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Entry 2020/10/25
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映画『ヤウンペを探せ!』感想レビューと評価。大野莉昂やソンモの歌で彩る中年男たちの狂騒曲

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  • 20231113

『ヤウンペを探せ!』は2020年11月20日(金)より、シネリーブル池袋ほか全国順次公開

2019年第11回沖縄国際映画祭のTV DIRECTOR’S MOVIEで上映された、話題のスラップスティック・コメディ映画『ヤウンペを探せ!』。

主題歌には大野莉昂の最新曲を使用し、韓国のアイドルグループ超新星(現・SUPERNOVA)の元メンバー、ソンモが挿入歌を提供し、カメオ出演するなど、各方面の熱い注目を集めています。

池内博之・宮川大輔・松尾諭・池田鉄洋のアンサンブルが織りなす、馬鹿馬鹿しくも滑稽な、さえないオッサンのドタバタ騒動が今、幕を開けます。

映画『ヤウンペを探せ!』の作品情報


(C)2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
宮脇亮

【脚本】
高石明彦、渋谷未来

【劇中歌】
ソンモ「I‘m lovin’you~泣いたらいい~」

【出演】
池内博之、宮川大輔、池田鉄洋、松尾諭、蓮佛美沙子、赤楚衛二、門脇佳奈子、村松利史、栗原類、川畑和雄、渡部陽一、ソンモ、永嶋柊吾、ついひじ杏奈、大江駿輔、川島海荷、桜井ユキ、榊英雄、桂三度

【作品概要】
学生時代に8㎜映画を作っていた4人の男。20年後、中年男となった彼らは、かつての自主映画のヒロインの願いをかなえて、ハートを射止めようと奮闘します。

ただし実は誰も、彼女の願いの意味がさっぱり判りません。こうして始まるトンチンカンな騒ぎを描く、大人のためのコメディ映画です。

主演は『アウトレイジ最終章』(2017)に『マンハント』(2018)など、話題作や海外映画で幅広く活躍する池内博之。

そして吉本のピン芸人の枠を越え、バラエティ番組やCM出演、俳優としても活用する宮川大輔。

演出家・脚本家としても活躍する池田鉄洋に、『シン・ゴジラ』(2016)など幅広く活躍する松尾諭という、クセのある名バイプレイヤーを加えた4名が、愛すべきダメ男を演じます。

