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Entry 2019/08/27
Update

映画『任侠学園』あらすじネタバレと感想。西島秀俊×西田敏行がW主演の“全員善人”のヤクザコメディ

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『任侠学園』は2019年9月27日(金)より全国ロードショー公開!

数々の人気テレビドラマの演出を手がけてきた木村ひさし監督が、今野敏の人気小説シリーズの初映画化に挑戦した映画『任侠学園』

世代は違えど、互いに日本映画界を代表する名優である西島秀俊と西田敏行が“W主演”が務めます。

義理と人情に厚すぎる“社会奉仕”が大好きなヤクザたちが、倒産寸前の学園と学生たちの荒んだ心を立て直そうと悪戦苦闘する姿をコメディタッチで描きます。

映画『任侠学園』の作品情報


(C)今野敏/(C)2019 映画「任俠学園」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【原作】
今野敏

【監督】
木村ひさし

【脚本】
酒井雅秋

【キャスト】
西島秀俊、西田敏行、伊藤淳史、葵わかな、池田鉄洋、佐野和真、前田航基、戸田昌宏、猪野学、加治将樹、川島潤哉、福山翔大、高木ブー、佐藤蛾次郎、桜井日奈子、白⻯、光石研、中尾彬、生瀬勝久

【作品概要】
社会奉仕が大好きな弱小ヤクザ・阿岐本組が、世間のルールを守りながらも世の中の役に立とうと悪戦苦闘する様を描くコメディ映画。

今野敏の人気小説シリーズ“任侠シリーズ”の初の映画化作品でもあります。

西田敏行、西島秀俊を筆頭に、伊藤淳史、葵わかな、池田鉄洋、桜井日奈子、白竜、光石研、生瀬勝久とベテランか若手まで豪華キャストが揃いました。

映画『任侠学園』のあらすじとネタバレ


(C)今野敏/(C)2019 映画「任俠学園」製作委員会

ヤクザ稼業であるからこそ、堅気の皆様に迷惑をかけることを拒み、社会奉仕をすることに熱心な阿岐本組の組長の阿岐本雄蔵。そして、彼を支える若頭の日村誠司。

弱小ヤクザではあるものの、「世間のためになるなら」と悪戦苦闘する日々を過ごしています。

そんな阿岐本組に、経営が傾いた高校の経営再建の話が転がり込んできます。学校に嫌な思い出しかない日村ですが、親分には逆らえず、仁徳京和学園に向かいます。

仁徳京和学園は一見すると穏やかな学校に見えましたが、ガラスの窓は割られ、生徒同士が揉めごとを起こしていたりと荒んでいることが分かります。

にもかかわらず、事なかれ主義である校長の綾小路は我関せずと見て見ぬふりをしていました。

やがて、校内で揉めごとを起こすちひろにガラス割り犯の疑いがかかりますが、泊まり込みで様子を探っていた日村が捕まえたのは生徒会の優等生たちでした。

校内での様々な出来事に頭を悩ます日村に、雄蔵は「自分の舎弟だと思って生徒に接しろ」とアドバイスを送ります。

明らかに堅気ではない日村たちの登場に、優等生である美咲の父で父母会の代表を務める小日向泰造はその状況を危惧し、綾小路校長に近づいて学園の経営権を手にしようとします。

そんな小日向が日村の姿や言動をみても表情一つ変えないことに気が付いた雄蔵は、密かに小日向の素性を探らせます。

小日向が実は暴力団・隼勇会のフロント企業の経営者であることが分かり、小日向が仁徳京和学園の経営権を狙っている理由もわかり始めます。

以下、『任侠学園』ネタバレ・結末の記載がございます。任侠学園』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)今野敏/(C)2019 映画「任俠学園」製作委員会

仁徳京和学園の土地は、数年後から工事が開始される高速道路の用地候補となっており、土地売却によって得られる利益こそが小日向、そして隼勇会の組長・唐沢の真の狙いでした。

小日向のオフィスで対峙する雄蔵と小日向、唐沢。

唐沢は「このままでは抗争に発展する」と雄蔵を恫喝してきます。

それを聞いた雄蔵はそれまでの穏やかな表情を一変させ、一気に険しい顔付きになると抗争も覚悟の上だと言い返します。

組織の規模で言えば阿岐本組と隼勇会との間にはアリと象ほどの差があり、阿岐本組には全く勝ち目はありません。しかしその雄蔵の凄みに、小日向はもちろん唐沢も気圧されます。

さらに小日向が隼勇会の資金運用に失敗していた事実を唐沢にぶつけると、唐沢は計画から抜けることを告げその場を去っていきます。それに伴い、小日向もまた学園から手を引きます。

事態は収まったものの、日村たちの素性が知れ渡ってしまったために経営から手を引いた雄蔵。

その後の経営を綾小路校長に託し、日村たちとともに学園を去ります。

学園の生徒たちはそんな彼らを、常に正面から自分たちに接してくれたことへの感謝の言葉とともに見送るのでした。

映画『任侠学園』の感想と評価


(C)今野敏/(C)2019 映画「任俠学園」製作委員会

それぞれ映画化もされたドラマ「ストロベリーナイト」シリーズや「MOZU」シリーズがブレイクポイントになったこともあり、いつもハードボイルドなキャラクターが降られがちな西島秀俊

ただ、その一方でスペシャルドラマ「名探偵明智小五郎」(木村ひさし監督、伊藤淳史共演)や高畑充希と共演した「メゾン・ド・ポリス」、内野聖陽とW主演を務めた「きのう何食べた?」などのコメディタッチのドラマ作品でも生き生きとした顔を見せてくれます。

元々コメディタッチの作品はやりたい側の人間なようで、今回の『任侠学園』でも楽しそうに演じています。

また、木村ひさし監督や西田敏行をはじめとする芸達者な共演陣も、西島秀俊の狙う笑いではなく、その整い過ぎた佇まい故に生じる奇妙な笑いを引き出すことがとても上手く、高い相乗効果を生んでいます。

またクライマックスでの西田敏行は、久しぶりに“この人はやっぱり本当は凄いんだった”と思わせる強烈な演技を見せてくれます。

強面モードの白竜・光石研と2対1でやり合うことになるのですが、圧巻の凄みで完全に場面をさらっていきます。

このシーンを見ると、確かに“W主演”という表記に偽りなしだと感じることができます。

まとめ


(C)今野敏/(C)2019 映画「任俠学園」製作委員会

『任侠学園』のキャストを見てすぐに思い浮かぶのが、北野武監督の『アウトレイジ』シリーズ。

オープニングシーンからして、明らかに『アウトレイジ』を狙った作りなのは明らかです。

西田敏行を筆頭に中尾彬、光石研、白竜とベテラン組を『アウトレイジ』出演者で固めているのも狙っていると言っているぐらいですから。

もともと『アウトレイジ』シリーズ(と『龍三と七人の子分たち』)は北野武流の任侠映画・ヤクザ映画へのブラックなパロディ表現を多く含んだ作品でしたが、この『任侠学園』は『アウトレイジ』の一連の出来事ありきで、さらにコメディタッチの作品にしてきて、よりからっとした笑いをさそいます。





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