時代は常にアップデート!?世代は「ゆとり」から「Z」へ……
2016年に放送された連続テレビドラマ『ゆとりですがなにか』が、7年の時を経て映画化となりました。
なにかと「これだからゆとり世代は」と括られてきた、坂間正和、山路一豊、道上まりぶの3人も、劇場版では30代半ばへと突入しました。
夫婦仲や商売のことで悩みがつきない正和。いまだ誰ともお付き合いできない山路。中国での事業に失敗して戻ってきたまりぶ。全く“ゆとり”のない日々に、新しい時代の波が容赦なく押し寄せます。
7年経った彼らのアップデート具合はいかに!?ドラマ版でお馴染みのキャストが再集結した映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』をご紹介します。
CONTENTS
映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【監督】
水田伸生
【脚本】
宮藤官九郎
【主題歌】
感覚ピエロ『ノンフィクションの僕らよ』
【キャスト】
岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、仲野太賀、吉岡里帆、島崎遥香、手塚とおる、高橋洋、青木さやか、佐津川愛美、矢本悠馬、加藤諒、少路勇介、長村航希、小松和重、加藤清史郎、新谷ゆづみ、林家たま平、厚切りジェイソン、徳井優、木南晴夏、上白石萌歌、吉原光夫、でんでん、中田喜子、吉田鋼太郎
【作品概要】
2016年、当時流行した「ゆとり世代」をとり挙げたことで話題を呼んだ、宮藤官九郎脚本の連続テレビドラマ『ゆとりですがなにか』が劇場版作品として帰ってきました。
「ゆとり世代」の男たちを演じた坂間正和役・岡田将生、山路一豊役・松坂桃李、道上まりぶ役・柳楽優弥のトリオをはじめ、安藤サクラ、仲野太賀、吉田鋼太郎、吉岡里帆らドラマ版キャストが再集結した他、木南晴夏、上白石萌歌など豪華キャストも加わりパワーアップ。
ドラマ版に続き、監督は水田伸生監督、脚本は宮藤官九郎が担当。また主題歌も、2022年から活動休止をしていた中で2023年7月に再結成し、ドラマ版主題歌でも主題歌を担当した「感覚ピエロ」が手がけました。
映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』のあらすじとネタバレ
「『さかまっちチャンネル』のお時間です」……坂間正和は、家業を継いだ坂間酒造の宣伝のため動画配信をしていました。閲覧数はえぐいほど伸びません。
生配信中に、妻の茜ちゃんからの怒号が響きます。「すみませんでした~!」2児の父親になっても相変わらず、茜ちゃんには頭が上がらない正和。夫婦仲は倦怠期を迎えていました。
今日も今日とて、レンタルおじさんを相手に愚痴をこぼす正和。片やレンタルおじさんは時代の波に見事に乗り、いまや人気チャンネルを配信しています。
レンタルおじさんのビジネスは、リモートでも大人気。未だ交際経験ゼロの教師・山路一豊は、マッチングアプリを通して知り合った女性とのデートに、レンタルおじさんをリモート参加させていました。遺影のごとく彼の首から下げられたiPadに映るおじさんにドン引きの彼女は、立ち去っていきました。
そんなある日、正和と山路は飲みの帰り道、懐かしい声を聞きます。なんと、中国での事業拡大を目論み日本を出ていった道上まりぶでした。中国でのエビチリビジネスに失敗して帰国し、家族を養えず困っていたまりぶは、正和の坂間酒造で働かせてもらうことに。
ゆとり世代といわれた彼らも、7年の時を経て30代半ばです。3人揃うと何も変わらないようですが、世代は「ゆとり」から「Z」へ。働き方改革、リモート、多様性、グローバル化、コンプライアンス……時代は容赦なく変わっていました。
正和が働いていた居酒屋チェーン店「鳥の民」は韓国企業に買収され、焼き鳥屋から韓国料理店「豚の民」に様変わり。「ゆとりモンスター」と言われた社員・山岸でさえ、Z世代からパワハラで訴えられ、時代の流れに逆らうことも諦め、流されっぱなしです。
一方、山路の小学校には、教育実習生と転校生がやって来ることに。教育実習生にめっぽう弱い山路は、転校生の母親を交えた三つ巴の戦いが始まると心ときめかせていました。
しかし、やってきた転校生はタイ人とアメリカ人。それぞれの両親は、お国柄の違いもあって問題ばかりです。また授業ではLGBTQについてとり挙げるも、子どもたちは理解できていないようです。
終いには、ラガーマンの熱血教育実習生・脇田にタックルを決められ骨折。復帰した頃には、狙っていた教育実習生・望月かおりとは会話すらできず終わってしまいました。
何もかも空回りな山路の力になってくれたのは、茜ちゃんでした。互いに居心地がいい関係の山路と茜ちゃん。しかし正和は面白くありません。
正和は、元の職場である「みんみんホールディングス」に坂間酒造の酒を卸していましたが、ある日山岸に「上司と会ってほしい」と言われます。今や「辛心食品」に社名変更した会社を訪れると、スーパーバイザーのチェ・シネが不機嫌そうにいるだけでした。
状況が把握できない正和。そんな彼の目前にあるスクリーンに、リモート参加の社員たちが映し出されます。「普通、リモートだと思うでしょ」山岸の笑い声が響きわたります。
「チェ!」チェ・シネの舌打ち。話はこうでした。「マッコリに力を入れたいから、坂間酒造の“ゆとりの民”は契約解除とする」。
