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映画『DRONEドローン』あらすじネタバレと感想。ゾンビーバーの次は殺人マシーンと化したトンデモ飛行物体|未体験ゾーンの映画たち2020見破録37

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第37回

「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第37回で紹介するのは、殺人マシーンと化したドローンが人を襲うホラー映画『DRONE ドローン』

この世に未練や恨みを残した怨念が、物に憑りついて恨みを晴らす。呪いの人形とか、呪われた家とか、色んなホラー映画向けのアイテムが登場しています。

今までにない斬新な物に魂が憑りつき、人を襲えば面白いのでは?あらゆる種類のホラー映画が作られた80年代は、そんな発想を許容する時代でした。

数々のトンデモない作品を生み出した、熱気あふれた時代のホラー映画にオマージュを捧げた、まさに人を食った設定の作品の登場です。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

映画『DRONE ドローン』の作品情報


(C)2019 Bazelevs Entertainment Limited All Rights Reserved

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
The Drone

【監督・脚本】
ジョーダン・ルービン

【キャスト】
アレックス・エッソー、ジョン・ブラザートン、アニータ・ブリエム、レックス・リン、ニール・サンディランズ、サイモン・レックス

【作品概要】
新婚カップルを襲う恐怖、その正体はドローンだった……という設定で描く、過去のホラー映画へのオマージュに満ちた作品です。監督はゾンビ化したビーバーが人を襲う、これまたトンデモ設定のホラー映画『ゾンビーバー』(2014)のジョーダン・ルービン。彼が『ゾンビーバー』を作った仲間と共に手掛けた作品です。

主演は「WTC ワイルド・トラウマ・シネマ2019」で上映された、『セーラ 少女のめざめ』(2014)で熱演を見せたアレックス・エッソーと、43シーズン放送された長寿TVドラマ「ワン・ライフ・トゥ・リヴ」で人気となり、以降様々な映画に出演しているジョン・ブラザートンが務めます。

また「CSI:マイアミ」のレックス・リンが、監督の前作『ゾンビーバー』に引き続き出演、『最’狂’絶叫計画』(2003)『最終絶叫計画4』(2006)と、ホラーパロディ・コメディ映画に出演のサイモン・レックスらが脇を固めます。

映画『DRONE ドローン』のあらすじとネタバレ


(C)2019 Bazelevs Entertainment Limited All Rights Reserved

高層マンションで若い女性が着替えをしています。ラジオからは3名の女性が連続して殺害されたニュースが流れていました。すると窓の外に小型ドローンが現れます。

女性が気付く前に、ドローンは姿を消します。街の中を飛行し、怪しげな男の住むアパートの一室に入ったドローン。部屋の壁は女性連続殺人の記事で埋め尽くされていました。

その男ラムゼイ(ニール・サンディランズ)は、ドローンから回収したメモリから、女を盗撮した映像を再生します。薬物を使用し映像を愉しもうとしていたラムゼイは、部屋にSWAT部隊が突入しようとしていることに気付きます。

パソコンのデータを消去し、彼は逃亡を試みます。SWAT部隊が突入した時、監禁されていた女性は殺害されていました。室内に隠れ隙をつき隊員の喉を切り裂き、ドローンを手にして部屋を飛び出したラムゼイ。

SWAT隊員に追われた彼は、やむなく屋上に逃れます。追い詰められたラムゼイは、投降を呼びかける警察に、「まだ終わっていない、今に見ていろ」と捨てゼリフを吐きます。

怪しげな呪文、黒魔術の様ですが、なぜか2進数なのはプログラム言語という訳でしょうか。それを唱えていたラムゼイは突然、稲妻に打たれて倒れます。電流が彼の体と手にしたドローンを駆け抜けました。

こうして連続女性殺人犯ラムゼイは死にました。証拠品のドローンを受け取った刑事(サイモン・レックス)は車に乗り込み現場を離れますが、車内で突然ドローンは動き出し、驚いた刑事は事故を起こし、車は横転します……。

場面は変わります。建築デザイナーのレイチェル(アレックス・エッソー)と、カメラマンのクリス(ジョン・ブラザートン)は、新居への引っ越し作業の最中でした。新婚の夫婦はこの家で、飼い犬のヘクターと共に、新たな生活を送ろうとしていました。

すると隣家の1人暮らしの女、コーリン(アニータ・ブリエム)がやって来ます。挨拶もそこそこに家に上がる彼女の態度に呆れますが、セクシーなコーリンに興味を持たれ、クリスはまんざらでもない様子です。

