連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile131
2021年に公開される清水崇監督の映画『樹海村』。新ビジュアルとなるポスターデザインが発表され話題となりました。
シリーズの前作である2020年公開された『犬鳴村』は、インターネット上で有名な「都市伝説」を題材としており、映画化が決定した段階から注目を集めていました。
以前にも当コラムで取り上げたように「都市伝説」は映画の歴史と切っても切れない関係にあると言えます。
今回は、アメリカの有名な「都市伝説」を題材とした大ヒットSF映画『メン・イン・ブラック』(1997)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『メン・イン・ブラック』の作品情報
【公開】
1997年(アメリカ映画)
【原題】
Men in Black
【監督】
バリー・ソネンフェルド
【キャスト】
ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ、リンダ・フィオレンティーノ、リップ・トーン、ヴィンセント・ドノフリオ
【作品概要】
監督デビュー作『アダムス・ファミリー』(1992)でいきなりヒット監督の仲間入りを果たしたバリー・ソネンフェルドが監督したSF映画。
ラッパーとして活躍し映画俳優としても数多の主演作を持ちハリウッドスターの代表とも言える俳優ウィル・スミスと、『逃亡者』(1993)でアカデミー助演男優賞を受賞したトミー・リー・ジョーンズがW主演を務めたことで話題となりました。
映画『メン・イン・ブラック』のあらすじとネタバレ
国境警備隊が不法移民を一列に並ばせている中、その場に現れた真っ黒なスーツを着た2人の男DとKが不法移民の1人を国境警備隊から引き離し草むらの中へと連れていきます。
草むらの中でKが不法移民の服を切ると、そこからは宇宙人が現れます。
明かな不法滞在であり数々の条例に反していると2人が宇宙人に言うと、様子を見に来た国境警備隊の1人がその様子を目撃。
宇宙人は国境警備隊に襲い掛かろうとしますが、Kが宇宙人を射殺しました。
Kは唖然とする国境警備隊たちに「ニューラライザー」と言う棒の先端を見つめるように言うと、眩い光が発せられます。
ニューラライザーは人の記憶を時間単位で消す能力があり、Kは国境警備隊たちにガス爆発があったと言う偽の記憶を植え付けました。
後始末を終えて座るKに対し、Dは歳を取ったことで身体が動かず、国境警備隊が襲われようとする中で何もできなかったと後悔します。
星を綺麗と感じていた頃が懐かしいと話すDにKはニューラライザー使い、「組織」の人間であった記憶をなくしました。
ニューヨーク市警のジェームズは恐るべき身体能力を持ち、見たこともない武器を持つ男を追跡していました。
ビルの屋上にその男を追い詰めることに成功しますが、男は「この世界に終末が訪れる」と言うと身を投げ自殺してしまいます。
男の自殺に対する取り調べ中、ジェームズは男が通常の向きとは逆方向にまばたきをしたことや、特殊な形の銃を持っていたことを証言しますが上司に訝しがられてしまうだけでした。
上司が去ったあと部屋にやってきた検視医のウィーバーは、飛び降り死体の異常性をジェームズに話しますが、そこに現れたKにニューラライザーで記憶を消されます。
部屋に入るとKはジェームズに死んだ男が宇宙人であることを話し、ジェームズの見た銃を調べるため彼を連れ出します。
盗品を扱う「ユニバーサル質店」を訪れたJはKが店主であるジーブスの頭を吹き飛ばし、再生していく様子を目撃します。
銃の確認が終わり起きたことに唖然とするジェームズにKはニューラライザーを使い、全てを忘れた彼に「MIB」と書かれた名刺を渡します。
ある夜、宇宙船が農場に墜落。
宇宙人は様子を見に来た農夫のエドガーを殺害するとエドガーの皮を被り擬態します。
エドガーに擬態した宇宙人はエドガーの妻に砂糖水を要求すると家を出ていき、害虫駆除業者を殺害しトラックを強奪しました。
前日のことを全く覚えていないジェームズは唯一覚えていた約束の場所に着くと、名刺を見せエレベーターに乗ることを許可されます。
エレベーターの先にはZと名乗るスーツの男がおり、何かの選考が始まります。
ジェームズの他には陸軍や海軍などの中でもエリート中のエリートが集まっており、何の選考なのかもわからないままジェームズは試験を受けることになります。
様々な試験をルールを無視した機転で突破するジェームズをZは従順性に欠けると酷評しますが、異常な身体能力を持つ宇宙人を足で追い詰めたことと柔軟性を評価するKの進言に従い、Zはジェームズを採用します。
その他の受験生が視力検査と偽りニューラライザーで記憶を消される中、ジェームズはKから地球に宇宙人がいることを教わります。
1950年代、人間は宇宙人への発信を行い1961年に実際に宇宙人と接触。
政府の高官とその場に居合わせたKは人間がパニックになることを危惧し、地球で人類と宇宙人の双方を守る組織「MIB(メン・イン・ブラック)」を設立。
人間に擬態し既に数多の宇宙人が地球にいると聞いたジェームズはKの頭を心配しますが、施設の中にいる宇宙人を実際に見せられ考えを改めることになります。
