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Entry 2021/02/17
Update

映画『インビジブル・スパイ』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。香港ノワールの現在形をアクションとのド派手な融合スタイルで描いた秀作|未体験ゾーンの映画たち2021見破録13

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第13回

世界各国の埋もれかねない映画をお届けする「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第13回で紹介するのは、ド派手なアクション映画『インビジブル・スパイ』。

香港映画と言えば華麗なアクション。様々な作品が誕生し世界でヒットしました。

男たちの友情と裏切りを描く「香港ノワール」と呼ばれる映画も人気です。

その代表作『インファナル・アフェア』(2002)は、マーティン・スコセッシが『ディパーテッド』(2006)としてリメイク、アカデミー作品・監督賞を含む4部門受賞しています。

アクションと「香港ノワール」の世界が合体、スパイ映画となったのが本作です。香港映画・アクション映画ファンには見逃せない作品が誕生しました。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

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映画『インビジブル・スパイ』の作品情報


(C)2019 Shaw Brothers Pictures International Limited, J.Q. Pictures Limited. ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2021年(香港・中国合作映画)

【原題】
使徒⾏者2 諜影⾏動 / Line Walker 2: Invisible Spy

【監督】
ジャズ・ブーン

【アクション監督】
チン・ガーロウ

【キャスト】
ルイス・クー、ニック・チョン、フランシス・ン、ホァン・チーチョン、ジャン・ペイヤオ、ジャッキー・チョイ、チャン・イーチー

【作品概要】
子供を誘拐しスパイに育成、世界各国の警察機関に潜入させる国際テロ組織。その陰謀に挑む男たちを描いたスパイ・アクション映画です。

香港の覆面捜査官を描いた刑事ドラマ『使徒行者(Line Walker)』(2014~)は大ヒット、スピンオフ映画『ダブル・サスペクト 疑惑の潜入捜査官』(2016)が誕生しました。

その続編が本作です。監督のジャズ・ブーン、主要キャストのルイス・クー、ニック・チョン、フランシス・ンが前作に続き起用されました。

ニック・チョンはレニー・ハーリン監督作『ハード・ナイト』(2019)に、ルイス・クーは『SPL 狼たちの処刑台』(2017)に主演するなど、香港を代表するスターとして活躍しています。

映画『インビジブル・スパイ』のあらすじとネタバレ


(C)2019 Shaw Brothers Pictures International Limited, J.Q. Pictures Limited. ALL RIGHTS RESERVED