例のドローンは2人の新居に近づくと、家の側のゴミ箱の上に着陸します。それに気付くクリスと犬のヘクターですが、クリスはドローンがまだ使える状態だと確認しました。

妻の仕事場になる部屋に現れたクリスは、自分の持つドローンより拾った物の方が、最新型だと言って自分の物にすると告げます。言い出したら聞かない性分を知っており、最後には夫の我がままを受け入れたレイチェル。

販売店に行き、ドローンのコントローラーを手に入れたクリスは、早速操縦してみせます。高く飛行できるドローンのカメラは、近所の家で起きた出来事をのぞき見る性能を持っています。

その夜、ベットで戯れる2人の姿を、室内に置かれたドローンのカメラが見つめていました。

翌朝シャワーから出たレイチェルの前に、ドローンが飛んでいました。イタズラで操作したものと思い、彼女は夫を責めますがクリスに心当たりはありません。

彼女が筆を取り建築デザインの仕事をしていると、脇に置いたドローンが動いて驚きます。カメラマンの仕事をしていた夫に電話をかけ、奇妙なことが起きていると訴えますが、クリスは話を軽く受け止めます。

汚したデザイン画を修正するレイチェルの姿を、またしても独りでに飛んでいるドローンが、密かに撮影していまいした。更に彼女とクリスが写る写真も記録します。そしてドローンは家の外へ。

ドローンは隣家の庭で、トップレス姿で日光浴をしているコーリンの姿を撮影します。

夜帰宅したクリスは、玄関の前に例のドローンが落ちていることに気付きます。不審に思いながらも拾い上げ、家に入ったクリス。彼が入力する防犯用のセキュリティコードを、ドローンのカメラは見つめていました。

不審な出来事が続き、レイチェルはドローンを寝室に置くことを嫌がります。そこでクリスは別の部屋に持っていきますが、人気が消えるとドローンは飛び立ちます。

その姿を追う犬のヘクター。ドローンが怪しいものと悟ったのか、ヘクターは吠えることを止めません。鳴き声に耐え兼ね、レイチェルの反対を押し切り犬を外につなぐクリス。

隣家のコーリンがプールで泳ぐ姿に、興味深々のクリス。そんな彼を仕事へ送り出したレイチェルですが、仕事場で過去の出来事を思い出していると、突然物音がします。

何故か磁器が落ちて割れ、レイチェルは机を離れ破片を片付けます。するとドローンは彼女の仕事場のパソコンの前に現れ、画像データを送りつけます。

レイチェルが戻ると、机の上にドローンがありました。そしてパソコンに知らないファイルがあります。それを開くと中身は夫婦の夜の営みを写した動画や、日光浴するコーリンの姿をとらえたものでした。

隣に移り住んだ挨拶として、夫婦はコーリンを招き共に事をします。またしても家人の不在を利用して動き出したドローンは、パソコンで犬の保護施設を検索していました。

夫にモーションをかけるコーリンに、レイチェルは気分を害し、またも誤作動したドローンの音に腹を立てます。妻のぶしつけな態度を、昔ラジコンが絡む交通事故を経験し、遠隔操作されるドローンのような機器が、妻は苦手にしていると説明するクリス。

コーリンを送り出し、夫婦が寝静まるとドローンは動き出します。コードを入力しセキュリティを解除し、家の外に出たドローンは犬のヘクターを挑発します。ドローンを追いヘクターは壁を飛び越えますが、首輪に付けたひもで壁に吊るされてしまいます。

翌朝、変わり果てた姿になった愛犬を見つけたレイチェルは、犬を嫌って処分する場所を、パソコンで検索していたと、ヘクターを外につないだ夫を責めます。クリスはヘクターを埋葬するとそこに犬をつないだ杭を突き立て、傷心の妻を残して仕事に向かいました。

落ち込んでいる彼女がTVを付けると、彼女の意に反して画面が切り替わり、まるで見せつけるかのように犬の映像が映ります。そして次々切り替わる画面の音声は、レイチェルに呼びかけるメッセージとなります。隣にあるドローンが操作したかも、との考えがよぎるレイチェル。

帰宅したクリスに、彼女はドローンにまつわる奇怪な出来事を説明します。馬鹿げた話と考えるクリスも、いつの間にか撮られていた、夫婦やコーリンの映像を見せられると、自分は撮影していないと否定します。

