Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ドキュメンタリー映画

Entry 2018/01/31
Update

映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』あらすじと感想【ヨコハマ・フットボール映画祭2018】

  • Writer :
  • 西川ちょり

来たる2月11日(日)、12日(休・月)、8回目となる「ヨコハマ・フットボール映画祭2018」が開催されます!

会場は、1917年に建造された国の重要文化財である横浜開港記念会館。歴史ある会場にちなんで、サッカーにまつわる様々な「歴史」をテーマにした4作品と、ワールドカップや、パラリンピック関連作品3作品の合計7作品に加え、クロージング作品として植田朝日監督の『ジョホールバル1997』の上映が決定!


© YFFF

会期中にはサッカーを様々な角度から楽しむイベントも多数開催されます。

今回は上映作品の中から、イタリアの名門クラブ、ユヴェントスFCの歴史を描いたドキュメンタリー映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』(2016)をご紹介します。

1.映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』の作品情報

【公開】
2018年(イタリア・アメリカ映画)

【原題】
Black and White Stripes: The Juventus Story

【監督】
マルコ&マウロ・ラ・ヴィッラ

【作品概要】
ビアンコネーロ(イタリア語で白と黒)カラーで知られるイタリア・トリノをホームタウンとするイタリアプロサッカークラブ「ユヴェントスFC」の歴史を、クラブを所有するアニェッリ家の貢献とともに描くドキュメンタリー映画。

2.映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』のあらすじ

イタリア、トリノをホームタウンとするサッカークラブ「ユヴェントスFC」は、1887年に創設され、世界中で三億人以上のファンがいる名門クラブです。

1923年以来、フィアット・グループのオーナーのアニェッリ家がチームを所有しています。一つのチームをこれだけ長く所有している一家はアニェッリ家のみ。イタリアのケネディ家と称されています。

1947年よりユヴェントスの名誉会長を勤めたジャンニ・アニェッリはテレビ局の取材を受けて、次のように語りました。

「サッカーが好きなふりをしてビジネスの話しをされるといやな気分になるんだ。純粋な楽しみとしてサッカーを語りたい」。

また、ジャンニ・アニェッリの孫で現在はイタリア・インディペンデント代表のラポ・エルカーンは次のように語っています。

「ユヴェントスは好かれているが、嫌われてもいるんだ。ヤンキースや、レイカーズのように。好きか、嫌いか、どちらしかないんだ」。

アニェッリ家が住むヴィッラール・ペローザは、トリノの西側にある高山に位置する小さな町で、シーズンが始まる前にチームは一家の屋敷を訪れ、トリノに戻るとユースチームと練習試合をするのが習わしになっています。

それは、シーズンの成功を祝うひと時だが、同時に来シーズンについて考える時間でもある、とジャンニ・アニェッリの孫(ラポ・エルカーンの兄)、ジョン・エルカーンは言います。

ユヴェントスが10回優勝を果たすまでにかかった時間は61年。ジャンニ・アニェッリの弟、ウンベルト・アニェッリがユニフォームに優勝回数を表す星を縫い付けることを思いつきます。

1981-82シーズン。この時、星を持っていたのはたったの3チーム。ACミラン、インテル・ミラノ、そしてユヴェントス。ユヴェントスの、このシーズンの目標は、通算20回目の優勝を果たし、初めて二つ目の星をユニフォームに縫い付けるチームになることです。

20回目の優勝まであと4試合となったころ、ジャンニはフランスのスター、ミシェル・ブラティニ選手と秘密の契約をし、早くも3つめの星のための準備を進めていました。

この契約はすぐにマスコミにすっぱ抜かれ、リアム・ブレイディ選手が来年チームを離れることが明らかになりました。プレイディにとっては衝撃劇なことでした。

ついにシーズン最終試合。両チーム無得点で終わるかにみえましたが、最後の最後にユヴェントスはPKのチャンスを得ます。名乗り出たのはプレイディでした。

多くの人が、彼がわざとはずしても仕方がないと思ったといいます。しかし、彼は正々堂々と勝負して、PKを決め、ユヴェントスを20回目の優勝に導きます。二つ目の星がユニフォームに記されました。

