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映画『108時間』結末ネタバレとラストまでのあらすじ。ニューウェーブ演劇と多重構造で物語る演出|未体験ゾーンの映画たち2019見破録57

  • Writer :
  • 映画屋のジョン

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第57回

ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回は眠らずにいる果てに、何が起こるのかを描く舞台劇をテーマにした、異色のスリラー映画を紹介します。

俳優を追いこむ過酷な演出で知られる、著名な舞台演出家の新作は、廃屋となった精神病棟を舞台に使用するものでした。

それはかつて彼女が、主演女優を108時間眠らずに演じさせた前衛演劇を踏まえて、新たな描かれた舞台劇です。

演出家は俳優に実際に眠らず過ごさせ、登場人物の心理状態に近づく様に求めます。主役を狙う女優ビアンカも不眠に挑みますが、幻覚に襲われ心身共に追いこまれていきます。

役柄となった女性について調べたビアンカは、舞台劇に隠された恐るべき事実を知ります。

第57回は禁断のブレイン・バースト・スリラー映画『108時間』を紹介いたします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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映画『108時間』の作品情報


(C)2018 PAMPA FILMS S.A./GLORIAMUNDI PRODUCCIONES SL/WHITE FILMS AIE/ TANDEM FILMS/MOTHER SUPERIOR TODOS LOS DERECHOS RESERVADOS

【日本公開】
2019年(アルゼンチン・スペイン・ウルグアイ合作映画)

【原題】
No dormirás / You Shall Not Sleep

【監督】
グスタボ・エルナンデス

【キャスト】
ベレン・ルエダ、エヴァ・デ・ドミニシ、ナタリア・デ・モリーナ、ヘルマン・パラシオス、フアン・マヌエル・ギレラ、マリア・アルフォンソ・ロッソ

【作品概要】
不眠をテーマに登場人物を襲う、様々な恐怖を描く異色のスリラー映画です。

監督はワンショットで描いたPOVホラー映画、『SHOT ショット』でデビューした、ベネズエラ出身のグスタボ・エルナンデス。

評判となった『SHOT ショット』はハリウッドで、エリザベス・オルセン主演の映画『サイレント・ハウス』としてリメイクされています。

主役のビアンカを演じるのは、アルゼンチンのモデル出身の女優エヴァ・デ・ドミニシ。

謎を秘めた舞台演出家を演じるのは、アレハンドロ・アメナーバル監督の『海を飛ぶ夢』や、J・A・バヨナ監督の『永遠のこどもたち』に主演したベレン・ルエダです。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『108時間』のあらすじとネタバレ


(C)2018 PAMPA FILMS S.A./GLORIAMUNDI PRODUCCIONES SL/WHITE FILMS AIE/ TANDEM FILMS/MOTHER SUPERIOR TODOS LOS DERECHOS RESERVADOS

薄暗い廊下に現れた女性。音楽を流していたレコードプレーヤーを止め、辺りの様子を伺います。彼女は血の跡が残る廊下を歩いて行きます。

彼女は部屋の中で一心不乱に髪をとぐ、老婆サブリナ(マリア・アルフォンソ・ロッソ)の姿を目にします。

ガラス越しに観客が見守る中、髪をといでいるのは、その女性自身でした。時は1975年。この前衛劇「断眠」を演出しているアルマ(ベレン・ルエダ)が、観客に解説しています。

