連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile005
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションや、地上波での放送で一般的にも広く知れ渡っているモンスター・パニック映画、「ジュラシック」シリーズ。
今回は2018年7月13日に、最新作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』(2018)の公開を控えたこのシリーズの魅力と歴史を再検証していきたいと思います。
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CONTENTS
ジュラシック・パーク3部作の歩み
『ジュラシック・パーク』(1993)
『アンドロメダ病原体』など数多くの名作小説を生んだ小説家、マイケル・クライトンの原作を「インディー・ジョーンズ」シリーズなどで成功の波に乗っていたスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した『ジュラシック・パーク』。
深い科学的考察や、悪役であるネドリーが今で言う「ブラック」な扱いに耐え兼ね、惨劇を巻き起こすきっかけを作るなど、やや大人向けの内容だった原作を、当時の最新技術を用い、迫力満点の映像と重ね合わせることにより、高い人気を得ることに成功します。
今も昔も子供たちに人気の高い「恐竜」。
その「恐竜」の「テーマパーク」と言う設定は深く考えずともロマンたっぷりの設定。
モンスター・パニック映画としても見どころは多く、助けの来ない「孤島」が舞台なため、常に先の展開が読めないハラハラ感が続き、「ジュラシック・パーク」を共に主人公たちと共に冒険しているかのようなスリル感が味わえる名作です。
『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)
『ジュラシック・パーク』の人気を受け製作された続編『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』。
前作のメイン登場人物とも言えるイアン・マルコムを主人公に製作された今作。
原作から逸脱した内容であり、また前作からの期待値が高すぎたため、世間からの評判は芳しくありませんでしたが、アメリカ本土に上陸したT-レックスが暴れまわるシーンは今見ても大迫力です。
前作で描かれていた、「技術の進化における人間が負うべき責任」。
前作ではそれを放棄し、結果混乱を招く役目を担ったのがネドリーでしたが、今作ではより多くの人間が「お金」に目が眩み、その責任を放棄します。
シリーズの中でも人間の「愚かさ」や「後始末」と言った、ダークな部分がより多く描かれていた作品でした。
『ジュラシック・パークⅢ』(2001)
マイケル・クライトンの原作に頼らず、完全なオリジナル作品として製作された3作目。
この作品では、1作目の主人公であったアラン・グラントが1作目と同じ俳優であるサム・ニールによって演じられたことでも話題となりました。
今作では、「放棄された島」を舞台に、1作目のような「脱出」をメインとしたハラハラ感を復活させ、原点回帰を成功させています。
およそ90分ほどのコンパクトな上映時間の中に、皆が求める要素を上手く盛り込んだ作品で、何度見ても楽しめる気軽さも持ち合わせていました。
新たな「ジュラシック・パーク」の幕開け
『ジュラシック・ワールド』(2015)
そして、14年の時を経て再び作り出された「ジュラシック」の世界。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)のクリス・プラットを主演に迎え撮影された『ジュラシック・ワールド』は全世界で大ヒットを記録します。
作中で描かれているのは、今までオープンした姿を観ることの出来なかった「恐竜のテーマパーク」が大盛況のもと、オープンしているというファンの誰もが憧れた舞台。
そして、またしても、夢の楽園は「人間のエゴ」によって絶望の舞台と変化していくわけですが、今作で最も特徴的な部分は、「人間」と「恐竜」の距離感です。
主人公のオーウェンは、恐竜の監視員兼、ラプトルの飼育員なのですが、恐竜に敬意を払う一方で、完全に信頼しあうことが難しいことも理解しています。
そのため、恐竜が解き放たれ、園内がパニックに陥ると、恐竜たちに一切の心を許さず警戒するオーウェン。
そんななか、迎えることになる飼育していたラプトルとの再会。
警戒するオーウェンとラプトルとの「距離感」の行方は、この作品最大の見どころとすら言えます。
新3部作と旧3部作
スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』予告編
「ジュラシック・ワールド」シリーズで製作総指揮を勤めるのは、初代監督であるスティーヴン・スピルバーグ。
そんな彼は、2015年より始まった「ジュラシック・ワールド」シリーズが3部作であることを明確に語っています。
つまり、最新作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の後にもう1作、続編があるということになるのです。
奇妙な類似点
1作目『ジュラシック・パーク』では、オープン直前のテーマパークを舞台に巻き起こる惨劇を描いています。
オープン直前とオープン後と言う差異はありますが『ジュラシック・ワールド』でも、綺麗な状態のテーマパークを舞台に惨劇が繰り返されます。
ここまでは、特筆すべきほどの類似点は無いのですが、問題は2作目と最新作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の類似点にあります。
2作目『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の物語は、「悲劇により放棄された島」から「悲劇の生き残り」に「恐竜を捕獲し移送させる計画」が「企業の悪巧み」を含み、描かれていました。
なんと、最新作でもこの構図は同じで、「悲劇により放棄された島」から「悲劇の生き残り」に「恐竜を捕獲し移送させる計画」が「企業の悪巧み」を含み描かれます。
しかも、「ある登場人物」の登場がこの奇妙な構図の一致を、「単なる偶然」ではなく「製作者の意図が込められたもの」であること証明しています。
つまり、あるかもしれない新3部作の最終作では、『ジュラシック・パークⅢ』を意識させるような内容になるのでは、と推測できるのです。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile006では、名作アニメ『時をかける少女』を主題とし、邦画における「夏」と「SF」の親和性を、アニメと実写の両方の視点から具体例を含め、語りたいと思います。
7月18日(水)の掲載をお楽しみに!