次のシーズンは、ミシェル・ブラティニの大活躍で、21回目の優勝を勝ち取ります。

しかし、暴力と悲劇も彼らを待ち受けていました。UFFAチャンピオンズカップ(1984-85)決勝、リバブール対ユヴェントス戦において、サポーター同士の衝突で39人が死亡。「ヘイゼルの悲劇」と呼ばれる事件がおきます。

「今日を振り返って考えるのは試合の結果ではなく(試合は1対0でユヴェントスの勝利)、スポーツマンシップを忘れずにプレーをした選手たちへの感謝と犠牲者たちの家族のことだ。ユヴェントスは彼らの味方だ」とジャンニは声明を出しました。

ユヴェントスは常勝チームとなり、敵なしの強さを示します。ユヴェントスが強すぎることがサッカー危機の原因だと揶揄されもしましたが、そんな折、破産したACミランをイタリア共和国元首相で資産家のシルヴィオ・ベルルスコーニが買い取り、金にものを言わせて、強力選手と次々契約。ユヴェントスの前に立ちはだかります。

こうしてACミランが台頭。ユヴェントスはトップから一気にどん底まで突き落とされてしまいます。

悪いことは続き、ジャンニの息子エドアルドが麻薬所持で逮捕。起訴は逃れたものの、この出来事は一家に暗い影を落とすのでした。

チームの立て直しを図るも、なかなか成果は出ません。フィアットの立て直しも必要で、もう諦めないといけないのでしょうか!? しかしジャンニは宣戦布告します。

ユヴェントスと、ミラノのチーム2つとの本当の競争は、誰が次に星を手に入れるかであると宣言するのです。ユヴェントスは次の星まであと8回。インテル・ミラノはあと7回。ACミランはあと9回。どのチームが勝つのか!?

1995年、23回目の優勝を果たします。しかし新たな強敵が! 頭の切れる若きイタリア人石油王マツシモ・モラッティが、インテルを買ったのです。

1996年7月、ジネディーヌ・ジダンが加入。このシーズンもユヴェントスは優勝し、回数は24回目となりました。

三つ巴の戦いは熾烈さを増していきます。1997年、アニェッリ家に新たな悲劇が起こります。2000年の秋にはジャンニは前立腺がんに蝕まれ、11月にはさらなる悲劇が一家を襲いました。

2003年、ジャンニが亡くなります。3つめの星を見ることはなりませんでした。多くのサポーターが別れを惜しみました。

2006年には、ルチアーノ・モッジGMとイタリアサッカー連盟幹部との会話が盗聴されるという事件が勃発。その内容は、試合結果の操作を示すショキングなもので。イタリアスポーツ史上最大のスキャンダルとなってしまいます。

ユヴェントスは反スポーツ的行為で有罪を言い渡され、想像していた以上の処罰を受けることになります。

セリエBに降格。2006-2007シーズンのチャンピオンリーグには参加できなくなり、ホーム戦が3試合公開されないことに。さらに、2005、2006年の優勝を取り消されてしまいます。

もう、ユヴェントスは二度と戻れないのではないかと噂が飛び交いますが…。

2.映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』の感想

ビアンコネーロ(イタリア語で白と黒)の愛称で知られるイタリア・トリノをホームタウンとするイタリアプロサッカークラブ「ユヴェントスFC」の長い歴史を、当時の映像やスポーツ紙、関係者のインタビューで構成したドキュメンタリー映画です。

「ヨコハマ・フットボール映画祭2018」で上映される7作品のうち、本サイトでは本作を含む3本を紹介していますが、その中で、最もドキュメンタリーらしいドキュメンタリーとなっています。