ガラスの中にいる女優、マーリ-ナは絵を描くのが上手になったと語るアルマ。彼女は俳優を眠らせない状態に追いこみ、演じさせる試みを行っていました。

彼女が現実と幻覚の、演じている人物サブリナと自分の区別がつかなくなっています。その状態で演じさせる実験的試みを、誇らしげに観客に解説するアルマ。

彼女の断眠状態は、ついに108時間を越えました。観客の前で奇妙な行動を取り始めるマーリ-ナ。彼女は幻覚に支配されて動いていました。

断眠実験を行った結果、96時間を越えると精神異常の兆候が表れると報告されています。そして1980年代、これを越える試みが行われてた、と紹介され物語は始まります。

1984年。舞台で出番を待つ女優、ビアンカ(エヴァ・デ・ドミニシ)とセシリア(ナタリア・デ・モリーナ)。まもなく出番という時に、ビアンカの父が現れます。

スタッフの制止を振り切って現れた父は、血相を変えて娘に新聞記事を示します。彼女を紹介した記事を読み、居場所がばれたと訴える父をビアンカは楽屋に案内します。

落ち着くよう言い聞かせ、座らせた椅子の周囲の床に、父のペンダントに入れたチョークで円を描くビアンカ。このスペースは安全だと父に言い聞かせます。

精神的に不安定な父を落ち着かせ、舞台に立ったビアンカ。その姿を客席からアルマとその助手、クラッソ(ヘルマン・パラシオス)が見つめていました。

出番を終えたビアンカが楽屋に戻ると、円の中に父の姿はありません。父を担当する医師に電話をかけ、早く来てほしいと依頼するビアンカ。

電話を終えたビアンカに、クラッソが声をかけます。演出家のアルマが彼女に興味を示し、新作舞台の主役に彼女を候補として検討していると伝えます。

その劇の主演女優は、アルマの指導に耐えられず脱落したと伝えるクラッソ。アルマの舞台は厳しいが君の代表作となり、何よりアルマは君を高めてくれると話します。

父の介護がある、と答えたビアンカに、クラッソは返事は2日待つと答えます。

ビアンカが家に帰ると、父は部屋にこもっていました。安心した彼女はビデオテープを流します。それはあの舞台劇「断眠」について語る、演出家アルマ・ベームを紹介するものでした。

インタビューに対し、芸術家は創造するが私は破壊する、と答えるアルマ。彼女は演者には命を賭けて欲しいと語っています。

ビデオを見ていたビアンカの前に、ハサミを持った父が現れます。連中に見つかると訴え、ハサミを手にしたままビアンカに迫る父。彼女の腕を傷つけ、父は我に返ります。

駆け付けた医師が彼女を手当てします。落ち着きを取り戻した父は、自ら入院を決断します。お前には犠牲を強いてきた、だがお前には才能があると、ビアンカを励ます父。

彼は娘に、下げていたチョークの入ったペンダントを渡します。救急車に乗り込んだ父を見送るビアンカ。

父の世話から解放され、応援を得たビアンカは、アルマの舞台に立つ事を決意します。

ビアンカは「断眠」の舞台について知るため、演じたマーリ-ナの自宅を訪ねます。彼女は「断眠」の後、舞台女優を引退していました。

彼女が席を外した際に、書棚を眺めたビアンカは、「断眠」と書かれたノートを見つけ手にとります。マーリ-ナが現れると、思わずノートを隠します。

「断眠」の舞台は危険よ、と告げるマーリ-ナ。彼女に追い出されるように送られたビアンカは、ノートを手にしていました。それは舞台に立っていた時の、彼女の覚書でした。

迎えに来たクラッソの車に乗り込むビアンカ。そこにはセシリアの姿もありました。アルマはビアンカとセシリアの2人を、主役候補として競わせるつもりでいました。

クラッソはビアンカに、新作舞台劇「大熊座」の台本を渡します。それは産後の鬱で夫を殺害し、幼い赤子も殺害しようとした女性、ドラを描いたものでした。

車は廃屋となった精神病院、サンタ・レヒナ病院に到着します。劇団員はここで稽古を重ね、この場所で前衛的な舞台を演じることになります。

クラッソから2階の好きな部屋を使用選ぶよう告げられたビアンカとセシリア。セシリアはビアンカの父の入院を心配していました。両親に会えるなら、何でもすると語るセシリア。

