中国では『アベンジャーズ/エンドゲーム』の成績を抜いた大ヒットシリーズ!
腕っぷしは強いがお調子者のタン・レンと、頭脳明晰な推理オタクのチン・フォンのコンビが、難事件に挑む映画『唐人街探偵 東京MISSION』。
人気シリーズの第3弾となる本作は、東京の名探偵・野田として妻夫木聡がメインキャラクターに加わった他、『モンスターハンター』(2021)など、ハリウッドで活躍しているトニー・ジャーが、タイの探偵として新たに参戦しています。
シリーズものではありますが、基本的なキャラクターの設定さえ知っていれば、後は文句なしに楽しめるという、エンターテイメントのあらゆる要素を詰め込んだ、本作の魅力をご紹介します。
映画『唐人街探偵 東京MISSION』の作品情報
【日本公開】
2021年公開(中国映画)
【原題】
唐人街探案3 Detective Chinatown 3
【監督・脚本】
チェン・スーチェン
【キャスト】
ワン・バオチャン、リウ・ハオラン、妻夫木聡、トニー・ジャー、長澤まさみ、鈴木保奈美、奥田瑛二、染谷将太、浅野忠信、シャン・ユーシエン、三浦友和
【作品概要】
タン・レンとチン・フォンの探偵コンビが、日本を舞台に密室殺人事件の謎に挑むサスペンスコメディ。
主役のタン・レンを演じる ワン・バオチャンは、中国の「エミー賞」とも呼ばれる「金鷹電視芸術賞」において「最も人気がある俳優賞」に選ばれる程、人気の若手俳優です。
もう1人の主役である、チン・フォンを演じるリウ・ハオランは、『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』(2018)などに出演しており、『唐人街探偵 東京MISSION』で、中国の人気俳優の証である「100億元クラブ」の仲間入りを果たした、注目の若手俳優です。
共演に、妻夫木聡や長澤まさみ、染谷将太、浅野忠信そして三浦友和という、日本の実力派俳優が顔を揃えている他、『マッハ!』(2004)で大ブレイクを果たし、世界的に活躍するアクション俳優、トニー・ジャーが、メインキャラクターの1人として出演しています。
映画『唐人街探偵 東京MISSION』のあらすじとネタバレ
自称探偵の「便利屋」タン・レンと、優れた洞察力と記憶力を持つ、頭脳明晰なタン・レンの甥、チン・フォン。
2人は国際的な名探偵として、世界中でさまざまな事件を解決してきました。
スマホの推理アプリ「CRIMASTER」のランキング上位にも入っているタン・レンとチン・フォンは、第1位に君臨する謎の探偵「Q」の謎を追っています。
ニューヨークでの猟奇殺人事件を解決した2人は、「CRIMASTER」でランキング2位を争う、日本の名探偵で御曹司の野田昊から、協力を依頼されて東京へと向かいます。
空港に到着したタン・レンとチン・フォを迎えた野田から、今回の事件について説明されます。
歌舞伎町の「新チャイナタウン」計画に向けて動いていた、東南アジア商会の会長・スー・チャーウェイが殺害されました。
事件現場は密室で、事件当時、スー・チャーウェイと同じ部屋にいたのは、東南アジア商会と対立していた「黒龍会」の組長、渡辺勝でした。
渡辺は、スー・チャーウェイ殺害の容疑をかけられており、1週間後に始まる裁判までに、渡辺の冤罪を証明することが、今回の依頼です。
野田から、そこまで説明されたところで、タイの探偵で推理アプリ「CRIMASTER」世界第10位のジャック・ジャーが現れます。
3人は、執拗に追いかけてくるジャックから逃げますが、野田がジャックの足止めをし、タン・レンとチン・フォンには「渡辺に会って話を聞け」と伝えます。
タン・レンとチン・フォンは、黒龍会に赴き、事件当日の様子を渡辺から聞きます。
