『映画はアリスから始まった』は2022年7月22日(金)より全国ロードショー!
リュミエール兄弟?トーマス・エジソン?いや、映画の歴史の裏には、一人の重要な女性がいました。
映画黎明期に映画監督・製作・脚本家として、映画界に大きな影響を与えたアリス・ギイの足跡を追ったドキュメンタリー『映画はアリスから始まった』。
映画史に大きな足跡を残しながらも、現在その名を知らないという人も多いという彼女の足跡を、膨大な資料インタビューやリサーチ、彼女自身が残したフッテージなどとともにたどっていきます。
エンターテイメント&モーションデザイン会社<PIC>の創設者で、本作が長編デビュー作となるパメラ B.グリーン監督が本作を手掛けました。
映画『映画はアリスから始まった』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Be Natural: The Untold Story of Alice Guy-Blaché
【監督・脚本】
パメラ・B・グリーン
【ナレーション】
ジョディ・フォスター
【作品概要】
ハリウッドの映画製作システムの原型を作った世界初の女性映画監督アリス・ギイの生涯に迫るドキュメンタリー。
ベン・キングズレー、ジュリー・デルピー、アニエス・バルダ、マーティン・スコセッシといった映画人らの証言を含め、さまざまな資料映像や検証経緯などからギイの真実に迫ります。
作品を手掛けたのは、本作が長編第一作となるパメラ・B・グリーン。ナレーションをジョディ・フォスターが担当、さらに製作にはロバート・レッドフォードらが名を連ねています。
映画『映画はアリスから始まった』のあらすじ
現在映画製作においても基本的な技法と知られるクローズアップ、特殊効果、カラー、音の同期などといった技法を次々と生み出し、世界初の劇映画『キャベツ畑の妖精』(1896)や、超大作『キリストの誕生』(1906)など1,000本以上を監督した映画監督・製作・脚本家のアリス・ギイ。
その功績から世界映画史に名を刻んだ彼女は、リュミエール兄弟やジョルジュ・メリエスと並ぶ映画界の開拓者でありながら、不可解にも未だ著名な映画監督ですらその名を知らない人も多いのが現実です。
多大な功績を残しながら、なぜアリス・ギイの名は映画史で語られないのか? この作品では映画界の著名人や、アリスの親族、そして彼女自身の膨大なインタビュー素材と、紆余曲折しながらも進めた調査結果、さらに現在では入手困難なアリス作品の数々より、彼女の真実に迫っていきます。
映画『映画はアリスから始まった』の感想と評価
この作品はアリス・ギイという一人の女性をクローズアップし、映画にまつわる彼女の真実を、資料や証言だけでなく製作者であるパメラ・B・グリーン監督自身の調査状況と合わせて追っていきます。
そしてその経緯からは、ギイという人物が映画作品を作り続ける中で、人々にさまざまなインパクトを残しながらも「彼女の功績」としてその経緯を残せていないという点においてその要因が一つ一つ明らかになっていきます。
その要因としては、やはり女性であるからという点、フェミニズムに言及される点に大きな理由が考えられますが、作品で語られる理由にはそれだけに収まらないさまざまな事情があることをうかがわせます。
一方で「これだけの功績を残したという実績があるにもかかわらず、歴史上に名が残らないということはありえるのか?」という疑問すら沸いてきます。
彼女は多くのインパクトのある作品、そして現代にもつながる撮影技法の多くを自身の実績として残し、かつそれが歴史上の調査の上で彼女の実績として認められているわけで、たとえ本人が否定したとしても、自然にその実績は語り継がれいくのではないかとすら思えます。
ギイの名が歴史上大きく取り上げられていないのは、作為的に彼女の名が表舞台から消されている可能性も大きいわけですが、こうなると「歴史に名前が残る」ということ自体の意味に不信感すら覚えることでしょう。
作品からはメインの流れとして、映画の未来を考えたときに、ギイの残した功績が映画の歴史に与えた功績が具体的にどのくらいのものなのかが、改めて検証されるべきと思わせられるものがあります。
その一方で、例えば映画以外のさまざまな歴史の中でギイ同様に埋もれて見えなくなった功労者、あるいは意図的に名を消されてしまった人などが、まだまだたくさんいるのだろうと考えさせられます。
女性であるから、あるいはその他もろもろの理由でという要因による部分もありますが、単に歴史の正否という観点だけでなくその事実がどのような経緯、事実でそのような結果となったのかというところまでを検証することが、その文化を正しく導いていくことであるとこの作品は説いているといえるでしょう。
まとめ
パメラ・B・グリーン監督は長編映画のメインタイトル、モーショングラフィックス、クリエイティブ演出、ミュージックビデオやコマーシャルの監督、制作など幅広いデザインワークを手掛けてきた経歴もあり、本作も単にフッテージを寄せ集めただけではなく途中にグラフィカルなデザインを織り交ぜたりと、先進的な画作りを挟み込んでいます。
本作はその「作られた画像」とフッテージの対比が絶妙なコントラストを作り出しており、訴求力のある作品に仕上がっているのも特徴です。
インタビューや映像作品のみで編集された作品であれば、資料映像的な観点から、作品自体がすぐ埋もれてしまう可能性もありますが、このアピール力は非常に作品のポテンシャルを感じさせます。
グリーン監督自身も女性であり、かつ作品で改めてアリス・ギイという女性がこれまでに残した軌跡を検証しようとする姿勢は、現代のフェミニズムに対する考えに一石を投じ改めてこの問題を考えさせることを示唆しているようでもあります。
映画『映画はアリスから始まった』は2022年7月22日(金)より全国ロードショー!