ビアンカは前回セシリアと主役を争い、彼女にその座を奪われていました。セシリアはお守りである腕輪に、ビアンカにキスさせ幸運を願わせます。2人は良きライバルでした。

壁紙の剥がれかけた部屋を選び、荷物を整理していたビアンカは、床に細工された歯ブラシが落ちている事に気付きます。何者が置いた物か、彼女は不審に思います。

彼女は聞こえて来る声に気付きます。セシリアと共に下に降り、瞳が刻まれた壁に開けられた穴を覗くと、その先で劇団員が芝居の稽古をしていました。

クラッソに案内され、稽古場に向かう2人。そこには指導するアルマと、サラとフォンゾ(フアン・マヌエル・ギレラ)が演じる姿がありました。

サラに対し何かが足りないと、アルマは問いかけます。台本を読んだビアンカは、恐怖心が足りないと口にします。その言葉を満足げに受け入れるアルマ。

こうして劇団員の共同生活が始まります。一番大切なのは眠らない事。「断眠」の時と同様、アルマは俳優に眠らない様要求していました。

方々に眠気覚ましの水を置き、耐えられなくなったら笛を吹いて、とビアンカに説明するサラ。笛の音を聞いたフォンゾが、水をかけようと飛んできます。

劇団員は自炊し食事を共にする共同生活を送ります。アルマは断眠を続ける事で俳優を覚醒状態に追いこみ、望む演技を引き出そうとしていました。

稽古の中でテストが始まる、テストの合格者には賞品を与えると告げるアルマ。彼女から合格の証として、優れた演者にスリッパが与えられます。

自室に戻り台本を覚えるビアンカ。彼女は座っていた椅子に違和感を覚えます。調べてみると背板に不自然なネジが付いています。

彼女は部屋で拾った歯ブラシが、ドライバーに細工されてると気付き、ネジを回し背板外します。中から小さな金属の箱の、アクセサリーが出てきました。

部屋がノックされます。彼女が扉を開けるとそこにはフォンゾが立っていました。眠気覚ましに集中して炎を見つめれば、炎の中に何かが見えると、アドバイスして去るフォンゾ。


(C)2018 PAMPA FILMS S.A./GLORIAMUNDI PRODUCCIONES SL/WHITE FILMS AIE/ TANDEM FILMS/MOTHER SUPERIOR TODOS LOS DERECHOS RESERVADOS

再度ノックが響きます。扉を開けても誰もおらず、火のついたロウソクが置いてありました。それを手に取り、ビアンカは片目をつぶって炎を覗き込みます。

炎の先に横切る人影を見たビアンカ。彼女が廊下の先へと進むと、そこには小道具の人形がいくつもぶら下がり、その中にフォンゾもいました。

アルマの前でセリフを演じるビアンカ。眠気と闘う彼女は思う様に演じられません。アルマは彼女を手に取って指導しますが、満足する演技は引き出せません。

アルマはセシリアに、賞品のスリッパはあなたの物よと告げます。追いこまれたビアンカは、思わず涙を流します。

台本を読むビアンカの姿を、サラがポラロイドカメラで撮影します。断眠して24時間と告げるサラ。その姿を時間の経過と共に記録していました。

ビアンカの頭痛薬をもらうサラ。2人は屋外に出て体を動かし眠気を覚まします。

洗濯をしていたビアンカは、壁の穴ごしに会話するアルマとクラッソの姿を目撃します。もう止めようというクラッソの言葉を拒絶するアルマ。

ビアンカは隣室の気配に気づきます。そこには無数の人形と、書きなぐった絵が吊るされていました。そこで小道具を作っているフォンゾ。彼女も小道具作りを手伝います。

人形の下地に貼る紙に、何か書いてある事に気付いたビアンカ。千切られた紙をつなぎ合わせると、病院の内部を記した地図になりました。

彼女を撮影し、断眠36時間おめでとうと告げるフォンゾ。ビアンカは彼に、このメモは1963年に記されたものだと告げます。

ここに吊るされた絵は、舞台劇「大熊座」の主役である、ドラが描いたものでした。ドラはかつてこの病院の患者だったと、ビアンカは気付きます。

アルマはビアンカとセシリアを、敷地内にあるドラの墓に連れて行きます。彼女は1963年にここで亡くなっていました。2人に彼女の人生を表現して欲しい、と語るアルマ。

その言葉に刺激され稽古に励むビアンカ。彼女は水の張られた浴槽に、身を沈める場面を演じます。

彼女が浴槽から顔を上げると、皆の姿が消えていました。再度水に浸かり顔を上げると、何者かの気配が感じられます。もう一度身を沈めて顔を上げると、ビアンカの周囲の光景が一変していました。まるで過去の精神病院に迷い込んだかのようです。