渡辺から聞いた事件の概要は、以下の通りです。
・渡辺はスー・チャーウェイと「新チャイナタウン」計画に関する話をするつもりだった。
・渡辺は睡眠薬入りのお茶を飲まされ、意識を失った。
・その時はスー・チャーウェイは生きていた。
・部屋の外にいた渡辺の子分は、ガラスが割れる大きな音が部屋の中から聞こえた。
・その1時間後、スー・チャーウェイの悲鳴が聞こえた為、部屋の中に突入した。
・突入した際、一番最初に入ったのは、スー・チャーウェイの秘書の小林杏奈だった。
・スー・チャーウェイは死亡しており、渡辺は凶器と思われるガラスの破片を握っていた。
・渡辺には、睡眠薬入りのお茶を飲まされて以降の記憶が無い。
以上の情報を得たタン・レンとチン・フォンは、渡辺の冤罪を証明する依頼を受けますが、もし失敗すれば「黒龍会が黙っていない」と脅しをかけられます。
タン・レンとチン・フォンは野田と共に、スー・チャーウェイが殺害された事件現場を検証します。
現場は完全な密室ですが、チン・フォンは「ガラスは、渡辺が倒れた後に割られた」と推測します。
さらに、現場に残された花瓶から、何者かがスー・チャーウェイを、この花瓶で殴ったという痕跡を発見します。
チン・フォンは「おそらく、スー・チャーウェイを花瓶で殴ったのは渡辺」と推理します。
渡辺に睡眠薬入りのお茶を出したと思われる、女将は自ら命を絶ってしまっており、話を聞くことができません。
そこへ、杏奈が姿を見せます。
チン・フォンが、杏奈から話を聞くと「渡辺にセクハラをされた、あいつは最低だった」と語ります。
杏奈の美しい容姿に惚れてしまったタン・レンは「証拠を見つけた」と、先程発見した花瓶を、杏奈に見せつけてしまいます。
そこへ、事件解決率100%のエリート警視正で、事件の捜査をしていた田中直己が現れ、証拠の花瓶を持ち去ってしまいます。
さらに、ジャックも現れ、タン・レンとチン・フォンに協力を求めますが、2人はそれを拒否します。
タン・レンとチン・フォンは、野田と共に、スー・チャーウェイの検死を行う為、病院に潜入します。
しかし、田中とジャックも病院に姿を見せ、一時は大混乱が起きますが、タン・レンが騒動を起こしている間に、チン・フォンと野田はスー・チャーウェイの検死を開始します。
その結果、渡辺の身長を考えると「スー・チャーウェイをガラスの破片で刺したというのは無理がある」ということと、スー・チャーウェイの首筋に注射の跡が残っていることが分かります。
ですが、タン・レンが田中に渡してしまった花瓶から、渡辺の殺人容疑が固まってしまいます。
渡辺は連行され、探偵たちは黒龍会から報復を受ける立場になってしまいましたが、チン・フォンは事件解決の為に、東京に残ることを決意します。
映画『唐人街探偵 東京MISSION』感想と評価
腕っぷしは強いが、お調子者のタン・レンと、驚異的な洞察力と記憶力を持つ、探偵オタクのチン・フォンのコンビが、難事件に挑む『唐人街探偵 東京MISSION』。
本作は「僕はチャイナタウンの名探偵」シリーズの第3作目となりますが、前2作は日本未公開作品で、現在配信などもされておらず、日本で視聴することが難しくなっています。
では、前2作を見ていないと『唐人街探偵 東京MISSION』は楽しめないかというと、全然そんなことはありません。
本編に入る前に、キャラクターと簡単なあらすじ紹介がある為、本編にすんなりと入っていけます。
『唐人街探偵 東京MISSION』は、空港でタン・レンとチン・フォンを、野田が迎えるところから始まるのですが、いきなり空港内で乱闘が始まります。
その乱闘を長回しで見せるのですが、その場面だけで、身軽な動きを得意とするタン・レンと、戦いは苦手だけど冷静なチン・フォンの、対照的なキャラクターと、その2人を利用する食わせ物の野田と言う、それぞれの関係性が分かるようになっています。
