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Entry 2017/03/20
Update

映画『3月のライオン前編・後編』感想とネタバレ!ラスト結末も

  • Writer :
  • 馬渕一平

国民的人気を誇る羽海野チカさんの人気コミックの連載10週年を迎える年に、運命の実写映画化!!!

魂と魂がぶつかり合う音が聞こえてきそうな感動の物語『3月のライオン前編・後編』をご紹介します。

映画『3月のライオン前編・後編』の作品情報

【公開】
2017年(日本)

【監督】
大友啓史

【キャスト】
神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、前田吟、高橋一生、伊藤英明、豊川悦司、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、板谷由夏、新津ちせ

【作品概要】
羽海野チカさんの将棋をテーマにした同名マンガを基に、大友啓史監督の手で実写化された青春と感動の物語。

主演に神木隆之介、共演に有村架純、倉科カナ、染谷将太、高橋一生、伊藤英明、佐々木蔵之介、豊川悦司など豪華俳優陣が集結した話題作。

前編・後編の2部構成となっており、前編の公開は2017年3月18日(土)から、後編は2017年4月22日(土)からとなっている。

映画『3月のライオン前編・後編』のキャスト一覧

桐山 零 / 神木隆之介


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

1999年、TBSドラマ『グッドニュース』で子役としてデビューし、一世を風靡した神木隆之介さん。

その後も着実にキャリアを積み上げ、映画『お父さんのバックドロップ』(2004)で宇梶剛士さんの息子役を好演。

翌年の三池崇史監督作『妖怪大戦争』(2005)では、日本アカデミー賞・新人俳優賞を見事受賞し、可愛らしさだけでなくその演技力の高さも見せつけることに。

2006年には『探偵学園Q』でドラマ初主演を務め、映画では『桐島、部活やめるってよ』(2012)、『バクマン。』(2015)、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016)など、数々の話題作に出演し注目を集めました。

そんな神木さんが『3月のライオン』で演じるのは、主人公・桐山零。幼い頃に両親を亡くし、プロ棋士の幸田に内弟子として引き取られたという経緯がある役柄のようですね。

何やら幸田家への葛藤(及び確執)を抱えているようで、その辺りの微妙な感情の揺れ動きと、棋士としての立ち振る舞いを神木さんがどう演じるのかが注目ポイントですね!

幸田 香子 / 有村架純


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

テレビ朝日ドラマ『ハガネの女』(2010)でドラマ初出演を果たした有村架純さんが、大きな転機を迎えたのはNHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013)でしょう。

この時演じた春子(青年期)によって一躍ブレイクを果たすことになった有村さんは、その後もテレビドラマに出演しつつ、映画界でも活躍を見せることに。

『ストロボ・エッジ』(2015)ではブルーリボン賞『ビリギャル』(2015)では第39回日本アカデミー賞優秀主演女優賞及び新人俳優賞を獲得するなど、その演技力の高さが評価され、アイドル的存在というよりも実力派の若手女優としてその地位を確かなものとしました。

2017年にはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』の主演に決定するなど、テレビ・映画・CMで観ない日はないというくらい引っ張りだこの存在。

今回彼女が演じるのは、幸田家の長女・香子。どちらかというと清楚なイメージが強い有村さんが、プライドが高く気性が激しいという香子をどう演じるのかに注目が集まっていますね。

棋士の夢を零に打ち破られたことで、愛憎半ばといった感情を抱いているという香子の姿に釘付けになることは間違いないでしょう!

川本 あかり / 倉科カナ


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

元々は2006年に『ミスマガジン2006』でグランプリに選ばれて以降、マガジンシリーズを中心にグラビア活動を展開していた倉科カナさんでしたが、2008年にNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』で主演を務めたことで一気にブレイクを果たします。

その後は杏さん主演のフジテレビドラマ『名前をなくした女神』(2011)や、映画『夢売るふたり』(2012)、『みなさん、さようなら』(2013)テレビ朝日ドラマ『刑事7人』シリーズなどで活躍を見せ、幅広い役柄をこなす実力派女優としての地位を確立しました。

