写真家で映画監督の向井宗敏が四季で描く4つの物語
みずみずしい初めての恋愛、将来の悩み、仕事での失敗、大切な人との別れ。きっと誰もが経験したことがあるであろう人生の中の一幕。
そんな瞬間を温かな視点で描いた映画『夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風』。監督は「人狼ゲーム」シリーズの向井宗敏です。
夏、秋、冬、春をテーマにした4つのストーリーがオムニバス形式で繰り広げられ、福岡県の芦屋町で撮影された風景の中で繰り広げられる力強い物語。
それぞれの短編の語りに合わせたミュージシャンたちの主題歌が彩りが、鑑賞後には、明日への一歩を踏み出す力が湧いてくることでしょう。
今回は写真家で映画監督の向井宗敏の映画『夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風』を紹介します。
CONTENTS
映画『夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
向井宗敏
【キャスト】
「桜咲く頃に君と」
市原隼人、平田薫、池田旭広、大谷史土、松本一沙、一木花漣、
《主題歌》ハジ→「春夏秋冬。」
「ナツヨゾラ」
齊藤なぎさ(=LOVE)、宮世琉弥、萩原護、荒井敦史、岩佐真悠子、
《主題歌》みゆな「くちなしの言葉」
時々もみじ色
鈴木伸之、松田るか、安井順平、麻木玲那、友秋、中川裕太、徳田雄太、モロ師岡
《主題歌》BENI「夢色日和」
「冬のふわふわ」
飯豊まりえ、袴田吉彦、こくぼつよし、原日出子、
《主題歌》moumoon「One Time」(avex trax)
【作品概要】
「人狼ゲーム」シリーズの向井宗敏監督による、4人の男女のある一瞬を描いた4つのオムニバス。それぞれの物語に合わせた4つの主題歌と福岡県芦屋町の美しい風景が物語を美しく彩ります。
主題歌を歌うのはハジ→、みゆな、BENI、moumoon。さらに福岡芦屋町に住む地元の人たちによる協力からでできています。
映画『夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風』のあらすじとネタバレ
「ナツヨゾラ」
季節は夏。田中ゆみは芦屋中学校に通う中学生。ゆみは幼なじみの小杉亘に密かに思いを寄せていました。
放課後には、亘の実家のお好み焼き屋に通う毎日。なかなか思いを伝えることができずにいます。そんな中、亘の引っ越しが急に決まってしまいます。
ゆみに残された時間は残りわずか。思いを伝えられずにいるままでした。学校の廊下ですれ違っても、うつむくばかり。
するとある噂が流れてきます。「4日後に願いが叶う花火が打ち上げられる」というものでした。
それは、亘が引っ越す前日でした。噂を知ったゆみは、ある決心をします。果たして、ゆみは亘に思いを告げることができるのでしょうか。
そして、花火に何を願うのでしょうか…。
「時々もみじ色」
季節は秋。大和は卒業を控えた高校3年生。彼はボクシングに打ち込んでいました。
卒業後の進路に迷う大和は、コーチの安田から大学への推薦入学の誘いを受けます。なんと、安田がボクシングでの推薦入学の枠を用意してくれていたのです。
大和は推薦を受けることを決めます。そして、推薦先の大学のボクシング部顧問との面接日を迎えました。
しかし、そこに現れた顧問は過去に因縁がある男でした。その男は、安田の娘の友人にストーカー行為で嫌がらせをしていました。
その現場に居合わせ、嫌がらせを止めたことがあったのです。しかも、今でもストーカー行為が続いていることを知ります。
推薦入学の枠を用意してくれた安田への思いと、顧問への憤りの中で彼は迷います。果たして、大和は大学の推薦を受けるのでしょうか…。
「冬のふわふわ」
季節は冬。綾子は東京で工房をもつ革職人。彼女の父親も同じ革職人で、この仕事を始めたのは亡くなった父親の影響でした。
そんな綾子は仕事に悩んでいました。コンペにも落選し、お客さんからの評判もイマイチ。
受けていたオーダーメイドの財布づくりの依頼も上手くいっておらず、挙げ句の果てに、そのオーダーも取り下げになってしまいそうに。
綾子は、自身の作品には何が足りないのか日々悩んでいました。そんな中、彼女は父親の三回忌で地元に帰省をします。
そこで、叔父に仕事の悩みを相談するのでした。すると、叔父から財布を直して欲しいという依頼を受けます。
その財布とは、綾子の父親が作ったものでした。叔父の財布を直すなかで、綾子は自分に足りなかったことに気づきます。
綾子は仕事への自信を取り戻すことができるのでしょうか…。
「桜咲く頃に君と」
季節は春の少し前、まだ冬の寒さが残る頃。小学校教師の尚也の妻の真奈は病気で、余命があと僅かでした。
尚也は真奈のために教師の仕事を辞め、介護に専念。海沿いの家で2人は最後の時を過ごします。
そんな2人の元に、尚也が受け持っていたクラスの生徒たちが贈り物を持ってきます。手作りの桜の木、ビー玉で作った花火。それを見た真奈は花火を見るまでは死ねないと自分を鼓舞します。
しかし、皆の思いに反して病状は悪化していきます。そんな中、真奈が「桜を見たい」と言いました。
尚也は、病床から真奈を連れ出します。季節はまだ冬の寒さが残る桜が咲く少し前。そんな2人が見たものとは一体なんだったのでしょうか…。
映画『夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風』の感想と評価
明日からの一歩への優しい後押し
4つのオムニバスの物語が詰まった映画『夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風」は、明日への一歩を優しく後押ししてくれるような作品でした。
4人の主人公が困難を乗り越えていく姿からは、きっと勇気をもらうことでしょう。彼らの抱える悩みは、きっと誰しも心当たりがあるものだからです。
その等身大の出来事だからこそ、彼らの姿に自分を重ね合わせて勇気をもらうことが出来るのでしょう。
芦屋町の美しい情景の数々
本作には、福岡県遠賀郡芦屋町で映画を制作する企画「芦屋町で映画を作ろう」から誕生しました。
4つの作品が芦屋町でロケを敢行。芦屋町の魅力が存分に詰まっています。しかも春夏秋冬で町の彩が別の顔を覗かせてくれていました。
豊かな自然に囲まれた芦屋町の情景も単なる背景ではなく、主人公たちの背中を押しくれる名脇役を務めています。
それは、「風のたより」「女子カメラ」などで知られる写真家であり、本作の映画監督でもある向井宗敏監督が、しっかりと四季をテーマに4つの物語を構成しているからでしょう。
光の粒が反射する夏の海。美しい秋の夕日。透き通るような冬の海。満開の桜が咲きほこる春の空。
きっと、それらの美しい情景に観客も癒されるに違いありません。
まとめ
「人狼ゲーム」シリーズの向井宗敏監督による「夏の夜空と秋の夕日と冬の朝と春の風」を紹介しました。
描かれたのは、福岡県の芦屋町を舞台にした4つのオムニバスです。それぞれの物語には、誰もが体験したことがあるような瞬間が描かれています。
主人公たちが悩みを乗り越えていく姿からは、きっと勇気をもらえることでしょう。また、そこで描かれる芦屋町の情景はどれも美しさに満ちていました。
登場人物たちに寄り添うような風景は、あなたの心をさらに癒してくれることでしょう。