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映画『ブラックシープ』ネタバレ感想とレビュー評価。殺人羊パンデミック騒動を描く|未体験ゾーンの映画たち2020見破録28

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第28回

世界各国の様々な映画、中には時を越え紹介される映画も集めた、劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」は、今年もヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて実施され、一部作品は青山シアターにて、期間限定でオンライン上映で紹介されます。

昨年は「未体験ゾーンの映画たち2019」にて、上映58作品を紹介いたしました。

今年も挑戦中の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」。第28回で紹介するのは、ニュージーランド発のコメディ映画『ブラックシープ』

その数4000万頭。人のより羊の方が多い国、ニュージーランド。そんなのどかな国で、殺人羊が大量発生して、人々を襲い始めたら…目も当てられない惨劇になること間違い無し!

という発想で作られた悪趣味でお馬鹿な逸品が、「未体験ゾーンの映画たち」によって再発掘されました。世界のホラー映画ファンを驚愕、もしくは呆れ果てさせた怪作を見逃すな!

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

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映画『ブラックシープ』の作品情報


(C)Live Stock Films Ltd MMVI

【日本公開】
2020年(ニュージーランド映画)

【原題】
Black Sheep

【監督・脚本】
ジョナサン・キング

【キャスト】
ネイサン・マイスター、ダニエル・メイソン、ピーター・フィーニー、タミー・デイヴィス、オリヴァー・ドライヴァー、グレニス・レヴェスタム、タンディ・ライト

【作品概要】
馬鹿げた設定と過激な描写が全世界で話題となった、2006年製作のカルト的人気のホラー・コメディ映画。監督のジョナサン・キングが、あのアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭の後進、ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭で観客賞・審査員特別賞を受賞した作品です。

この映画に出演した人々は、後に俳優としてだけでなくスタッフとして、今や世界の映画の撮影地となった、ニュージーランドの映画界を支えています。本作で色々と危ない演技を見せた、特異な風貌を持つ俳優ピーター・フィーニーは、ホラー映画『30デイズ・ナイト』、TVドラマ「死霊のはらわた リターンズ」などに出演しています。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品。

映画『ブラックシープ』のあらすじとネタバレ


(C)Live Stock Films Ltd MMVI

ニュージーランドにある美しい牧場で、父と牧羊犬と一緒になって、羊の群れを追うヘンリー少年。父の期待にかなう見事な働きぶりで、羊の群れを操ります。その姿を疎ましそうに見つめる兄のアンガス。

片足を不自由にしていたアンガスは、父と共に牧場で働く弟の姿が腹立たしかったのでしょうか。彼は斧を手に、ヘンリーが大切に育てている子羊に迫ります。

姿の見えない子羊を探すヘンリー。すると納屋の中に、皮を剥がれた子羊は吊るされていました。さらにその皮を被って弟を脅かすアンガス。

その時一家を世話している家政婦のマック夫人(グレニス・レヴェスタム)が現れ、父が事故で亡くなったと告げました。明らかにやり過ぎな兄の嫌がらせと、最悪のタイミングで知らされた父の死は、ヘンリーの心に大きな傷を残します…。

15年後。羊の群れに囲まれたタクシーの中で、成長したヘンリー(ネイサン・マイスター)はパニックを起こしていました。あの日以来、彼は羊恐怖症になっていたのです。

ようやくタクシーは走り出し、1台の車とすれ違います。それは菜食主義者で環境活動家の、エクスペリエンス(ダニエル・メイソン)とグラント(オリヴァー・ドライヴァー)の車でした。活動家2人組は牧場に忍び込み、グラントは上空を飛ぶ複葉機に悪態をつきます。

牧場に着陸した複葉機の操縦席から、アンガス(ピーター・フィーニー)が降り立ちます。今や牧場は彼が経営していました。故郷である懐かしい、そして今は兄が仕切る牧場に、嫌々ながら帰ってきたヘンリー。

