連載コラム「邦画特撮大全」第2章
前回、特撮という技術はほとんどの映画で用いられることを記しました。
しかし特撮が主戦場となるのは、やはり変身ヒーローや怪獣が登場するものも含むSF映画やパニック映画などです。
昨年2017年に公開40周年を迎えた映画『スター・ウォーズ』。若き日のハン・ソロを描いた『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が先日日本公開されました。
スター・ウォーズもSF映画であるので、もちろん特撮は用いられています。
今回は『スター・ウォーズ』の影響下の元、製作されたある日本映画について語りたいと思います。
深作欣二×スペースオペラ『宇宙からのメッセージ』
『スター・ウォーズ』が本国アメリカで公開されたのは1977年、しかし日本公開は1978年の6月と1年1か月後。前評判を耳にした日本の映画界は2つのスペースオペラ映画を製作します。
東宝の『惑星大戦争』(1978)、東映の『宇宙からのメッセージ』(1978)がその2本です。
今回は『惑星大戦争』については割愛し、『宇宙からのメッセージ』について語っていきましょう。
『宇宙からのメッセージ』(1978)
皇帝ロクセイア12世(成田三樹夫)率いるガバナス帝国によって要塞に改造されてしまった惑星ジルーシア。
ジルーシア人の酋長キド(織本順吉)は救世主となる者を求め、聖なる8つのリアベの実を宇宙に放ちます。孫娘エメラリーダ(志穂美悦子)と戦士ウロッコ(佐藤允)の2人は実を追って勇者を迎えに行く旅に出ます……。
8つの実と勇者などから、本作は『南総里見八犬伝』がベースとなっていることが判ります。
そしてリアベの実に選ばれた勇者ですが以下の8人ですが、ロボットを含む老若男女です。
本作の監督は『仁義なき戦い』で知られる深作欣二。撮影は東映京都撮影所。
本作のクライマックスである王子ハンス(千葉真一)とロクセイア12世の殺陣など、時代劇的な要素が多分に含まれています。
10億円という製作費、東映京都撮影所の20ステージの内8ステージを使用、ドラマ『コンバット!』(1962~1967)の主演で日本でも人気のあった俳優ヴィック・モローの招聘など力が入ったものです。
もちろん本作は矢島信男特撮監督の下、特撮にも力が入っていました。
『宇宙からのメッセージ』の特撮技術
まず本作の星空には電球が仕込んであり、それぞれの星を明滅させています。
ミニチュア撮影には、巨大感を出すためにシュノーケルカメラ(小型カメラ)が使用されました。シュノーケルカメラは当時世界に3台しかなく、本作は1か月間その内の1台を借り切っていました。
また本作は初めて東通ecgシステムが使用された作品でもあります。
東通ecgシステムとは光学合成技術の1つで、ビデオ信号をフィルムに変換するというもの。現場で合成の仕上がりを確認することができ、深作欣二は現場で合成の調整(人物や戦艦の位置)をしたといいます。
結果的に評価と興行収入は『スター・ウォーズ』に遠く及びませんでした。
しかし、シュノーケルカメラの使用、東通ecgシステムの使用など、特撮史的に重要なポイントなのです。
東通ecgシステムは後にTV特撮でも用いられ、特に『宇宙刑事ギャバン』(1982)の独特な映像はecgシステムによるところが大きいと思います。
ビデオ撮影、デジタル合成が主流になり東通ecgシステムは1996年を最後に使用されなくなりました。
意志の継承『宇宙戦隊キュウレンジャー』
『宇宙戦隊キュウレンジャー 救世主の記憶 メモリー・オブ・ショウ・ロンポー』
2017年度のスーパー戦隊『宇宙戦隊キュウレンジャー』。
全宇宙の99%を掌握した宇宙幕府ジャークマターと、宇宙を守るためジャークマターと戦う宇宙戦隊キュウレンジャー9人の戦いを描いた作品です。
全宇宙が舞台ということもあり、本作は全体的にビジュアルに力が入っています。
特に第1話に登場する惑星クロトスや、第3話に登場する惑星ニードルのビジュアルには息を呑むものがありました。「スーパー戦隊」というと採石場を思い起こしてしまう方、必見です。
ただ1年間の放映ということもありシリーズ終盤、ビジュアル面(ロケ地等)が若干パワーダウンしてしまったのは否めません。
9人(最終的には12人)という人数はスーパー戦隊シリーズにおいて最多数です。
そのため回ごとに、メンバー選抜(大体5人)をします。また各班に分け同時並行して任務にあたったり、一部のメンバーが後方支援にまわったりなど、人数を生かした作劇が非常に面白かったです。
実は『宇宙戦隊キュウレンジャー』のイメージソースの1つは『宇宙からのメッセージ』なのです。
キュウレンジャーはキュータマという変身アイテムに選ばれます。
これはリアベの実を想起させます。キュウレンジャーのメンバーが人型宇宙人の他、ロボットや獣人型宇宙人など多彩なメンバーという点も『宇宙からのメッセージ』と共通しています。
また敵の名前が「宇宙幕府」、彼らの役職名がショーグン、カロー、ダイカーンなど、時代劇の要素も取り込まれています。
決して評価が高いとは言えない『宇宙からのメッセージ』ですが、東映という会社の中ではしっかりと血肉となっていたのです。
Vシネクスト『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース スクワッド』予告編
次回の「邦画特撮大全」は…
第3章では、金子修介監督・樋口真嗣監督による平成ガメラ3部作の特撮について検証いたします。
お楽しみに!