現在は、非常に話題を呼んでいるテレビ朝日ドラマ『奪い愛、冬』(2017)で主演を務めており、今乗りに乗っているといったところでしょう。

そんな倉科さんが『3月のライオン』で演じているのは、川本家の3姉妹の長女・あかり。

器量よしで優しいあかりは、具合が悪くなって道に倒れていた見ず知らずの零を助けることに。

その後川本家と零との交流が始まることになるのですが、倉科さんの温かく優しい表情には、きっと零のみならず私たち観客も癒されることになるのは間違いありません。

二海堂 晴信 / 染谷将太


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

7歳から子役として芸能活動をスタートさせ、2009年には映画『パンドラの匣』で長編映画初主演を飾り、10代のころからその才能は開花していたという染谷将太さん。

彼の名を一躍世に知らしめたのは、何といっても園子温監督の映画『ヒミズ』(2012)ですよね。

なんと第68回ヴェネツィア国際映画祭で、二階堂ふみさんと共にマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を日本人で初めて受賞するという快挙を成し遂げたのです。

さらに三池崇史監督の『悪の教典』(2012)で日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得するなど、“天才”俳優としてその名を欲しいままにしました。

その後も『清須会議』(2013)や『永遠の0』(2013)、『寄生獣』(2014)などクセの強い役柄でもサラリとこなしてしまう天才ぶりを発揮。

今回彼が演じるのは、零のライバルであり親友でもある棋士の二海堂晴信。人一倍明るく、将棋への情熱を持つという二海堂はキャラクター設定からいって、伝説の棋士である故・村山聖さんをモチーフにしているのかと推測されますね。

特殊メイクと体重増によって別人にしか見えなくなった染谷さんの天才的演技に注目しましょう!

川本 ひなた / 清原果耶


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

2015年に三井不動産とアステラス製薬の2社のCMに出て話題となった美少女・清原果耶さん。

元々はアミューズが開催した新人発掘イベント「アミューズオーディションフェス2014」でグランプリを獲得したことが芸能界デビューのきっかけのようですね。

CMで注目を浴びた後、2015年の4月号からファッション雑誌『nicola』の 専属モデルを務めるなど、モデルとして一躍人気者に。

女優としては、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015)でテレビドラマ初出演を果たし、その後もNHKドラマ『大河ファンタジー 精霊の守り人』(2016)や、映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)などに次々と出演し、存在感を示してきました。

そんな清原さんは『3月のライオン』で、川本家3姉妹の次女・ひなたを演じています。

大好きだった母を亡くしたことでいまだに心に傷を負っているものの、周囲にはそういう素振りを見せず、健気に振るまっているという役柄のひなたを、清原さんが初々しくそして、すがすがしく演じてくれるはずです。

島田 開 / 佐々木蔵之介


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

佐々木蔵之介さんの名が注目されるようになったのは、NHK連続テレビ小説『オードリー』(2000)。

そこから数々の話題作で良い味を出す名脇役として活躍します。しかし、2006年の映画『間宮兄弟』を機に主演としても存在感を示すようになり、2008年には『ギラギラ』で連続ドラマでも初主演を飾ることになります(ゴールデン帯において)。

映画界でも堤幸彦監督の『本格科学冒険映画 20世紀少年』の3部作でフクベエ役で強烈なインパクトを残し、2014年の『超高速!参勤交代』では見事第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、演技派俳優としての地位を確立しました。

2017年には『3月のライオン』以降にも、『美しい星』(2017年5月公開予定)、『花戦さ』(2017年6月公開予定)と公開予定作品が続々と控えているという状態。

そんな引く手あまたの佐々木蔵之介さんが『3月のライオン』で演じるのは、努力と鍛錬を怠らないA級八段のプロ棋士・島田開。

しかし、タイトルがなかなか取れず、プレッシャーから胃痛を起こしてしまうという精神的な脆さも同時に抱えているようで、まさに佐々木蔵之介さんのためにあるような役柄ですよね。

一体、どう演じて見せてくれるのか…非常に楽しみです!