彼女が恐る恐る周囲を確認すると、1人の男の死体があります。そして血にまみれた手を洗面台で洗う女の姿が。これはドラでしょうか。身を潜めたビアンカに、ドラが掴みかかります。

浴槽から身を起こしたビアンカの周囲に劇団員がいました。皆彼女が長い時間、水に浸かっていた思っています。

アルマはビアンカが体験したのは忘我状態だと説明し、彼女の成果を褒めたたえます。マーリーナやフォンゾ、サラはその先を体験したと語るアルマ。

アルマはセシリアを呼び、彼女に与えた賞品のスリッパをビアンカに譲らせます。しかしビアンカは、ドラに付けられたとしか思えない、肩に付いた傷に気付いていました。

自室に戻ったビアンカ。壁に断眠して48、60、72時間経過した彼女の写真が貼ってあります。ビアンカはマーリーナの家から持ち出した、彼女が舞台「断眠」について記した覚書を読みます。

マーリーナは断眠してから60時間が過ぎると幻覚症状を繰り返し、ノートの後半は彼女が演じた役、サブリナの名で埋め尽くされていました。

ビアンカは剥がれかけた壁紙の下に、文字が書かれている事に気付きます。夢中になり壁紙を剥がすビアンカ。文字はおそらく血で記されたもので、壁を埋め尽くしていました。

それを眺めるビアンカとセシリア。自分たちの演じている劇の台本は、ドラの人生そのものだと訴えるビアンカ。セシリアには信じられません。

それを確認しようとするビアンカ。彼女はアルマとフォンゾが、台所の奥に何か隠している事に気付いていました。彼女はセシリアと共にそこへ向かいます。

ビアンカは台所の奥の収納庫に入ります。中にはドラのカルテが入っていました。カルテの中に彼女が入院前に、夫を殺害した事件を記した新聞がありました。

突然収納庫の扉をセシリアが締めます。アルマが台所に現れたのでした。マーリーナから送られた手紙を開封すると、無造作に収納庫にしまうアルマ。

ビアンカがその手紙を見ると、やってはいけない、とだけ書かれていました。

ドラのカルテを持ち出して自室に戻ったビアンカ。彼女がロウソクの炎を覗いてみると、背後に何者かの気配を感じます。

ビアンカは廊下に先に、鎖をかけ封鎖された部屋がある事に気付きます。鍵を壊し無数の穴の開いた扉を開けその部屋に入ると、そこは焼け跡となった部屋でした。

そこにはカルテに記された当時の、病院関係者の名が記された衣装が並んでいます。ビアンカが通気口のカバーを、歯ブラシを細工したドライバーで開けると、マッチがありました。

ドラの死因が判ったと呟くビアンカ。1962年に出産後夫を殺害し、この病院に入院したドラは、翌年関係者を殺害した後病院に火を放ち、赤ん坊を殺そうとして命を落したのです。その全てが舞台劇「大熊座」の台本に描かれていました。

そこに現れたフォンゾが、ここは舞台の為に再現した火事の現場で、全てはフィクションだと説明します。彼とセシリアは、ビアンカが現実と舞台の区別がつかなくなったと思います。

サラと共にミラーリング(相手の動作に自分の動きを合わせるレッスン)をするビアンカ。彼女と会話しているつもりが、実は自分1人しかいないと気付きます。いつの間にか父から渡されたペンダントの、チョークを入れたケースが無くなり、床を転がって行きます。

在らぬ方向を転がるケース。その先にドラの姿を目撃するビアンカ。ドラに襲われた彼女が、思わず床にあった、部屋で見つけた金属ケースのアクセサリーを掴むと、ドラは姿を消します。