彼らが憧れる女性を、『記憶屋 あなたを忘れない』(2020)の蓮佛美沙子が演じ、彼女が働く店の主人には桂三度、他にも個性派、クセのある出演者が結集しました。

監督は数々のテレビドラマを演出し、『あのコの、トリコ。』(2018)で映画監督デビューした、『どすこい!すけひら』の宮脇亮。

脚本には『新聞記者』(2019)を手掛けた、高石明彦も参加しています。

映画『ヤウンペを探せ!』のあらすじ


(C)2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

売れない俳優キンヤ(池内博之)、流行らない中華料理店店長のジュンペイ(宮川大輔)、教員試験万年不合格中のタロウ(池田鉄洋)、ラブホオーナーのアッキー(松尾諭)。

彼らは学生時代、共に8mm映画を作った仲間でした。20年ぶりに集まった焼肉店で、かつて製作した映画のヒロイン、みさと(蓮佛美沙子)と再会します。

みさとから、今の私には「ヤウンペ」が必要だと告白される4人。今も美しい彼女の心を掴もうと、望みをかなえるべく奔走します。

しかし、もう40過ぎたダメなおっさんたちは、肝心の「ヤウンペ」とは何のことやら、さっぱり覚えていません。

それでも仲間より早く、出し抜いてでも「ヤウンペ」を手に入れようと奔走する男たち。それが大騒動を引き起こします。

哀愁漂うオッサンたちによる、無様でおかしく、ちょっぴり愛のある冒険が始まります。

「ヤウンペ」とは何なのか。そして憧れのヒロインのハートは、誰のものになるのでしょう…。

映画『ヤウンペを探せ!』の感想と評価


(C)2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

ダメ過ぎるオッサンが愛おしい

40過ぎて独身。夢追うことにも疲れ果てながらも、見栄とプライドだけは人一倍強い、意地っ張りなオジサンたち。

彼らも学生時代は、8㎜映画製作に情熱を傾けた仲間でした。そんな4人が再会した焼肉店で、かつての映画のヒロインと再会します。

さえないオッサンたちが見つけたのは、今も変わらぬ彼女の美しさでしょうか。それともかつての情熱でしょうか。

こうして彼らは若き日さながらに、いや、歳を経てすっかり図々しくなったのか、恥も外聞もなくヒロインをわが物にしようと暴走します。

この4人を池内博之に宮川大輔、池田鉄洋と松尾諭という、一癖あるメンバーが演じます

可笑しくもどこか切ない、馬鹿馬鹿しい上に少々品のない、それでも真っ正直で愛おしい珍騒動が幕を開けました。

かつてのプログラムピクチャーを思わせるコメディ映画


(C)2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会
あの吉本興行が製作したコメディ映画、『ヤウンペを探せ!』。

吉本興行といえば日本映画黄金期には、京都で製作される娯楽映画を中心に、多くのお笑い芸人を出演させていました。

その流れを引き継ぎ、70~80年代以降のプログラムピクチャーでも、様々な吉本芸人が活躍しています。

その後芸人たちの活躍の場が広がると、インディーズ映画に出演する者や、松本人志監督作『大日本人』(2007)のように、映画を監督する者も現れます。

現在、所属芸人の活躍の場を広げるべく、様々な形で映画作りに参加している吉本興行

本作もそういった作品の1本ですが、芸人や一癖ある俳優、ゲスト的に登場した出演者が共演する、ノリと勢いを感じさせる娯楽作品です。

かつての邦画プログラムピクチャーの喜劇映画や、同時期の香港のコメディ映画を思わせる、緩くて明るい大らかな笑いが繰り広げられる作品として、本作は完成しました。

吉本新喜劇とスタイルは異なりますが、同様にドタバタ劇の果てに、綺麗なオチを迎える楽しい作品です。

新喜劇や落語のような物語


(C)2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

知らないのに、見栄を張って知ったかぶりをする。誰もが、それも歳を重ねた者ほどやりがちな、なんとも滑稽な振る舞いです。

この可笑しさは「酢豆腐」や、それから発展した「ちりとてちん」、「千早振る」や「転失気」といった落語の演目で語られてきました。

『ヤウンペを探せ!』はかつての喜劇映画だけでなく、落語の精神にも忠実な笑いを描いた作品と言えるでしょう

劇中のオッサンたち、その周囲の人物を含めた大人げ無い振る舞いには、しっかり下ネタもしっかり登場します。

しかし必要以上に過激にならず、人の軽薄さや下品さを扱いながらも、人を傷つけない笑いに昇華した本作は、将に落語的作品

その落語が今も話芸として親しまれているのは、丁寧に語られる地の部分が物語の土台となり、人の営みとしての真実味を与えた結果でしょう。

本作では明らかに滑稽に振る舞う人物、ノリで選ばれたかのようなゲスト的登場人物がいる一方、若手俳優を中心とした脇を固める出演者が、物語の土台を築く役割を果たしています。

まとめ


(C)2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

かつての喜劇映画を思わせる、大らかな笑いを描いた『ヤウンペを探せ!』。

ドタバタ劇を演じる主演陣、ゲスト的に起用された人物を楽しむも良し、映画を支える若手俳優陣を見るもまた良しです。

懐かしいプログラムピクチャーの、喜劇映画を楽しむ感覚でご覧下さい

色々と笑いのための「暴走」も登場する作品ですが、全編を通し落語の世界観のような雰囲気を維持しています。

その役割をおじさん4人と、ヒロインが集う焼肉屋のオヤジを演じた桂三度が果たしているのかもしれません。

かつてお笑いコンビ「ジャリズム」として、また「世界のナベアツ」として活躍し、2011年から落語家に転身し改名した桂三度。

放送作家としても活躍していた彼は、CM監督の柴田大輔と共同で、映画『さらば愛しの大統領』(2010)を監督し、出演も果たしています。

『さらば愛しの大統領』の主役は、本作に出演した宮川大輔。映画も活躍の舞台とする2人の芸人は、この分野で共犯関係を維持しているのかもしれません。

映画と落語の笑いを理解する桂三度の存在こそ、本作を軽妙な娯楽映画とした要因の一つ、と言えるでしょう

そんな真面目な考察が鑑賞中は一切浮かばない、馬鹿馬鹿しくも愛すべき、緩いお笑い映画である本作。肩肘張らず楽しみましょう。

『ヤウンペを探せ!』は2020年11月20日(金)より、シネリーブル池袋ほか全国順次公開!





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