宗谷 冬司 / 加瀬亮


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

2007年に周防正行監督の映画『それでもボクはやってない』で主演を務め、ブルーリボン賞やキネマ旬報などの映画賞を多数受賞したことで有名な加瀬亮さん。

その演技力の高さは日本だけにとどまることなく世界でも賞賛浴びています。クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』(2006)や、イラン人監督アッバス・キアロスタミ作の『ライク・サムワン・イン・ラブ』(2012)に出演するなど、活躍の場を広げました。

他にもガス・ヴァン・サント監督の『永遠の僕たち』(2011)やマーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』(2016)などの話題作に出演し続けていますね。

『3月のライオン』で加瀬さんが演じるのは、プロ棋士の谷川浩司さんと羽生善治さんを「足して2で割っていない」キャラクター設定だという天才棋士・宗谷冬司。

常に冷静でどんな時も表情を崩さないという宗谷ですが、なにやら秘密を抱えているようで…。

果たしてその秘密は一体何なのか?ということに期待しつつ、加瀬さんの凛とした佇まいに注目して見ていきましょう。

川本 相米二 / 前田吟


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

1964年に俳優としてのキャリアをスタートさせた前田吟さんの代表作と言えば、山田洋二監督の映画『男はつらいよ』(1969)でしょう。

寅さんの妹・さくらに惚れる印刷工・諏訪博役を勝ち取った前田さんは、ハマり役として人気を博し、なんと全シリーズ(48作)に出演を果たしたというのですから驚きますよね。

1973年には深作欣二監督の『仁義なき戦い 広島死闘篇』での演技も高評価を得て、演技派俳優としての地位を確かなものとしました。

テレビドラマでは何といっても『渡る世間は鬼ばかり』シリーズですよね。何せ20年以上も続いているシリーズですから、世間一般ではこのイメージが非常に強いのかもしれません。

そんな前田さんは、川本家3姉妹の祖父・相米二(そめじ)を演じています。地元で人気の和菓子屋「三日月堂」の店主であり、江戸っ子口調の職人で昔気質の人情家という、まさに前田さんのイメージそのものといった役柄ですので、きっと彼の存在感が現場に安心をもたらしたに違いありません。

林田 高志 / 高橋一生


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

1990年の映画『ほしをつぐもの』で映画初出演を果たした高橋一生さん。ジブリのアニメーション映画『耳をすませば』(1995)で、天沢聖司の声を演じたことが有名ですね。

2001年からは舞台の世界に足を踏み入れ、2012年の『4four』での演技において、第67回文化庁芸術祭賞演劇部門芸術祭新人賞受賞します。

その後も、テレビ朝日ドラマ『民王』(2015)やフジテレビドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016)、映画『シン・ゴジラ』(2016)などなど、数え切れないほどの作品に出演。

2017年はTBSドラマ『カルテット』が非常に話題を呼んでおり、今最も注目を集める俳優といえますね。

『3月のライオン』で高橋さんが演じているのは、零の高校の担任教師・林田。遅れて編入してきた零のことを気にかけ、何でも相談に乗ってくれるという兄貴肌だということで、高橋さんの優しく温かい声が非常にマッチしている気がしますね!

後藤 正宗 / 伊藤英明


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

1993年に第6回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」準グランプリを受賞したことで、芸能界デビューを果たした伊藤英明さん。

フジテレビドラマ『救命病棟24時』シリーズや『白い巨塔』(2003)でも素晴らしい演技を披露してくれましたが、やはり伊藤さんといえば『海猿 ウミザル』(2004)ですよね。

この『海猿』シリーズの大ヒットによって一躍スターへの階段を駆け上がった伊藤さんは、その後も様々な作品に出演し続け、2012年には三池崇史監督の『悪の教典』で悪役としての新境地を開拓するなど、俳優としての幅を広げていきました。

そんな伊藤さんが『3月のライオン』で演じるのは、九段A級のプロ棋士・後藤正宗。長期入院中の妻の見舞いに足しげく通いながら、香子とは何やら微妙な関係にあるようで、この2人の関係がどう転んでいくのかがポイントになりそうですね!

幸田 柾近 / 豊川悦司


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

圧倒的ともいえる存在感を放つ豊川悦司さんは、1992年のフジテレビドラマ『NIGHT HEAD』で主演を務めたことで、一躍“トヨエツ”ブームを引き起こします。

TBSドラマ『愛していると言ってくれ』(1995)で聴覚を失った画家を演じ、さらにその人気に火をつけることに。

2005年あたりからはより映画に比重を置くようになり、『犯人に告ぐ』(2007)や『本格科学冒険映画 20世紀少年』、最近では『娚の一生』(2015) 、『後妻業の女』(2016)など、途切れることなく話題作に出演し続けています。

『3月のライオン』で豊川さんが演じているのは、B級2組八段のプロ棋士・幸田柾近。零を引き取り、内弟子として育てることになった柾近は、温厚だが将棋には厳しいという性格の持ち主だそう。

しかしそのせいで、香子との関係にひびが入ることになり…。果たしてこの親子の関係が修復することはあるのでしょうか?注目していきましょう!