すぐ帰るつもりのヘンリーは、タクシーを待たせると牧場の屋敷に入ります。心に傷を持つ彼に、生まれ育ったこの屋敷は、もはや落ち着ける場所ではありませんでした。

そこで彼は今も家政婦として働く、マック夫人に出会います。侵入者と勘違いしてヘンリーに猟銃を突きつける、実に荒っぽい再会でしたが、心許せる間柄の2人は抱き合って喜びます。

ヘンリーは間もなく牧場で開く、式典の準備に余念がないアンガスとも再会します。100年前から家業にしていた牧場を、やりたい放題に経営している兄にヘンリーは意見しますが、成功を遂げた彼は弟の意見など気にも留めません。

活動家2人組は牧場の一角にある、怪しげな研究所をカメラで撮影していました。計画では写真を撮るだけでしたが、グラントが暴走して怪しげな箱の中身を盗み出します。それは標本が詰まったガラスケースでした。

慌ててグラントを追う職員たち。逃げ出し身を潜めた2人がガラスケースを見ると、中には粘液につつまれた、不気味な子羊の標本が入っていました。迫る職員の姿を見て駆けだしたものの、転んでケースを割ってしまうグラント。

中の子羊は生きていました。何故か草食であるはずの羊に噛まれ、グラントは悲鳴を上げます。喰い付いて離れない羊を、彼は大騒ぎしてやっとの事で引きはがします。

屋敷でヘンリーは、牧場の経営権を全て兄に譲る契約書にサインしていました。牧場への様々な思いがよぎるヘンリーのために、マック夫人はウサギを豪快に捌いて調理してくれました。

マック夫人はヘンリーがかつて、羊の毛を刈るコンテストで獲得した、ハサミ型のトロフィーを大切に保管していました。今も農場で働く旧友のタッカー(タミー・デイヴィス)も現れ、ヘンリーを歓迎します。

その頃グラントの持ち出した、ガラスケースの中にいた怪しげな子羊は、近寄った牧場の羊に噛みついていました。

タッカーの運転する車に牧羊犬と共に乗り、美しい牧場を走るヘンリー。懐かしい故郷の風景ですが、目の前に現れた1頭の羊に彼は恐怖します。タッカーが羊を動かしますが、その羊は噛まれたらしく傷付いています。

その隙にエクスペリエンスが車に積まれた猟銃を奪い、2人を脅します。グラントを見つけ脱出に協力させようと脅しますが、都会育ちの彼女は銃が扱えず、あっさりタッカーに奪い返されます。しかし美しい彼女のためにと、協力することを選んだ2人。

3人が行方を捜すグラントの体に異変が起きていました。菜食主義者のはずが、手近にいたウサギを捕え、喰いちぎって食べ始めます。そして近くの家に住む農夫のマイクは、何者かに襲われていました。

グラントを見つけらないまま、ヘンリーとタッカーとエクスペリエンスは車に戻りましたが、マイクの家から煙が上がっていることに気付き、車でそちらへ向かいます。

血まみれになった家の中で、羊とマイクの死体を発見した3人。羊は扉を突き破って彼らを襲い、タッカーが銃弾を浴びせても向かってきます。なんとか羊を射殺して外に出たものの、家は羊の群れに囲まれていました。

タッカーが先に車に向かい、怯えるヘンリーにチャクラだか何だか、スピリチュアルなことを言って落ち着かせて、羊の群れの中を進ませるエクスペリエンス。2人が荷台に乗り込むやタッカーは車を走らせますが、助手席には羊が乗り込んでいたのです。

襲い来る羊を遠慮なく運転席でブン殴るタッカー。しかしついに羊に足を噛まれます。やむなくタッカーも荷台に逃れ、3人と牧羊犬は車を飛び降ります。羊が運転する車がまともに走る訳もなく、長く引く羊の鳴き声を残して車は崖から転落、大破します。

