連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile044
新宿の映画館「K’s cinema」で6月8日より開催される「奇想天外映画祭 Bizarre Film Festival~Freak and Geek アンダーグラウンドコレクション 2019~」。
見世物小屋を題材とし世界中から非難を浴び、イギリスでは公開禁止の憂き目にもあった『フリークス』(1932)を始めに、世界中の問題作や怪作を集めた奇々怪々なこの企画。
本コラムでは「奇想天外映画祭」開催記念として2週に渡り上映作をネタバレあらすじ含めご紹介していこうと思います。
第1弾となる今回ご紹介させていただくのは、カルト映画的なビジュアルが前面に押し出されながらも、哀しい愛憎劇をしっかりと描いた異色のホラー『バスケット・ケース』(1982)。
単なるカルト映画に収まらない本作の魅力をたっぷりとご紹介していきます。
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映画『バスケット・ケース』の作品情報
【原題】
Basket Case
【日本公開】
1982年(アメリカ映画)
2019年に『奇想天外映画祭2019』にて再上映
【監督】
フランク・ヘネンロッター
【キャスト】
ケビン・ヴァン・ヘンテンリック、テリー・スーザン・スミス、ビバリー・ボナー、ロバート・フォーゲル、ロイド・ペース
映画『バスケット・ケース』のあらすじとネタバレ
医者のリフランダーは自宅で何者かに襲われ殺害されます。
バスケット・ケースを抱えた青年ドウェイン・ブラッドリーがニューヨークのホテルにチェックインしますが、彼が身なりの割に大金を持っていることに宿泊客のドノヴァンは驚きました。
ドウェインは部屋に入るなりバスケット・ケースを開けると、その中にいる「何か」と会話し彼に食事を与えていました。
殺害したリフランダーの荷物からニードルマンという医学博士の住所を手に入れたドウェインは、バスケット・ケースを抱えニードルマンを尋ねます。
ドウェインの持った大金が気になるドノヴァンは、ドウェインの部屋を鍵穴越しにのぞいていましたが、同じ宿泊客のケイシーが追い払いました。
ニードルマンの病院を訪ねたドウェインは受付の女性と仲良くなり、翌日に彼女とデートの約束を取り付けます。
ニードルマンの診察を受けるとドウェインの身体に大きな傷があることが分かり、ニードルマンはドウェインの帰宅後大きく動揺します。
ドウェインがバスケット・ケースと共に映画を観ていると、ドウェインが寝てしまった拍子にバスケット・ケースが奪われ、泥棒が「何か」に襲われます。
一方、ニードルマンはドウェインの探すカッターと言う女性医師に連絡を取り、リフランダーに連絡を取れないこととドウェインが訪ねてきたことについて話しますが、カッターは関係ないの一点張りで話を取り合おうとはしませんでした。
夜、ニードルマンが1人になった頃を見計らいドウェインはニードルマンの病院でバスケット・ケースの中にいる「何か」を解き放つと、人間の頭部に手がついたようなその「何か」はニードルマンを惨殺し、カッターの住所録を奪いドウェインのもとに戻りました。
翌日、「何か」のためにテレビと新聞を買ったドウェインはカッターの職場の下見をすると嘘をつき、病院の受付嬢とデートをしていました。
しかし、そのことが「何か」に知れ、彼は怒りのあまりホテルの客室内で暴れ騒ぎとなります。
その騒ぎに乗じ、宿泊者の1人ドノヴァンがドウェインの大金を奪おうと目論みバスケット・ケースを開けたことで「何か」に襲われ惨殺されてしまいます。
実は、「何か」とドウェインには共感覚が存在し、ドノヴァンを襲った時の「何か」の感情の昂ぶりがドウェインにも伝わり、ドウェインはホテルへと急いで戻ります。
警察の尋問を何とかかわしたドウェインは「何か」と合流すると、「何か」に対しカッターのところへ行くと嘘をつきデートをしていたことを白状し謝罪します。
映画『バスケット・ケース』の感想と評価
1982年にフランク・ヘネンロッターにより製作されたカルトホラーの秀作『バスケット・ケース』。
2作の続編の製作、ブルーレイの発売、そして権威あるニューヨーク近代美術館にてコレクション入りを果たすなど未だ根強い人気を持つ本作。
バスケット・ケースの中にいる「何か」によって次々と人が惨殺されるプロットと、チープな映像技術はまさに「カルトホラー」と言った感じであり、数多く製作されてきた「カルトホラー」映画から抜きんでるものではありません。
しかし、本作が「名作」もしくは「迷作」と呼ばれる所以はその哀しい物語にあります。
本作は、バスケット・ケースの中にいる「何か」が他人と違うと言う理由で化物と呼ばれ、ゴミのように扱われたことを発端とし凄惨な復讐劇が始まります。
その復讐の道程で、「何か」の協力者であり運命共同体である主人公のドウェインは様々な苦労をすると同時に、「何か」が決して手に入れることの出来ない幸せを見つけます。
その行為が「何か」による嫉妬心を引き出し、物語はクライマックスへと近づいていきます。
「家族」と言う存在は、相手に嫉妬もすれば別々の運命を歩みたいとすら感じる時もある、突き詰めれば「他人」とすら言える存在。
それでも、結局は「家族」であり2人は運命共同体なんだ、と言うメッセージ性を感じる、他のカルトホラー映画から頭1つ飛びぬけた作品でした。
まとめ
カルトホラー、復讐劇、家族愛。
これだけの要素をごちゃ混ぜにしておきながら、全てが綺麗に繋がるまさに怪作である『バスケット・ケース』。
作中では一切喋ることのないバスケット・ケースの「何か」の心の動きも実は丁寧に描かれており、切なさをより一層ひき立てています。
カルトホラー好きだけでなく、誰にでもオススメできるイロモノ映画として本コラムイチオシの作品です。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile045では、引き続き『奇想天外映画祭』開催記念第2弾としておバカ映画の伝説的作品『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』(1978)をご紹介させていただきます。
4月17日(水)の掲載をお楽しみに!