映画『3月のライオン前編・後編』の監督と原作者紹介

監督:大友啓史

映画『3月のライオン前編・後編』の監督を務めるのは大友啓史さんです。

元々はNHK局員(1990~2011)だったという大友監督。1997年からはロサンゼルスに2年間留学し、映像制作について学んでいたのだそう。

帰国後は、NHK連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズや(2001~04)、『ハゲタカ』(2007)、『白洲次郎』(2009)、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010)などの超話題作の演出を手掛けます。

映画監督としてのデビューは、ドラマも手掛けた『ハゲタカ』(2009)。その後NHKを退局し、大ヒットした『るろうに剣心』(2012)の監督を務めることに。

さらには連続公開された『るろうに剣心 京都大火編』(2014年)、『るろうに剣心 伝説の最期編』(2014年)も同年度ナンバーワンのヒット作となり、第18回ファンタジア国際映画祭の観客賞など、様々な賞を獲得しました。

その後も『秘密 THE TOP SECRET』(2016)や『ミュージアム』(2016)などを手掛け、映画監督としての地位を確かなものとしました。

本作『3月のライオン』は同名のマンガを原作とするものですが、『るろうに剣心』や『ミュージアム』ですでにマンガ原作の実写化は経験済。

“時代劇+アクション”といった感じの『るろうに剣心』と、“サスペンスホラー”の『ミュージアム』と全く毛色の違う作品を見事に映像化し、今回はまたさらに一味も二味も異なる“将棋+青春+感動”という世界観をどう表現するのか…大友監督の手腕に期待しましょう!

原作:羽海野チカ『3月のライオン』(白泉社刊・ヤングアニマル連載)

元々は株式会社サンリオに就職していたという経歴を持つ漫画家の羽海野チカさん。サンリオ時代には勤務外に同人誌活動をしていたようで、3年後には独立し、イラストレーターとして活動していたのだとか。

そんな羽海野先生と言えばもちろん代表作は『ハチミツとクローバー』でしょう。

そのきっかけは偶然だったそうで、少女向け月刊誌『CUTiE Comic』へのカット絵の仕事を依頼された際に、ネームを見せたことからデビューが決まったんだそうですね。

その後は『CUTiE Comic』が休刊してしまうというトラブルに見舞われるも、自ら出版社へ持ち込みをし、集英社の『YOUNG YOU』での再連載が決定したという逸話も。

この作品はみなさんご存知のように、2005年にはアニメ化、2006年には嵐の櫻井翔さん主演で実写映画化、2008年には生田斗真さん主演でテレビドラマ化と、とてつもない社会現象を巻き起こした歴史的傑作として世間に認知されました。

そして本作『3月のライオン』は、『ヤングアニマル』(白泉社)にて2007年第14号から現在でも連載中で、すでに2016年にはテレビアニメとして放送されており、今回実写映画化という『ハチミツとクローバー』と全く同じ流れを辿っているのだから驚きですね!

このことは、羽海野先生の描く世界観に非常に多くの人(観客のみならず製作陣も含め)が共感しているということを表しており、この流れでいくとテレビドラマ化されるのも時間の問題なのでは…とついつい思いたくもなってしまいますね!

映画『3月のライオン前編・後編』のあらすじ


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

【前編】

ある春の日の将棋会館。17歳のプロ棋士である桐山零は、義理の父親であり将棋の師匠である幸田柾近との対局に勝利。

父の友人だった幸田が、幼くして両親と妹を交通事故で亡くした零を内弟子として引き取ってくれたことから2人の関係は始まっていました。

幸田家を出て下町のアパートで一人暮らしをすることを選んだ零は、編入(1年遅れ)した高校では、極度の人見知りのため居場所がありません。

唯一話し相手となってくれたのは、担任で将棋好きな林田先生だけ。将棋界では天才ともてはやされている零でしたが、家族も友達もいないひとりっぼっちの日々を送っていました。

