Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

実在の心霊スポット⁈ホラー映画『ウィンチェスターハウス』『死霊館』の超常現象の怪|SF恐怖映画という名の観覧車4

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile004

例年以上に暑い初夏が終わり、ついに夏本番。冷たい飲み物やアイスなどが恋しくなる季節がやってまいりましたね。

映画好きな私としては、クーラーの効いた部屋や映画館で映画を観ることが至上の過ごし方ですが、猛暑が続く日に観たいのは、やはり身も心もゾクゾクと涼しくしてくれるような「ホラー」です。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画における「サブジャンル」とは

『13日の金曜日』(1980)

profile002では、「SF(サイエンス・フィクション)」と言うジャンルには多くのサブジャンルが存在する、と紹介させていただきましたが、実は「SF」だけに限らず、様々なジャンルに細かな内容の仕切り(サブジャンル)が存在します。

「ホラー」で例えるならば、殺人鬼ジェイソンの登場するホラー映画『13日の金曜日』(1980)のように、ゴア表現と呼ばれる残虐なシーンの多い作品は、「スプラッター」や「スラッシャー」と言ったサブジャンルにカテゴライズされることが多く、『エイリアン』(1979)や『遊星からの物体X』(1982)と言った、異生物との攻防がメインの作品は「モンスター・パニック」とされることが一般的です。

人によって解釈が違い、明確な定義が存在しないことがサブジャンルの特徴なのですが、このコラムでは敢えてそのサブジャンルを使い映画を紹介していきたいと思っています。

今年の猛暑に観たいホラー映画は?

『リング』(1998)

前述した「スプラッター」や「モンスターパニック」と言ったサブジャンルの映画はやはり人気が根強く、1人で楽しんだり、友人などと一緒に盛り上がりながら鑑賞したりと様々な楽しみ方が出来る作品ですが、「猛暑に観る」となると少し印象が違うかな、と仄かな違和感のようなものがあります。

一方、日本の「猛暑」と言うシチュエーションでは『リング』(1998)や『着信アリ』(2003)のような「和製ホラー」が圧倒的な人気を誇ります。

「和製ホラー」と幾分大雑把なカテゴライズとなってしまいましたが、「何故、和製ホラーが夏場に人気なのか」と言うと、やはり「スプラッター」や「モンスターパニック」に比べ、「ビデオ」や「携帯」と言った生活に身近な部分で起きる怪現象の「現実味」が、自分の身にも起きうるかもしれない恐怖感を引き立てるからではないでしょうか。

その証拠に、現実で起きた事件のように作中で描くサブジャンル、通称「モキュメンタリー」を採用したホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)や『パラノーマル・アクティビティ』(2007)は全米で大ヒットを記録しました。

つまり、より恐怖感を味わえるホラー映画とは、「現実により近い」世界観を題材にした作品であると言えます。

『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』(2018)


(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

6月29日より劇場公開された『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』。

西部劇で良く登場する、実在した名銃「ウィンチェスターライフル」。多くの命を奪ってきたその銃の製造者一族にかけられた呪いから逃れるべく、サラ・ウィンチェスターにより建てられた洋館。

建築を止めると呪いが降りかかると霊媒師に忠言され、延々と増築をし続けたとされるこの「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」は実在し、公式ホームページで大々的に宣伝され観光客を呼び込むなど、幽霊屋敷として海外では人気のスポットです。

そうです。

お気づきの通り、この作品は脚色は多くあるものの「実在した話」を基盤として製作されたホラー映画なのです。

『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』

実際の館そのものも、とても奇妙で、得も言われぬ雰囲気を醸し出していますが、「その館で何が起きたのか」をこの映画を観て知れば、単なる奇妙な館で済まない恐ろしさを知ることになるはずです。

誰にでも起こりうる恐怖

『死霊館』(2013)

「ウィンチェスターハウス」は、武器の製造者と言う一種の業を背負っている人であり、普通の人とは違う。だから自分は呪いとは無縁だ、と考える方もいるのではないでしょうか。

とある一家を襲った恐怖の現象を描き、アメリカで大ヒットとなったホラー映画、『死霊館』(2013)。

実はこの映画、劇中に登場するウォーレン夫妻は実在の超常現象研究家で、彼らの実体験をもとにこの映画シリーズは作られています。

1作目である『死霊館』で恐怖の対象となるのは、呪われるいわれなどないごく普通の家庭です。

一般のホラー映画のように、肝試しに行った少年少女が襲われるわけではなく、実話をもとにしたこの作品では、ただ普通に過ごしていた家族が怪現象に見舞われます。

普通に過ごしていたからと言って、呪いに無縁とは言えないのです。なぜなら、「それ」には常識が通用しないのですから。

超常現象を信じない人にも楽しめる2作目

『死霊館 エンフィールド事件』(2016)

続編の『死霊館 エンフィールド事件』(2016)では、イギリスのインフィールド地区で発生した有名なポルターガイスト現象が描かれています。

この現象は世界的に有名で、映画内では「悪魔」が登場するなど、非現実感を強調し演出されていますが、多くの現象は多数の目撃者と研究員によって記録され、現在ではインターネットにも多くの文献が残されています。

もちろん、超常現象を信じる信じないは人それぞれではあるのですが、この作品を鑑賞し実際の文献を読んでみて、どうしてこの現象が起きたのか、を科学的に考え、誰も解き明かしたことのない謎に挑んでみるのも楽しい夏の過ごし方ではないでしょうか。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

次回のprofile005では、伝説的モンスター・パニック映画である「ジュラシック」シリーズを再検証。

旧シリーズと新シリーズの奇妙な類似点から想定できる、『ジュラシック・ワールド 炎の王国』(2018)のあるかもしれない次回作の内容を想像していきたいと思います。

7月11日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

【ネタバレ】ジョーカー2|ひどい/酷評/つまらない理由は?考察解説でミュージカル映画化が描く《代えの利くエンタメ》へのショック療法と患者の正体|のび編集長の映画よりおむすびが食べたい12

なぜ『ジョーカー』続編は「ミュージカル映画」と化したのか? DCコミックス「バットマン」シリーズの人気ヴィラン《ジョーカー》の誕生秘話を描き、ベネチア国際映画祭で金獅子賞、アカデミー賞で主演男優賞など …

連載コラム

新作映画『ヘルボーイ(2019)』キャスト【デヴィッド・ハーバーのインタビュー:地獄から這い上がって大騒動】FILMINK-vol.7

FILMINK-vol.7「David Harbour: Raising Hell In Hellboy」 オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」 …

連載コラム

『浜辺のゲーム』あらすじと感想。ヴァカンス映画の引用と軽く境界線を越える人物たち|銀幕の月光遊戯29

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第29回 湘南を舞台に、一軒の別荘に集まってきた3人組の女子と個性的で国際的な面々・・・。 大阪アジアン映画祭2019のコンペティション部門で初上映され、反響を呼んだ夏都愛 …

連載コラム

映画『蟻の王』感想評価と解説。同性愛者の過酷な史実をジャンニ・アメリオ監督が問う|映画という星空を知るひとよ176

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第176回 第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され独立賞5部門を受賞した、イタリアのジャンニ・アメリオ監督が手がけた映画『蟻の王』。 本作は …

連載コラム

『ブラックパンサー』感想と考察。黒人ヒーローはワカンダから差別の歴史は塗り替える|最強アメコミ番付評7

連載コラム「最強アメコミ番付評」第7回戦 こんにちは!野洲川亮です。 2018年に公開され、全米興行収入歴代第3位、世界歴代第9位と異例の大ヒットを記録した『ブラックパンサー』。 今回は、作品から垣間 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学