ドラの姿を見たと、クラッソに訴えるビアンカ。彼はビアンカをなだめ、アルマに報告すると告げ立ち去ります。その姿をサンタ・レヒナ病院に現れたマーリーナが見ていました。

クラッソの報告を聞き、あなたは恐怖に負けたとビアンカに告げるアルマ。

荷物をまとめるビアンカに、私の向上心はあなたのおかげ、と別れを告げるセシリア。ビアンカは彼女にスリッパを渡し、クラッソの車で最寄りのバス停まで送られます。

バス停にあるバーで、ビアンカは入院中の父の電話をかけます。早く帰る事になった、と話そうとしますが、父から舞台の活躍を期待していると告げられ、涙ぐむビアンカ。

彼女の前にマーリーンが現れます。彼女はアルマが演出した舞台で、自分が経験した事を語り始めます。ノートに記されたサブリナとは誰か、ビアンカは彼女に尋ねます。

憑依について知ってる、と言うマーリーン。断眠の果てに、自分の中にサブリナを解放して彼女を演じようとしたマーリーン。しかしサブリナは私に取り付き、自殺しようとしたと語ります。

断眠して108時間が過ぎた時、彼女はサブリナに襲われます。しかし現実には、彼女自身が自殺しようとしていました。それに気付いた観客の1人がガラスを破り、彼女を救ったのです。

その光景を何故か満足気な表情で見ていたアルマ。話を聞いたビアンカは、サラとフォンゾは演じている、モデルとなった人物に似ていると気付きます。

マーリーンはビアンカがあと25分で、断眠を始めてから108時間になると気付きます。タイマーを25分にセットした腕時計をビアンカに渡し、その前に眠るよう告げるマーリーン。

彼女はあの体験の後も、アルマの呪縛から逃れるには、時間が必要だったと語ります。

そしてビアンカは、サンタ・レヒナ病院に戻っていました。彼女だけでなく、セシリアも断眠から108時間を迎えようとしていると気付いたのです。

以下、『108時間』ネタバレ・結末の記載がございます。『108時間』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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病院の暗闇の中に、車椅子に座るセシリアの姿を見つけたビアンカ。建物の中ではフォンゾが燃料缶から液体を撒いています。

セシリアと共に台所の収納庫に身を潜めたビアンカは、108時間が来る前に彼女と眠ろうとします。しかしセシリアがドラに姿を変え、彼女に襲いかかります。

収納庫から飛び出したビアンカを追うセシリアは、元の姿でした。建物から出ようと窓を開けようと試みるビアンカ。しかし窓も塞がれています。

突然セシリアが笛を吹きます。驚くビアンカに、セシリアは刃物を突き付けていました。笛の音にフォンゾとサラが現れ彼女を囲みます。

どうしてこんな事を、と尋ねるビアンカに、セシリアは参加させる事が大事だと言います。主役のドラを演じる事、忘我状態になる事は出来なかったと告白するセシリア。

そこに現れたアルマが良く戻ったわね、とビアンカに告げます。マーリーンが現れた事も彼女の計画でした。彼女の役者としての意識を刺激し、この場に戻らせる企てでした。

捕えられたビアンカを、フォンゾが力づくで水を張った浴槽に付けます。彼女が頭を上げた時、周囲には誰もいません。突如浴槽からドナが現れ、彼女を水に引き込みます。

再び彼女が水の中から頭を出すと、目の前に1963年当時の病院の光景が広がっていました。関係者の遺体と血に汚れた洗面台があります。そして軽油をまくドラの姿を目撃します。

現実世界で浴槽から立ち上がったビアンカ。彼女はアルマたちの前で燃料缶を手にすると、中の液体をドラの様に撒き始めます。その姿を見つめるセシリア。

1963年の世界で、軽油をまくドラの後を追うビアンカは、一室で大切に育てられている赤ん坊を見つけました。それはドラの娘でした。

彼女は赤ん坊のペンダントについた宝石が、セシリアがお守りとして付けている、腕輪のものと同じだと気付きます。赤ん坊の名はセシリアでした。

親に会えるなら何でもする、とのセシリアの言葉を思い出すビアンカ。そこにドラが現れます。ドラのペンダントには小さな金属のケースが付いていました。それは彼女が部屋の椅子の背板から、見つけ出したものと同じです。