優勝を決めたゴールシーンや、逆に優勝を逃した悔しいシーンなど、貴重な映像が豊富に使われ、ユヴェントスで活躍した歴代の名選手も多数登場し、ファンにはたまらないものになっていますが、ユヴェントスの歴史とはつまりアニェッリ家の歴史でもあるというのが、このチームの、そしてこの映画の面白いところです。

1945年から長年会長を務めたジャンニ・アニェッリは実に精力的で、魅力的です。 

「アニェッリ家にとってユヴェントスは?」と聞かれ、彼は「代々引き継がれている情熱、宝物だ」と答えています。

本当にサッカーが好きだ!という熱い想いが画面からも伝わってきます

一方、金にものを言わせ、チームを強化していくACミランのシルヴィオ・ベルルスコーニは、ジャンニとは真逆の価値観を持っているかのように描かれます。なんだかまるで漫画のような敵役ですが、現実の話しだというのが面白く、インテルを加えた三つ巴の闘いは、ドラマチックでわくわくさせられます。

スキャンダルの処罰でセリエBに降格となった時、スター選手たちはどのような選択をしたのか!? 胸が熱くなるような場面もたっぷり! 構成も巧みで見応えあるドキュメンタリー映画となっています。

3.まとめ

インタビューも豊富に盛り込まれ、アニェッリ一家のほかにも、ジャンルイジ・ブッフォン、アンドレア・ピルロ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、アントニオ・コンテ、パベル・ネドベドら、名選手、名監督が登場します。

(ちなみにクレジットには、音楽アドバイザーとしてエンニオ・モリコーネの名前が記されています)

ユヴェントスの、そして、イタリアサッカーの魅力を存分に味わってください!

本作は、2月12日(休) 11:45~より上映されます。

また、「フットボール映画祭」は全国で開催されます。

2月4日に開催される「神戸フットボール映画祭」でも本作が上映されます。

詳細は「ヨコハマ・フットボール映画祭 2018」公式ホームページでご確認ください!

*ヨコハマ・フットボール映画祭 2018公式:HP:http://2018.yfff.org

関連記事

ドキュメンタリー映画

映画『オキナワ サントス』感想評価と内容あらすじ解説。ブラジルであった日系移民強制退去事件を取材しながら明らかと隠された史実

映画『オキナワ サントス』は2021年8月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国ロードショー! 1943年にブラジル・サントスで日系移民たちに何が起きたのか?大きな戦争の裏に隠れた真実 …

ドキュメンタリー映画

映画『フィールズ・グッド・マン』感想評価レビュー。マットフューリーの漫画が映すネット社会と創作の現在

映画『フィールズ・グッド・マン』は2021年3月12日(金)より全国順次ロードショー! 何の悪意もないユーモラスなキャラクターが、突然「諸悪」の象徴に? ある漫画のキャラクターに起きた奇妙な顛末の経緯 …

ドキュメンタリー映画

映画『私が殺したリー・モーガン』あらすじとプロフィール紹介

“ジャズ史上最悪の悲劇の愛”に迫ったドキュメンタリー映画が遂に公開! 『私が殺したリー・モーガン』は、12月16日(土)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショーです。 CONTENTS1. …

ドキュメンタリー映画

映画『ピース・ニッポン』あらすじ。日本の美しい景色を全国47都道府県から厳選した映像美

映画『ピース・ニッポン』は、7月14日(土)より 新宿バルト9ほかにて全国ロードショー。 製作した期間8年。日本の四季の絶景を圧倒的な美しさと迫力で映画化しました。 “一期一会&#8221 …

ドキュメンタリー映画

映画『虚空門 GATE』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。UFOドキュメンタリーが行き着いた驚きの展開とは⁈

数々のアダルトビデオ、アントニオ猪木を追ったドキュメンタリー『猪木道』の制作に関わってきた小路谷秀樹監督が次に手がけた作品は、なんと「UFO」でした。 「月面異星人遺体動画」に触発された小路谷監督が、 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学