全国のチェーン店に卸していた日本酒が生産中止となる……坂間酒造、最大の危機が迫っていました。ここで引き下がったらおしまいです。
「せめて1年延期してください」という言葉とともに見せた正和の綺麗な土下座は、リモート参加者たちには見えていませんでした。その中でチェ・シネから出された条件は「マッコリを作るか、ノンアルの日本酒を作るか」の2択でした。
坂間酒造に戻ってきていた伝説の杜氏・服部は、どちらの選択もプライドに反すると怒りますが、まりぶたちに上手くのせられ、ノンアルの日本酒造りに挑戦することになります。
服部は何度も試行錯誤を重ねてノンアル日本酒の開発に取り組みますが、納得の味にたどり着くことはできませんでした。
映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』の感想と評価
2016年放送の人気テレビドラマ『ゆとりですがなにか』が、当時のキャストそのままに映画化。主人公たちの7年後が描かれた続編となっています。
世代は「ゆとり」から「Z」へ。働き方改革、リモート、多様性、グローバル化、コンプライアンスと今までの常識がもはや常識じゃなくなり、多方面に気を配らなければならない時代です。
「ゆとり世代」と呼ばれた主人公の正和、山路、まりぶの3人組もそれぞれ歳をとり、時代に合わせてアップデートしようともがいていました。
一般に「ゆとり世代」とは、1987年から2004年頃生まれで、義務教育でいわゆる「ゆとり教育」を受けた世代とされています。「野心がない」「競争心がない」「協調性がない」などと言われがちですが、実際のところは「どの世代にもそんなヤツはいる」と言えるのが本音です。
坂間正和は会社を辞め、実家の酒蔵を継いでいます。会社時代は上司という立場だった彼女・茜ちゃんとも結婚し2児の父親になりましたが、相変わらず尻に引かれています。またドラマでは対面での営業を大切にしていましたが、今でも顔を合わせた付き合いを望み、ネット配信やリモートは苦手のようです。
小学校の教師・山路一豊は、相変わらず女性との交際経験はありませんが、生徒たちに寄り添う良い先生で、友だちの悩みも聞いてくれる優しい男。そして「デートにアドバイザーをリモート参加させる」という斬新過ぎてドン引きなアップデートを果たしています。
道上まりぶは、エビチリで中国進出を目論むも事業に失敗。しかし、ただでは起きないのが道上まりぶ。時代は変われどサバイバル能力の高さは時代が変わっても変わらずです。
ゆとり世代のはずが、全く“ゆとり”のない3人。相変わらずな彼らに、同級生に久しぶりに会った感覚を思い出します。
また彼らを演じる岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥の3人はプライベートでも仲が良いだけあり、クドカン脚本のテンポ良い会話を違和感なくこなしています。俳優として様々な作品に出演し、キャリアを積み重ねている彼らですが、ここまで等身大の姿が見れる作品はないかもしれません。
そして、その他の登場人物のキャラクターも濃いのが『ゆとりですがなにか』の見どころですが、劇場版でもドラマ版お馴染みのキャストが勢揃いしています。
正和の嫁・茜ちゃんを演じるのは安藤サクラ。家事に子育てに追われ発狂寸前ながらも、保育所に「子どもがダメなら夫を預かってください」と頼むという鬼嫁ぶりも健在です。
老若男女の相談にのる「レンタルおじさん」にして、まりぶの父・麻生厳。演じるのは吉田鋼太郎。時代を見事に捉え、おっさん配信チャンネルも大人気ですが、「この父あってこの息子あり」というべき“テキトーさ”もグレードアップしています。
そして、欠かせないのが「ゆとりモンスター」こと山岸ひろむ。仲野太賀演じるマイペースぶりは相変わらずで、Z世代からパワハラで訴えられ、時代に流されまくりながらも生き残っています。
また新たなキーパーソンとして、「みんみんホールディングス」を買収した韓国企業のスーパーバイザーであるチェ・シネが登場。木南晴夏の演技が見事にハマっています。
気が強く経営のためなら容赦ないチェ・シネですが、その裏にはセクハラで苦しむ友だちを助けられなかったという後悔の想いがありました。日本だけでなく世界を見渡せば、同じ悩みや同じ苦しみを持った人も多くいます。そこには男女や人種、ましてや世代も関係ありません。
劇場版では、山路が生徒たちにLGBTQについて教える場面も描かれます。当初は「分かりみない」と言っていた子どもたちが、実体験をふまえた上で、男女関係なく「一緒にいて居心地がいい」と思える感覚なら「分かりみある」と言っていた様子が印象的でした。
大切なものを守るため、一所懸命になること。一緒にいて楽しいと思える関係性。幸せになってほしいと願えること。共に成功を分かち合えること。
「時代が変わり、世代についてどうこう言われようと、家族や友だち、そして愛という大切なものは根本的に変わらない」と気付かせてくれました。
まとめ
人気テレビドラマ、7年ぶりの続編。映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』を紹介しました。
坂間家の日常は思わぬ所でバズッていた!?「ゆとり」と呼ばれた世代もいまや30代半ば。押し寄せる時代の波に乗れているのか!?
時代は変化し、常にアップデートを求められる今。「それでも、変わらないものがあってもいいじゃないか」と本作は気づかせてくれます。
どの世代でも楽しめるノンストップコメディ。あなたのアップデートは完璧ですか?