その崖はヘンリーの父が事故で亡くなった場所でした。移動手段を失い、何とか人家にたどり着こうと移動を開始する3人と1匹。

牧場に利益をもたらすはずの、自慢の羊のお披露目となる式典の準備を済まし、ご満悦のアンガスでしたが、まだタクシーに停まっていると気付きます。もう用済みの弟ヘンリーがまだ帰っていないと知り、車で探しに出かけるアンガス。

その頃牧場の研究所では、ラッシュ博士(タンディ・ライト)の指示で、助手たちが危険な羊の標本を処分していました。ところが助手の1人が羊に襲われ犠牲となります。

体が変異しヨロヨロと牧場に現れたグラントを、車を走らせていたアンガスが見つけます。出ていけと迫るアンガスに、肉体が羊に変化しながらも活動家らしく抗議するグラント。しかし彼は思わずアンガスの手に噛みつきます。逃げ出した彼をアンガスは茫然と見送ります。

ヘンリーは歩くうちに、活動家のエクスペリエンスと打ち解けていきます。しかしタッカーが、羊に噛まれた足の痛みを訴えます。彼が靴を脱ぐとなんと、足は羊のものに変化していました。

それを見て驚いたヘンリーとタッカーですが、羊の群れが迫ってきます。慌てて逃げ出した彼らは、ラッシュ博士の研究所に逃げ込みます。

そこで無惨な姿で実験材料にされている、哀れな羊の姿を目撃した3人。そこにラッシュ博士と助手と共に姿を現したアンガス。

研究所では、密かに遺伝子操作した羊を誕生させていました。利益が上がる生産性の高い羊の開発を追求した結果、血に飢え噛みついた相手を仲間に変異させる、おそるべき殺人羊がニュージーランドの片田舎で誕生したのです。

動物虐待を暴こうと、農場に乗り込んだエクスペリエンスにも想像を越えた事態でした。ラッシュ博士は隙を見てタッカーに注射を打ち眠らせ、アンガスが彼の銃を奪い取ります。

研究所から逃げ出すヘンリーとエクスペリエンス。外には羊に食い荒らされた助手の遺体がありました。凶暴化した羊の群れが迫り、実験廃棄物を捨てる穴に追い詰められた2人。ヘンリーが怒る声も、血も涙も無い兄の耳には届きません。

2人は実験動物の死体や臓物が捨てられた、深い穴に落ちました。なんとも汚い穴の底でそれが本当に効くのやら、菜食主義者のエクスペリエンスはアロマキャンドルに火を付け、心を静めようと努力します。その火を使って穴の底を探るヘンリー。

弟とやっかいな活動家を始末したアンガスは、ケージに入れられた遺伝子操作が生んだ、最高傑作のお気に入りの羊に目をやります。しかしグラントに噛まれた傷口は、大きく膨らんでいました。

そしてアンガスが生みだした殺人羊は、すでに何人もの人間を襲い、貪り喰っていました…。

以下、『ブラックシープ』のネタバレ・結末の記載がございます。『ブラックシープ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Live Stock Films Ltd MMVI

タッカーの羊と化した足は、見るからにマッドな雰囲気の科学者・ラッシュ博士の興味を引きます。しかし雇用主であるアンガスに、その事実を隠します。アンガスは博士に噛まれた傷口を見せますが、彼女にとってはそれすら、研究材料のサンプルにしか過ぎません。

横穴を見つけたヘンリーと環境活動家のエクスペリエンスは、その先へと進んでいきます。殺人羊に追われながらも、狭い抜け穴から脱出できた2人。

家政婦のマック夫人が自慢の臓物料理・ハギスを調理していた、牧場の屋敷に戻ったアンガス。しかしいつの間にか自分の声がまるで、羊の鳴き声みたいになったと気付き愕然とします。

外に逃れ出たヘンリーとエクスペリエンスは、牧場の作業小屋から聞こえる奇妙な音に気付きます。2人が中に入ると、そこには自分で毛を刈る羊の姿がありました。それは羊人間と化したエクスペリエンスの活動仲間、グラントでした。