ビアンカに気付いたドラは、鏡の破片を手に襲ってきます。ビアンカは抵抗しドラの足を破片で刺しますが、現実世界ではビアンカが自らを傷つけていました。駆け寄ろうとするセシリアを、アルマが止めます。

マッチを手に取り部屋に火を放つドラ。ビアンカは自分のペンダントのケースから、チョークを出すとベビーベットの周囲の床に円を描き、父にした様に安全な場所を作ります。

ビアンカは自分の見つけた金属ケースのくぼみに、赤ん坊の宝石をはめ込みます。一つになった宝飾をベットの上に置くビアンカ。それにドラも気付きます。

現実世界のビアンカは、ドラと同じように部屋に火を放っていました。その姿を見て成功した、と満足気に呟くアルマ。

宝飾に気付いたドラは自分を取り戻し、ビアンカの前で赤ん坊を優しく抱きます。彼女は炎から赤ん坊を守る為に、水の入った浴槽に入ります。

現実世界でドラそのものとなったビアンカ。アルマの思惑通り、彼女は過去にマーリーンに演じた境地を越え、役と一つになりました。アルマはセシリアに、ドラと話すように促します。

ビアンカを通じて母との再会を遂げたセシリア。狂気の中にいたドラは、最期に我が子への愛を取り戻し、セシリアを守って亡くなったのでした。2人は抱き合って涙を流します。

周囲から聞こえる拍手に、ビアンカは我に返ります。彼女たちは廃病院の壁に開いた無数の穴から、観客に見守られていました。

全てはアルマの演出した劇「大熊座」の舞台でした。アルマに促され、カーテンコールに応えるビアンカ、セシリア、フォンゾ、サラ。現れた観客の中には、クラッソとマーリーンもいます。

ビアンカに詫びるセシリア。アルマの演出した舞台は熱狂的に観客に受け入れられました。興奮したフォンゾは、別に用意された燃料缶の液体を観客にかけ始めます。

その液体の正体に気付いた観客が戸惑い、逃げ始めます。クラッソが止める間もなく、たいまつを振り回してフォンゾが火を放ち、廃病院は火に包まれます。

クラッソと共に逃げるセシリア。ビアンカを庇ったアルマは、彼女に悪びれる事無く、芸術家は創造するけど、私は破壊するタイプだと呟きます。

演者には命を賭けて欲しいと言葉を続けたアルマは、フォンゾに殴られ炎の中で殺されます。ビアンカが見た鏡に映ったフォンゾの姿は、事件当時の患者の姿でした。

同じく断眠の果てに、役である同時に患者に支配されたサラが、鏡の破片を手にビアンカを襲います。あなたがここにいるのは、外の世界に拒まれたからと、そう告げるとサラはビアンカを解放し、炎の中に戻ります。

廃病院を包む炎の中から、アルマとフォンゾとサラが現れる事はありませんでした。

5か月後、ビアンカは回復した父と共に暮らしていました。彼女の元に小包が送られてきます。

ビアンカが小包を開けると、中身は「アルマ・ベームの自殺劇場」と題された、クラッソのサイン入りの書籍でした。

ふと不安に襲われたのか、ビアンカはライターに火を付けると、その炎に目を凝らします。

ビアンカはその先に、何を見たのでしょうか。

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映画『108時間』の感想と評価


(C)2018 PAMPA FILMS S.A./GLORIAMUNDI PRODUCCIONES SL/WHITE FILMS AIE/ TANDEM FILMS/MOTHER SUPERIOR TODOS LOS DERECHOS RESERVADOS