1987年、フィリピン。とある孤児院の子供たちは、プロフェッサーキューブ(ルービックキューブの5×5×5版)を早く揃えることを競っています。

中でもアンツァイとアティーは、抜きん出た才能を持っています。良きライバルである2人は、良き親友でもありました。

ある日2人は誘拐しようとする男たちに襲われます。捕らえられたアティーは、アンツァイに助けを求めます。

アンツァイの抵抗でアティーは逃れました。しかし男に突き倒され、背中を深く傷付けるアンツァイ。

助けようとしたアティーは足を踏み外し山の斜面を転がり落ち、アンツァイは男たちに連れ去られます。

2人の少年の運命は、大きく変わります…。

2019年、香港。人が往来する路上に乗用車が突っ込み、多くの人を跳ね飛ばしました。

バスと衝突して止まった乗用車に警官が駆け寄りますが、運転していた男はカッターナイフで首を切り、自殺します。

TVは大手企業のミャオ会長が無差別テロを起こし自殺したが、動機は不明と伝えていました。

事件を知った女記者のイウ(ジャン・ペイヤオ)は、ミャンマーにいる助手ビルに連絡します。一刻も早くテロ組織の全貌を暴かねば、伝えるイウ。

彼女に何者かが迫ります。車を捨てバスに乗るイウを追う男。

近寄る刺客を前に身を固くする彼女に、背後に座る男が警官だと告げました。

イウへの襲撃をチェン警部(ニック・チョン)が阻止します。男と格闘するチェン。

バスの横にイップ警視(フランシス・ン)の車が接近します。イップはバスを追う車を妨害します。

走行するバスの非常扉を開けイウをイップの車に投げ入れ、自分も飛び移ったチェン警部。

チェンの行動をトム・クルーズだと冷やかすイップに、先輩もその姿は福山雅治風にキメてますね、と応じたチェン。

香港警察に保護されたイウに、協力要請するチェン警部。あなたはマサチューセッツ工科大学卒業後、コンピューターのハッキング技術を身に付けたと告げます。

アメリカ国家安全保障局のために働いていた彼女は、記者として活動しています。そして今回のテロ事件を警告する通報を、匿名で行ったと語るチェン。

対テロ刑事情報課に所属する彼は、捜査協力を訴えますが、自分は逮捕された訳ではない、と拒否するイウ。

では釈放するが、テロ組織に狙われるだけと言われ、彼女は考えを改めます。

人身売買組織を追っていたイウは、助手のビルと犯罪組織のデータベースに侵入し、暗号ファイルを入手しました。

それは世界各国で暗躍する国際テロ組織のものでした。彼女が警戒する理由もありました。テロ組織は世界各国の警察に潜入者を送り込んでいたのです。

組織は幼い子供を誘拐し工作員として教育し育て、偽りの経歴を与え様々な警察機関に送り込んだと話すイウ。

そこに香港警察保安部のジェン警視(ルイス・クー)がイップ警視の前に現れます。今後は保安部が捜査を引き継ぐと告げるジェン。

突然の介入にイップは抗議しますが、ジェンも事態を把握していました。

香港警察に内通者がいるなら、数々の潜入捜査捜査を果たしたチェンこそ疑わしい、と告げたジェン警視。

警察が信用できないのは判るが、自分はテロ組織の潜入者ではない、とイウに告げるチェン。

チェン、イップ、ジェンの間に緊張が走ります。

イップ警視とジェン警視は香港警察長官と首脳を集めた会議に参加します。無差別テロを起こした男は、国外の組織に脅迫されていたとジェンは報告しました。

国外のテロ組織から香港の治安を守るのは保安部の職務、と主張するジェン。会議もそれを認める方向に進みます。

気まずい雰囲気になったイップとジェンですが、香港市民を守る使命は同じと確認し、今日開かれる自分の誕生パーティーにジェンを誘うイップ。

彼の誕生パーティーに、多くの部下が集まっていました。漫画のキャラクター絵柄の腕時計をイップに送るチェン。贈り物の酒を持ちジェンも現れます。

その頃内通者を警戒する警察長官は、チェン・イップ・ジェンの経歴を調べていました。

ジェンは帰宅しました。妻を亡くした彼は、幼い一人娘チェンチェンと暮らしています。眠る娘にキスをするジェン。

イウ記者が告げた、テロ組織が子供を誘拐し工作員に育てる話はイップを悩ませ、チェンとジェンに悪夢を見せます。

翌朝、チェンチェンを学校に送り届け出勤したジェン警視に、特別な指令を与える警察長官。

テロ組織の全貌と計画をハッキングして入手したデータは、イウ記者の助手でミャンマーにいるビルが持っています。

それを回収するが、内通者を警戒し一部の人間のみで実行すると説明します。

長官が選んだのは、計画を指揮官にイップ警視。現地で回収するのがジェン警視とチェン警部でした。

ミャンマーに向かう機内で、プロフェッサーキューブをもて遊ぶチェン。

対テロ訓練であなたの部下だったと告げるチェンに、ジェンは覚えていないと答えます。

ジェンの異例の出世を指摘するチェン。2人は互いを探り合っていました。

ミャンマーに到着したチェンとジェンは、現地の特殊部隊と共にビルの元に向かいます。その行動を後方基地から支援するイップ警視。

商店や作業場が入ったヤンゴン市内の建物に向かう特殊部隊。情報が洩れテロ組織に先を越されたのか、爆弾が爆発し隊員が吹き飛ばされます。

