。そのような等身大の恋愛映画は“リアルさ”が大きな共感を呼び、その“リアルさ”故に誰かと語りたくなる、誰かと一緒に観たくなるのでしょう。
また、本作で何度も登場する井の頭公園は数多くの映画やドラマの舞台として使われており、この映画をみて聖地巡礼するのも良いかもしれません。
本作にも井の頭公園で弾き語りをしている登場人物がいますが、2017年に公開された映画『PARKS パークス』では橋本愛が井の頭公園で歌っています。