連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile106
今回のコラムでは遠藤麻衣子監督による最新映画『TOKYO TELEPATH 2020』(2020)をご紹介予定でしたが、予定を変更させていただきます。
時が経つのは早いもので、様々な想い出のある「2010年代」はあっという間に過ぎ去ってしまいました。
今回は「SF映画おすすめ5選!2010年代の名作傑作選」と題し、我々の生きた時代である2010年代のおすすめSF映画をランキング形式でご紹介させていただきます。
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CONTENTS
2010年代のおすすめSF映画:5位『スカイライン -奪還-』
映画『スカイライン -奪還-』の作品情報
【原題】
Beyond Skyline
【公開】
2018年(イギリス・中国・カナダ・インドネシア・シンガポール・アメリカ合作映画)
【監督】
リアム・オドネル
【キャスト】
フランク・グリロ、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン、カラン・マルヴェイ、ジョニー・ウェストン
【作品概要】
『スカイライン -征服-』(2011)に製作として携わったリアム・オドネルが監督として製作したシリーズ第2作。
「キャプテン・アメリカ」シリーズや「パージ」シリーズなど、アメリカの大作アクション映画などに多数出演する肉体派俳優フランク・グリロが主演を務めました。
【映画『スカイライン -奪還-』のあらすじ】
ロサンゼルス市警のマーク(フランク・グリロ)は拘置所に入れられた息子のトレント(ジョニー・ウェストン)と共に帰路につきます。
しかし、宇宙から飛来した謎の生物によってロサンゼルスは僅か数時間で壊滅。
マークとトレント、そして生き残りの女性オードリー(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)は人々を「回収」する宇宙生物から逃れるために街からの脱出を試みますが……。
宇宙人と身体で戦う!壮絶な地球奪還の戦記(クロニクル)
2011年に公開された映画『スカイライン -征服-』の続編として製作・公開がされたSF映画『スカイライン -奪還-』(2018)。
前作は、未知の科学を駆使しあっという間に地球を侵略していく宇宙人の恐ろしさを上映時間たっぷりに描いており、侵略を目的とした宇宙生物に対する「恐怖心」が鑑賞後も身を包むような作品でした。
しかし、続編となる本作は強面で暴力性の強いキャラを演じさせたら右に出るものがいないような肉体派俳優フランク・グリロが主演を務めただけでなく、全世界で話題となったアクション映画『ザ・レイド』(2012)で知られるイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンが参戦。
キャストの段階で宇宙人たちの安否が不安視されていた本作はその前情報に全く劣らない怒涛の展開が繰り広げられ、前作ラストで抱えることとなるモヤモヤがすっきりと解消されます。
『スカイライン -征服-』の登場人物との「クロスオーバー」も熱い本作は、2010年代を代表するトンデモSF映画というに相応しい作品です。
2010年代のおすすめSF映画:4位『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の作品情報
【原題】
Rogue One: A Star Wars Story
【公開】
2016年(アメリカ映画)
【監督】
ギャレス・エドワーズ
【キャスト】
フェリシティ・ジョーンズ、ディエゴ・ルナ、アラン・テュディック、ドニー・イェン、チアン・ウェン、リズ・アーメッド、フォレスト・ウィテカー、マッツ・ミケルセン
【作品概要】
「ギャレゴジ」という愛称で日本のファンから親しまれる2014年版のハリウッド版ゴジラ映画『GODZILLA ゴジラ』(2014)を手掛けたギャレス・エドワーズ監督による大人気シリーズのスピンオフ映画。
「スター・ウォーズ」シリーズの本編の物語を保管する目的で製作された「アンソロジー・シリーズ」の記念すべき1作目としても話題となりました。
【映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のあらすじ】
違法行為を繰り返すアウトローとして帝国軍の拘置所に捕らわれていたジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)は、圧政を敷く帝国軍からの銀河系の解放を望む反乱軍によって救出されます。
反乱軍は、ジンが幼い頃に生き別れとなった父ゲイレン(マッツ・ミケルセン)が星を破壊する帝国軍の最終兵器「デス・スター」の設計者であることを理由に、彼女にゲイレンからの使者と接触を取るように依頼しますが……。