チェンとジェンは突入しますが、ビルは瀕死の状態でした。ハードディスクを奪われたと話すビル。

ジェンは敵を追います。混乱した状況でチェンや現地部隊に指示を出すイップ。

先回りしたチェンが敵を倒し、ハードディスクを回収します。チェンも合流しますがテロ組織の工作員に包囲されました。

白昼のヤンゴン市内の大通りで、激しい銃撃戦が繰り広げられます。2人を救出しようと現れたヘリコプターも、銃撃され近づけません。

チェンを狙う男に気付いたジェンは、彼の盾になり銃弾を受けます。防弾チョッキに命中、車にはねられ倒れるジェン。

ジェンをチェンが助け、2人は車が往来する道路で撃ち合いながらヘリを目指します。

最初に近づいたチェンは、ハードディスクをヘリに投げ込むと、彼を支援し敵と撃ち合うジェンを助けに戻ります。

テロ組織の工作員が続々と現れます。銃撃を受けイップに指示を求めるヘリの搭乗員。

やむなくヘリに撤退を命じたイップ。残された2人は覚悟を決めます。ジェンを守ろうと敵に突進するチェン。

テロリストがロケットランチャーを打ち込み、大爆発が起きました。

やっとミャンマー警察の応援が到着し、ジェンは救出されました。チェンの姿を探し求めるジェン警視。

ヘリの搭乗員はチェンから渡されたハードディスクを確認します。中身は空と知り愕然とするイップ警部。

香港警察上層部の会議は紛糾します。限られた者しか知らぬ作戦内容はテロ組織に漏れていました。

回収したハードティスクも偽物です。行方不明のチェンは信用できる人物か、と警察長官に追及されるイップ。

チェンは長年共に過ごした信頼できる仲間で、必ず見つけ出すとイップは答えます。

香港に戻ったジェンに、チェンを見捨てたと迫るイップ。ジェンはヘリを撤退させたイップを責めました。

ジェンは命がけで自分を救ったチェンは、内通者ではないと話します。2人は共にチェンを信じ、探そうと決意します。

空のハードディスクのために多くの人間が死んだ、とイウ記者を追及するジェン。

ビルの死を知りショックを受けたイウは、警察内部の内通者を警戒し口を閉ざします。

その頃、スペイン・マドリードのテロ組織本部で、幹部と密談する首領のドン(ホァン・チーチョン)。

大規模な国際テロの実行には、ロックされた組織のネットワークを解除するキーが必要だと話していました。

ドンは腹心の部下、デーモン(チャン・イーチー)に対処を命じます。

その頃チェンはハードディスクを手に入れた、と何者かに連絡していました。

データの中にテロ組織に拉致された子供の記録があります。その1人がフィリピンの孤児院にいた、アンツァイだと確認するチェン。

その少年の背中には、大きな傷跡が残っていました。

イウを安全な場所に移送するジェン一行は、テロ組織の襲撃を受けます。

部下が倒され、ジェン警視とイウ記者に危険が迫った時、特殊装備を持つ車両が現れました。

車両は発煙弾を発射します。煙の中から現れた一団はテロリストを射殺しイウを拉致、ジェンをテイーザー銃で倒します。

ジェンが目を覚ました時、目の前にいたのはチェン警部でした。

なぜこんな事をしたとジェンが尋ねると、潜入捜査で警察に利用されてきたが、今後は自分の利益のために動くと告げるチェン。

イウをテロ組織に引き渡せば金になると言い、自分に協力しろと迫ります。ジェンが拒むと先ほどの襲撃映像を見せます。

テロ組織はジェンの部下を射殺しますが、それはジェンに危害を加えず協力しているように見えました。

お前は警察から見れば裏切り者だ、と告げたチェンに跳びかかるジェン。2人が格闘した際、ジェンの背中の大きな傷跡が現れます。

ジェンの正体はテロ組織に誘拐され、潜入工作員にされたアンツァイ少年でした。チェンから奪った拳銃を発砲するジェン。

それは空砲でした。チェンはジェンに、アンツァイと呼びかけます。

そこにチェンの部下が現れます。窓を破って逃げるジェン。かつてのアティー少年は、現在のチェン警部でした。

逃走するジェンに、工作員に育てられテロ組織のために働いた過去が甦ります。

組織の命令で香港警察に潜入したものの、良心の呵責に耐えられず自殺を試みるジェン。

妻エマ(ジャッキー・チョイ)との間に産まれた娘、チェンチェンの存在がを思いとどまらせます。

しかし組織を掟を破り、妻子を持ったジェンの家をドンが襲撃します。

エマを殺害し、チェンチェンの命が惜しければ組織に従え、その代わり5年働けば自由にするとジェンに告げるドン。

ジェンは対テロ訓練の際、部下となったチェンのロッカーに貼られた、漫画のキャラクターのイラストに気付きます。

それは孤児院時代の、アンツァイとアティーのお気に入りでした。

ジェンはチェンこそアティーだと気付いていました。自分たちの過去と、運命の皮肉に思いを巡らすチェン警部とジェン警視。

以下、『インビジブル・スパイ』のネタバレ・結末の記載がございます。『インビジブル・スパイ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2019 Shaw Brothers Pictures International Limited, J.Q. Pictures Limited. ALL RIGHTS RESERVED

