映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』は2020年7月17日(金)より新宿ピカデリー、YEBISU GARDENCINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。
映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』の原作は、フレドリック・バックマンによる小説 『ブリット=マリーはここにいた』。
スウェーデン出身の著者の心温まる作風が読者に愛され、世界中で累計1000万部突破、46カ国以上で出版されています。
監督は『ボルグ⁄マッケンロー 氷の男と炎の男』 のヒロインを演じた女優、ツヴァ・ノヴォトニー。主演は『愛の風景』で1992年のカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞し、 「スター・ウォーズ」エピソード1、2でアナキンの母、シミ・スカイウォーカー役で世界的にその名を知られるスウェーデンの国民的女優、ペルニラ・アウグストが務めています。
主婦として完璧に家事をこなしながら、いつの間にか笑うことがなくなった63歳の女性が、あることをきっかけに第二の人生を踏み出そうとする物語です。
CONTENTS
映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』の作品情報
【日本公開】
2020年(スウェーデン映画)
【原作】
フレドリック・バックマン
【共同脚本】
ツヴァ・ノヴォトニー アンダース・アウグスト
【監督】
ツヴァ・ノヴォトニー
【キャスト】
ペルニラ・アウグスト、アンデシュ・モッスリング、ペーター・ハーバー、マーリン・レヴァノン、
【作品概要】
小説 『ブリット=マリーはここにいた』を原作とし、監督は『ボルグ⁄マッケンロー 氷の男と炎の男』(2018) のヒロインを演じた女優、ツヴァ・ノヴォトニー。
主演は「スター・ウォーズ」エピソード1、2でアナキンの母、シミ・スカイウォーカー役で世界的にその名を知られるスウェーデンの国民的女優、ペルニラ・アウグストが務めています。
主婦として完璧に家事をこなしながら、いつの間にか笑うことがなくなった63歳の女性が、夫が長年浮気をしていたことを知り、第二の人生を踏み出そうと決心します。
映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』のあらすじ
ブリット=マリーはスウェーデンに住む専業主婦。結婚して40年、仕事で多忙な夫のために毎日きちんとした食事を作り、家の中をきれいに整えておくことが自分の役割だと信じて疑いませんでした。
ある日、夫が出張先で倒れたという知らせを受け病院へ駆けつけると、夫の長年の愛人が付き添っていました。
ブリット=マリーは衝撃を受け、これまでの生活を変えようと、スーツケースひとつで家を出る決意をします。
しかしほとんど働いた経験がない63歳にまともな職はなく、職業安定所でようやく見つけた仕事は、都会から離れた小さな村、ボリのユースセンターの管理人兼地域の子どもたちで結成された弱小サッカーチームのコーチだったのです。
映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』の感想と評価
ブリット=マリーの表情の変化に注目
ブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)は、毎朝6時に起きて家事を完璧にこなす専業主婦です。
1日にやらなければならないことをきちんと愛用のメモに書き留めて、完了したら線を引く。そんな彼女は料理、洗濯、掃除も決して手を抜きません。
整理整頓も完璧で「もとにあったところに置けば間違いない」と、何がどこにあるのか、きちんと把握しています。
そんなブリット=マリーは、時折自分自身の価値観を夫に押し付けます。
食事の時間は夕方6時と決めており、少しでも夫のケント(ペーター・ハーバー)が時間に遅れると「料理が冷めてしまう」と嫌味を言います。
また、テーブルに並んだ美味しそうな料理を黙々と食べる夫に対して「美味しいなら、きちんと言ってほしい」と無表情で訴えます。
出張で忙しい夫を支えるため、部屋をきれいに掃除し、毎日美味しい料理を作ることが自分の役割だと信じて疑っていないブリット=マリーですが、彼女の表情からは幸せを感じることができません。なぜなら、笑顔がないからです。
ある日、出張先で夫が倒れたと連絡を受け、病院へ駆けつけます。そこで目にしたのは夫に寄り添う長年の愛人。
とてもショックなはずなのに、ブリット=マリーの表情は変わりません。激高するわけでもなく泣き叫ぶわけでもない、相変わらず無表情なのです。
うまい言い訳が見つからない夫に「何を言っていいのか分からないなら黙っていて」と言い放ちますが、一人になった時、沸々と怒りがこみ上げ家を出る決意をします。
