Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2019/05/17
Update

シアターモーメンツ『#マクベス』の舞台本番直前!劇団稽古に潜入リポート| THEATRE MOMENTS2019①

  • Writer :
  • 加賀谷健

連載コラム『THEATRE MOMENTS2019』第1回

世界基準の演劇を目指し、これまで精力的な活動を続けてきた劇団シアターモーメンツ

コラボレーション企画第2弾となる今回は最新公演『#マクベス』の稽古場へ潜入します。

演出家とキャスト陣がそれぞれに意見を交わしながら一丸となってひとつの表現を形づくっていく稽古場の臨場感をリポートしていきます。

【連載コラム】『THEATRE MOMENTS2019』記事一覧はこちら

シアターモーメンツの新作『#マクベス』の稽古場を体感!

©︎Cinemarche

稽古場の自由な空気感

稽古場を訪れて、まず驚いたのは、台本がはじめから用意されておらず、演出家である佐川大輔の構想を基に、一から稽古場で作られていくことです。

演出家と俳優たちの間で何か疑問に思うことがあれば、すぐに立ち止まり、自由な意見交換を交わしながら全体でひとつの問題を解決していきます。

このような話し合いによって演劇を作り上げていく手法は「デバイジング」と呼ばれ、その実践が演劇界では大きな注目を集めています。

劇の流れが即興的に形づくられ、かつリアルタイムで立ち上がっていく、その瞬間、瞬間をキャスト全員がエネルギッシュに生きているのです。

©︎Cinemarche

この稽古場が美しいのは、全員の表情が明るく、とにかく笑顔で溢れていることです。

古典であるシェイクスピアの悲劇を上演しようとする厳めしい雰囲気などありません。

しかし全員が真剣そのもので、観客へ面白い作品を提供しようとするひたむきな姿勢が心に残ります。騒がしくも楽しげで、活力に満ちた臨場感。その額からこぼれる汗の一粒一粒が何よりの証拠でしょう。

躍動する身体

©︎Cinemarche

劇団新作のために演出家の佐川大輔が構想した『#マクベス』は、ネットを中心とする情報化社会のコミュニケーション問題を取りあげ、400年も昔のシェイクスピア劇を身体と小道具を巧みに使用しながら蘇らせる野心的な作品です。

シェイクスピアの古典をみたことがない人でも、演劇の世界が身近なものとして感じられるような工夫が随所に凝らされています。

現実的なテーマ性は上演の意義として重要ですが、より根源的な表現を目指し、俳優の身体(肉体)が最大限活用されるところに『#マクベス』の面白さと核心があります。

躍動する身体と演技の枠にとらわれない表現は、観客の心にダイレクトに働きかけ、客席に眠る衝動が舞台へ放出されるきっかけを作ります。

©︎Cinemarche

下手から上手へ、翻って上手から下手へ。ビートを刻みながら空間全体を自由闊達に動き回る息づかい。

実際、キャストの中にはプロダンサーとして活躍している人もおり、高い身体能力と研ぎ澄まされたリズム感が、通常の演技を超えた迫真性をもつパフォーマンスを可能にしており、それがビジュアルとしても強固なイメージを生み出しています。

完成されたものではなく、今まさに作られつつある、ライブ的な、生のパフォーマンスに立ち会い、誰よりも早く体感出来ることの贅沢さと喜びを感じた稽古場の時間でした。

劇団THEATRE MOMENTS(シアターモーメンツ)とは

参考映像:『遺すモノ〜楢山節考より〜』

2004年、佐川大輔と中原くれあを中心に、「日本発のワールドスタンダード演劇の創作」を目的に設立。

小説や戯曲をベースに、俳優とアイディアを出し合うデバイジング集団創作に加え、ルコックやスタニスラフスキーの演劇手法を使い分け、普遍性と演劇性の高い舞台を生み出しています。

そのスタイルは「一人複数役を演じ、常に出ずっぱりの俳優」「アンサンブルによる身体表現」「テーマ小道具の変幻自在な見立て」「前説から本編へのシームレスな導入」など、独自の特徴があります。

2013年の第四回せんがわ演劇コンクールでグランプリ、観客賞、演出賞を受賞。

海外では、2013年マカオフリンジフェスティバル(中国)、2014年メルボルンフリンジフェスティバルなどへ参加。2016年にはマカオに招聘され、海外の劇団では現地初となる3か月連続上演。

本作『#マクベス』もすでに、2019年8月にマカオ公演が決定しています。

THEATRE MOMENTS公演『#マクベス』の作品情報

【日本公演】
2019年
5月29日(水)19:30
5月30日(木)19:30
5月31日(金)14:30 / 19:30
6月1日(土)11:30 / 16:30

