映画『バンクシーを盗んだ男』は、8月4日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかロードショー。
正体不明のグラフィックアーティスト、バンクシーによって描かれた壁画「ロバと兵士」をめぐることで、ストリートアートの光と闇を描いたドキュメンタリー作品。
映画『バンクシーを盗んだ男』の作品情報
【公開】
2018年8月4日(イギリス・イタリア映画)
【原題】
The Man Who Stole Banksy
【脚本・監督・製作総指揮】
マルコ・プロゼルピオ
【キャスト】
イギー・ポップ(ナレーション)
【作品概要】
正体不明のグラフィックアーティスト、バンクシーがパレスチナ・ヨルダン川西岸地区に描いた一枚の壁画が切り取られ、盗まれました。
監督マルコ・プロゼルピオがその壁画の行方をたどりながら、ストリートアートの光と闇をドキュメンタリーとして描きます。
ナレーションはロックミュージシャンのイギーポップが務めます。
ストリートアーティストのバンクシーとは
その正体を知るものはいまだにおらず、反権力的なメッセージをグラフィティアートやストリートアートとして表現するアーティスト、それがバンクシーです。
イギリス・ロンドンを中心に、世界のあらゆる場所に社会風刺的なユーモアと皮肉をこめた作品をゲリラ的に描き、活動しています。
2005年には、自身の作品をメトロポリタン美術館や、ニューヨーク近代美術館(MoMA)などの有名美術館にこっそり無断で展示し、そのまましばらく気づかれずに展示され続けたことも話題を呼びました。
ディズニーランドを徹底的に皮肉ったテーマパーク「ディズマランド」を設営したことも有名です。
そんな反権力的なアーティストである一方で、マドンナやBlurのアルバムジャケットを手掛けるなど、セレブの間でも彼の作品は人気を博しています。
彼のその謎めいた存在感や、その神出鬼没の芸術性から、作品がオークションで数千万~1億円という高額な値段で取引されることもあります。
ただし、あくまで彼のスタンスは街頭へのディスプレイにこだわったアーティストであり、Blurのジャケット以降の商業的なオファーはすべて断っているようです。
2017年には、パレスチナのベツレヘム地区にある分離壁の前に“「The Walled Off Hotel(世界一眺めの悪いホテル)」を開業しました。
彼は、その場所の情勢や政治など環境そのもの、もっといえばその場所でしか表現できないものを作品に取り入れて表現する魔術師なのかもしれません。
バンクシーの正体には諸説あり、ブリストル大聖堂公立学校の元生徒という説もあれば、7人組のアーティストチームであるという説や、イギリスのバンド「マッシヴ・アタック」のメンバーではないか、という噂まで立っています。
それほど、彼はミステリアスで注目度の高い芸術家なのです。
本作『バンクシーを盗んだ男』を観る前に、バンクシーが自ら監督し、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2010/アメリカ)も見ておくと良いかもしれませんね。
参考作品:『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
映画『バンクシーを盗んだ男』のあらすじ
パレスチナ・ヨルダン川の西岸地区にあるベツレヘム。
そこにパレスチナとイスラエルを分断する、高さ8メートルの巨大な壁がそびえたっていました。
その壁にバンクシーは「ロバと兵士」の絵を描いたが、地元パレスチナの住民たちの反感を買い、壁はタクシー運転手のワリドによってウォータージェットカッターで切り取られてしまいます。
ワリドはその壁画をオークションサイトに出品し、壁画は海を渡ります。
監督マルコ・プロゼルピオはワリドをはじめ、現地のストリートアーティストなど、さまざまな人物へインタビューを行い、その情報をもとに壁画の軌跡をたどりながら世界中を旅することにしました。
そしてその旅の中で、芸術の価値の変容や著作権問題をあぶりだそうとします。
ストリートアートが切り取られどこかに飾られるとき、それは果たしてストリートアートなのでしょうか…?
映画『バンクシーを盗んだ男』の感想と評価
本作『バンクシーを盗んだ男』の見どころは、この「ロバと兵士」がたどる「旅路」ではないでしょうか。
その旅路の途中には、地元住民、美術品コレクター、芸術修復家など、さまざまな人物の声があります。
その人々の声をききながら、「アートとは、何か」ということについて、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。
アートに興味のある友人と一緒に映画館に行って、見終わった後にああでもないこうでもないと話すこともできるでしょう。
アートとは、ただ芸術を展示するだけでなく、展示された場所や展示のされ方によってその作品に新たな意味づけを加えることができます。
たとえば、子供たちが遊ぶ公園に芸術作品が作られれば、それは遊具として子供たちに楽しんでもらええるアートになる。
量産して複製可能な作品を作れば、それはより人の手にとってもらえる身近なアートになる。
そして、特にその展示のされ方に大きな影響を受けるのが、ストリートアートの公共性です。
ストリートアートはその場所に描かれることによって、その作品固有の意味をもちます。
もしくは、それが本作の「ロバと兵士」のように切り取られ、展示場からはなれ、海を渡りさまざまな人の手に渡りながら最終的にどこかの美術館に飾られたとして、そこにいたるドラマを作品が内包することによって価値をより高めることができます。
しかし、そういった「このストリートアートがなぜこの美術館に飾られているのか」を知らずにこの作品の目の前に立ったとき、このアートの価値は半減どころか、下手をすると全く0になってしまうのです。
また、ストリートアートというのは、ほかの人間(清掃員など)の手によって消されてしまう可能性も十分にあります。
その「形として一時しか残らない」ということがストリートアートの良さだ、と考える人もいれば、このストリートアートが素晴らしいので、これをもっといろんな世界の人、これから生まれてくる人にも見てほしい」と考える人もいるでしょう。
そのストリートアートの光と闇の部分に触れることができる、貴重な映画、それが『バンクシーを盗んだ男』なのです。
まとめ
ドキュメンタリー映画の良いところは、そこに映し出されることが「リアル」として、観客に身近に考えてもらうことができるところです。
“夏休みの大人の自由研究”に、『バンクシーを盗んだ男』、いかがでしょうか?
映画『バンクシーを盗んだ男』は、8月4日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかロードショーです!
本作を上映する劇場情報
【北海道地区】
北海道 札幌シアターキノ 順次公開
【東北地区】
岩手 盛岡ルミエール 順次公開
宮城 チネ・ラヴィータ 8月31日(金)〜
【関東地区】
千葉 T・ジョイ蘇我 8月4日(土)〜
東京 新宿シネマカリテ 8月4日(土)〜
東京 ヒューマントラストシネマ渋谷 8月4日(土)〜
神奈川 横浜ブルク13 8月4日(土)〜
栃木 宇都宮ヒカリ座 11月公開予定
【中部地区】
富山 ほとり座 順次公開
長野 上田映劇 順次公開
長野 アイシティシネマ 順次公開
静岡 静岡シネギャラリー 9月1日(土)〜
愛知 センチュリーシネマ 9月1日(土)〜
【近畿地区】
京都 T・ジョイ京都 8月11日(土)〜
大阪 シネ・リーブル梅田 8月11日(土)〜
兵庫 神戸アートビレッジセンター 10月6日(土)〜
【中国・四国地区】
岡山 シネマクレール丸の内 順次公開
山口 山口情報芸術センター 順次公開
【九州・沖縄地区】
福岡 KBCシネマ 9月公開予定
熊本 Denkikan 順次公開
*上記に記載された情報は7月27日現在ものです。作品の特性からセカンド上映や順次公開が拡大されることもあります。お近くの劇場をお探しの際は公式ホームページを閲覧のうえお出かけください。