Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2019/04/10
Update

映画『バスケットケース』ネタバレ感想。ラスト結末までのあらすじ紹介も|SF恐怖映画という名の観覧車44

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile044

新宿の映画館「K’s cinema」で6月8日より開催される「奇想天外映画祭 Bizarre Film Festival~Freak and Geek アンダーグラウンドコレクション 2019~」。

見世物小屋を題材とし世界中から非難を浴び、イギリスでは公開禁止の憂き目にもあった『フリークス』(1932)を始めに、世界中の問題作や怪作を集めた奇々怪々なこの企画。

本コラムでは「奇想天外映画祭」開催記念として2週に渡り上映作をネタバレあらすじ含めご紹介していこうと思います。

第1弾となる今回ご紹介させていただくのは、カルト映画的なビジュアルが前面に押し出されながらも、哀しい愛憎劇をしっかりと描いた異色のホラー『バスケット・ケース』(1982)。

単なるカルト映画に収まらない本作の魅力をたっぷりとご紹介していきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『バスケット・ケース』の作品情報


© 1981 The Basket Case Co. All rights reserved.

【原題】
Basket Case

【日本公開】
1982年(アメリカ映画)
2019年に『奇想天外映画祭2019』にて再上映

【監督】
フランク・ヘネンロッター

【キャスト】
ケビン・ヴァン・ヘンテンリック、テリー・スーザン・スミス、ビバリー・ボナー、ロバート・フォーゲル、ロイド・ペース

映画『バスケット・ケース』のあらすじとネタバレ

医者のリフランダーは自宅で何者かに襲われ殺害されます。

バスケット・ケースを抱えた青年ドウェイン・ブラッドリーがニューヨークのホテルにチェックインしますが、彼が身なりの割に大金を持っていることに宿泊客のドノヴァンは驚きました。

ドウェインは部屋に入るなりバスケット・ケースを開けると、その中にいる「何か」と会話し彼に食事を与えていました。

殺害したリフランダーの荷物からニードルマンという医学博士の住所を手に入れたドウェインは、バスケット・ケースを抱えニードルマンを尋ねます。

ドウェインの持った大金が気になるドノヴァンは、ドウェインの部屋を鍵穴越しにのぞいていましたが、同じ宿泊客のケイシーが追い払いました。

ニードルマンの病院を訪ねたドウェインは受付の女性と仲良くなり、翌日に彼女とデートの約束を取り付けます。

ニードルマンの診察を受けるとドウェインの身体に大きな傷があることが分かり、ニードルマンはドウェインの帰宅後大きく動揺します。

ドウェインがバスケット・ケースと共に映画を観ていると、ドウェインが寝てしまった拍子にバスケット・ケースが奪われ、泥棒が「何か」に襲われます。

一方、ニードルマンはドウェインの探すカッターと言う女性医師に連絡を取り、リフランダーに連絡を取れないこととドウェインが訪ねてきたことについて話しますが、カッターは関係ないの一点張りで話を取り合おうとはしませんでした。

夜、ニードルマンが1人になった頃を見計らいドウェインはニードルマンの病院でバスケット・ケースの中にいる「何か」を解き放つと、人間の頭部に手がついたようなその「何か」はニードルマンを惨殺し、カッターの住所録を奪いドウェインのもとに戻りました。

翌日、「何か」のためにテレビと新聞を買ったドウェインはカッターの職場の下見をすると嘘をつき、病院の受付嬢とデートをしていました。

しかし、そのことが「何か」に知れ、彼は怒りのあまりホテルの客室内で暴れ騒ぎとなります。

その騒ぎに乗じ、宿泊者の1人ドノヴァンがドウェインの大金を奪おうと目論みバスケット・ケースを開けたことで「何か」に襲われ惨殺されてしまいます。

実は、「何か」とドウェインには共感覚が存在し、ドノヴァンを襲った時の「何か」の感情の昂ぶりがドウェインにも伝わり、ドウェインはホテルへと急いで戻ります。

警察の尋問を何とかかわしたドウェインは「何か」と合流すると、「何か」に対しカッターのところへ行くと嘘をつきデートをしていたことを白状し謝罪します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『バスケットケース』のネタバレ・結末の記載がございます。『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

夜、バーでケイシーにお酒を飲まされ酔っ払ったドウェインはケイシーに「何か」の存在の真実を話します。

生まれつき2人の子供がひとつの身体を共有したシャム双生児として生まれたドウェインと兄のベリアルは、出産時に母を亡くし、父はドウェインの身体に出来たデキモノのようなベリアルを忌み嫌い切り離すことを計画します。

リフランダー、ニードルマン、カッターの3人の医師はドウェインの父に命じられ2人の身体を切り離す手術を行いました。

切り離された兄のベリアルは、まるでゴミのようにポリ袋に入れられていましたが生きており、共感覚によりドウェインに助けられます。

工具用の巨大カッターを使いベリアルは父を殺害すると、自分を受け入れてくれる叔母と共にドウェインと3人で暮らしました。

しかし、叔母が病死するとベリアルの復讐心に歯止めが効かなくなり現在に至ります。

酔い潰れたドウェインを部屋に送り届けたケイシーは興味本位からバスケット・ケースを開けますが、そこにベリアルはいませんでした。

自分の部屋に戻ったケイシーは部屋に潜り込んでいたベリアルに夜這いをかけられそうになり発狂し騒動となります。

ケイシーの下着を盗みバスケット・ケースに戻ったベリアル。

翌日、目を覚ましたドウェインはベリアルと共にカッターのもとを訪ねます。

しかし、そこにはカッターは獣医と書かれており、ベリアルと自分を獣のように扱ったカッターにさらに怒りがこみ上げます。

自身の素性を明かすと、カッターは普通の人生を送れるようにした自分にむしろ感謝をして欲しいと言います。

バスケット・ケースを開けたカッターをベリアルが襲い、カッターは顔中にメスを刺され絶命。

復讐が終わり部屋に戻ろうとするドウェインのもとに、先日デートをした受付嬢が訪ねてきて関係を持とうとします。

しかし、自分の手に入れられないものに嫉妬したベリアルがバスケット・ケースから飛び出たことで台無しになってしまい、ドウェインとベリアルの関係は険悪なものとなります。

