連載コラム「邦画特撮大全」第26章
今回取り上げる作品は『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)です。
ゴジラ誕生20周年記念作品として本作は製作されました。本作は人気怪獣メカゴジラが初登場した映画です。
スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018)や、アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』(2017)など、近年ヒットした2本の映画に登場したメカゴジラ。
このことからもメカゴジラの根強い人気が分かります。
今回はそんな人気怪獣・メカゴジラの初登場作品を振り返っていきましょう。
『ゴジラ対メカゴジラ』の作品情報
今回特集する『ゴジラ対メカゴジラ』は、1974年に“東宝チャンピオンまつり”の一篇として公開された、ゴジラ誕生20周年記念作品です。
本作の舞台は沖縄。当時は1973年に沖縄が日本に返還されたばかりで、翌年1975年には沖縄国際海洋博覧会の開催が控えていました。
監督は福田純、特技監督は中野昭慶。本作の原作は「SFマガジン」の初代編集長で作家・翻訳家の福島正実、『ゴジラ』シリーズで数々の名作の脚本を執筆した関沢新一の2人が手掛けています。
脚本は山浦弘靖と福田純監督が共同で執筆しました。
音楽を担当したのは佐藤勝。岡本喜八監督作品や『用心棒』(1961)などの黒澤明監督作品、『日本沈没』や『幸福の黄色いハンカチ』(1977)などで知られる作曲家です。
本作では沖縄民謡やジャズをベースとした音楽で、映画を盛り上げます。
主演は大門正明。大門はその後『ウルトラマン80』(1980)、『電脳警察サイバーコップ』(1988)などの特撮ヒーロー番組にレギュラー出演しています。
また大門演じる清水敬介の弟・正彦を演じたのは青山一也。青山は本作の前年に放送されていた特撮ドラマ『流星人間ゾーン』(1973)に主演していました。
本作のヒロイン・金城冴子はアニメ『ベルサイユのばら』(1979)のオスカル役など、声優としても知られる田島令子が演じています。
そのほか睦五郎や岸田森、草野大悟と、特撮映画や特撮ドラマでお馴染みの癖のある俳優たちが脇を固めます。
またゴジラ誕生20周年記念作品ということもあり小泉博と平田昭彦と、過去のゴジラシリーズを支えた俳優もキャスティングされています。
人気怪獣メカゴジラの初登場
本作が初登場となったメカゴジラ。
今やメカゴジラは人気怪獣の1体ですが、意外にもシリーズ全体で見ると登場時期は遅い方です。
『ゴジラ対メカゴジラ』はゴジラシリーズの第14作目で、次作『メカゴジラの逆襲』(1975)でゴジラシリーズは一旦終了してしまいます。
つまり昭和に製作されたゴジラシリーズの終盤でようやく登場した怪獣なのです。
その名の通りメカゴジラはゴジラを元に製造されたロボットです。
これは『キングコングの逆襲』(1967)に登場するロボット怪獣・メカニコングが発想の元になっています。
また1970年代は『マジンガーZ』(1972~1974)など、ロボットアニメが台頭してきた時期でもあります。そうしたアニメ人気なども影響して誕生したのが、メカゴジラなのです。
メカゴジラのデザインのベースとなったのは西洋の甲冑です。
白銀一色の体や関節部分の蛇腹など、西洋甲冑を思わせる意匠が多く見られます。着ぐるみに蛇腹を取り入れることで、動きやすくなり細かなアクションが表現されました。
またメカゴジラが吐く七色の溶解光線も本作の見どころの1つです。これは特撮パートの監督助手を務めた川北紘一によるアイディアです。
複数色の光線は川北が『ウルトラマンA』(1972~1973)で試したものを発展させたものです。その他メカゴジラの設定関連も川北の手によるものでした。
ゴジラを模したロボット怪獣で全身が武器。西洋甲冑のようなシャープなデザイン。般若をイメージした凶悪な顔。メカゴジラは男の子たちが熱中する要素が盛り込まれた怪獣なのです。
爆発の中野こと中野昭慶の特撮
本作の特技監督・中野昭慶は円谷英二、有川貞昌の後を継ぎ、東宝の3代目特技監督に就任しました。
しかしクレジット上は“特技監督”ではなく“特殊技術”という表記でした。中野が初めて“特技監督”としてクレジットされたのが小松左京原作の『日本沈没』(1973)です。
中野昭慶の特撮の特徴は“爆発”です。まず『ゴジラ対メカゴジラ』は爆発から始まります。数回のフラッシュの後に起きる爆発は、今日再見しても斬新な表現だと思います。
続いて東京湾の石油コンビナートで偽ゴジラ=メカゴジラとゴジラが戦う場面。
メカゴジラの攻撃によって辺り一面火の海と化しています。その後、炎の中で繰り広げられるゴジラとメカゴジラの激闘は圧巻です。
そしてクライマックス。ゴジラ・キングシーサーのタッグがメカゴジラと戦う場面では、これでもかと大爆発が起こるのです。
爆発の回数や状態から、かなりの火薬がつぎ込まれているはずです。このようなダイナミックな爆発描写が映画に迫力を与えるのです。
まとめ
“東宝チャンピオンまつり”の一編として上映された『ゴジラ対メカゴジラ』。
迫力ある映像と流麗なテンポで、観客を飽きさせることのない娯楽作に仕上がっています。
次回の邦画特撮大全は…
次回の邦画特撮大全は『ゴジラVSビオランテ』(1989)を特集します。
お楽しみに。