連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile098
VFX技術が映画業界に普及し、現代に比べても遜色のないクオリティの映像となった1990年代。
1990年代は「誰も想像すらしなかった設定や世界観」が乱立した時代を越え、既存の世界観を丁寧に脚色した「SF」映画が目立つ時代でもあります。
今回は「SF映画おすすめ5選!1990年代の名作傑作選」と題し、1990年代のおすすめSF映画をランキング形式でご紹介させていただきます。
CONTENTS
第5位『コンタクト』(1997)
映画『コンタクト』の作品情報
【原題】
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【日本公開】
1997年(アメリカ映画)
【監督】
ロバート・ゼメキス
【キャスト】
ジョディ・フォスター、マシュー・マコノヒー、ジョン・ハート、ジェームズ・ウッズ、トム・スケリット
【作品概要】
SF作家であると同時に天文学者であり、「テラ・フォーミング」を始めとした様々な持論を持つカール・セーガンの著作を映像化した作品。
監督を務めたのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを手掛けたロバート・ゼメギス。
映画『コンタクト』のあらすじ
SETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトの研究員エリー(ジョディ・フォスター)は、知的生命体が地球以外にもいることを信じ研究を続けてきました。
しかし、なかなか具体的な成果の上がらない研究に対し上層部は研究資金の提供を打ち切ります。
それでも研究を続けようとするエリーは、独自に自身の研究を応援してくれるスポンサーの協力を得ることに成功しますが……。
人は何を信じ、何を目指すのか
映画『コンタクト』(1997)に登場する地球外知的生命体探索(以後SETI)は現実でも長年行われており、その目的は「知的生命体の誕生した地球が例外的存在なのか、それとも必然なのか」を確認するためとされています。
しかし、この研究は進めれば進めるほどに「神」の存在を否定しかねないものであり、SETIを巡る物語を描いた本作では「宗教観の対立」も物語の一部として組み込まれ、「神」の存在を信じないエリーは宗教を重んじる多くの人々と対立を深めていくことになります。
人類がなぜ誕生し、なぜ知的生命体として発展していったのか。
正解と思わしき推論は数多くあれど、証拠や確証が未だに存在しない分野であるからこそ、人によって「何を信じるか」は違います。
「地球外知的生命体」の存在が、何を信じるかと言う「人の対立の根本」を見せてくれるSF映画『コンタクト』は、地球外知的生命体との直接対話を描いた『メッセージ』(2016)に似た題材であれど違った角度から楽しめるヒューマンドラマとして必見の作品です。
第4位『ガタカ』(1998)
映画『ガタカ』の作品情報
【原題】
Gattaca
【日本公開】
1998年(アメリカ映画)
【監督】
アンドリュー・ニコル
【キャスト】
イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ、ザンダー・バークレー、アラン・アーキン
【作品概要】
『ロード・オブ・ウォー』(2005)や『ドローン・オブ・ウォー』(2015)などで戦争にまつわる問題を描いてきた監督アンドリュー・ニコルの初監督作品。
主演を務めたのは『トレーニング デイ』(2001)でアカデミー賞にノミネートするなど高い演技力を持ち合わせ、本作を機にヒロイン役のユマ・サーマンと結婚することとなったイーサン・ホーク。
映画『ガタカ』のあらすじ
遺伝子操作方法の確立により、遺伝子レベルで成功と高い能力が確約された「適正者」の誕生が珍しくなくなった未来。
通常の出産で生まれ「適正者」とはなれなかったヴィンセント(イーサン・ホーク)は、不正な方法で自身を「適正者」と偽り、夢である宇宙飛行士を目指そうとしますが……。
「努力」の大切さに心打たれるSF映画
2000年代で遺伝子検査技術は大いに進化し、現代の技術では胎児の段階から基礎疾患の有無まで判別できるほどの精度となっています。
1998年に公開された『ガタカ』(1998)は、2011年にNASA(アメリカ航空宇宙局)が発表した「現実的なSF映画」で1位に選出されるほどにリアルな科学技術の未来を描いており、「SF映画」でありながら「突拍子のなさ」を一切感じさせません。
本作では血液などの遺伝子情報から遺伝子的に優れた「適正者」であるかを判別し、その結果によって職業から生き方まで大きく左右させられます。
「才能」を必要とする職業は、どれほど望んでいても「適正者」でなければ目指すことすら出来ませんが、主人公のヴィンセントは宇宙飛行士となるために違法な手段に手を染め始めます。
しかし、あくまでも主人公が手を染める悪事はあくまでも「適正者」を偽ることだけであり、宇宙飛行士としての勉学や運動は全て「努力」で補います。
基礎疾患もあり遺伝子的に劣っていようとも、「努力」で「才能」を越えようと必死になるヴィンセントと、そんな彼を見守る人間たちの暖かさに心打たれ、「頑張ろう」と思うことの出来るオススメのSF映画です。
第3位『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)
映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の作品情報
【公開】
1995年(日本映画)
【監督】
押井守
【キャスト】
田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大木民夫
【作品概要】
士郎正宗による同名漫画をアニメーション映画化した作品。
ジェームズ・キャメロンやウォシャウスキー姉妹が、自身の作品において本作の影響を受けていることを公表するなど世界的にも話題となりました。
映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のあらすじ
人の脳を電子化しネットワークとの接続を可能にする「電脳」と呼ばれる技術が進んだ未来。
公安9課に所属する草薙素子(声:田中敦子)は、超高難易度とされる他人の電脳の乗っ取りを行う技術を多用する凄腕ハッカー「人形使い」の事件を担当することとなり……。