突然侵入者を告げる警報音が鳴り響きます。屋内を調べたクリスは、なぜか作動したセキュリティシステムにより、一室に閉じ込められます。残されたレイチェルにドローンが突進してきますが、彼女は間一髪かわしました。

激突したドローンが床に落ちると、セキュリティは解除されました。床に転がってランプを点滅させるドローンを、夫婦は不気味そうに見つめます…。

以下、『DRONE ドローン』のネタバレ・結末の記載がございます。『DRONE ドローン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019 Bazelevs Entertainment Limited All Rights Reserved

クリスはドローンのリモコンを手に入れた販売店に行き、本体に不具合がないか店員に確認させます。ドローンは他の信号の干渉を受けない構造だと説明され、店員が操作すると問題なく動きます。

ところが店からの帰り道、彼の車は突然暴走します。事故を起こしかねない状況でようやく停車しましたが、クリスには助手席に置いたドローンが、この事態を引き起こしたかのように思えました。

その夜、ヘッドホンで音楽を聞いていたコーリンの背後に、ドローンが迫ります。

次の日の朝、レイチェルとクリスは、隣家から死体袋が運び出される光景を目撃します。夫婦の家にラミレス刑事とアレン刑事が現れ、昨夜コーリンが何者かに殺害されたと告げました。

捜査に協力して欲しいと、クリスに同行を求める2人の刑事。疑われるのを望まない彼は、刑事と共に警察に向かいます。レイチェルは慌てて不利な証拠になりかねない、パソコンに残るコーリンの盗撮画像を削除します。密かに迫りその姿を監視しているドローン。

ところが警察署でクリスは、例の盗撮画像を見せられます。何者かが夫婦の自宅のパソコンから画像を警察に送信しており、刑事はクリスを容疑者と判断したのです。

追求されても、刑事が納得できる説明が出来ないクリス。警察に現れたレイチェルは刑事に、ずっとドローンの調子がおかしいと訴えますが、まともに取り合ってもらえません。自宅へ戻る彼女の車をドローンが追っていました。

彼女が家に戻ると、屋内にはムード音楽が流れ、薔薇の花びらが散りばめられ、無数のロウソクが並べられていました。何者かの侵入を警戒するレイチェルを襲い、その体を傷付けたドローン。

抵抗するもドローンに髪を巻き込まれ、床を引きずられるレイチェル。目の前に迫るドローンを掴んで床に投げて踏みつぶすと、彼女は家から逃げ出します。

翌日レイチェルは釈放された夫に会い、昨晩ドローンに襲われたと訴えます。こんな話を警察が信じる訳がないと言うクリス。今後どうすべきかを相談する、夫婦の姿を刑事が見つめていました。

2人が自宅に戻ると、残骸を残しドローンは姿を消していました。家中を捜しても見つけることができません。

困り果てた夫婦は、探偵のベイカー(レックス・リン)に依頼します。家に現れたベイカーは、2人の馬鹿げた話に戸惑いますが、それでも依頼を引き受けると、残された部品の製造番号から手がかりが掴めないか、調査するとを約束します。

心の安らぎを得られず、ドローンが現れる悪夢に襲われ目を覚ますレイチェル。

姿を消したドローンは、とあるアパートで暮らす男の前に現れます。破損した怪しげなドローンに向け、問答無用で発砲する男に、音楽を聞かせ2人を写した写真を示し、自分が弟であることを示すドローン。男はラムゼイの兄、リッチーでした。

リッチーはドローンをスマホにつなぎ、音声変換アプリを使い、連続殺人犯の弟・ラムゼイの魂を宿したドローンと会話を交わします。

ラムゼイはレイチェルに振られた後、連続殺人犯に変貌し、彼女に似た女性を殺害していました。次は彼女の殺害を望むラムゼイは、ドローンの改造に必要な部品を手配し、兄のアパートに送らせていました。その部品を使い、ドローンを手を加えるリッチー。

自宅でセキュリティのパスワードを変更していたクリスに、探偵のベイカーから電話がかかってきます。彼は製造番号からドローンに付けられたGPSを割り出し、その信号から行方をくらましたドローンの場所を伝えます。

電話を終えたベイカーはトイレにいました。改めてドローンの位置をタブレットで確認すると、現在は自分の近くにいると知ります。信号はどんどん接近してきました。

銃を持って便座から立ち上がった、ベイカーのむきだしになった尻を、ダクトから現れたドローンが襲います……。

クリスが改めて電話をかけても、ベイカーは応答しません。すると彼のスマホに送られてきた画像を見て、思わず絶句したクリス。レイチェルが見ると、そこには血まみれになった、ベイカーの尻が写っていました。