全ては「希望」のために…反乱者(ローグ)たちの命を懸けた戦い
2019年に公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)で9作目となった「スター・ウォーズ」シリーズ。
本作『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)はシリーズの始動作ともなった第1作の前日譚となり、1作目であっさりと片付けられてしまった星を破壊する兵器「デス・スター」に隠された「致命的欠陥」を入手した兵士たちの奮闘を描いています。
本編シリーズとは違い主軸となる登場人物たちが単なる「アウトロー」や「兵士」であるため、特殊な戦闘能力を持っていないことも魅力であり、1人の兵士として「なぜ命を懸けるのか」が戦争の意味と共に語られます。
シリーズ屈指の人気ヴィラン「ダース・ベイダー」の登場はシリーズの中でも1位を争うほどの人気シーンであり、海外で開催されたコミコンでは本シーンを再現するファンたちが現れるほどとなりました。
本編に密接に繋がるものの、本作のみに登場するキャラがメインであるため単体作品としても充分に楽しめる『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』。
「スター・ウォーズ」シリーズに入ってみたいけどシリーズが長すぎる、と躊躇してしまっている方にもオススメの作品です。
2010年代のおすすめSF映画:3位『シン・ゴジラ』
映画『シン・ゴジラ』の作品情報
【公開】
2016年(日本映画)
【監督】
庵野秀明、樋口真嗣
【キャスト】
長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、松尾諭、市川実日子、高良健吾、高橋一生、津田寛治
【作品概要】
ギャレス・エドワーズ監督による『GODZILLA ゴジラ』の大ヒットを受けておよそ12年ぶりに製作された和製「ゴジラ」映画。
総監督・脚本を「ヱヴァンゲリヲン」シリーズの庵野秀明が務め、監督・特撮技術監督に『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015)の樋口真嗣が起用されました。
【映画『シン・ゴジラ』のあらすじ】
東京湾アクアライン付近で確認された巨大生物。
専門家の予想を裏切り日本へと上陸したその生物は東京を横断し始め多大な被害を出します。
法律や憲法に縛られ行動を制限される中、政府首脳陣や内閣官房副長官の矢口蘭堂(長谷川博己)は新生物「ゴジラ」に対抗する手段を模索しますが……。
「ゴジラの恐怖」と「現代のリアリティ」を融合させた名作ゴジラ
1950年代に生み出され、昭和平成と日本の歴史と共に時代を歩んできた人気の映画シリーズ「ゴジラ」。
初作『ゴジラ』(1954)では「人間が生み出した恐怖の象徴」として描かれたゴジラですが、いつからか「地球を守る怪獣」に変化し人類サイドの守護神として活躍するようになりました。
しかし、2016年に庵野秀明によって製作された『シン・ゴジラ』(2016)は「原点回帰」といえる作品であり、ゴジラは再び人間の敵として人類に襲い掛かります。
ゴジラという存在が放つ「恐怖」と「絶望」感の演出は圧倒的であり、始めて映画館で本作を鑑賞した際には身震いを起こすほどでした。
緊急事態に憲法や様々な批判に縛られるなか奮闘する現場や政府首脳陣の描き方も、緊急事態を迎えた現代だからこそよりリアルに感じられ、「ゴジラ」映画として原点回帰であり異質作として広く愛されています。
2010年代のおすすめSF映画:2位『インターステラー』
映画『インターステラー』の作品情報
【原題】
Interstellar
【公開】
2014年(アメリカ映画)
【監督】
クリストファー・ノーラン
【キャスト】
マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ケイシー・アフレック、マット・デイモン
【作品概要】
『メメント』(2000)『ダークナイト』(2008)『インセプション』(2010)など映像や物語、演出などに拘り抜いた作品が高い評価を受けるクリストファー・ノーランによって製作されたSF映画。
『ダラス・バイヤーズクラブ』(2014)でHIVに感染した主人公を演じアカデミー主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒーが主演を務めたことでも話題となりました。
【映画『インターステラー』のあらすじ】
様々な異常気象が発生し、地球の寿命は終わりを迎えようとしていました。
人類に残された道は「宇宙コロニー開発のための新理論の発見」もしくは「人類の住むことの出来る惑星の発見」の2つに1つ。
元宇宙飛行士クーパー(マシュー・マコノヒー)は家で起きた不思議な現象を解読したことから、新天地を求める「ラザロ計画」に関係していくことになり……。
