映画『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』は2019年12月27日(金)より、シネマート新宿、心斎橋ほか全国ロードショー!
フィンランドの村に住む、若者4人。人にバカにされながらもヘヴィメタルを愛する彼らは、ある機会で自身の殻を破る決心をしたのでした。
ヘヴィメタルを題材とし、フィンランドの片田舎に住む4人の若者が念願のフェス参加を目指して奮起する姿を描いたコメディ映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル! 』。
監督は本作で長編デビューを果たしたユーソ・ラーティオとユッカ・ヴィドゥグレンの二人。
主人公を『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』などのヨハンネス・ホロパイネン、ヒロインを『サマー・フレンズ』などのミンカ・クーストネが演じます。
CONTENTS
映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』の作品情報
【日本公開】
2019年公開(ノルウェー・フィンランド合作映画)
【英題】
HEAVY TRIP
【監督・脚本】
ユーソ・ラーティオ、ユッカ・ヴィドゥグレン
【キャスト】
ヨハンネス・ホロパイネン、ミンカ・クーストネン、ヴィッレ・ティーホネン、マックス・オヴァスカ、マッティ・シュルヤ、ルーン・タムティ
【作品概要】
普通に生活しながらもヘヴィメタルが好きでバンドをやっているというだけで虐げられてきた4人の若者が、ある日ノルウェーで行われるメタルフェスのプロモーターと偶然出会い、それを機にフェス参加を目指して奮起する姿を描いたコメディ映画。
監督は本作で長編デビューを果たしたユーソ・ラーティオとユッカ・ヴィドゥグレンの二人。
主人公・トゥロを『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』などのヨハンネス・ホロパイネン、ヒロインのミーアを『サマー・フレンズ』などのミンカ・クーストネンが担当。
そのほかにヴィッレ・ティーホネン、マックス・オヴァスカ、マッティ・シュルヤらがキャストに名を連ねています。
また今作の音楽はフィンランドを代表するヘヴィメタルバンド、ストラトヴァリウスのラウリ・ボラーが担当、本格的なヘヴィメタルサウンドを作品に提供しています。
映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』のあらすじ
フィンランド北部の村で暮らすトゥロは、ヘヴィメタルが好きで髪を伸ばしているけど、内心はシャイで真面目な普通の男性。彼がボーカルを務める結成12年のヘヴィメタルバンドは、まだライブをやったこともなく、コピーバンドの域から脱け出せずにいました。
そのヘヴィな生活に反して、バンドのメンバーはおとなしく日々を過ごしていましたが、ヘヴィメタルという音楽に没頭している彼らを、街のほとんどの人が冷ややかな目で見ていました。
そんな状況を打破しようとオリジナル曲を完成させた彼らはあるきっかけで、ノルウェーで開催される巨大フェスのプロモーターと知り合うことに。
このチャンスを生かさない手はないと、彼らは街で度胸試しの初ライブにチャレンジする決心を固めます。
ところがライブハウスでステージに立った時、ボーカルのトゥロは緊張のあまり嘔吐してしまう始末。これをきっかけにバンドは解散、さらにバンドでは愛されキャラな性格のドラマー・ユンキが不慮の事故で死んでしまいます。
悲しみに暮れるトゥロたちでしたが、トゥロは偶然ある一つの啓示を受けバンドを再結成。ユンキの棺桶を車に載せ、トゥロが自身の勤務する病院で新たなドラマーを誘拐しフェスに向かったのですが…。
映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』の感想と評価
ヘヴィメタルの真実を追究した物語
本作をヘヴィメタルという音楽の視点から鑑賞すると、この作品はヘヴィメタルという音楽に対する深い愛情を感じさせるものとなっています。
コメディ要素が基本としてあるものの、意外にもヘヴィメタルを愛する人が一般的な日常を過ごす真面目な人たちとして描かれています。
劇中、主人公を中心としたバンドのメンバーは周囲の人間からいわれもない圧力を受けます。
単に髪を伸ばしていることと、ヘヴィメタルという音楽を愛して、バンドでプレーすることを楽しんでいるということが周りの気に障るから、というだけの理由からです。
このことは、よくいわれている「フィンランド=メタル大国」という国の印象からすると大きなギャップもあり、大変興味深い点であります。
