Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2025/10/26
Update

『見えない空の下で』あらすじ感想と評価考察。おすすめ映画祭上映作はウクライナの地下鉄に避難する子供たちを映す|いま届けたい難民映画祭2025vol.2

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム『いま届けたい難民映画祭2025』第2回

難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています。

今年で20回目を迎える難民映画祭。それは、「節目」であると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあります。

第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開します。公開される9作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。

今回紹介するのは、ロシアの侵攻後、ウクライナ・ハルキウの地下鉄駅に身を寄せる家族を描いたドキュメンタリー映画『見えない空の下で』(2023)です。

ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月。12歳のニキータは、家族とともに家を逃れ、ハルキウの地下鉄に身を寄せます。

外の世界はいつ攻撃されるか分からない状況で、ニキータは外に出ることを禁じられています。

終わりの見えない世界で、ニキータはひとりの少女と出会います。息苦しさのなか手を取り合う人々を映し出したドキュメンタリー。

第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら

映画『見えない空の下で』の作品情報


(C)Punkchart Films

【日本上映】
2025年(ウクライナ映画)

【原題】
Photophobia

【監督】
Ivan Ostrochovský、Pavol Pekarcík

【作品概要】
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻しました。ウクライナを逃れる人や、国内で避難する人も相次ぐなか、ハルキウの地下鉄駅内に身を寄せる人々を映し出したドキュメンタリー。

監督らも共に地下鉄で暮らし、人々の暮らしのリアルな様子を映し出した本作は、第96回アカデミー賞国際長編映画賞のスロバキア代表として選出されたほか、ジュネーブ人権映画祭(FIFDH)2024やヴェネツィア国際映画祭2023で受賞しました。

映画『見えない空の下で』のあらすじ


(C)Punkchart Films

2月、突如戦争が始まり、12歳のニキータは家族と共に、ハルキウの地下鉄の駅に身を寄せます。

地下鉄には多くの人が集まり混雑しています。連日人がやってきて食べ物を分け合いながら、先の見えない暮らしをしています。

ニキータは危険だからと外に出ることも許されず、ネオンの明かりの下で息苦しさを感じながら生活しています。

そんなある日、ニキータは11歳の少女ヴィーカと出会い、閉ざされた世界で2人は心を通わせていきます。

映画『見えない空の下で』の感想と評価


(C)Punkchart Films

ロシアの侵攻後、ウクライナ・ハルキウの地下鉄駅に身を寄せる家族を描いたドキュメンタリー映画『見えない空の下で』(2023)。

昨年の第19回難民映画祭で上映された『永遠の故郷ウクライナを逃れて』(2024)は、ウクライナから逃れる人々の様子を車の中で撮影したドキュメンタリーでした。

そこに映し出されていたのは、戦火で故郷を追われた市民のリアルな姿でした。

本作も同様に、ロシアの侵攻後、地下鉄の駅に身を寄せる人々のリアルな姿を映し出しています。

空爆の恐怖が拭えず、地下鉄に着いても体が震え、泣き叫び続けた人や、配給を貰いに行っても何もなかったと言う人……。

突如奪われた日常、先の見えない息苦しい日々。

そんな状況下で暮らす12歳のニキータは、外は危険だからと外に出るのを感じられ、地下鉄のネオンの下で暮らしています。

太陽の光を浴びていないニキータは、ビタミンが不足し、体も弱まっています。地下鉄では多くの人が身を寄せ合い生活しているため、食事が十分にあるとは言えません。

先の見えない息苦しさにより、精神的にも塞ぎがちでした。

そんなニキータが出会ったのは11歳のヴィーカでした。

新しい友達ができて嬉しいニキータは、生き生きとした表情で笑い合いながら走り回ります。

その姿は一筋の希望であると同時に、その背後にある戦争の影、奪われたものを想起せずにはいられない残酷さもあります。

どんな状況下であっても強く生きる人々の姿は何よりも希望であり、強いメッセージでもあります。

まとめ


(C)Punkchart Films

ロシアのウクライナ侵攻から3年が経ちますが、停戦には至っていません。

クリミア半島に近い、マウリポリは陥落し、ロシアの侵攻が広がっています。

本作は、ロシア国境から近いハルキウで、地下鉄駅に身を寄せる人々の姿を映し出しています。

空爆から身を守るため地下で生活する人々ですが、いつ終わるのか、食料は持つのかと、先の見えない現状に多くの不安を抱えているでしょう。

大人たちは、命を落とす危険があってもハルキウから逃れるべきか、それとも地下鉄でもう少し様子を見るべきか、日々悩み葛藤しています。

ニキータは子供とはいえ、何も分からない年ではありません。

大人の不安を感じ取り、攻撃に対する恐怖も感じているでしょう。

そんなニキータがヴィーカと出会い遊ぶ姿は等身大で2人の時間は2人にとっても、見ている観客にとっても続いてほしいと願わずにはいられない、あるはずの平和がそこにあります。

しかし、どこまでも戦争の影がつきまとい、なぜこの子達の平和な日常が奪われなければならないのか、改めて感じさせられます。

第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。

難民映画祭詳細はHPにて

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら



関連記事

連載コラム

韓国映画『10人の泥棒たち』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。キムスヒョンの銀幕デビューに豪華キャスト集結!|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー22

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第22回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

連載コラム

全裸監督2|7話ネタバレあらすじ感想と結末解説。ヘア解禁とVシネマとなる時代を描いた意味!シーズン2の見どころ考察

「空からエロが降ってくる」Netflixドラマ『全裸監督シーズン2』を完全紹介 2019年8月、Netflixオリジナルドラマとして全世界に配信された『全裸監督シーズン1』。2016年出版の伝説のAV …

連載コラム

映画『マザーズ』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。アリ・アッバシ監督の『ボーダー 二つの世界』と共にホラーの真髄を解く

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第6回 映画ファン待望の毎年恒例のイベント、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が今年も開催されました。 傑作・珍作に怪作、心理的に …

連載コラム

映画『RBG最強の85才』感想と内容解説。ドキュメンタリーで見つめる全米で最も尊敬される女性の半生|だからドキュメンタリー映画は面白い15

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第15回 アメリカの女性や若者たちから絶大な尊敬を集める、「RBG」とは何者? 『だからドキュメンタリー映画は面白い』第15回は、2019年5月10日か …

連載コラム

映画『Noise ノイズ』感想と考察。ノイズミュージックとの関係から希望を考える|映画道シカミミ見聞録36

連作コラム「映画道シカミミ見聞録」第36回 こんにちは、森田です。 今回は3月1日よりテアトル新宿ほかで公開中の映画『Noise ノイズ』を紹介いたします。 秋葉原に代表されるそのノイジーな空間や人間 …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学