【場所】
調布市せんがわ劇場

【料金】
[一般] 前売4,000円/当日4,500円/リピーター割2,500円
[U25割] 前売2,500円/当日3,000円/リピーター割1,500円
[U18割] 前売1,000円/当日1,000円/リピーター割500円
[初日割] 前売3,000円/当日3,500円
[平日マチネ割] 前売3,500円/当日4,000円/リピーター割2,500円
[ペア割] 前売7,400円/リピーター割2,500円(1名あたり)
[3名以上割] (1名あたり)前売3,500円/リピーター割2,500円
[調布市民割・外国人割・ハンディキャップ割] 前売3,000円/当日3,500円/リピーター割2,500円

【構成・演出】
佐川大輔

【原作】
ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』

【キャスト】
青木まさと、荒井志郎(青☆組)、池田美郷(O’RAMA Rock’n’Roll Band)、大窪晶(演劇集団円)、今野健太(THEATRE MOMENTS)、ちょびつき雨宮、中原くれあ(THEATRE MOMENTS)、三橋俊平

【作品概要】
THEATRE MOMENTS第23回公演。

「ワールドスタンダードな演劇」を前提として、ウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』をTHEATER MOMENTSならではの切り口と小道具と身体を駆使した独自のスタイルで創作される新作です。

また、日本公演以外にも、2019年8月にマカオ公演が決定しています。

構成・演出はTHEATRE MOMENTS主宰の佐川大輔が努めます。

【『#マクベス』チケットのご予約はコチラ】

『#マクベス』のあらすじ

スコットランドの勇将マクベスは、ノルウェー軍との熾烈な戦いに勝利した後、奇妙な出で立ちの魔女たちに出会い、「やがて王になる」という予言を受けます。

その予言を伝えられたマクベス夫人は、夫の出世に魅了されます。

そんな中、勝利の宴がマクベスの城で行われ、スコットランド王のダンカンが訪れることとなり、マクベス夫妻は予言を現実のものとするべく王殺しを企てますが…。

まとめ

©︎Cinemarche

叩き上げの台本が、ここからどのように化け、ひとつの舞台劇として完成されていくのか。そしていよいよ本番では、さらに磨きがかかった演技が稽古場を飛び出して、いかにバージョンアップされているのか。

『#マクベス』では観客の熱気が重要な推進力となります。臨場感ある劇場の空気感の中で、自然と心と身体が温まり、想像力を刺激されながら、むずむずとした衝動を舞台上へ向けて参加させていくのです。

これはライブである演劇の醍醐味でもあります。堅苦しいことは抜きにして、全身でシェイクスピアを体感してみてはいかがでしょうか。

次回は『#マクベス』公演のキャストインタビューをお届けします。乞うご期待!!!

関連記事

連載コラム

映画『ホテル・ムンバイ』キャスト【アーミー・ハマーのインタビュー:恐怖のホテルとは】FILMINK-vol.9

FILMINK-vol.9「Armie Hammer: Hotel of Horror」 オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映 …

連載コラム

映画『蹴る』感想と内容解説。中村和彦監督が電動車椅子サッカーに情熱を注ぐ者たちを撮る|だからドキュメンタリー映画は面白い13

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第13回 電動車椅子を“足”とする者たちが、フィールドを駆け回る――障がいを抱えながらも、彼らはなぜ、そうまでしてボールを追い続けるのか? 『だからドキ …

連載コラム

韓国映画『群山:鵞鳥を咏う』あらすじと感想レビュー。中国朝鮮族への言及と飛び交う様々な言語|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録14

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第14回 3月8日から17日まで10日間に渡って催された第14大阪アジアン映画祭も無事閉幕。 アジア圏の様々な国の多種多様な作品51本が上映され、グランプ …

連載コラム

映画『461個のおべんとう』感想と評価レビュー。井ノ原快彦主演で“イノッチらしさ満載の愛情弁当”は必見|映画という星空を知るひとよ32

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第32回 2020年11月6日(金)に全国ロードショー公開を迎える映画『461個のおべんとう』は、高校へ行く息子のためにおべんとう作りを3年間、毎日欠かすことな …

連載コラム

【SF映画2021】話題作ランキング5選!劇場公開ベストな洋画邦画の内容解説と見どころを紹介【糸魚川悟セレクション】|SF恐怖映画という名の観覧車137

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile137 2020年はハリウッドによる大作映画が軒並み延期し、SF映画好きには辛い1年でした。 しかし、その分2021年には大規模な撮影が行われた …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学