拉致されたイウ記者の目隠しが取られると、目の前にチェン警部が座っています。

抵抗するイウに、2013年あなたはフィリピンの売春街を取材したと告げるチェン。

2017年、イウは1人の少女の遺体と出会います。それは彼女の妹でした。

テロ組織はイウの妹を誘拐し、まだ8歳の彼女が脱走を試み失敗すると、薬漬けにして人身売買組織に売り飛ばしました。

それ以来彼女は国際テロ組織の正体を暴こうと動きます。事実を指摘され泣き叫ぶ彼女の前に、香港警察長官が現れます。

彼女の助手・ビルが持っていたハードディスクは、チェン警部が回収したと教える長官。

チェンは救出のヘリに空のハードディスクを渡します。内通者の正体を暴くための行動でした。

長官は彼女を隠された部屋に案内します。そこは香港の治安を守る、長官直属の秘密組織”Invisible Frontline Force”の基地でした。

チェンはこの組織に属し、警察組織とは異なる任務を果たす”インビジブル・スパイ”です。

テロ組織の壊滅に協力して欲しいと言う長官に全てを打ち明けたイウ。

彼女はテロ組織のコンピューターに侵入した際、ネットワークを停止させるウィルスを仕込んでいました。

その解除にはキー、彼女の目の虹彩認証が必要です。それを求めテロ組織は彼女を狙っていたのです。

ジェン警視は自宅に戻ろうとしますが、警察とマスコミが来ていました。

警察に真実は話せません。テロ組織首領・ドンに連絡するとお前の娘は保護したと教えられます。

お前の同僚、チェンはイウを売りたいと言っている。その取引を行いイウを受け取れと命じるドン。

チェンの元に、ジェンから会いたいとのメールが入ります。

彼は長官の元で働き出した時から、テロ組織に誘拐された友人の救出を訴えていました。

ジェンはヤンゴンの戦闘でチェンをかばって撃たれ、先ほどの逃走時も奪った銃をチェンに向け発砲していません。

彼はテロ組織に協力しているが、葛藤を抱えていると長官に告げるチェン。

ジェンと会った際5分間与えるので、その間に説得しろと告げる長官。

夜の市場の食堂でチェンに会うジェン。裏切らないよう彼の行動をテロ組織のデーモンが監視していました。

チェンの正体を知らぬジェンには、幼き日の友人は警察の裏切り者です。到着したジェンにプロフェッサーキューブを渡すチェン。

チェンは資料を見せジェンの正体はアンツァイだと示し、あの時誘拐されたのが自分なら運命は違ったと語ります。

それを聞いたデーモンは取引を進めろとジェンに指示します。キューブをもてあそびながら、話を進めるジェン。

そこにイップ警視が現れます。デーモンはこの場所をイップに密告していました。

2人の正体を知らぬイップには、彼らがここで会う理由が謎です。テロ組織との関係を疑うイップ。

チェンとジェンの不審点を問い正すイップ。時が来れば全て話すと答えるチェン。

お前たちを信じたのが、自分の失敗だと話すイップ。チェンのイヤホンに不審者の集団が迫るとの連絡が入ります。

ジェンにはデーモンから、その男を殺せとの指示が入りました。3人の男は銃に手をかけました。

3人は一斉に発砲しますが、それは乱入するテロリスト集団に対するもので、銃撃戦が始まります。

撃たれたジェンをイップが助けます。そのイップを撃つデーモン。

イップと視線を交わしたジェンを、テロリストが連れていきました。チェンはイップの元に駆け付けます。