2人は手がかりを求めてベイカーに教えられた、ドローンが立ち寄った住所のアパートを訪ねます。そこはリッチーの部屋で、2人は中に入れてもらいます。

部屋にあった写真で、レイチェルはその部屋の男が、以前付き合っていたラムゼイの身内だと気付きます。2人の正体を悟り、襲いかかるリッチー。

2人は部屋にあった工具で抵抗しますが、押さえつけたレイチェルを、ラムゼイ好みの女だと嘲るリッチー。しかしクリスが彼の腹に、電動ドリルを突き立てて倒しました。

夫婦はアパートを後にしますが、レイチェルはドローンの正体は、自分を追い廻したラムゼイだと気付きました。機械やコンピューターに強いラムゼイは、レイチェルに執着しハッキングまでして、ストーカー行為を行っていたのです。

2人が家に戻ると壁にレイチェルに強い殺意を抱く、ラムゼイからのメッセージが残されていました。チャイムが鳴り訪れたのは、クリスを疑うラミレス刑事とアレン刑事でした。

2人の刑事に、真犯人のラムゼイが家にいると伝えるレイチェル。突然の話にとまどう刑事ですが、警戒して銃を抜き身構えます。しかし刑事の脇をドローンが通過し飛び去ると、2人の首は切断され転げ落ちます。

レイチェルとクリスの前に現れたドローンは、セキュリティシステムを操り、2人を家に閉じ込めます。制止する夫を振り切り、ドローンと化したラムゼイを挑発するレイチェル。

リッチーに改造されたドローンは2人の前で変形し、電動ノコギリを持つ凶悪な姿に変貌します。レイチェルの足を傷つけ、クリスに迫ってゆくドローン。

夫が以前から持っていたドローンを、レイチェルはコントローラーで操作し、ラムゼイに向かわせます。ドローン対ドローンの対決の隙に、夫婦は2階へと逃げ出しました。

レイチェルが操作したドローンを破壊すると、2人の後を追うラムゼイ。夫婦は部屋にこもり扉に鍵をかけますが、ドローンと化したラムゼイは電動ノコギリで扉を壊し始めます。

姿を消したドローン。レイチェルは部屋に仕事に使う、シンナーの缶があると気付きます。窓を突き破って現れたドローンに、レイチェルがシンナーを浴びせました。

決めセリフと共に、ドローンに火の付いたライターを投げるクリス。ドローンは燃え上がり爆発します。危機を脱し抱き合うレイチェルとクリス。

しかしクリスがドローンの部品のCPUを拾い上げると、電流が彼に流れます。そしてクリスの瞳に、ドローンのカメラが表示する2進数が映し出されます。

電話で通報するレイチェルの前にクリスが現れます。迫ってくる夫をレイチェルがたしなめると、掴みかかって来た夫は彼女に、「クリスはもういない」と告げました。

クリスがラムゼイの魂に乗っ取られたと知り、彼女は夫に戻ってくるよう呼びかけます。しかし無駄でした。首を絞められたレイチェルは、床にあったコンセントプラグを夫の目に突き立てます。

なおも迫ってくる、ラムゼイと化したクリスの体を、レイチェルは強く突き飛ばしました。ガラスを破り2階から落ち、飼い犬のヘクターの墓の上へと落ちてゆくクリス。

墓に突き立てた犬をつないだ杭がクリスの体を貫きます。こと切れる直前にレイチェルの名を呼んだのは、ラムゼイではなく、夫のクリスだったのでしょうか。

嘆き悲しむレイチェルを残し、物語は幕を閉じました。

映画『DRONE ドローン』の感想と評価

参考映像:『ゾンビーバー』(2014)

ソンビ化したビーバーが襲来! タイトルだけでお馬鹿なホラー映画と確信できる、『ゾンビーバー』を製作した、ジョーダン・ルービン監督と彼の仲間たち。

この映画、単にお馬鹿な設定だけの映画ではありません。キャンプ場にアレ目当てに集まった男女という、「13日の金曜日」シリーズなどの、スラッシャー映画風の舞台が用意されています。

さらにチープ感があふれる、可愛い”ゾンビーバー”たちの姿には、マペットモンスターが大活躍する、3作目にはレオナルド・ディカプリオが出演した、ホラー映画「クリッター」シリーズが思い浮かびます。

つまり『ソンビーバー』は、あらゆる設定の作品が生まれた、80年代ホラー映画へのオマージュに満ちあふれた作品なのです。そんなルービン監督の『DRONE ドローン』もまた、同様のテイストで作られた映画でした。

80年代ホラー映画の雰囲気を再現!


