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Entry 2019/11/13
Update

白石晃士映画『地獄少女』あらすじと解説。実写キャストの玉城ティナが閻魔あいを体現するホラー|SF恐怖映画という名の観覧車75

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile075

2005年に1期が放映され、人の持つ「恨み」の身勝手さを軸としたダークな内容が人気を博したテレビアニメシリーズ「地獄少女」。

2018年に和製ホラー映画に長く貢献してきた白石晃士による製作が発表された実写映画版『地獄少女』(2019)が、11月15日(金)より遂に全国でロードショー。

今回は長く愛され続ける「地獄少女」の持つダークな魅力と、和製ホラー界の巨匠白石晃士に着目し、本作の魅力をご紹介していきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『地獄少女』の作品情報


(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【監督】
白石晃士

【キャスト】
玉城ティナ、橋本マナミ、楽駆、麿赤児、森七菜、仁村紗和、大場美奈、藤田富、波岡一喜

映画『地獄少女』のあらすじ


(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会

女子高生の美保(森七菜)はライブで知り合った同年代の遥(仁村紗和)がミュージシャンの魔鬼(藤田富)によって心身ともに傷つけられていることを知ります。

強い恨みを持つ者のみがアクセスできるサイト「地獄通信」と、恨みの相手を地獄に流すことの出来る「地獄少女」こと閻魔あい(玉城ティナ)の存在を知った美保は地獄通信にアクセスすることを決めますが…。

長く愛される「地獄少女」の魅力


(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会

1期の放映以降、高い評価と人気を集めたアニメ「地獄少女」は、2005年から2017年にかけて計4期製作されます。

小説やゲームなど各種メディアミックスとも相性の良かった「地獄少女」はテレビドラマ、舞台を経て遂に実写映画化にまで至りました。

長年さまざまな媒体で描かれ人気を集める「地獄少女」の一番の魅力は、華やかかつダークファンタジーな世界観で描かれる鬱々とした人間模様にあります。

「恨み」と「報い」


(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会

呪いの「藁人形」を使い「対象者」を地獄へと流した「依頼人」は、死後必ず地獄に行くことが確定します。

どんなに「対象者」が憎く、人でなしのような存在であったとしても「地獄少女」との契約は「他人を呪う行為は自分に返ってくることを覚悟する」と言う「人を呪わば穴二つ」に従っており、決してその契約から逃れることはできません。

そのため軽い気持ちで藁人形を使ったことで地獄行きが決定することに反感を抱く人物や、自身の未来のために契約を踏みとどまる人物など「地獄少女」の魅力は「依頼人」の心理描写が大部分を担っていると言えます。

しかし、本作でキーとなるのは「依頼人」に地獄に行く覚悟を持たせるほど恨まれている「対象者」。

「人を呪わば穴二つ」における「他人を呪う行為」は「他人を攻撃する行為」を意味しています。

それが善意であれ悪意であれ、「依頼人」を追い詰めるほどの行為をした「対象者」にもその行為が自分に返ってくるほどの覚悟が必要だという「人を呪わば穴二つ」に二重の意味を持たせたストーリーテリング。

いじめ、パワハラ、DVや虐待など、さまざまな問題が積み重なる現代社会だからこその魅力が「地獄少女」には詰まっています。

和製ホラーの巨匠・白石晃士監督


(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会

実写版となる本作の監督を務めたのは『貞子vs伽椰子』(2016)や『不能犯』(2018)などを製作し世間からの認知度も高い白石晃士。

今でこそ世間からの認知度が高く、ホラー以外の映画も製作する白石晃士監督ですが、実は和製ホラー界を長年支え続けたホラー映画界の巨匠ともいえる存在です。

2005年、白石監督が製作した『ノロイ』はフェイクドキュメンタリーの手法を使ったホラー映画としてリアルさを追求したことで独特の不気味さを引き出すことに成功し、和製『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)とまで呼ばれるほど高い評価を得ました。

その後も残虐すぎるスプラッタ映画として世界で話題となった『グロテスク』(2009)や、まさにカルト的な人気を誇る『カルト』(2012)など和製ホラーの名作とも呼べる映画を次々と製作。

そして2018年、長く人気を誇るアニメの傑作「地獄少女」の実写版の製作を手掛けることが決まりました。

「地獄少女」では魅力の中心ともいえる人間ドラマのほかに、呪いの「対象者」が味わう自分の行った行為の「報い」となる恐怖シーンも重要なシーンの1つ。

監督自身が本作を自身にとっての「キラキラ映画」と語るように、ホラー面からも人間ドラマとしても大注目と言えます。

玉城ティナのオーラと注目の共演者たち


(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会

物語のメインとなる「地獄少女」こと閻魔あいを演じる玉城ティナは、ここ数年で数多くの話題作へ出演する今熱い女優の1人。

『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(2016)で高橋メアリージュン演じた犀原茜の過去を艶やかに演じたことで話題を呼び、2019年には世間を騒がせた漫画を実写化した『惡の華』(2019)でヒロインの仲村佐和を完全再現したことで鑑賞者を驚愕させました。

演技を行う前から役を表現する圧倒的な雰囲気を纏う玉城ティナは、艶やかさの他に、少女らしい弱さを併せ持つ閻魔あいにぴったりな配役。

他にも『天気の子』(2019)でヒロインの天野陽菜の声優を務めた森七菜や、脇役から主演まで幅広い作品に出演するベテラン俳優の波岡一喜など、話題の俳優から一流の俳優まで出演する本作は演技面においても注目の作品と言えます。

まとめ


(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会

長い人生の中で現れる憎い相手を、自身の地獄行きを賭けて地獄へ送る覚悟はあるのか。

一方で、自身の何気ない行動が誰かを思い詰めさせ、恨まれてはいないか。

ファンタジーホラーではありながらも、ごくごく身近な世界を描いた映画『地獄少女』は11月15日より全国ロードショー。

画面力の高い玉城ティナと、和製ホラーの巨匠白石晃士の作り出す人間ドラマをぜひ劇場でご覧になってください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile076では、「SF映画おすすめ5選!50年代の名作傑作選【糸魚川悟セレクション】」と銘打ち、SF映画の確立に貢献した往年の名作をランキング形式でご紹介させていただきます。

11月20日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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