来たる2月11日(日)、12日(休・月)、8回目となる「ヨコハマ・フットボール映画祭2018」が開催されます!
会場は、1917年に建造された国の重要文化財である横浜開港記念会館。歴史ある会場にちなんで、サッカーにまつわる様々な「歴史」をテーマにした4作品と、ワールドカップや、パラリンピック関連作品3作品の合計7作品に加え、クロージング作品として植田朝日監督の『ジョホールバル1997』の上映が決定!
会期中にはサッカーを様々な角度から楽しむイベントも多数開催されます。
今回は上映作品の中から、イタリアの名門クラブ、ユヴェントスFCの歴史を描いたドキュメンタリー映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』(2016)をご紹介します。
CONTENTS
1.映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』の作品情報
【公開】
2018年(イタリア・アメリカ映画)
【原題】
Black and White Stripes: The Juventus Story
【監督】
マルコ&マウロ・ラ・ヴィッラ
【作品概要】
ビアンコネーロ(イタリア語で白と黒)カラーで知られるイタリア・トリノをホームタウンとするイタリアプロサッカークラブ「ユヴェントスFC」の歴史を、クラブを所有するアニェッリ家の貢献とともに描くドキュメンタリー映画。
2.映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』のあらすじ
イタリア、トリノをホームタウンとするサッカークラブ「ユヴェントスFC」は、1887年に創設され、世界中で三億人以上のファンがいる名門クラブです。
1923年以来、フィアット・グループのオーナーのアニェッリ家がチームを所有しています。一つのチームをこれだけ長く所有している一家はアニェッリ家のみ。イタリアのケネディ家と称されています。
1947年よりユヴェントスの名誉会長を勤めたジャンニ・アニェッリはテレビ局の取材を受けて、次のように語りました。
「サッカーが好きなふりをしてビジネスの話しをされるといやな気分になるんだ。純粋な楽しみとしてサッカーを語りたい」。
また、ジャンニ・アニェッリの孫で現在はイタリア・インディペンデント代表のラポ・エルカーンは次のように語っています。
「ユヴェントスは好かれているが、嫌われてもいるんだ。ヤンキースや、レイカーズのように。好きか、嫌いか、どちらしかないんだ」。
アニェッリ家が住むヴィッラール・ペローザは、トリノの西側にある高山に位置する小さな町で、シーズンが始まる前にチームは一家の屋敷を訪れ、トリノに戻るとユースチームと練習試合をするのが習わしになっています。
それは、シーズンの成功を祝うひと時だが、同時に来シーズンについて考える時間でもある、とジャンニ・アニェッリの孫(ラポ・エルカーンの兄)、ジョン・エルカーンは言います。
ユヴェントスが10回優勝を果たすまでにかかった時間は61年。ジャンニ・アニェッリの弟、ウンベルト・アニェッリがユニフォームに優勝回数を表す星を縫い付けることを思いつきます。
1981-82シーズン。この時、星を持っていたのはたったの3チーム。ACミラン、インテル・ミラノ、そしてユヴェントス。ユヴェントスの、このシーズンの目標は、通算20回目の優勝を果たし、初めて二つ目の星をユニフォームに縫い付けるチームになることです。
20回目の優勝まであと4試合となったころ、ジャンニはフランスのスター、ミシェル・ブラティニ選手と秘密の契約をし、早くも3つめの星のための準備を進めていました。
この契約はすぐにマスコミにすっぱ抜かれ、リアム・ブレイディ選手が来年チームを離れることが明らかになりました。プレイディにとっては衝撃劇なことでした。
ついにシーズン最終試合。両チーム無得点で終わるかにみえましたが、最後の最後にユヴェントスはPKのチャンスを得ます。名乗り出たのはプレイディでした。
多くの人が、彼がわざとはずしても仕方がないと思ったといいます。しかし、彼は正々堂々と勝負して、PKを決め、ユヴェントスを20回目の優勝に導きます。二つ目の星がユニフォームに記されました。
次のシーズンは、ミシェル・ブラティニの大活躍で、21回目の優勝を勝ち取ります。
しかし、暴力と悲劇も彼らを待ち受けていました。UFFAチャンピオンズカップ(1984-85)決勝、リバブール対ユヴェントス戦において、サポーター同士の衝突で39人が死亡。「ヘイゼルの悲劇」と呼ばれる事件がおきます。
「今日を振り返って考えるのは試合の結果ではなく(試合は1対0でユヴェントスの勝利)、スポーツマンシップを忘れずにプレーをした選手たちへの感謝と犠牲者たちの家族のことだ。ユヴェントスは彼らの味方だ」とジャンニは声明を出しました。
ユヴェントスは常勝チームとなり、敵なしの強さを示します。ユヴェントスが強すぎることがサッカー危機の原因だと揶揄されもしましたが、そんな折、破産したACミランをイタリア共和国元首相で資産家のシルヴィオ・ベルルスコーニが買い取り、金にものを言わせて、強力選手と次々契約。ユヴェントスの前に立ちはだかります。
こうしてACミランが台頭。ユヴェントスはトップから一気にどん底まで突き落とされてしまいます。
悪いことは続き、ジャンニの息子エドアルドが麻薬所持で逮捕。起訴は逃れたものの、この出来事は一家に暗い影を落とすのでした。
チームの立て直しを図るも、なかなか成果は出ません。フィアットの立て直しも必要で、もう諦めないといけないのでしょうか!? しかしジャンニは宣戦布告します。
ユヴェントスと、ミラノのチーム2つとの本当の競争は、誰が次に星を手に入れるかであると宣言するのです。ユヴェントスは次の星まであと8回。インテル・ミラノはあと7回。ACミランはあと9回。どのチームが勝つのか!?
