連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第8回
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の「未体験ゾーンの映画たち2019」で、58本の映画がまとめて上映されています。
日本公開が見送られていた傑作や怪作映画をスクリーンで鑑賞できる、すっかりお馴染みになった劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち」。
今回はスティーブン・セガール主演の沈黙シリーズ最新作『沈黙の終焉』です。
“史上最強のオヤジ”であるセガールが自ら処刑人チームを結成、東南アジアを舞台に悪の組織と対決する!
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CONTENTS
映画『沈黙の終焉』の作品情報
【公開】
2019年(イギリス・ハンガリー・フィリピン合作映画)
【原題】
General Commander
【監督】
フィリップ・マルチネス、ロス・W・クラークソン
【キャスト】
スティーブン・セガール、ミーガン・ブラウン、バイロン・ギブソン、エドアルド・コスタ、エルデトゥヤ・バツク
【作品概要】
CIAのベテラン捜査官ジェイクは、殺された部下の仇を果たすため辞表を提出します。
新たな処刑人チームを結成したジェイクは、闇の臓器売買組織と最後の死闘を繰り広げるという、“沈黙シリーズ”でお馴染みのアクション俳優・スティーブン・セガール主演作品です。
ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。
映画『沈黙の終焉』のあらすじとネタバレ
多くの患者が臓器移植を待つ現在。闇市場では100万ドルで取引される心臓もあるという…。
CIAのタイ・バンコク支部の一室で、査問を受けるジェイク・アレクサンダー(スティーブン・セガール)。彼はCIAのベテラン捜査官で、アメリカを愛し任務に身を捧げてきました。
ジェイクは辞職をほのめかし、CIAのジェシカ(ミーガン・ブラウン)に激しく抗議して、任務の続行を主張します。
その2週間前のカンボジアのプノンペン。夜の街で赤いドレスの女を監視するジェイクが率いる監視チームがいました。
華やかなクラブに入った女は、声をかけてきた男をホテルへと誘いますが、この男ザックもジェイクのチームの一員で、囮として女に接近しました。
そんなザックをチームメンバーは、全てを監視しながら援護しています。
ホテルの一室で女は酒に薬を盛り、ザックを眠らせるとメールを送りました。
それを合図に現れた一団の男たちは臓器密売組織のメンバーで、このような手口を使い、闇ルートの非人道的に臓器を手に入れていました。
ジェイクは今回の囮捜査で、組織の首謀者オルテッセイ(エドアルド・コスタ)の逮捕を狙っていました。
ザックの身体から臓器が奪われようとした時、ジェイクのチームは部屋に突入と、一味の車をバイクで追う者に別れ動き出します。
車は横転し爆破され、部屋にいた男たちを次々と倒しますが、援護していたザックは人質に取られてしまいます。
武器を捨てろと説得するジェイクたちですが、犯人は抵抗を見せたことで、盾にされたザックは死亡。
こうして囮捜査は失敗に終わり、CIAからジェイクは作戦の責任を取らされてしまいます。
チームに所属する他の5人もジェシカの査問を受け、CIAはジェイクのチームの解散を決定します。
一方、マルタにいる組織のボスであるオルテッセイは、証拠を隠滅しようと、プノンペン警察の協力者の元に手下を送り、逮捕されたドレスの女を自死させます。
このような組織の暗躍が続いてもCIAの方針は変わらず、チームのメンバー全員に帰国が命じられます。
しかしチームの面々はこの地で任務を継続し、ザックの仇を討つことを望んでいました。そんなメンバーに対しジェイクは、時間の猶予を求めます。
亡くなったザックと付き合っていた暗殺のエキスパートのソニアを、凄腕のハッカーであるローゼンが慰めます。
スパイで女バイカーのマリアは、苦しい胸の内を教会の神父に打ち明けました。
ジェイクの片腕で、射撃の名手でもあるベントン(バイロン・ギブソン)は、ジェイク同様CIAの命令に激しく反発。
そのベントンと、元海兵隊員で格闘の達人のハリスンは、命令には逆らえないと対立します。
その間にジェイクは香港で、大富豪の女ソコロフと接触。彼女の協力でCIAを離れ、独立した新たなチームの設立を計画します。
組織のボスであるオルテッセイは、今回の囮捜査を誰が実行したのかを調べるため、自らプノンペンに現れます。
事態が動く中、CIAのニューヨーク支局にはジェイクの動きを快く思わぬ人物がいました。
単独で行動中のジェイクに暗殺者が襲い掛かりますが、彼は返り討ちにします。
暗殺者を送り込んだCIA内部の人物に対し、ジェイクは今後手を出すなと警告します。
アメリカに帰国するCIAの飛行機に、チームの者は誰一人乗りませんでした。
CIAを離れた5人は、ジェイクと合流するためにフィリピンのマニラに到着。