ヘンリーが羊の毛を刈るバリカンで立ち向かっても、凶暴な羊人間にかないません。2人は何とかして逃れることに成功します。

研究所ではラッシュ博士が拘束したタッカーを使って、羊化した人間を元に戻す血清の人体実験を行っていました。興味本位で研究しているとしか思えない博士ですが、血清は冗談みたいな効き目を示し、タッカーは元の姿に戻りました。

牧場で開かれる式典に、多くの来客が集まりました。中には日本の商社マンのグループもいます。遺伝子操作で開発した自慢の羊を用意し、スピーチを始めてみたものの、自分の体に起こる異変に気付かされるアンガス。

一方研究所の外に出たラッシュ博士は、助手たちが羊に喰われている光景を目撃します。それに動じなかった彼女も、自分が殺人羊に追われるとなると流石に慌てて逃げ出しますが、林の中で羊に襲われました。

何とかスピーチを終えたアンガスは、来客に開発した羊を紹介します。この羊を飼育すれば、更なる利益をもたらすと宣言しますが、その自慢の羊は大きな声で鳴き始めます。

何やら物音が近づいてきます。その鳴き声に呼ばれたかのように殺人羊の大群が現れ、式典会場を雪崩となって襲います。何とか会場にたどり着いたヘンリーとエクスペリエンスの目の前で、殺人羊が人々を襲撃していました。

見た目は可愛い羊に襲われ、次々血まみれになってゆく来客たち。腕を喰いちぎられたり内臓を引き出されたり、日本語で叫んで逃げる奴がいたりと、式典は修羅場となりました。

ところがアンガスは襲われません。気付くと彼の腕は羊と化していました。どうやら殺人羊たちは、自分を仲間と認識していると気付かされたアンガス。

目の前の非常識な惨劇を、見守るしかなかったヘンリーとエクスペリエンスは、車を走らせ現れたマック夫人に助けられます。肝っ玉がすわった夫人の影響か、動物愛護家のエクスペリエンスも、夫人の車が羊を跳ね飛ばすと歓声をあげます。

一方惨劇の場から逃れたアンガスは、自慢の羊を屋敷の自室に連れ、何とも愛おしげに撫でていました。

屋敷の夫人の部屋に逃げ込んだ3人ですが、そこには羊人間と化したグラントがいました。人間離れした力で羊人間は大いに暴れ、抵抗したヘンリーどころかマック夫人自慢の羊の臓物料理、ハギスまでダメにします。

このままでは危ないとヘンリーと夫人は、暴れるグラントを始末しようと試みますが、なぜか針のツボの知識に詳しいエクスペリエンスが、箸で急所を刺すことで何とか羊人間を大人しくさせました。

日が落ちて暗くなると、屋敷は羊の群れに囲まれていました。そして羊に噛まれ生き残っていた犠牲者は、次々羊人間と化してゆきます。

ヘンリーたちは何とか脱出手段を探そうと動きます。そしてアンガスの部屋に入った彼は、何故かパンツを脱いだ姿で、満足げに煙草をふかす兄の姿を目撃します。

驚くヘンリーの前に、アンガス自慢の羊が姿を現します。兄が羊とナニをしたと察し、彼はもうドン引きです。しかし平然と振る舞って羊化しつつある姿を晒す兄に、恐怖すら覚えるヘンリー。

もはやアンガスは、遺伝子操作した羊でのビジネスどころか、全ての人間を羊人間化し、自分がそのリーダーとして君臨する野望を口にします。兄と羊に銃を向けたヘンリーですが、エクスペリエンスに呼ばれて部屋を去ります。

屋敷は羊たちの襲撃を受け、長く持ちこたえられそうにありません。殺人羊の群れの中を、今や伴侶となった羊を連れ、平然と歩いてゆくアンガス。

絶望的な状況ですが、ヘンリーはマック夫人から、少年時代に獲得したハサミ型のトロフィーを渡され、兄の野望を阻止しようと決意します。エクスペリエンスにキスをして別れを告げ、1人殺人羊の群れの中に入ろうとしますが、良いアイデアが閃きます。