広大な電子の海で巻き起こる事件
映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)が世界的な大ヒットを記録したことで「攻殻機動隊」ブームは燃焼し続け、2004年には正統続編『イノセンス』(2004)が公開しただけでなく、原作漫画の複数回に渡るアニメシリーズ化やハリウッドでの実写化も行われました。
それほどまでに人々を熱狂させた本作はキャラクターや物語の魅力だけでなく、いつまで経っても未来感がありながらも決して手の届かない技術ではない絶妙な「SF感」にあるといえます。
今や日本国民のほぼ全ての人が恩恵に授かっている「インターネット」の技術。
かつては有線でのパソコンでしか使えなかった「インターネット」が、今では手元の端末で手軽に扱えるようになりました。
そして、そんな「インターネット」にもし人の脳から直接アクセスすることが出来たら…と言う世界観をベースとした「攻殻機動隊」は、そのメリットを存分に描きながらも「ウイルス」や「ハッキング」など必ず問題となる多くの「悪意」をメインに物語が進みます。
人の体内には多くの電気信号が流れ、いわば人間もプログラムの集合体と言えます。
人がネットを繋がった時、プログラムと人を区別する部分は何なのか。
哲学的とも言える問いを投げかける独特な世界観は一度ハマると抜け出せなくなること間違いなしです。
第2位『ターミネーター2』(1991)
映画『ターミネーター2』の作品情報
【原題】
Terminator 2: Judgment Day
【日本公開】
1991年(アメリカ映画)
【監督】
ジェームズ・キャメロン
【キャスト】
エドワード・ファーロング、リンダ・ハミルトン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ロバート・パトリック、ジョー・モートン
【作品概要】
低予算で製作された『ターミネーター』(1985)の大ヒットを受け、ジェームズ・キャメロンが製作したシリーズ第2弾。
アーノルド・シュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトンが前作に引き続き続投し、前作以上の大ヒットを記録しました。
映画『ターミネーター2』のあらすじ
かつてターミネーターに命を狙われながらも生き延びたサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)は、AIが人類に反逆する「審判の日」を防ぐため行動していました。
しかし、その言動を信じる人はおらず、精神病棟に入れられてしまったサラを恥じ非行を繰り返しながら生きる息子のジョン(エドワード・ファーロング)のもとにターミネーターが現れ……。
1人の少年と未来を掛けた壮絶な戦い
地上波でも幾度となく放送され、もはや知らない人は居ないとすらされる大人気SF映画『ターミネーター2』(1991)。
低予算で製作された前作に比べ、資金を大量に投入された本作はCGなどのクオリティの面でも前作を遥かに上回り、規模のデカいド派手なアクションが繰り広げられます。
前作では敵として登場したアーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800型ターミネーターは本作から味方として登場し、1作目で感じた絶望感がそのまま安心感へと変わるシリーズ作品としての熱さも巧みに利用しています。
非行に走りながらも正しい正義感とユーモアを持ち合わせるジョンと感情の無いターミネーターとのやり取りも秀逸であり、何度見ても楽しめる映画として長年愛される理由が分かる1990年代の傑作SF映画です。
第1位『マトリックス』(1991)
映画『マトリックス』の作品情報
【原題】
The Matrix
【日本公開】
1999年(アメリカ映画)
【監督】
ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー
【キャスト】
キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジョー・パントリアーノ
【作品概要】
ウォシャウスキー姉妹の監督第2作目であり、全世界で大ヒットを記録したSF映画。
『スピード』(1994)以降の出演作品に恵まれなかったキアヌ・リーブスを再びスターダムに乗せた作品としても有名です。
映画『マトリックス』のあらすじ
天才的なハッカー「ネオ」と言う裏の顔を持つプログラマーのトーマス・アンダーソン(キアヌ・リーブス)は「現実世界」の非現実さに悩まされる日々を送っていました。
ある日、ハッカーの界隈で有名なトリニティ(キャリー=アン・モス)から接触を受けたトーマスはやがてこの世界の真実を知ることとなり……。
自由と真実を求めた反逆の物語
「この世界は作り物である」や「この世界はさらに高次元な存在の実験場」と言う漠然とした違和感を少年時や青年時に覚えたことはないでしょうか。
1999年に公開されて人気を得てDVD再生機器としてPS2の売り上げにも貢献したとされるSF映画『マトリックス』(1999)は、そんな感覚が映像化された作品であり、「SF」でありながら哲学や宗教観にも多大な影響を与えました。
現実世界がプログラムであると言う世界観の面白さだけに限らず、本作は当コラムに多く登場する「バレットタイム」やワイヤーアクション、カンフーを取り入れたアクションシーンがとにかく人気です。
プログラムを高速で書き換えることで人間離れした動きも行えるという設定付けにより、壁を走ったり銃弾を避けたりする動きにも理由が出来たことで物語が非現実的になっておらず、SF映画ファンにもアクション映画ファンにも愛されてきました。
聖書をベースとし、完全な「SF」を描いた作品として当コラムでもイチオシとしたい作品です。
まとめ
私事ながら、自身の産まれた年代でもあり馴染み深い作品たちの多い1990年代。
技術の革新が続き、「インターネット」が一般的になった年代だからこそ描ける時代の「SF」映画をぜひご家庭でご覧になってみてください。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile099では、夢を使い真犯人を追うSFとサスペンス織り交ぜたNETFLIX独占配信映画『ルシッドドリーム/明晰夢』(2016)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。
4月22日(水)の掲載をお楽しみに!