結婚式はまさに、“現代社会の縮図”のようなものです。
人生は人に泣かされ人と笑う、そんな時間をウェディングプランナー30年の大ベテランのマックスが、17世紀のお城を舞台にして豪華絢爛の結婚式をプロデュースします。
いつも通りの完璧な準備だったはずが、集まったスタッフたちが全員クセが強い⁈
トラブル続出の大惨事のラストは、人々を歓びの渦に包み込み、誰もがいつしかハッピーになれる映画です。
CONTENTS
映画『セラヴィ!』の作品情報
【公開】
2018年(フランス映画)
【原題】
Le Sens de la Fête/C’EST LA VIE!
【脚本・監督】
エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
【キャスト】
ジャン=ピエール・バクリ、ジャン=ポール・ルーヴ、ジル・ルルーシュ、ヴァンサン・マケーニュ、アイ・アイダラ、スザンヌ・クレマン、アルバン・イワノフ、パンジャマン・ラヴァンヌ、ジュディット・シュムラ
【作品概要】
『最強のふたり』のエリック・トレダノとオリビエ・ナカシュ監督が、パリ郊外の古城で行われる結婚式に集まる人々の人生と、各自の思惑を交差させながら描いたコメディ映画。
「社会の欠点に目を向けているときに、笑えて、ただ楽しめることを皆が必要としている」と語ったトレダノ&ナカシュ監督は、主人公マックス役に『みんな誰かの愛しい人』で知られる演技派俳優ジャン=ピエール・バクリを迎えて制作。
共演に『この愛のために撃て』のジル・ルルーシュ、『愛しき人生のつくりかた』のジャン=ポール・ルーブ、『夜明けの祈り』のバンサン・マケーニュが脇を固めます。
映画『セラヴィ!』のあらすじとネタバレ
結婚式の打ち合わせをする若い二人とマックス。彼はウェディングプランナーとして、30年間数え切れないほどの結婚式をプロデュースしてきました。
結婚式の打ち合わせをしているがどうも噛み合わない様子。女性が更に工夫が欲しいと言い出します。
マックスにしてみれば、一流のホテルを選んでいるのに低予算で済まそうとする二人に不満だらけのようで、ついに激しい口調になりました。
「デザートは私の姪の手作りで用意させましょう。オードブルは皆さんで持ち寄ればいかかですか?そうそう、いっそメインディッシュも無しにされたら…」
「ーわかりました。また連絡します」目を伏せて男性が女性を連れて帰っていきます。
マックスは、自分の潮時を考えていました。
ある日大きな仕事が入り、電話で仕事の指示をしながら車で移動します。
車内で妻に電話をしますが、いつものように留守番電話。何回もメッセージを残しているのに、連絡がないことをぼやきながら録音が途中で切れます。
そんなある日、17世紀の古城を舞台にした豪華絢爛な結婚式の依頼が舞い込んできました。
依頼主と何度もメールでやりとりし完璧な打ち合わせと準備を整えて、古城に着いたマックスでしたが、いきなりスタッフと雇ったバンドがもめていました。
主任のアデルが叫んでいます。「先に運ぶのがこっちでしょ?なんでエレベーター占領してるわけ?ばかじゃないの⁈」
バンドのヴォーカル、ジェームスも言い返しています。「うるさい!消えろ!」
2人の罵倒がはげしくなり、多くのスタッフが集まっています。
マックスが中に入り、2人をなだめます。
「アデル、君に今日から任すと言っているのに、こんなことじゃ任せられないだろう。落ち着け、暴言もやめて周りを見ろ」
落ち込むアデルを励まして、マックスはお城の中に入っていきます。
マックスが厨房の様子を見に行くと、人が足りない様子。マックスは手配をした筈なのに、アデルにその理由を聞きます。
「昨日のメールで彼を帰すように書かれてありましたよ。私は指示通り家に帰しました」
アデルは昨日のメールを見せました。マックスは自分が言葉を打ち間違えたことに気づきました。
「そうだろうと思って、知り合いで給仕の経験のある奴呼びましたよ」とアデル。
マックスは、ひとまず安心してスタッフの確認に回ります。
そこにカメラマンのギイがやってきます。マックスと古い仕事仲間であるらしく、「マックスだけなんだ、俺を呼んでくれるのは」と嬉しそうに話しています。
横に中学生の男子バスチャンが立っています。
「こいつ中学のインターンで、現場を見せといたほうがいいかなと思って、いいよな」
アデルがお城のバルコニーで、知り合いのサミーと話しています。
「普段着で来てどうすんの?仕事でしょ!白いワイシャツ持って来た?ヒゲも剃って!早く早く!マックスに会ったら、レストランで働いてたっていうのよ。」
シェイバーを持ちながら、不安そうなサミーは聞きます。「どのぐらい質問される?」アデルが微笑んで答えます。
「大丈夫2、3問、バレないよ。100ユーロだよ!」
新郎のピエールがやって来ました。マックスとあいさつもせず、あわてている様子。
「バンドのヴォーカルが違うし、音楽も違う。僕が話したのは、意図なの落ち着いた気品のある結婚式だ。こんなロックみたいな音楽じゃない。」
マックスは笑顔で答えます。「分かっています。彼は喉を温めるだけですよ。ジェームスのももう一度確かめておきます。タオルを振り回すような音楽じゃないぞってね」
ピエールの手元に一冊の本のようなものがありました。それは何かとマックスが聞くと、僕のスピーチ原稿だと自信満々。「あんまりスピーチが得意じゃなくて・・・」マックスは呆れ返っている様子。
南アフリカ系の若い給仕が、話を遮るようにやって来ます。「マックス、口実が…」
マックスは急いで次の仕事場に行くふりをします。「もう少し早く来い。口実も考えて話せ。」
マックスは話が長くならないように、その給仕に何か口実を作って呼びに来るように決めていました。
アデルがマックスを探していました。アデルがひげを剃って着替えたサミーを紹介します。
「君は、どこで給仕してたのか?」レストランでと答えるサミー。
「スズキ(loup仏語)は捌ける?」オオカミ(loup仏語で同じスペル)?