夜、寝ているドウェインを手にかけることを躊躇ったベリアルはドウェインの目を盗み街へと消えます。

一方、ドウェインは寝ている受付嬢を夜這いする夢を見ます。

それが共感覚であることに気がついたドウェインは受付嬢のもとへ走りますが、時すでに遅く暴れる受付嬢を夜這いしようとしたベリアルが彼女を殺してしまった後でした。

怒り狂ったドウェインはベリアルをホテルに持ち帰ると彼と口論を始めます。

ベリアルがドウェインを掴み、ドウェインに怒りをぶつけますが、その拍子に3階の窓を突き破ると2人は看板にぶら下がり危機的状況に陥ります。

落ちそうになるドウェインを助けようと必死に彼を掴むベリアルですが、首をつかんでいたためドウェインは息が出来なくなり意識を失います。

限界を迎えたベリアルは看板から手を離し、2人は落下。

地面に激突した2人は折り重なるように、地面に横たわっていました。

映画『バスケット・ケース』の感想と評価

1982年にフランク・ヘネンロッターにより製作されたカルトホラーの秀作『バスケット・ケース』。

2作の続編の製作、ブルーレイの発売、そして権威あるニューヨーク近代美術館にてコレクション入りを果たすなど未だ根強い人気を持つ本作。

バスケット・ケースの中にいる「何か」によって次々と人が惨殺されるプロットと、チープな映像技術はまさに「カルトホラー」と言った感じであり、数多く製作されてきた「カルトホラー」映画から抜きんでるものではありません。

しかし、本作が「名作」もしくは「迷作」と呼ばれる所以はその哀しい物語にあります。

本作は、バスケット・ケースの中にいる「何か」が他人と違うと言う理由で化物と呼ばれ、ゴミのように扱われたことを発端とし凄惨な復讐劇が始まります。

その復讐の道程で、「何か」の協力者であり運命共同体である主人公のドウェインは様々な苦労をすると同時に、「何か」が決して手に入れることの出来ない幸せを見つけます。

その行為が「何か」による嫉妬心を引き出し、物語はクライマックスへと近づいていきます。

「家族」と言う存在は、相手に嫉妬もすれば別々の運命を歩みたいとすら感じる時もある、突き詰めれば「他人」とすら言える存在。

それでも、結局は「家族」であり2人は運命共同体なんだ、と言うメッセージ性を感じる、他のカルトホラー映画から頭1つ飛びぬけた作品でした。

まとめ


© 1981 The Basket Case Co. All rights reserved.

カルトホラー、復讐劇、家族愛。

これだけの要素をごちゃ混ぜにしておきながら、全てが綺麗に繋がるまさに怪作である『バスケット・ケース』。

作中では一切喋ることのないバスケット・ケースの「何か」の心の動きも実は丁寧に描かれており、切なさをより一層ひき立てています。

カルトホラー好きだけでなく、誰にでもオススメできるイロモノ映画として本コラムイチオシの作品です。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。


© 1978 KILLER TOMATO ENTERTAINMENT

次回のprofile045では、引き続き『奇想天外映画祭』開催記念第2弾としておバカ映画の伝説的作品『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』(1978)をご紹介させていただきます。

4月17日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『マジック・ロード』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。 空飛ぶ仔馬と天空の花嫁は手塚治虫が愛した世界観にリスペクト|未体験ゾーンの映画たち2022見破録2

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第2回 映画ファン毎年恒例のイベント、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が今年も開催されました。 傑作・珍作に怪作、お子様まで楽し …

連載コラム

映画『夏へのトンネル、さよならの出口』感想評価とあらすじ解説。劇場アニメとして飯豊まりえと鈴鹿央士が声優で“青春の彩を体現”する|映画という星空を知るひとよ110

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第110回 第13回小学館ライトノベル大賞のガガガ賞と審査員特別賞のW受賞を果たした八目迷の同名小説を原作にした、アニメーション映画『夏へのトンネル、さよならの …

連載コラム

『ウィリーズ・ワンダーランド』ネタバレ結末評価とあらすじ感想。悪ノリスラッシャー映画で我らがニコラス・ケイジまたも怪演で殺人ロボットを瞬殺す|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー61

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第61回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

連載コラム

映画『デッドトリガー』あらすじとネタバレ感想。禁断のラストに突っ走るドルフ・ラングレン |未体験ゾーンの映画たち2019見破録43

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第43回 ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回は皆が待ち望むホラーの定番、ゾンビ映画を紹介 …

連載コラム

映画『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』感想解説と内容評価レビュー。タイトルの意味(邦題)に隠された意図を考察|SF恐怖映画という名の観覧車147

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile147 車や電車など人類は長い歴史の中で長距離を移動できる手段を手に入れ、空間的距離が生み出す問題は以前に比べ少なくなりました。 しかし、その一 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学