チェンを見て「極秘任務か」と尋ね、息を引き取るイップ。腕にはチェンが送った時計がありました。

本部に帰還し、イップの死を噛みしめるチェン。テロ組織の本拠はスペインで、彼らはジェンの娘を誘拐したと確認する秘密組織”IFF”。

スペインの空港に変装したジェンが現れます。テロ組織の首領ドンから連絡が入りました。

ドンはチェンは警察の協力者と見抜いていますが、イウ記者を手に入れるため取引するつもりです。

協力を迫られたジェンは約束の5年が過ぎたと告げますが、長年かけ育て上げた彼を手放すつもりの無いドン。

娘を監禁している、お前と同じように育てようかと脅しました。

牛追い祭りに賑わう街のホテルにイウはいました。チェンと”IFF”エージェントは、彼女を囮にテロ組織の壊滅を狙います。

不安か聞いたチェンに、死んだ妹が守ってくれると答えるイウ。

翌日、取引現場に向かうチェンとイウを乗せた車は。監視カメラを通じテロ組織にモニターされていました。

裏をかいてトンネル内でイウを別の車に移し、安全な1室に送り届けます。

囮を乗せた車で、取引現場となる広場に到着したチェン。

多くのテロ組織のメンバーが監視する広場には、ジェンとデーモンがいました。

強気な態度のチェンに、デーモンはスマホを渡します。相手はテロ組織首領・ドンです。

ドンは工作員たちの手で、いつでも香港市内の3ヵ所に爆破テロが起こせると証拠を見せて脅し、イウを引き渡せと要求しました。

テロなど自分に関係ないと告げたチェンに、取引中止を告げるドン。

それではイウは手に入らない、とチェンが告げると、彼女がどこかは知っている、とドンは応じます。

ドンは映像をモニターしてイウが車を乗り換えた事実を掴み、その車を追わせていました。彼女の部屋をテロリストが襲撃しました。

テロ組織本部に、突入したテロリストが護衛を射殺する映像が入ります。襲撃犯はイウの虹彩を読み取りデータを送信します。

コンピューターシステムの修復が開始されます。目的を果たし勝ち誇るドン。

用済みのチェンをテロリストの狙撃手が射殺しようとします。銃声が響きますが、撃たれたのはテロリストでした。

デーモンや群衆に紛れていたテロリストとチェンは撃ち合いになり、密かに展開した”IFF”隊員がチェンを援護します。

テロ組織のコンピューターシステム修復は中断され、ウィルスで破壊され始めます。憮然とするドンに種を明かすチェン。

イウは車を乗り換えず、テロリストが襲撃したのは囮です。テロリストたちは待ち伏せる”IFF”隊員に射殺されました。

ドンが目撃したのは偽の映像です。イウの虹彩認証をのデータを装い、ウィルスが送り込まれシステムは破壊されます。

現在イウはシステムをハッキング中です。女を消せと叫ぶドン。

イウが香港の3人の爆破テロ計画犯の情報を確認した時、彼女が乗る車にテロリストの車が衝突してきました。

車は横転しテロリストに包囲され、激しい銃撃を浴びます。”IFF”隊員は彼女を逃がしますが、イウは車に戻ります。

車内でパソコンを操作し、ハッキングを続けテロ組織本部の位置や誘拐した子供の監禁場所、香港の爆破テロ犯などの情報を”IFF”本部に送信したイウ。

亡き妹のために最後までテロ組織と戦ったイウの行為で、香港のテロは阻止されました。チェンのイヤホンに、彼女が撃たれる銃声が響きます。

デーモンとジェンに、チェンを殺せと命じるドン。群衆の中のチェンに銃口を向けるジェン。

ジェンの放った銃弾は、チェンの背後のテロリストに命中します。