ここでソロコフを加えた、ジェイクをリーダーとする新たなチームが結成されました。こうして悪と闘う処刑人チーム“ジェネラル・コマンダー”が誕生します。
映画『沈黙の終焉』の感想と評価
セガール主演の「沈黙」シリーズとは
アクション俳優のスティーブン・セガールと言えば、「沈黙」シリーズが有名ですが、これはあくまでも日本だけの総称されたシリーズ名です。
まったく個別の異なったセガールが主演した作品を、日本公開に合わせて、“沈黙シリーズ”と名付けた一連の作品群をこのように呼びます。
1993年日本公開の『沈黙の戦艦』のヒットにあやかり、1994年のセガール主演の別の映画に『沈黙の要塞』の邦題をつけたのが始まりです。
なお『沈黙の戦艦』の正当な続編映画には、“沈黙”が付けられず『暴走特急』の邦題で封切られたのも有名な楽屋ネタとしてご愛敬。
このようにセガール主演映画の邦題として使用された“沈黙”というタイトル冠は、今や配給会社の垣根を越えて使われています。
ほかにもセガール主演のテレビドラマ『TRUE JUSTICE』は『S・セガール劇場』の名で放送、このシリーズの各エピソードの邦題にも“沈黙”が使用されてもいます。
今や日本には、とんでもない数の「沈黙」シリーズ作品が存在しています。
正しくは『沈黙の“General Commander”』
前述のテレビドラマ『TRUE JUSTICE』の作品は、映画「沈黙」シリーズとして、日本で一部劇場公開されています。
テレビ作品として制作されたテレフィーチャーが劇場公開されることは、昔からよくありました。
かつてアメリカではTVM(テレビ映画)の名で製作され、本国ではテレビ放送扱いですが、海外マーケットでは映画として売り込める作品の制作が盛んに行われた時期がありました。
1971年に制作されたスティーブン・スピルバーク監督のテレビ映画『激突!』は、その代表作として有名です。
また現在、NetflixやAmazonのようなネット動画配信サイトが独自に映画製作のコンテンツに乗り出したことで、映画界以外の映像制作した劇場公開もますます増えてくることでしょう。
『沈黙の終焉』も実はドラマシリーズ、『General Commander』として製作された作品。そのように理解をすると、本作の奇妙な展開にも納得がいくのではないでしょうか。
B級アクション映画製作の背景
『沈黙の終焉』は東南アジアを舞台に、世界のマーケットを意識して作られた英語映画です。
製作国にハンガリーが入っていますが、最近は東欧からの資金で作られる娯楽映画も増えています。
東欧の出資者を納得させる為に、国政的知名度のあるスターを起用した、世界マーケットで売れるアクション作品を制作するというビジネスモデルが定着しているのです。
本作の主演俳優セガールに限らず、ジャン=クロード・ヴァン・ダムやドルフ・ラングレンの作品にも、こういった背景で生まれた理由が存在しています。
さらに本作にはビデオバブル期に、世界に向けて多くのB級アクション映画を送り出したフィリピンも参加しています。
こういった背景を持つ『沈黙の終焉』が、アクションや美女を配してド派手な爆発が起こり、そして唐突に武装へリが乱入する作品になった理由もお判りいただけるでしょう。
娯楽要素を詰め込んだテレビドラマシリーズへの導入
本作はCIA捜査官セガールが、組織を離れて自分のチームを結成するまでが今回の物語。
今後、活躍するチームのメンバーの背景を紹介し、派手なアクションで視聴者の関心を惹きつける。
メンバーはアクションをこなせる女優が参加、見る者を飽きさせません。
しかしテレビ放送を意識しているのか、お色気やバイオレンス描写は、ほどほどの範囲に収められています。
そして将来関わってくるであろう、まだ謎に包まれた人物も登場。これは単独の映画として観ると、説明不足で少々困惑で回収不足担っています。
作品資料に一部混乱があったりするのも、映画資料とドラマシリーズ資料の混在に起因しているようです。
さて、『General Commander』が順調に映像製作が実行され続けば、セガールのチームはアジア各国を舞台に大活躍する予定。
なかには、日本が舞台になるエピソードも企画されているとか⁈
今後の展開に期待しつつ、無邪気にセガールの主演の「沈黙」シリーズのアクションを楽しんでくださいね。
まとめ
本作の劇場公開用のチラシには、大きく「セガール引退」の文字がありますが、劇中でCIAは引退しましたから、まあ「嘘」ではないでしょう。
しかし、そのほかにも「セガール死す!?」との文字もありますが…、あくまで次回作へ続く「to be continued」という振りでの生死不明状態ということですから、セガールファンの皆さん、どうぞご安心して鑑賞下さいね。
次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…
次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は未知の地球外生命体と人類の遭遇を描いたSF映画『ファースト・コンタクト』を紹介いたします。
お楽しみに。