勢いで家を出たまではよかったのですが、生きるためには働かなくてはいけません。
40年間専業主婦だったブリット=マリーが、やっとの思いで紹介してもらった仕事は、都会から離れた小さな村、ボリにあるユースセンターの管理人兼、地域の子どもたちの弱小サッカーチームのコーチでした。
バスに乗り、ボリに到着してユースセンターへ行ってみると、そこは全く掃除がされていなくて荒れ放題。ブリット=マリーは、持ち前の家事の腕を発揮して、きれいに片づけていきます。
きれいになったユースセンターを見た子どもたちは驚くのですが、いかにもサッカーを知らなそうなおばさんを目の前にして、彼女を受け入れるどころかバカにします。
新しい生活は前途多難に見えましたが、町の警察官・スヴェン(アンデシュ・モッスリング)が力になってくれ、下宿先を紹介してくれたり、ピザ屋のメモ、便利屋のサミが支えてくれます。
ブリット=マリーは、下宿先の主で、盲目の元サッカー選手・バンク(マーリン・レヴァノン)からサッカーの本を借り、勉強することを決意。家事の「やることリスト」に使っていたメモ帳は、サッカー練習用のメモに生まれ変わります。
これまでの平穏無事な生活が一変、トラブルの連続で、なおかつ子どもたちを相手に何が起きるか分からない毎日を送るブリット=マリーですが、明らかに彼女の表情が豊かになっていくのが分かります。
時に怒り、時に笑い、「あなたは魅力的だ」と言うスヴェンにときめくブリット=マリーは、とてもチャーミングな女性に変貌していました。
子どもと対等に接するブリット=マリー
ブリット=マリーの新しい生活は、スヴェンや一見ぶっきらぼうなバンク、ピザ屋のメモや便利屋のサミが力になってくれるものの、一筋縄ではいきません。
まずはサッカーを知らないブリット=マリーをバカにする子どもたちへの対応に苦労します。
子育て経験のないブリット=マリーは、子どもたちのストレートな言葉の数々にどう対応していいのか戸惑いますが、大人と同じように接していきます。
サッカーボールで窓ガラスを割ってしまった子どもたちに、「ガラス代を払えないなら、代わりに手伝いなさい」と言うところは、子どもたちに対して大人と同じように責任をきちんと取らせるという姿勢がうかがえます。
また、ブリット=マリー自身も子どもたちを子ども扱いせず、「夫に浮気をされたからボリに来た」という身の上話を明かしており、子どもたちから受けるダイレクトな質問にもきちんと答えようとします。
そんな彼女と子どもたちの間で、何度か諍いは起きるのですが、次第に子どもたちは心を開いていきます。ブリット=マリー自身も、子どもたちが真剣に取り組んでいるサッカーチームの再建に全力を尽くそうとします。
そこには、かつてパターン化された家事を無表情にこなす日々を過ごしていたブリット=マリーの姿はありませんでした。
ブリット=マリーが思い出した本来の姿
物語の中では、ブリット=マリーが幼い頃を回想する場面が出てきます。姉と一緒にはしゃぎ、フランス・パリに憧れる姿は普通の少女です。
明るく楽しい生活を送っていた彼女に、ある日突然悲しい出来事が起こり、そのことが心に深い傷を残します。
時が経てば傷は癒えるかと思いきや、そうはならず、ブリット=マリーは結婚することで悲しい出来事から逃げようとしました。しかし結婚生活も淡々としたもので、彼女の心の隙間を埋めることはできませんでした。
彼女が家を出て、ボリの子どもたちと怒涛の日々を送ることで、幼い頃に姉と一緒に語っていた夢を思い出すようになります。
確かにブリット=マリーは人とのコミュニケーションが上手いほうではありません。
しかしトラブルが起きるたびに「1日ずつよ、1日ずつ」と口癖のように唱え、サッカーチームの再建という目標に対して真摯に向き合う姿、そしてサッカーチームを解散させようとする上層部の権力へ立ち向かう勇気を見ていると、本来は真面目で心優しく、勇気のある女性のような気がします。
安定した生活から思い切って外へ飛び出したことから、ブリット=マリーは本来の姿を取り戻していくのです。
まとめ
物語ではブリット=マリーの恋模様も描かれています。スヴェンといい雰囲気になりますが、夫のケントが「帰ってきてほしい」と迎えに来ることで、彼女の心は揺れます。
家に戻って安定した生活を送るのか、それとも本来の自分を取り戻して不安定ではあるものの、刺激的な生活を送るのか。
ブリット=マリーは選択を迫られますが、彼女は実に晴れやかな表情で、自分が歩むべき道を選びます。
物語の最後、彼女のこれからの人生が、笑顔に満ち溢れた日々になることを心から願いました。
映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』は、2020年7月17日(金)より新宿ピカデリー、YEBISU GARDENCINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開。