市場でデーモンに監視されながらチェンに会ったジェンは、プロフェッサーキューブを操作し、完成した面をチェンに見せていました。

それはモールス信号で「WALL」です。ジェンの自宅の「壁」を調べたチェンは、「我が子を助けてくれ」のメッセージを確認します。

今や協力してテロリストと戦うチェン警部とジェン警視。

車で逃げた2人をデーモンが追い始めた時、牛追い祭りはクライマックスを迎え街に牛が放たれます。

2台の車が細い路地でカーチェイスを始めた時、”IFF”部隊はテロ組織本部に突入しました。

牛の群れに追われる人々の中を、2台の車が走り抜けます。やがてカーチェイスは牛を先導します。

牛祭りは大混乱に陥りました。騒ぎの中でチェンとジェンを追い、狂喜の表情を見せたデーモン。

テロ組織本部で、撃たれたドンが絶命します。2台の車は石壁を突き破り、斜面を転げ落ちます。

車から投げ出されたジェンに、大破したチェンの車が迫ります。それはジェンを襲う牛の盾になる行為でした。

車のドアを貫いた牛の角が、チェンの腹部を貫きます。炎の上がった車からチェンを助け出すジェン。2人は爆発を逃れ、廃墟となった聖堂に倒れます。

同じ頃”IFF”が派遣した部隊は、テロ組織に捕らえられたジェンの娘・チェンチェンを救出していました。

あの時誘拐されたアンツァイ=ジェンは、30年間俺の身代わりだと告げる瀕死のアティー=チェン。

チェンは辛かったか、とジェンに問いかけ、涙を流し詫びました。

気にするなと言うジェンに、チェンが兄弟と呼びかけた時、デーモンの放った銃弾がジェンを貫きます。

怒りに立ち上がったチェンをナイフで襲うデーモン。刺されたチェンを救おうとジェンも抵抗しますが無力でした。

チェンの目の前でジェンを殺そうとするデーモン。ジェンは突進してくる牛に気付きます。

チェンも立ち上がり、2人でデーモンの体を牛に向けました。猛牛に吹き飛ばされ、角で突かれ絶命するデーモン。

倒れて動かないチェンとジェンは静かになり、安らかな表情を見せました。

ジェンは自宅に壁にテロ組織に関する多くの情報を残していました。世界の警察組織に潜入した工作員は次々逮捕されます。

誘拐された子供たちも各地で救出されました。しかしチェンのファイルを手に、思いにふける香港警察長官。

ようやく互いの本心を知った時、チェンとジェンは幸せだったのでしょうか。

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映画『インビジブル・スパイ』の感想と評価

参考映像:『ダブル・サスペクト 疑惑の潜入捜査官』(2016)

香港ノワールの男っぽい世界と、潜入捜査官物のサスペンスをミックスさせ、スパイアクション映画にしました!

実に見どころ盛りだくさん、アクション映画ファン、特に香港映画ファンにたまらない作品です。

前作『ダブル・サスペクト 疑惑の潜入捜査官』と同じキャストを起用しながら、続編は別の登場人物による別の物語と聞いて意味不明、と感じた方もいるでしょう。

これはほぼ毎回、主演の高倉健は最後に逮捕され、共演の池部良は多分死んだのに、次回作で2人共似たような設定の、似たような別人で登場する。

それを繰り返した任侠映画、『昭和残侠伝』(1965)シリーズみたいなものとご理解下さい。

そんな古き良きシリーズ物映画の大らかさが、香港映画にまだ残っていたと思うと、愉快な気分になりませんか?

