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Entry 2018/06/15
Update

ホラー映画の恐怖体験と現代社会の闇に堕ちた家族の絆| SF恐怖映画という名の観覧車1

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile001


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

はじめまして。今回からコラムを連載させていただくことになった「糸魚川悟」と申します。

このコラムでは、主にホラー映画とSF映画を中心に執筆をしていきたいと思いますが、このホラーやSF作品となると、“とっつきにくい”という印象を持たれてしまうことがありますが、この機会にジャンルの魅力を、分かりやすく紹介していこうと思います。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

ホラー映画は可能性に満ちたジャンル

ダニー・ボイル監督『28日後…』(2002)


みなさんはホラー映画というジャンルに、どのような印象を持つでしょう。

若い世代から大人まで、世界中に多くのファンを持つ一方で、過度な暴力表現や物語性の薄さを理由に、見慣れない人には敬遠されがちなジャンルですよね。

実は深いメッセージ性を持ち、鑑賞後に怖かった以外の印象も、多く残してくれる作品も存在します。

例えば、『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)で、アカデミー監督賞を受賞したダニー・ボイルが手掛けた『28日後…』(2002)。

この作品は、ゾンビが蔓延したイギリスを舞台にしたサバイバルホラーですが、主題として描かれているのは「人間の猟奇性」です。

死肉を食らう人ならざるものが蔓延し、混沌とする世界の中でも、真に恐ろしいのは人であるという強いメッセージ性が主題であり、ダニー・ボイルらしい映像演出と合わさり、ゾンビ映画としての新たな魅力を生み出した作品でした。

このように、ホラー作品ならではの手法を使い、他のジャンルにも引けを取らないほどの物語性を込めた作品も多く存在し、まだまだ未知の可能性を秘めたジャンルが、ホラー映画なのです。

見方を変えれば…そう見えなくも⁈


(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

第71回カンヌ国際映画祭において、最高賞を受賞した是枝裕和の『万引き家族』(2018)は、現代の日本を舞台にいびつな共同生活を過ごす家族を描き、家族や親子の意味を考え直させるような深い余韻を残す映画でした。

映画の題材としては一般的ともいえる「家族」と「親子」。

しかし、とても身近で一般的な題材だからこそ「現代社会」や「特殊な世界観」などの味付けを加えることによって、強く共感できる映画が作られます。

視点を変え見れば、“社会の闇にある恐怖”を抱えた、家族の姿を描いたホラー作品としても、見えてくるかもしれません。

2018年9月28日公開『クワイエット・プレイス』

『クワイエット・プレイス』(2018)

アメリカの映画俳優として知られるジョン・クラシンスキーが監督を務め、公開された映画『クワイエット・プレイス』(2018)。

日本での公開を2018年9月28日に控える本作ですが、アメリカでは爆発的な興行収入と高い評価を記録し、既に続編の製作が始まっているとすら発表されています。

宇宙から飛来した、「聴覚が優れた生物」から生き延びるため、音をたてずに過ごす人間たちを描いたホラー映画である今作。

そんな今作が全米を魅了することが出来たのは、盲目であるが、聴覚を頼りに襲い掛かる元軍人から逃走する『ドント・ブリーズ』を参考にしたとされる特異な世界観によるものだけでなく、物語の根底に流れる家族の絆が多くの人の心を掴んだから、と言われています。

ある事件をきっかけにバラバラになりかけているアボット一家。罪悪感や嫉妬心を口にしたくても声を発することも出来ず、家族の心は離れ離れになっていきます。

いつ命を失うことになってもおかしくない極限の状況下で、家族の絆を再確認し、決断を迫られる。

「ホラーを観に行ったら、泣かされることになった」とすら評価される今作は、「ホラー」の垣根を越える物語性を秘めた映画であることは間違いありません。

極限の状況下で試される親子の絆

フランク・ダラボン監督の『ミスト』(2007)

音を制限される状況下で家族の絆が試される『クワイエットプレイス』では、言葉を発することが出来ない状況だからこそ、「伝える」ことによる絆の再確認が描かれているのですが、同じように「究極の状況下」で「親子の絆」が試される映画は「ホラー」に多く存在します。

様々な意味で語り継がれるホラー界の怪作『ミスト』(2008)は、その中でも大きな異彩を放つ作品です。

巨匠スティーヴン・キングの小説を基に、スーパーマーケットの中で、霧の中から現れる怪物から生き延びるため奮闘する親子を描いたこの作品は、主人公のデヴィッドが迫られる「究極の決断」が今も語り草となっています。

霧により、視野的にも状況的にも先行きの見えない中、果たすことになる親としての役目。

「究極の状況下」において「親子の絆」を何よりも想い、行動したデヴィッドの決断は「怪物が襲い掛かる恐怖」を越えた感情を鑑賞者に焼き付けることになります。

まとめ

現代社会では、様々な事件や事故が発生し、そのたびに話題となるのは「親子」や「家族」の在り方。

今回は「ホラー」というジャンルではあるものの、そんな“家族の絆”を描いた映画を紹介させていただきました。

もちろん、「ホラー映画」は恐怖描写や暴力表現にこだわりぬいたり、観る者をあっと驚かせるような描写も多く存在し、それが愛されてきたジャンルでもあります。

しかし、それと同時に、「恐怖」や「暴力」と言う表現を交えた上で、深いメッセージ性を含んだ多くの作品もあり、知れば知るほど様々な楽しみ方が出来るジャンルでもあるのです。

本コラムをきっかけに少しでもその魅力をお伝えし、「ホラー」というジャンルに片足だけでも足を踏み入れていただけると嬉しいです。

今後も「ホラー」と「SF」を中心に、分かりやすく映画の魅力をお伝えできるよう心がけてまいります。

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」を、どうぞよろしくお願いいたします。

連載コラム第2弾!

糸魚川悟さんの「SF恐怖映画という名の観覧車」は、毎週水曜日に更新されます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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