1995年、23回目の優勝を果たします。しかし新たな強敵が! 頭の切れる若きイタリア人石油王マツシモ・モラッティが、インテルを買ったのです。
1996年7月、ジネディーヌ・ジダンが加入。このシーズンもユヴェントスは優勝し、回数は24回目となりました。
三つ巴の戦いは熾烈さを増していきます。1997年、アニェッリ家に新たな悲劇が起こります。2000年の秋にはジャンニは前立腺がんに蝕まれ、11月にはさらなる悲劇が一家を襲いました。
2003年、ジャンニが亡くなります。3つめの星を見ることはなりませんでした。多くのサポーターが別れを惜しみました。
2006年には、ルチアーノ・モッジGMとイタリアサッカー連盟幹部との会話が盗聴されるという事件が勃発。その内容は、試合結果の操作を示すショキングなもので。イタリアスポーツ史上最大のスキャンダルとなってしまいます。
ユヴェントスは反スポーツ的行為で有罪を言い渡され、想像していた以上の処罰を受けることになります。
セリエBに降格。2006-2007シーズンのチャンピオンリーグには参加できなくなり、ホーム戦が3試合公開されないことに。さらに、2005、2006年の優勝を取り消されてしまいます。
もう、ユヴェントスは二度と戻れないのではないかと噂が飛び交いますが…。
2.映画『ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー』の感想
ビアンコネーロ(イタリア語で白と黒)の愛称で知られるイタリア・トリノをホームタウンとするイタリアプロサッカークラブ「ユヴェントスFC」の長い歴史を、当時の映像やスポーツ紙、関係者のインタビューで構成したドキュメンタリー映画です。
「ヨコハマ・フットボール映画祭2018」で上映される7作品のうち、本サイトでは本作を含む3本を紹介していますが、その中で、最もドキュメンタリーらしいドキュメンタリーとなっています。
優勝を決めたゴールシーンや、逆に優勝を逃した悔しいシーンなど、貴重な映像が豊富に使われ、ユヴェントスで活躍した歴代の名選手も多数登場し、ファンにはたまらないものになっていますが、ユヴェントスの歴史とはつまりアニェッリ家の歴史でもあるというのが、このチームの、そしてこの映画の面白いところです。
1945年から長年会長を務めたジャンニ・アニェッリは実に精力的で、魅力的です。
「アニェッリ家にとってユヴェントスは?」と聞かれ、彼は「代々引き継がれている情熱、宝物だ」と答えています。
本当にサッカーが好きだ!という熱い想いが画面からも伝わってきます。
一方、金にものを言わせ、チームを強化していくACミランのシルヴィオ・ベルルスコーニは、ジャンニとは真逆の価値観を持っているかのように描かれます。なんだかまるで漫画のような敵役ですが、現実の話しだというのが面白く、インテルを加えた三つ巴の闘いは、ドラマチックでわくわくさせられます。
スキャンダルの処罰でセリエBに降格となった時、スター選手たちはどのような選択をしたのか!? 胸が熱くなるような場面もたっぷり! 構成も巧みで見応えあるドキュメンタリー映画となっています。
3.まとめ
インタビューも豊富に盛り込まれ、アニェッリ一家のほかにも、ジャンルイジ・ブッフォン、アンドレア・ピルロ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、アントニオ・コンテ、パベル・ネドベドら、名選手、名監督が登場します。
(ちなみにクレジットには、音楽アドバイザーとしてエンニオ・モリコーネの名前が記されています)
ユヴェントスの、そして、イタリアサッカーの魅力を存分に味わってください!
本作は、2月12日(休) 11:45~より上映されます。
また、「フットボール映画祭」は全国で開催されます。
2月4日に開催される「神戸フットボール映画祭」でも本作が上映されます。
詳細は「ヨコハマ・フットボール映画祭 2018」公式ホームページでご確認ください!
*ヨコハマ・フットボール映画祭 2018公式:HP:http://2018.yfff.org