連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第85回
2022年2月11日(金)にNetflixで配信されたウェブトゥーン原作漫画の映画化『モラルセンス 君はご主人様』。
アイドルグループ・少女時代のメンバーとして知られ、近年女優としても活躍しているソヒョンとアイドルグループ・U-KISSのジュンが共演。
偶然同僚ジフ(ジュン)の隠していた趣味を知ってしまったジウ(ソヒョン)が、合意の上で誰にも言えない秘密の契約関係を結ぶことになるちょっぴり刺激的なラブコメディ。
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CONTENTS
映画『モラルセンス 君はご主人様』の作品情報
【日本公開】
2022年(韓国映画)
【原題】
모럴센스
【監督】
パク・ヒョンジン
【脚本】
パク・ヒョンジン、イ・ダヘ
【出演】
ソヒョン、イ・ジュニョン、イエル、ソ・ヒョヌ、キム・ハンナ、アン・スンギュン、イ・ソクヒョン、キム・ボラ
【作品概要】
監督を務めたのは『6年目も恋愛中』(2008)、『ハッピーログイン』(2016)とラブコメを手がけてきたパク・ヒョンジン監督。
ジウ役はアイドルグループ・少女時代のメンバーのメンバーであり、Netflixドラマ『プライバシー戦争』(2020)などに出演するソヒョン。
ジフ役はアイドルグループ・U-KISSのメンバーであり、ドラマ『D.P. 脱走兵追跡官』(2021)などに出演するジュン(イ・ジュニョン)。
映画『モラルセンス 君はご主人様』のあらすじとネタバレ
児童向けの教育番組を扱う大企業で働くチョン・ジウ(ソヒョン)は、有能ですが、完璧主義で目つきが怖いと怖がられ、チーム長のセクハラ発言にうんざりしていました。
そこに、チョン・ジフ(ジュン)が異動してきます。
人当たりが良く皆から好かれているジフが気になるジウですが、同僚には「恋をするならその目つきを変えなきゃ」と言われてしまいます。
名前が似ているため、ジフ宛の荷物を間違えてジウが持っていってしまい、そのことを知ったジフは慌てて駆けつけますが、既に間に合わずジウは荷物を開けてしまいます。
中に入っていたのは棘のついた首輪でした。荷物に驚くジウにジフは慌てて犬用の首輪だと言い訳をし、慌てて荷物を片そうとし、中から大人のおもちゃのクーポン券が出てきてしまいます。
犬用のものではないこと、さらに特殊な趣味を持っていることがバレてしまい気まずく感じるジフでしたが、ジウは誰かにバラすこともなく普通に接します。
しかし、チーム長に向けてジウが放った言葉を自分に向けられたと勘違いしたジフは隠れて泣いてしまいます。ジフが泣いていることに気づいたジフはどうしたのと心配します。
ジウに嫌われてしまったと泣くジフにジウは嫌いだから避けたりしたのではなく、気まずいかと思って距離を置いたと説明するとジフは突然「僕のご主人になってください、ジウさんみたいなご主人様がほしい」と言います。
驚いたジウは断ってしまいますが、ジフが気になっているジウは、BDSM、Bondage(拘束)、Dicipline(調教)、Dominance(支配)、Submission(服従)、Sadism(加虐)、Masochism(被虐)という嗜好について調べます。
そしてジフに、「何を求められているかわからないけれど、学ぶのは早い」と主人になることに同意します。
契約書を作り、初めてのプレイに望んだ2人でしたが、うまくいかず気まずいままその日のプレイを終えます。次はしっかり準備するというジウに、次は自分に任せてほしいと言い、レストランでジウの誕生日を祝います。
更にジフは、ジウに誕生日プレゼントと言って赤いピンヒールの靴を送ります。ヒールを履いたジウはジフに踏まれたいの?と聞き、少しづつ力を込めジフを踏みつけます。
職場ではバレないように過ごし、プレイを重ねていく2人。次第にプレイは激しくなっていきます。
映画『モラルセンス 君はご主人様』の感想と評価
愛の多様性とセクシャルハラスメント
本作は、BDSM、すなわちBondage(拘束)、Dicipline(調教)、Dominance(支配)、Submission(服従)、Sadism(加虐)、Masochism(被虐)という嗜好を題材にした愛を描くラブコメディになっています。
劇中でSM関係は肉体的、感覚的な行為であるのに対し、DS関係は人間関係による精神的な面が大きいと説明されています。人それぞれ趣味嗜好は多様です、誰から許容されるものではありませんが、自分の快楽のために誰かを傷つけることはあってはなりません。
ジウとジフはあくまで同意の上で結ばれた契約関係であり、ジフは自分の趣味を強要したくはないと言っています。けれど同時に本当の自分を受け入れてもらえない、自分を偽らなくてはならないことに対し葛藤も抱えているのです。
かつての恋人・ハナに受け入れてもらえず、変態、病気なのではないか、と言われてしまったことがジフの中で大きなトラウマとして残っています。更に、自分が楽になりたくてハナに打ち明け、傷つけてしまったことを後悔しています。
そのようなジフに対しジウはジフを思っているからこそ、分かりたい、試したいと思っています。
人々から怖いと言われるジウの目つきをジフは、理解しようとしてじっと見つめているんですね、と言い、ジウがきちんと自分と向き合おうとしてくれていることを感じ安心して本当の自分を曝け出したのでした。
特殊な趣味嗜好を題材とし、プレイの場面も描かれますが、それほど過激ではなく見やすくなっています。
それだけでなく、昨今問題視されているセクシャルハラスメントについて描かれている映画でもあります。
チーム長は、完璧主義でチーム長の考えに対し意見するジウをあまりよく思っておらず、遮って話すならもっと愛嬌を込めて話せなど平然とセクハラ発言をします。
能力があっても下に見られることにジウは怒りを覚えています。最後に2人が行ったとある復讐も注目ポイントです。
また、少女時代のソヒョンとU-KISSのジュンが織りなす、ちょっぴり刺激的なジウとジフの関係性、ロマンスの行方なども楽しめるラブコメディになっています。
まとめ
少女時代のソヒョンが“ご主人様”となり、U-KISSのジュンを服従させるという関係性を描いた映画『モラルセンス 君はご主人様』。
SMを題材にしたラブロマンスとして、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)が有名ですが、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』でも、恋愛関係とSM関係の狭間で葛藤する様子も描かれていました。
更に、本作では初めてご主人様となることへの戸惑いも感じながら、色々とBDSMについて調べ、威厳を保とうとするジウの様子など等身大の姿も描かれており観客にとって見やすい映画になっています。
DS関係というスリルさと共に普遍的な恋愛の葛藤、更にはセクシャルハラスメントまで盛り込んだ韓国映画らしいラブコメディです。