夫人の車の敷物を被って四つん這いになり、強引に羊のふりをして、羊と羊人間の群れの中を進むヘンリー。かなり無理のある方法ですが、彼の姿にムラムラした羊が後ろに乗っかり、迷惑にも腰を振る位ですから、作戦は上手くいっているのでしょう。

しかし化けの皮がはがれても、羊たちは襲ってきません。どうやら傷つけられた自分も、羊人間化しているのだと悟り、意を決し群れの中を進んで行くヘンリー。

残されたエクスペリエンスとマック夫人は、ヘンリーを援護しようと決意します。夫人が車を運転し、猟銃で次々羊人間を射殺するエクスペリエンス。その姿にかつてベジタリアンの動物愛護家であった姿は、みじんも感じられません。

アンガスは複葉機のエンジンをかけ、愛する羊と共に牧場から飛び立とうとしますが、ますます羊と化していく自分に気付きます。兄の後を追ったヘンリーは、変異し凶暴化したアンガスに襲われます。

苦戦したヘンリーは、アンガスにトロフィーを突き立て何とか逃れますが、彼の前で兄はさらに羊化、そして巨大化してゆきます。もはや逃げ出すしか方法はありません。

外ではエンジンをかけられた複葉機の車止めが外れ、辺りを暴走していました。そしてヘンリーの前に、巨大な羊人間が姿を現します。

そこにタッカーが飼っている牧羊犬が駆けてきます。少年時代のようにヘンリーは、犬に指示を与えます。しょせん羊の習性か、犬に吠えられその場で大人しくなるアンガス。

その背後に複葉機が現れ、巨大な体はプロペラに巻き込まれ、血肉を飛ばし崩れ落ちます。しかし傷口に毛が生え、いよいよ自身も羊人間化していると思い知らされるヘンリー。その背後にまだ生きていたアンガスが迫ります。

突然、バギーに乗ったタッカーが現れます。背中に血清の入ったタンクを背負った彼は、それをアンガスの体に注入し、ヘンリーにも与えます。ヘンリーの体はタッカーの様に、元の人間へと回復していきます。

旧友の助けに喜ぶヘンリー。兄のアンガスも人に姿に戻りますが、全裸の彼は深く傷付いた体で、意識なく横たわっていました。

しかし無数の殺人羊が残っています。ヘンリーとタッカーは牧羊犬と共に、羊を一か所に集めます。羊が集まると地球温暖化の原因とも言われる多量のガス、早い話がおならが発生します。その臭いに思わず鼻をつまむタッカー。

そこにまだ生きていたアンガスが、ヨロヨロと現れます。最期は愛する羊と一緒にいようと、群れに近づいた彼は、最初にナニを喰われて悲鳴を上げます。殺人羊の餌食となり、群れの中で手を突き出したアンガスの姿は消えていきます。

ヘンリーは羊の群れに、火の付いたライターを投げ込みます。それは見事に羊のおならに引火、爆発を起こし殺人羊たちは木っ端みじんとなりました。

翌朝、ヘンリーとタッカーは羊人間と化した人々に血清を与え、元の姿に戻していました。エクスペリエンスの活動仲間、グラントも人間に戻りますが菜食主義者の彼は、自分が羊人間化した時にウサギを食べた行為を思い出し、悲鳴を上げ叫びます。

牧場で過ごした結果か、肉料理にも興味を持ったエクスペリエンスは、マック夫人に薦められた珍味「山の牡蛎」を口にしますが、それが羊の睾丸と聞かされ吐き出します。ともかく修羅場を終えた牧場に、穏やかな平穏が戻っていました。

ところが彼らの姿を見つめる牧羊犬は、どういう訳だか「メェーッ」と鳴いていました…。

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映画『ブラックシープ』の感想と評価


(C)Live Stock Films Ltd MMVI

ブラックな笑いに徹して世界のファンに愛される

様々な社会風刺的メッセージがあるようで、それ以上に下ネタとグロ描写にこだわった、痛快ブラックコメディ映画です。将に大人のアニメ、「サウスパーク」シリーズが好きな方は必見です。