そんな零にある日、転機が訪れます。体調を崩し、道端で倒れていると、偶然通り掛かった川本あかりに助けられるのです。

あかりの自宅へと連れ帰り介抱までしてくれたことで、川本家3姉妹(長女あかり、次女ひなた、三女モモ)とあかりの祖父で和菓子屋を営む相米二との心温まる交流が始まります。

そんな日々が過ぎたある冬の日。零は義理の姉である幸田香子と再会することに。

零同様にプロ棋士を目指していた香子でしたが、零に勝てなくなった時点で父・柾近からプロの道を諦めさせられていたことから、零にとっては会いたくない存在です。

香子の方でも挫折の要因となった父との確執を抱えており、度々家を空けるようになっていました。

しばらく後、川本家で新年を祝うことととなった零は、皆で初詣に向かった先でプロ棋士の後藤と香子に出くわしてしまいます。

零はそこで、もし後藤に次のトーナメントで勝ったら、香子が家に戻るという約束を勢いで取り付けます。

そのトーナメント、獅子王戦は将棋界のトップを決める最高のタイトル(宗谷への挑戦権を得る)の一つでした。後藤と対戦するにしても、まずはA級八段の島田を倒さなくてはなりません。

さらに新人戦トーナメントを戦う友人でライバルでもある二海堂との対決も待ち受けており…

果たして零の闘いの行く末はいかに?!

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『3月のライオン前編』ネタバレ・結末の記載がございます。『3月のライオン前編』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

迎えた島田との準決勝。零は対局中にやりづらさを感じます。
 
それは、後藤に勝とうとするあまり対局相手である島田を見くびり、普段の冷静さを欠いていたからでした。

零のそんな想いすらも見透かしていた島田に敵うはずもなく、零は敗れます。

獅子王戦トーナメントの決勝は、後藤と島田の息の詰まる戦いの末、怯むことなく攻めた島田が勝利し、現役最強の棋士である宗谷への挑戦権を得ました。

自らの過信を反省した零は、島田が開く勉強会に参加することを志願し、二階堂と共に学び始めます。

その二階堂とは、26歳以下の棋士が出場する新人戦の決勝で対局することを約束していましたが、零が待つ決勝に進んだのは4年連続で新人王を獲得している山崎でした。

実は二階堂は難病を抱えており、山崎との準決勝も途中で意識を失い、病院に搬送されていました。

山崎と零の新人戦決勝、山崎の手堅い守りを切り崩そうと焦る零は攻めの一手に出ようとします。指そうとしたまさにその瞬間、二階堂に言われた言葉を思い出し、零は別の手堅い一手に指し直します。

その一手が功を奏し、長期戦の末に零は見事に新人王のタイトルを獲得しました。

義理の父である幸田にも祝福された零の次の仕事は、宗谷と島田の対局の解説でした。

劣勢に立たされ続ける島田が粘るも、誰もが宗谷の勝ちを確信していました。ついに勝負が決まったと思われた時、零だけには反撃の一手が見えていました。

そのことを伝えようと零が会場に駆け付けた時にはすでに島田が投了した後でした。

会場を後にする宗谷を追いかけた零は、その去りゆく姿をただ見つめることしか出来ませんでした。

【後編】

川本家で家族の一員のように食卓を囲む零。初めてこの家に来てから1年の月日が流れていました。

再び始まる獅子王戦トーナメントに臨む零でしたが、彼の周囲の棋士たちには様々な出来事が巻き起こっていました。

幸田はケガのために入院したことで不戦敗。

後藤は入院している妻の容態が悪く、二海堂はみなに隠していたが実は難病を抱えていました。

なかなかタイトルに手が届かない島田はプレッシャーに押しつぶされ、将棋の神の子と称される宗谷すらもある秘密を抱えているよう。

そんな負の流れは川本家にも押し寄せます。次女ひなたのクラスでいじめが始まったことや、大昔に蒸発した3姉妹の父親が突然現れ、何やらとんでもない要求を持ち掛けて来たのだとか。

果たして零は大切な人たちを守るため、一体どのような行動に出るのでしょうか?!