人類の命運を背負った壮大な宇宙の旅
「人類の居住可能な星を探す旅」と言う壮大なスケールの物語をハリウッドの最新技術と名監督クリストファー・ノーランが実現したSF映画『インターステラー』(2014)。
『2001年宇宙の旅』(1968)を意識し、また監督自身も「この映画を通して子供たちに宇宙を旅して欲しい」と語ったように、本作は没入して鑑賞することで「宇宙旅行」しているかのような体感を味わうことが出来ます。
太陽系を飛び出て全くの未知の領域に踏み込む「恐怖」と人類の未来を託され開拓を進める「冒険」の高揚感、人類が宇宙開発を進める理由の片鱗を垣間見れる本作は全身で鑑賞して欲しい作品といえます。
ノーベル物理学賞を受賞した経験を持つ理論物理学者のキップ・ソーンを科学コンサルタントとして起用しているため、最新の宇宙理論を勉強する意味でも家族での鑑賞もオススメしたい作品です。
2010年代のおすすめSF映画:1位『マッドマックス/怒りのデスロード』
映画『マッドマックス/怒りのデスロード』の作品情報
【原題】
Mad Max: Fury Road
【公開】
2015年(アメリカ映画)
【監督】
ジョージ・ミラー
【キャスト】
トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ヒュー・キース・バーン、ニコラス・ホルト、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー、ライリー・キーオ、ゾーイ・クラヴィッツ
【作品概要】
27年ぶりに制作された「マッド・マックス」シリーズ第4弾。
主演がシリーズで3作に亘りマックスを演じたメル・ギブソンから『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)や『ヴェノム』(2018)などに出演するトム・ハーディに世代交代し、シリーズが再始動したことでも話題となりました。
【映画『マッドマックス/怒りのデスロード』のあらすじ】
戦争により荒廃した世界、娘を失った幻覚に苦しみながら孤独に生きるマックス(トム・ハーディ)はイモ―タン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)が圧政を敷く谷で、血液バッグとして捕らわれます。
しかし、イモータン・ジョーの配下の幹部である女兵士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)がジョーの妻を攫い反旗を翻したことで、マックスは拘束から逃れることが出来ますが……。
エンジン全開!力強さと世界観で強引に爽快に押し切るMADな傑作
「戦争による荒廃した世界」というSF作品の設定を確立した映画『マッドマックス2』(1981)。
シリーズは3作目となる『マッドマックス/サンダードーム』(1985)を最後に凍結していましたが、2015年に27年の沈黙を破り再登場。
4作目『マッドマックス/怒りのデスロード』(2015)は劇場で公開されるや否や全世界で大ヒットを記録し、大衆娯楽作を忌避しがちなアカデミー賞でいくつもの賞を受賞するなど偉業を達成します。
本作はマックスのセリフが「2」と同様に極端に少なく、ある目的地に「行って帰るだけ」という、凝縮するとシンプルになりすぎる物語であれどその熱量は尋常ではありません。
『シン・ゴジラ』で人気となった「無人在来線爆弾」のようなテンションが2時間続く、狂気(MAD)といえるテンションの高さが癖になり気が付けば何回も劇場に足を運んでしまいました。
シャーリーズ・セロンが演じた女兵士フュリオサをメインとした続編も製作される『マッドマックス/怒りのデスロード』は、『マッドマックス2』が数十年語られたように本作も数十年語られる価値が充分にあるといえる2010年代の傑作SF映画です。
まとめ
2010年代に入っても映像技術の進化は留まることを知りませんが、徐々にSF映画好きの興味はその作品の持つ「センス」に移行していったと考えます。
全体のまとまりよりも一部の感情に特化した『マッドマックス/怒りのデスロード』のようないわゆる「ぶっ飛んだ」作品が全体的に好まれるようになり、尖ったナイフのような切れ味を持つ作品が今後も増えていくと思うだけでイチ映画好きとして楽しみな時代でした。
昔というほどまだ昔ではない2010年代に想いを馳せながら、名作の数々を鑑賞するのも良いかもしれません。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile107では、遠藤麻衣子監督による映画『TECHNOLOGY』(2018)の魅力をご紹介させていただきます。
6月17日(水)の掲載をお楽しみに!
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