連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile090
人類の発展と共に着実に地球の環境は破壊され、環境に対する取り組みはより重要視されるようになりました。
映画の世界では「地球の滅亡」を題材としたSF映画が多く作られることになり、人類を存続させるための様々な案が映画の中で提唱されていきます。
今回はそんな「惑星移住」をテーマにした映画の中でも異質な作品であるNETFLIX独占配信映画『タイタン』(2018)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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映画『タイタン』の作品情報
【日本公開】
2018年(NETFLIX独占配信映画)
【原題】
The Titan
【監督】
レナート・ルフ
【キャスト】
サム・ワーシントン、テイラー・シリング、トム・ウィルキンソン、ナタリー・エマニュエル、アギネス・ディーン
【作品概要】
2009年、世界的大ヒットとなったジェームズ・キャメロンの映画『アバター』(2009)で主演を務め話題となった俳優サム・ワーシントン主演で製作されたSF映画。
共演にドラマシリーズ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」で主演を務めるテイラー・シリングや、「メイズ・ランナー」や「ワイルド・スピード」シリーズに出演するナタリー・エマニュエルなど。
映画『タイタン』のあらすじとネタバレ
2048年、相次ぐ戦争により地球の資源は枯渇し、15年後には半数の人口が餓死するとまでされていました。
砂漠を3日間飲まず食わずで歩いたとされる軍人のリックはある計画に参加するため、NATOの基地に妻と息子を連れ移り住みます。
NATOでは人の住めなくなる地球に代わり、土星の衛星であるタイタンに移り住む計画が立てられていました。
タイタンは地球に比べ極度に温度が低く、また空気もほとんどありません。
この計画はタイタンを人を住める環境にするのではなく、人間をタイタンに住める身体に強制進化させようとしていました。
5000人の応募の中から厳選され集められた軍人は、過去に過酷な状況を生き延びており、この改造人間を作り出す計画に成功するでは、と期待されていました。
人類の未来のため、危険を承知で引き受けたリックたちは早速、多種多様な薬物の注射を受け始めます。
実験が進むとリックは僅かな酸素を与えられるだけで40分以上水の中で行動できるようになります。
さらに泳ぐ速度も人地を超越したものとなり、研究者たちは実験の成功に喜びます。
しかし、リックの身体は低温に耐える事が出来る様になった代わりに通常の温度に耐えられなくなり始めます。
リックも他の被験者たちも過酷な環境でトレーニングを重ね、徐々にタイタンに順応する身体になっていくと思った矢先、被験者の1人が突然痙攣を始め死亡。
残った被験者たちは全員が死ぬのではないかと不安になりますが、決死の覚悟であるリックは弱い心を見せません。
しかし、妻のアビゲイルを始め不安の心は広がり始めます。
リックの体調が悪くなっていることやNATOに用意された家のそこかしこに監視カメラが仕掛けられていることに不信感を募らせたアビゲイルは、リックの吐いた血を採取し独自で調査を始め、リックの体内で何かが生きていることを突き止めます。
暗いタイタンでも適応できるように目の手術を受けたリックは深夜に目の異常を訴え搬送されます。
その夜、アビゲイルは被験者の1人が発狂し妻を殺害後、軍に射殺される現場を目撃。
異常性を感じ始めたアビゲイルはリックのIDを使い、実験を主導するマーティン博士の研究室に忍び込みます。
博士はNASAから実験を強行するあまり多くの犠牲者を出していることを批難されており、自身の目的のために実験を行う非道な人体実験者として反感を買っていました。
翌日、マーティンはリックに対し更なる手術を勧めますが、アビゲイルは博士の部屋で見た資料から人間にコウモリなどの遺伝子をリックに注入した事を知っており、テスト済みの研究ではなく今後どうなるかも分からないただの人体実験である事を批判します。
しかし、リックは手術を受けなければほぼ間違いなく死亡する状態であり、リックは覚悟を決め手術を受けます。
映画『タイタン』の感想と評価
参考:Netflix Japanの公式Twitter
地球から土星の衛星“タイタン”へ人間が移住するには?過酷な環境に人類を適応させるため、過激な肉体改造実験が始まる。
『タイタン』Netflixで独占配信中 #ネトフリ pic.twitter.com/kKhR5RD1Wh— Netflix Japan (@NetflixJP) April 10, 2018
「惑星移住」をテーマにした作品と言えば、マシュー・マコノヒーが主演した映画『インターステラー』(2014)が記憶に新しく、同テーマの代表ともいえるクオリティでした。
一方で本作は、『インターステラー』などの「惑星移住」をテーマにした映画と異なり、「惑星移住」が目的ではあるものの、その手段である「人体改造」の方にフォーカスが当てられている異色の作品でした。
主人公のリックは家族を愛する優しい心を持つと同時に、人類のためを考え己の身を捧げることの出来る心の強い人物として作中では描かれています。
しかし、人類存続のカギを握る実験に参加するうちに最愛の妻であるアビゲイルの心労がたまり始め、疑心暗鬼の果てにアビゲイルが研究の「裏」にたどり着くことになります。
本作では「人類全体」と「家族」、そして「自分自身」の全員を同時に愛し救うことの難しさと、揺るぎない心を持った人間を「人体実験」に使うことの残虐さが表現されており、ヒューマンドラマとして深い味わいの作品となっていました。
まとめ
「惑星移住」がテーマの作品ではカットされてしまいそうな「準備段階」の物語を話題の俳優を使い映像化した『タイタン』。
揺るぎない精神で実験を受けるリックと、最愛の夫を失ってしまう恐怖と戦い実験の「闇」に迫るアビゲイル。
「惑星移住」をテーマにした作品であり1つの家族の物語である本作は、「発展と犠牲」をメッセージに含んだSF映画としてオススメの作品です。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile091では、中国内で大ヒットとなったNETFLIX独占配信のSF映画『流転の地球』(2019)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
2月26日(水)の掲載をお楽しみに!