そこへ、今回が初登場となる、ムエタイの使い手だけど、頭が悪い探偵のジャック・ジャーが加わり、この4人がメインとなり物語を動かします。
作中では、耳につけるだけで世界中の言語が分かる万能翻訳機が登場し、4人が中国語、日本語、英語で口論を始める場面は、めちゃくちゃな世界観で面白いです。
特に、この4人が騒動を起こす、夜の病院の場面はコメディとしてかなり練り込まれている、笑いの止まらない場面でした。
メインキャラクターの個性が強いことに加え、物語の核となる謎解きの要素も「渡辺の冤罪事件」「宿敵であるQの罠」と、二重の構造となっています。
前半は、渡辺が冤罪である証拠を集める「推理もの」の要素が強いのですが、事件の鍵を握る小林杏奈が連れ去られる中盤以降は、理不尽な謎解きを強要される「デスゲーム」的な要素が強くなります。
2つの謎が絡み合う展開となると、混乱しそうな印象がありますが、本作の最大の特徴は、物語の展開が速いということです。
例えば「明日の朝まで3億円用意しないとならない」という、普通の映画なら大きな問題になりそうなことでも、御曹司である野田の財力で、あっさり解決したり、杏奈を連れ去った犯人を、車のナンバーだけですぐに見つけたりと、細かい部分は気にしない、とにかくスピーディーな展開となっています。
なので、2つの謎のうち「宿敵であるQの罠」は、どんどん謎が解き明かされていく、なかなか爽快な展開となっていますよ。
途中でいきなり登場してきた、剣道家の集団や力士が謎すぎますが、そこはアクションを楽しむ場面なので、気にしてはいけません。
ただ「渡辺の冤罪事件」での推理パートは、かなりしっかりしており、何度も密室殺人事件の犯行当時の状況を観客に見せて、なんとなく、こちら側も真相を掴み始めた時に、真犯人が分かる構成になっています。
「密室を構成する13の要素」などの情報も絡めており、推理パートは、かなり計算されていると感じます。
また、本作は中盤までコメディ色がかなり強い作品なのですが「渡辺の冤罪事件」の真相が見え始めた辺りから、シリアスな作風になっていきます。
事件の裏にあるのは、あまりにも悲しい貧困問題でした。
父親である渡辺への復讐の為、今回の密室殺人事件を仕掛けた杏奈。
杏奈を演じる長澤まさみが、涙を流しながら語る辛い真実が、これまでドタバタと展開してきた本作を、キッチリと引き締めてくれています。
『唐人街探偵 東京MISSION』は、「推理もの」の要素を持ったコメディ色の強い作品で、遊びの展開と、キッチリと引き締める場面の、緩急のバランスが見事です。
エンドロールでは、出演者全員がテーマ曲に合わせて踊るのですが、ちびまる子ちゃんのコスプレで、満面の笑顔で踊るトニー・ジャーは、見ているだけで楽しくなるので必見です。
本作は「面白い」を詰め込んだ、最高のエンターテイメント作品で、138分の上映時間があっという間に感じる、とにかく楽しい作品でした。
まとめ
本作で、タン・レンとチン・フォンの宿敵である「Q」の正体が判明します。
「少数のエリートが、民衆を支配する」という思想は、陰謀論などに登場する「秘密結社」がモデルとなっているのでしょう。
貧しい家庭の事情が、父親への復讐と言う犯行に走らせた杏奈と、エリート意識から犯行に及ぶ「Q」。
本作に登場する犯人の格差も、1つのメッセージになっているのかもしれません。
ラストに「Q」のメンバーが次々と顔を出していくのですが、その中にある大物俳優がカメオ出演しており、劇場が少しざわついていました。
さまざまな要素を詰め込んだ『唐人街探偵 東京MISSION』、最後まで観客を楽しませようとする姿勢が、本当にお見事な作品でした。