Kから警察を辞めMIBの一員にならないかと勧誘された翌日、ジェームズは覚悟を決めMIBに入ることを決めます。
本部へと案内されたジェームズは、宇宙人にとって空港や役場ともなっているMIB本部の光景に圧倒されます。
指紋と経歴を消しジェームズとして生きた過去は抹消され、新たにエージェントの「J」としてMIBに迎え入れられたジェームズ。
Kは真実が載っていると話すゴシップ誌から夫の皮を被った生物の話を見つけ、エドガーの妻に話を聞きに行きます。
エドガーの妻は見たことをJとKに全て話すと、Kによってニューラライザーで記憶を消されます。
砂糖水を好み、人の皮を被る宇宙人の正体が「バグ」であると気づいたKは、バグは巨大なゴキブリのような生物で降り立った地の生物を喰らい尽くす獰猛さと高い自尊心を持つ危険な生物であるとJに忠告します。
その頃、エドガーの皮を着るバグは老人2人に偽装した宇宙人を飲食店で殺害します。
異常な死体の話を聞き、死体安置所に来たKとJはウィーバーから内臓の無い2人の死体と死体から離れようとしない猫を見せられます。
Jが耳たぶに触れると老人の死体は顔部分が開き、中から瀕死の宇宙人が現れました。
瀕死の宇宙人は「戦争を止めろ、銀河はオリオンのベルト」と話すと息を引き取ります。
Kは宇宙人がアルキリアン帝国の皇族だと言い、ウィーバーの記憶をニューラライザーで削除。
本部に戻ったJはZから星座の「オリオン座のベルト」と呼ばれる部分には銀河系は存在せず、遺言には不可解な部分が多いと聞かされます。
その直後、地球付近にアルキリアンの戦艦が現れ皇族が死んだことを地球人のせいとして報復を匂わせ始めます。
映画『メン・イン・ブラック』の感想と評価
現代のアメリカで秘密裏に宇宙人が地球に観光や就職目的で来訪し、その活動から地球人と宇宙人の双方を守るための組織の奮闘を描く映画『メン・イン・ブラック』。
本作は5億ドル以上もの興行収入を記録し、不振の続いていたソニー・ピクチャーズに多大な恩恵を与えただけでなく、作中で使われたサングラスの売上が3倍になるなど多くの経済効果を生み出しました。
本作はアメリカの有名な「都市伝説」を映画化した作品であり、実は日本でもその「都市伝説」には目撃談があります。
都市伝説と「メン・イン・ブラック」
宇宙人や未知の生命体、超常現象など各地で起きる異常な出来事の現場に現れ口止めや脅迫を行う黒服の男たち。
「メン・イン・ブラック」と呼ばれる彼らの存在は各地で目撃され、その正体は政府の組織の人間や宇宙であるなど存在自体が「都市伝説」となっています。
彼等は日本でも複数回の目撃情報があり、UFOや超常現象の後始末を行っていると言う噂すらあります。
映画『メン・イン・ブラック』はそんなアメリカの著名な「都市伝説」である黒服の男たちをメインに「エルヴィス・プレスリー生存説」など大小様々な「都市伝説」を取り入れており、「都市伝説」好きにはたまらない作品となっています。
「SF」要素と「恐怖」を引き立てる演出
本作は地球のみを題材としたSF映画ですが、そのスケールは壮大であり全ての「SF」の要素が魅力的に描かれています。
登場する宇宙人は多岐に及んでおり、地球で盗品を売りさばくジーブスやMIBの本部で働くムシなど小悪党から陽気な宇宙人まで画面を観ているだけでも飽きることのないように設計されています。
コミカルな作風と主人公のジェームズを始めとしたコミカルな登場人物が本作の画面としての面白味を後押しする一方で、悪役として登場する宇宙人「バグ」は並みのホラー映画を上回る恐ろしさで描写されます。
人間を見下す「バグ」はムシの駆除業者の口に殺虫剤を差し込み殺害するだけでなく、罪のないウェイターを二つ折りにして殺害するなど登場時から衰えない凶暴性を観客に見せつけます。
ジェームズが登場するシーンの陽気さとのギャップによりその恐ろしさがより高まり、鑑賞者のハラハラとドキドキを引き立てる1つの要素となっていました。
まとめ
ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズの代表的な映画の1つであり、後に同キャストによる続編2作と心機一転を狙ったリブート映画が製作されるに至った大ヒット映画『メン・イン・ブラック』。
目撃情報は幾度となく存在するにも関わらず、宇宙人そのものが公衆の面前に現れたことは「ロズウェル事件」などの真偽不明な事態を除きありません。
しかし、実はあなたも筆者も目撃していたにも関わらず「メン・イン・ブラック」たちによって記憶を改ざんされているのかもしれません。
もしかしたら事実なのかもしれない映画『メン・イン・ブラック』は、1997年の作品でありながら、特殊効果や物語性も一切現代の作品と見劣りしない作品。
興味のある方はぜひご覧になってみてください。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile132では、本作の続編となる大ヒットシリーズ第2弾『メン・イン・ブラック2』(2002)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
12月16日(水)の掲載をお楽しみに!
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