参考映像:「ブラックシープの舞台裏」(英語版)

作品について訊ねられたジョナサン・キング監督は、この映画は娯楽であって、何らかの政治的メッセージを発するものではないと語っています。登場する全ての立場の出来事に、均等に過激なユーモアを与えたと自作を語っています。

同じニュージーランドの監督、ピーター・ジャクソンの『バット・テイスト』『ブレインデッド』や、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』やジョン・ランディスの『狼男アメリカン』に、大きな影響を受けたと話すキング監督。

本作の特殊効果は、2001年末から世界公開で公開された映画「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで、アカデミー視覚効果賞を獲得したWATAワークショップが手掛けています。

しかしこの作品で登場する特殊効果は、CGではなくカメラの前で行う、昔ながらの特殊メイクやプロップを使用した手法でした。無論予算的な制約もありましたが、同時に敬愛する映画の手法と、そしてその過激なゴア描写へのオマージュが込められています。

ニュージーランド・フィルム・コミッションとは?


(C)Live Stock Films Ltd MMVI

世の良心的な方々のひんしゅくを買いそうな本作は、ニュージーランド・フィルム・コミッションが製作に関わっています。

1970年代に、ニュージーランド国内の映画産業育成を目指し設立されたこの機関。基本的に国内の映画会社の映画製作費(条件を満たせば海外との合作作品も含む)の、15%にあたる額を助成金として支給する、という制度です。

この制度を日本でも、と訴えると「なぜ映画に税金を」「俗悪映画に金を出すのか」と、炎上必至の反対意見が巻き起こりそうです。ニュージーランドでも現在は国際的な作品に資金が回される結果、国内の映画人の育成がおろそかになった、また成功した映画人は海外に流出してしまう、といった批判の声も出ています。

しかしその実績は、70年代にはロジャー・ドナルドソン監督や、俳優のサム・ニールに国際的な活躍の場を与え、その後もピーター・ジャクソンなどの監督や、マオリ出身のクリフ・カーティスなど多くの俳優を輩出してきました。

そしてWATAワークショップなど、世界各国で作られる映画に関わるプロダクションを育て、様々な映画のロケ地としても定着したニュージーランド。フィルム・コミッションの成果は、映画界のみならず観光業など、様々な形で自国の産業を豊かにしています。

低予算映画『ブラックシープ』の出演者も、今も様々な形で映画産業で働いています。現在はTV「パワーレンジャー」シリーズの監督を務めるオリヴァー・ドライヴァーなど、俳優業以外の分野で活躍する人物も誕生しています。

まとめ


(C)Live Stock Films Ltd MMVI

社会風刺に満ちたブラックユーモアが大好き、下ネタは歓迎、グロいシーンはなお歓迎!と言う方なら必見の、世界のB級ホラー映画を満足させた伝説の作品こそ、『ブラックシープ』です。

こういった内容に顔をしかめる人には、間違ってもお薦めしませんが、そんな映画であっても製作を応援した、ニュージーランドという国の懐の深さ、それが見事に自国の産業を育てた姿には、学ぶべき点も大いに存在します。

可愛い羊に対する虐待行為が許せない?エンドロールの最後に「この映画では動物は傷つけていません」とクレジットされてますから、どうかご安心下さい。

参考映像:『バット・テイスト』(1988年日本公開)の、問題の羊シーン

ほら、ニュージーランドの先輩監督ピーター・ジャクソンは、長編デビュー作でこんな風に羊を可愛がっていますが、今や世界の巨匠として君臨していますから。こんな愉快な映画が生まれるなんて、本当にいい国です。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


(C)EIGHT35-EASTWEST-GMT-WILD TRIBE-SEVEN 52-UKRAINIAN STATE FILM AGENCY‐2018

次回の第29回は『レオン』のジャン・レノが、孤高の殺し屋を演じるクライム・サスペンス映画『ラスト・バレット』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

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