アデルが会話の中に入り、サミーを仕事場へ連れていきます。マックスは急いで次の場所へ。
「ジェームス、素晴らしい声だ。でもちょっと張り切りすぎじゃないのか?大人の雰囲気で落ち着いた気品のある歌でと依頼いたと思うが…」
マックスは、ジェームスに確かめています。
「知ってるよ。喉を温めてただけさ」ジェームスは、おどけて誤魔化します。
新郎のピエールがジェームスに会いにやって来ました。
頼んだヴォーカルではないことを怒り、しかも音楽に文句をつけて来ました。ジェームスは内心快く思っていない様子ですが、穏やかに頷いています。
新郎がさらに注文をつけます。
「人を紹介してほしい、スピーチがあるんだ。我らが最も尊敬し愛する人を紹介しますと…」
ジェームスは、誰のことかを聞きます。
「もちろん僕だよ」とピエール。ー無言になるジェームス。
新郎はイかれてるとスタッフたちは外を見て話しています。
外ではなぜか紐を引っ張られて念入りにダンスをしているピエールの姿。
スタッフのジョジアーヌとマックスは目が合い、「なぜ僕を無視する?」と告げます。
「奥さんにいつ話すの?もう待てないわ、話したくないの。」ジョジアーヌは去っていきます。
妻に電話をしてもやはり留守番電話の繰り返しのマックス。
ホールに全員を集まり、最後の打ち合わせが始まります。マックスは、みんなで1つになって協力すれば、乗り越えられると励まします。
古いお城なので、一番の問題は電源だと繰り返して指示を出します。
一度に電気を使うとヒューズが飛び、停電になるためアデルの指示に従うように話します。
音楽ライブでは、アデルの指示でジェームスが始めるように念を入れます。
スタッフのまとめ役が言いにくそうに口を開き、「このカツラを被るのが…」と言いました。
その一言が皮切りに皆が一斉に不満を言い出します。
この貴族の服装も嫌なのに、カツラが重い、臭い、頭が暑くてフラフラする…。
「給仕の服装を着て仕事をやらないのなら、今すぐ帰れ!」と一喝したマックス。スタッフ全員の気持ちが引き締まり、カツラを被り動き出しました。
いよいよ結婚式の始まりです。
映画『セラヴィ!』の感想と評価
底抜けに面白い!
どこから切り取っても、お腹を抱えて笑い飛ばすことができます。
その要素とは一体何なのか。
それは何と言っても今やフランスのエンターテイメント界を代表する名優たちの演じる、
個性溢れる魅力的なキャラクターです。
大ベテラン30年のウェディングプランナーのマックス
主人公マックスはウェディングプランナーとして30年、完璧なプランを実行する筈の社長。
なのに意外に隙が垣間見えて妻とは離婚すれすれでスタッフと不倫中です。
本人自身歳も感じており、メールを時々打ち間違えて失敗するし、体力がなくて倒れるし、でもスタッフ全員をまとめようと一生懸命な愛情深き人物です。
ユニークでパワフルなバンドボーカルのジェームス
気品のある音楽をと言われて最初は猫をかぶって言われた通りに歌っていましたが、後半は完全にライブ会場。あのタオル回しも満場一致でやってのけます。
主任にアベル
激しい口調で感情をあらわにする女性ですが、ジェームスに心惹かれると、本当に美しい笑顔になります。
まさか新郎の紐を話してキスしてしまうなんて、何度もマックスに叱られても付いていきます。
新郎のピエール
出てきたところから頭でっかちで自信満々な様子が思わず吹き出してしまいますが、あの長〜いスピーチは流石に周りのムードを感じ取っているようで、そこが何とも憎めません。
ましてやあのパラシュートダンスのため、外を飛び跳ねて練習を重ねていたのに、最後、遠く彼方500m先まで飛んで行っていたとのこと。
飛んでいく瞬間、彼の表情を見逃さないでください!
このほかにも口実を何回も言いにいく、あの若き給仕や新婦を口説く義弟ジュリアン。
グラスを間違えてフルート(仏語Flût:同じ意味)を取りに行くサミーなど、見どころ一杯のキャラクター勢揃いです。
まとめ
本作品『セラヴィ!』の素晴らしいところは、ただの破茶滅茶ドタバタ喜劇ではないところです。
2人の監督エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの深く強い思いがあります。
2015年のパリ同時多発テロが発生しその暗闇が広がる中、移民問題を抱え多民族国家フランスを受け入れ、「こんな世の中だからこそ、お祭り騒ぎのような雰囲気の映画を作りたい」という、光を照らしたい一心でこの映画が作られました。
映画の中で今の時代を象徴するような豪華な結婚式、予算や不法労働、着飾るスタッフ、冷凍パイ、iPhoneのカメラやGPS。
シニカルな視線で眺めながら、それを受け入れながらも一生懸命に生きる人々に愛情を注いでいます。
仕事を放ったらかしてGPSで新郎の母エレーヌと出会い、夜のデートをしたのはカメラマンのギイでした。
ラストシーンでマックスに彼はこう呟きます。
「新聞記者になろうと思ってる。ー嘘だよ!」
現実を受けとめながらも、笑いながらも未来に希望を持って生きていく。
この映画はすべての人に贈る人間讃歌です。