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『3月のライオン後編』ネタバレ・結末の記載がございます。『3月のライオン後編』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
現役高校生で新人王の称号を手にした期待の若手である零と名人・宗谷の記念対局が組まれました。
零は結果として敗れはしましたが、悪手を打ってから無我夢中で宗谷に挑んだ経験は大きなものとなりました。

その後、ひなたが学校でいじめれていることが発覚し、零はなんとかして彼女を助けたいとあれこれ画策します。
しかし、ひなた自身の強さが学校側を動かし、いじめは終わりを迎えました。
ひなたの強さに逆に救われた零は、川本家への恩をより強く持つようになります。

再び始まった獅子王戦で零は準決勝まで勝ち上がり、うまくいけば決勝で因縁の後藤との対戦が待ち受けています。
そんな中、再び川本家に大きな事件が起きます。

川本家から離れ、別の家庭を作っていた父・誠二郎が突然帰って来て、また一緒に暮らそうと言い出したのです。
その自分勝手さについ感情が抑えきれなくなった零は、川本家のみんながいる前で誠二郎を徹底的に非難し、人格を否定します。
言い過ぎてしまった零はその場から立ち去り、川本家に足を運ぶことをやめます。

獅子王戦準決勝の途中で、病気の妻が息を引き取った後藤は、激しく揺れる感情を押し殺し、零の待つ決勝へと駒を進めます。
零は川本家への想いを捨てるため、ひなたからもらった手作りの人形をゴミ箱に捨て、将棋に打ち込みます。
後藤もまた、香子と別れることで神経を将棋だけに注ぎ込みます。

父・誠二郎との問題は、三姉妹の中で答えが出ていました。
最後の一日を楽しく過ごした三姉妹は、誠二郎との別れを告げ、再び三人で暮らしていきます。

大切なものを失った者同士の獅子王戦決勝。
後藤の攻めの将棋が零を追い詰め、勝負は決まったかに見えました。
しかし、そこから悩み苦しんだ零は逆襲の一手を繰り出し、見事に逆転勝利を収めました。
零は会場からすぐに駆け出すと、川本家まで向かい、ひどいことを言ってしまったと謝ります。
零はまた再び川本家に迎え入れてもらうことができました。
一方、敗れた後藤も再び香子の愛情を受け入れました。

宗谷とのタイトル戦が控える零は、幸田と和服の仕立てに来ていました。
葬儀場で幸田が零に聞いた「将棋が好きか?」という質問に、今ははっきりと自信を持って零は「将棋が好きです」と答えられるようになっていました。

零は対局会場への階段を新調した和服姿で一歩一歩登っていきます。
宗谷の前に座り、ひなたからもらった人形を脇に置いて、対局に臨む零。
その姿はもう立派な一流の棋士でした。

映画『3月のライオン前編・後編』感想と評価


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

【前編】

零の抱える悲しい過去と孤独を表すかのように画面が暗く、服装はほとんど襟付き(しかも第一ボタンまで留めている)です。その対比となるかのように川本家は明るく、そしてご飯が美味しそう(特に現代風お節なんて最高!!)。

この二つの家を分断するのが零の家の窓から見える川であり、それを繋げているのが橋です。つまり、川本家での暮らしは零にとっての夢であると同時に、やはり日常ではないということを表しています。

こんな悲しい設定だけで主人公である零への想いが高まってくる訳ですが、それを繊細に演じる神木隆之介がまた素晴らしい。というかこの映画は役者陣すべてが素晴らしい!

美少年の神木隆之介に加え、ヒゲがチャーミングな高橋一生様(あえて様とつけさせてください)、イケメンラリーとも言うべき伊藤英明と佐々木蔵之介の対局シーン、おじいちゃん役の前田吟、加瀬亮の佇まい、染谷将太の声の出し方、有村架純の頑張りなどなど。

中でも個人的なMVPは倉科カナですね。なんとも形容のしがたい安心感があり、この映画の明るさの部分を一心に背負ってくれている感じがしました。

重厚なドラマだけではなく、こういったある一つの文化や競技を描く作品ならではの面白さもちゃんとあります。

個人的に面白かったのは緊迫した対局中におやつタイムが訪れること。島田と後藤はあそこで一応同じ釜の飯ならぬ同じ盤のおやつを囲んだので、他人の対局などに興味のなさそうな後藤がちゃんと宗谷と島田の対局を気に掛けているのもよかったです。

その他にも、一局でもらえる金額だったり、胃がまさにキリキリするような精神と体力の戦いであることなど。そして、まさにたった一つの手を読み違える(宗谷戦での島田)か読み違えない(山崎戦での零)かで勝敗が分かれてしまう怖さであり、面白さ。