徹底的にエンタメを追求した作品


(C)2019 Shaw Brothers Pictures International Limited, J.Q. Pictures Limited. ALL RIGHTS RESERVED

本作はそのスケールに度肝を抜かれます。ミャンマーの銃撃戦は、マイケル・マン監督の『ヒート』(1995)をかなり意識したシーンでしょう。

クライマックスのカーチェイスはロケ地から逆算した結果でしょうが、『ミニミニ大作戦』(1969)の該当シーンを、銃撃戦込みでド派手に発展させた感があります。

さらに牛追い祭りに乱入する形で展開。呆れるほどスケールの大きなアクションシーンを構築しています。

格闘・銃撃戦と様々なアクションが登場しますが、描いたのはアクション監督チン・ガーロウ。

幼くして武道を学んだ彼は16歳で本格的にスタントマンの活動を開始、サモ・ハン・キンポーの武術指導のグループ「洪家班」に所属しました。

そしてジャッキー・チェンの『プロジェクトA』(1983)や『サイクロンZ』(1988)などに参加、本格的な俳優となり、アクション指導者・監督として活躍しています。

ハリウッド映画的でありながら、香港映画の雰囲気を感じさせる本作のアクションシーンは、ベテランの彼の手で生まれました。

熱すぎる香港ノワール映画の世界を楽しもう


(C)2019 Shaw Brothers Pictures International Limited, J.Q. Pictures Limited. ALL RIGHTS RESERVED

『マルタの鷹』(1941)や『三つ数えろ』(1946)など、1940年代頃ハリウッドに登場したハードボイルドな犯罪映画は、後に「フィルム・ノワール」と呼ばれました。

世界各国で似た映画が登場しますが、フランスでは『現金に手を出すな 』(1954)以降、同様の作品が登場します。

ハリウッド作品と比較すると女性の扱いが小さく、男たちの友情や裏切りを描く作品が多く、「フレンチ・フィルム・ノワール」と呼ばれるジャンルに発展、アラン・ドロンという大スターを生みます。

「フレンチ・フィルム・ノワール」の影響を受けた作品が、1980年代の香港に登場します。それがジョン・ウー監督とチョウ・ユンファの出世作『男たちの挽歌』(1986)。

この大ヒットを受け、男たちの葛藤を描いた犯罪映画が続々登場、「香港ノワール」と呼ばれるジャンルが生まれます。空手・カンフーものに変わる、香港の名物映画となりました。

以降も『インファナル・アフェア』シリーズなどを生みますが、『インビジブル・スパイ』の男たちの友情と裏切り、そして親愛の情を描いた作風は「香港ノワール」の流れをくむものです。

この濃厚な設定に、主要登場人物全員死亡?という展開はやり過ぎ感もありますが、グッと来ること必至です。

そんな登場人物の中に女性も存在するのが現代的、と言えるのでしょう。ともかく単純なスパイ映画やアクション映画にもあらず。胸熱を求める方を満足させる作品です。

まとめ


(C)2019 Shaw Brothers Pictures International Limited, J.Q. Pictures Limited. ALL RIGHTS RESERVED

アクション映画ファン大満足、並みのハリウッド映画以上の完成度を持つ『インビジブル・スパイ』。

痛快な展開より、涙腺を刺激するドラマを求めたいなら必見です。香港・中国映画の底力を見せられた気分です。

最後に。香港・中国の関係の基本であった「一国二制度」は形骸化し、様々な問題を引き起こしました。

香港民主化デモが本格化した2019年8月、「香港の治安を外国テロ組織が乱す」「香港警察が世界を救う」物語の本作が、香港・中国で公開されました。

だからこの映画はプロパガンダである、と決めつけるのは早計です。

映画に対する国家の検閲がある中国では、本作のような企画は通りやすい、資金も調達しやすい背景は確実に存在します。

何らかの忖度が働いて生まれた映画でしょうか。それともこの状況を利用して、商魂たくましく製作された映画でしょうか。

どんな映画の企画も、様々な背景から生まれます。この事実だけは指摘しておきましょう。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」は…


(C)Henrik Ohsten

次回第14回は、近未来を舞台に、移民と排他主義が激しく対立する状況を描いた政治サスペンス映画、『デンマークの息子』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら





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【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学