現実と幻覚が舞台劇で交差する多重構造

コンプライアンスという言葉以前に、人道的に問題があり過ぎる、メソッド演技も「ガラスの仮面」もビックリの、前衛的な舞台劇をテーマにした異色作です。

断眠の世界記録は1964年、スタンフォード大学の教授立ち合いの下で、17歳の高校生が行った264時間と言われています。

彼はその後15時間寝て、後遺症も無く生活を取り戻しましたが、どう考えても無茶な話。ギネスブックは危険を伴う行為として、断眠の世界記録は受け付けていないそうです。

「未体験ゾーンの映画たち2019」は、何故かこの映画と『ザ・スリープ・カース』の“断眠映画対決”になってしまいました。

2本の映画を一言で表すなら、『ザ・スリープ・カース』は“凶悪”、『108時間』は“複雑”とでも呼びましょうか。

断眠による幻覚と現実と、演じられる舞台が交錯する物語の『108時間』。展開も演出家の意図も含めて、様々な謎を秘めたミステリーになっています。

ネタバレ・結末の紹介部分は、何が幻覚と現実、現実と舞台劇であったのか、混乱させられる事必至の展開。深読みすると、それ以前から仕掛けがあったとも解釈出来ます。

終わってみれば納得できる展開。でもあのシーンは何だったのか、どこまでが演出家アルマの意図だったのか、鑑賞後に疑問が次々湧き出す映画です。

ニュージャンルな仕掛けで異彩を放つエルナンデス監督


(C)2018 PAMPA FILMS S.A./GLORIAMUNDI PRODUCCIONES SL/WHITE FILMS AIE/ TANDEM FILMS/MOTHER SUPERIOR TODOS LOS DERECHOS RESERVADOS

複雑かつ意欲的な『108時間』を描いたグスタボ・エルナンデス監督は、デビュー以来意欲的に仕掛けのある、ジャンル映画を世に発表しています。

参考映像:『SHOT/ショット』(2011年DVD発売)

デビュー作のウルグアイ映画『SHOT/ショット』は『カメラを止めるな!』でお馴染みとなった、またその上をゆく、何と86分ワンショットで描かれたホラー映画です。

参考映像:『Dios Local』(2014年)

次に監督・脚本手掛けた映画『Dios Local』は、過去の出来事の罪の意識や、トラウマに取り付かれ、それをテーマにした音楽を作る、ロックバンドの若者たちが主人公。

彼らがプロモーションビデオの撮影を、ある洞窟で行ったところ大古の悪魔を呼び覚ましてしまいます。その結果、彼らは過去に体験した恐怖との対決を余儀なくされます。

スティーブン・キングの小説を思わせる展開ですが、『108時間』のアイデアの萌芽を感じるストーリーでもあります。

常にひねりを加えた作品を製作する、グスタボ・エルナンデス監督の今後の活躍に注目して下さい。

まとめ


(C)2018 PAMPA FILMS S.A./GLORIAMUNDI PRODUCCIONES SL/WHITE FILMS AIE/ TANDEM FILMS/MOTHER SUPERIOR TODOS LOS DERECHOS RESERVADOS

断眠が人に与える影響を描くだけでは無く、演劇を扱った映画としてもユニークな『108時間』。

この複雑な構成は、映画を見てからあれこれ考える事が好きな人には、興味深いパズルを提供してくれる作品となっています。

暴走する役者魂と演劇魂を描いたこの作品、前衛舞台演出家アルマを演じた、ベレン・ルエダのカリスマ性を感じさせる演技は見物です。

しかしアルマが演出し、劇中で拍手喝さいされた舞台劇「大熊座」は、実際に観客の視点で見た場合、本当に面白いものでしょうか。

これが“前衛”って奴でしょうか。少なくとも命がけで見る価値は、多分無かったでしょうね。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…


(C)2018 Dijital sanatlsr All Rights Reserved

次回の第58回は最終回!これを持って見破達成の作品です。朝鮮戦争に参戦したトルコ軍部隊の兵士と、戦災で孤児となった少女の交流を描く戦争ドラマ映画『ブレイブ・ロード 名もなき英雄』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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