大きなテーマとしては「家族」と「孤独」。一見幸せそうに見えるあの川本家ですら、その問題を抱えています。この相反するものに悩む零がこの後どのように成長を遂げていくのかは非常に興味深いところです。

息の詰まる対局、心の温まる川本家との交流。将棋を扱った作品としても、家族ドラマとしても充分に楽しめます。

うーん、正直文句の付けようがない。やや尺が長いかなとは思いますが、対局のあのヒリヒリ感を味わってると思えばそれもまたよし。

予告編ですでに激動の予感しかしない後編が早くも楽しみです。

【後編】


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

後編は、完全に神木くんの独壇場と言ってもいいくらい素晴らしかったです。間違いなく彼の代表作になるでしょう。
歩き方の速さだったり、食べる時の口を開ける大きさまでこだわったそうです。

後編から登場の伊勢谷友介は、日本人離れしたルックス以上に、やはりあの独特の声が本当に素晴らしいです(個人的に「龍馬伝」の高杉晋作役で心底惚れたので出てれば全部OKなんですが)。

物語として軸はあくまで零であって、前編と後編を通してきっちりと人間的成長が描かれます。最後は文字通り階段を上って、宗谷のところまでいくというシンプルでわかりやすい構成。これ以上ない締め方でした。

文句を書くならば、ダイジェスト感が否めないこと。前編に比べ、零と川本家にフォーカスを絞ったため他のキャラの扱いがどうしても軽いものに感じてしまい、宗谷の耳の件、後藤と香子、歩のこと等々、とりあえず触れましたよという気がしてしまいました。あと、二階堂の病気も結局なんだったんでしょうか。
これは原作をよく知らない私の問題というのも大いにありますし、じっくり描いていたらおそらく三部作にしなければならなかったのでしょう。

加えて、息抜き(笑いのシーン)が極端に少ないです。なかなか興行的に厳しいのはそこもあるのかなと思います。

否定的なことを書きましたが、私はこの映画の描く世界が好みだったので、とても感動しました。特にいじめの描き方。ここで問われるのは人間としての正しさ。いじめられていたクラスメイトを庇ったせいで、逆にひなたがターゲットにされてしまうわけですが。

「私は間違ってない。後悔なんか絶対にしない」
この言葉の強さに心底驚きました。凡百の作品ではこんなセリフは出てこないでしょう。

その後、おじいちゃんが「よくやった」とひなたを力強く誉めます(ここでの前田吟が本当に素晴らしい)。このシーンの尊さといったらありません。

「午後8時の訪問者」の記事でも書きましたが、人に優しくしても傷つけられてしまう厳しい世の中では、自分では正しいことだと思っていながらもやっぱり不安で、誰かに肯定してもらえるだけでどれほど救われるか。多くの人はひなたみたいに大それたことはできないかもしれませんが、それでもやはり正しく、人に優しくいたい。改めて強くそう思わせてくれる、本当に名シーンだと思います。

さらに、あかりが誉めてやれなかったと悔やむシーンで、本当に優しく寄り添う言葉を返してくれる零。そのやり取りで、そういうことができなくて後悔してきた人たちすらも全て救ってくれます。このいじめ問題の部分は、解決策も含めて本当に完璧だと思います。

零が最後に、将棋のおかげで色んな人と繋がれて、今の自分があるんだと気付くところもベタではありますが、ああいうのいいですよね。
将棋を心の底から好きになって真の意味でプロ棋士になる
みんな大好き「スラムダンク」の桜木花道の「好きです。今度は嘘じゃないっす」を思い出してしまいました。
何かに人生を賭す。本当に格好いい生き方です。

原作の描くこの繊細な世界観がおそらくもう魅力的なんだと思います。
本当によくできた2部作ですので、時間のある方はぜひ劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

まとめ

羽海野チカさんの大人気の原作を基に、マンガの実写化には定評がある大友啓史さんが監督を務めた大作映画『3月のライオン』。

神木隆之介さんや有村架純さんなど今を時めく人気俳優たちに加え、前田吟さんや豊川悦司さんなどの名優たちが脇を固めた最強の布陣といえますね!

大注目の前編の公開は2017年3月18日(土)より全国ロードショー!後編は2017年4月22日(土)から公開開始です。ぜひお見逃しなく!

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