フィンランドでは確かに近年、夏場にさまざまなメタルフェスが山奥で開催され多くの人たちでにぎわいます。しかし一方でこの映画に書かれたことが事実であるとすれば、フィンランドという国でもヘヴィメタルという音楽に対して、偏見の目を持つ人がいるということを表していることになります。
そもそもヘヴィメタルという音楽は、80年代にイギリスで発生したNWOBHM(ニュー・ウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)という音楽ムーブメントがその走りだといわれています。
そのムーブメントが大きな勢いを持っていた一方で、その頃からこの音楽を嫌う傾向があったことも確かです。そういった傾向は、世界にこの音楽が広がるとともに、付いて回るようにそんな認識を持つ人も現れました。
その意味では「ヘヴィメタル大国」であるはずのフィンランドが、必ずしも国民全員がすべてその音楽を受け入れているかといえばそうではないということが、ごく当たり前のことだと認識できます。
かつて1988年に公開されたドキュメンタリー映画『The Metal Years』では、当時頂点に立ったヘヴィメタルバンドのあまりにも悲惨な状況、そんな状況を知ってか知らずか、彼らのポジションを目指して奮闘する若者バンド、そしてファンの表情を描いていました。
その中でファンの一人は、「自分たちは普通の人、あるいは普通以上に優秀な人間として日々社会生活を送っている人間であり、それに加えてヘヴィメタルという音楽を愛している、ただそれだけなのだ」というコメントをしていました。
また実際、劇中のイメージとしてメタルバンドの周辺にはロックにつきものなセックス、ドラッグというイメージはほとんど描かれていません。
一方で本作は、ヘヴィメタルという要素を除くと実は単なる「負け組が自分の人生に向き合い、自身の生きがいを取り戻していく」といったストーリーになります。
「ヘヴィメタル大国」というある意味偏見的な言われ方をしている国からこのような作品が作られたのは、非常に説得力も強く大きな意味を持っているようでもあります。
実際、登場するヘヴィメタルバンドのメンバーですが、劇中で起こすおバカな行動というものはいくつかあれど、実はどれも真剣な思いで臨んでいるだけであって、心からバカに徹している感じでもありません。
むしろ物語をお笑いにしている真剣なバカというのは、どちらかというと彼らを取り巻く人たちとなっているのです。
まとめ
なお音楽という面で補足すると、彼らの奏でる音は厳密には90年代に登場したPANTERAというバンド以降で派生し始めた、いわゆる「エクストリーム系」と呼ばれるサウンド(ブラストビートと呼ばれる音数の多いリズムに低音のギター、ベースのリフ、そしてデスヴォイスを基調としたヴォーカルが特徴)をフォローしているものと思われます。
彼らはそのサウンドを擁しているだけであって、必ずしも歌詞に死をにおわせる世界観を持った「デスメタル」と呼ばれるジャンルとは、おそらく一線を画すものでではないでしょうか。
ちなみに劇中で彼らが自身のバンドのことを「週末シンフォニックトナカイ玉砕・反キリスト・戦争推進メタル」というジャンルで読んだことに関してですが、これは現在のヘヴィメタルというジャンルの音楽が、変に細分化されていることに対しての皮肉でもあるように見受けられます。
また彼らのバンド名「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」もフザけた、ユーモアを狙ったバンド名であり、シリアスさを狙うデスメタルバンドと比較すると違うものであるようにも見えます。
こういった点を総合的に考えると、トゥロたちのヘヴィメタルバンドのメンバーは単純にヘヴィメタルという音楽が好きで、それを演奏するのが好きなただの普通の人であるということがわかります。
その意味でこの作品は彼ら以外を蔑んで描いているわけでもなく、そして彼ら自身は強い共感を持って自身の道をポジティブに進んでいく姿を描いています。つまり大笑いしてもらうとともに、すべて内容を前向きにとらえてもらえる作品になっているということです。
例えば、この映画で描かれているヘヴィメタルという存在を、同様に世間から虐げられる傾向のあるなにか別のものに変えたときに、おそらくしっくりくる感じがあるに違いありません。
そんな意味で、この作品は現在世で蔑まれているものに対して何か違った考えをもたらしてくれるきっかけにもなるのではないでしょうか。ヘヴィメタルファンにも、そうでない方にも楽しい映画となっています。
映画『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』は2019年12月27日(金)より、シネマート新宿、心斎橋ほか全国ロードショー!