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本作冒頭で、警察に追われた連続殺人犯が黒魔術で自らの魂を物に移す、これはあの殺人人形”チャッキー”が大活躍する、『チャイルド・プレイ』(1988)と同じです。

ところが人形に魂を移す、高尚(?)な設定の『チャイルド・プレイ』に対し、本作はドローンに憑りつくという何とも人を食った設定。ノリとしては電気椅子で処刑された、殺人鬼の魂が電気と一体化して暴れる、というウェス・クレイヴン監督作品『ショッカー』(1989)に近いかもしれません。

同じく冒頭に落雷が登場しますが、落雷でロボットが暴走する映画といえばコメディなら『ショート・サーキット』(1986)、殺人マシーンと化すホラーなら『キルボット』(1986)。身近な機械や家電が人を襲うトンデモ設定の映画も、無数に作られました。

AIや機械に強い犯人の姿に、天才少年が脳死したガールフレンドに、自作のロボットのICチップを彼女の脳に埋め込み復活させる、これまたウェス・クレイヴン監督作品、呆れ返るラストシーンで有名なホラー映画、『デッドリー・フレンド』(1986)を思い浮かべる方もいるでしょう。

『DRONE ドローン』と80年代ホラー映画へのオマージュは、設定の類似点だけではありません。使用したBGMはシンセサイザーで奏でる、とびっきり安っぽい感じのテクノ音楽調。これもまた当時の、B級ホラー映画の雰囲気を再現しています。

B級ホラー映画テイストに忠実すぎた結果…


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ドローンに魂が乗り移った、というありえない設定を一度は否定しながら、受け入れた後はさも当然と振る舞う、柔軟性の高い登場人物たち。お色気方面に軽薄など何かとノリが軽いのも、80年代ホラー映画の登場人物と同じですから、仕方がありません。

馬鹿げた殺人だけでなく、様々な行為を行うドローンに呆れている暇はありません。いい歳をした大人がドローンと真剣に会話するなど、コメディ要素は後半どんどん加速します。

映画は明らかにコメディ的状況で展開しますが、ギャグを散りばめ笑わせて展開する訳ではありません。登場人物は事態に真剣に対処します。これを高等ギャグと感じるか、何かお寒い展開と受け取るかは、人によって意見が割れるでしょう。

そしてカタルシスも何も無い、これからどうすればイイの?的な、突き放したラストシーン。これも80年代B級ホラー映画に、よくあったラストの再現です。

このラストのヒロイン同様に、『DRONE ドローン』にという映画を笑っていいのやら、怖がっていいのやら、途方にくれた観客も多数発生しました。

80年代には、そんな投げやりな内容のホラー映画が、無数に存在したのです。そんな所まで再現したジョーダン・ルービン監督は、恐るべき人物です。

まとめ


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昔懐かしい、どこかいい加減だけど楽しい、B級ホラー映画を甦らせた作品が『DRONE ドローン』です。それでもコメディ色を強調するなら、もっとベタなギャグを並べ、パロディ色を前面に出すという手法もあったでしょう。

一方あり得ない設定に対し、登場人物がこれまたあり得ない程真剣に振る舞い、そのギャップを見せる事で、笑いをとる手法もあります。日向坂46の小坂菜緒の、初出演・初主演映画『恐怖人形』(2019)などは、その良い事例となるホラー&(結果として)コメディです。

もっとも監督にそんな作品にする意図は、全く無かったでしょう。見事なまでに、全編・全要素に80年代B級ホラー映画テイストを再現させた作品です。

ところで日本でも海外でも、ドローンがむき出しのお尻を責めて、人を殺害するシーンに大喜びするような人たち(私もです)の中に、「犬を殺したシーンは悪趣味」「あれだけは許せない」との思いを訴える人が、少なからず存在しています。

あらゆる過激なシーンを愉しむ人にも、許せないものがあるんですね。何かホラー映画ファンの心に潜む、素朴な良心を再確認させて頂いた気分です。

子犬を殺されてブチ切れ、大暴れした主人公をキアヌ・リーブスが演じた映画『ジョン・ウィック』(2015)が、世界で人気になる訳です。改めて納得いたしました。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


次回の第38回は人間を乗っ取る謎の怪物の生態と恐怖を描く異色のホラー映画『スキンウォーカー』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら



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