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Entry 2021/08/27
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映画『オールド』ネタバレあらすじ感想と結末考察。謎解きタイムスリラーをM・ナイト・シャマランが仕掛ける“恐怖”|サスペンスの神様の鼓動46

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

サスペンスの神様の鼓動46

リゾートホテルにバカンスへ来た4人家族が、ホテルのマネージャーに勧められた、プライベートビーチを訪れたことで遭遇する、不可解な恐怖を描いた映画『オールド』。

本作で監督と脚本を手掛けたM・ナイト・シャマランと言えば、『シックス・センス』(1999)や『スプリット』(2016)など、一筋縄ではいかないスリラー映画を得意とする監督で、「シャマラニスト」と呼ばれる、熱狂的なファンも多くいます。

時間の経過が異常に早い謎のビーチで、年老いていく家族が遭遇する不可解な現象。

かなり特殊な設定ですが、脱出不可能と思われるビーチで、目を覆うような衝撃の展開が続きます。

M・ナイト・シャマラン作品と言えば、理解不能な展開と、それらを一気にひっくり返す、ラストに待ち受ける衝撃の事実が魅力の作品です。

「ラストに判明する衝撃の事実で、どれだけ驚けるか?」が、シャマラン作品において最も重要な部分ではあるのですが、『オールド』ではどうでしょうか?

今回は『オールド』を、ラストの展開まで明かしながら、ご紹介します。

【連載コラム】『サスペンスの神様の鼓動』記事一覧はこちら

映画『オールド』のあらすじ


(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

インターネットで偶然見つけた、格安のリゾートホテルへ遊びに来た、カッパ一家。

ホテルに到着すると、父親のガイと母親のプリスカには、歓迎のカクテルが振る舞われます。

長女のマドックスと弟のトレントはホテル内を散策します。

トレントには、人の名前と職業を聞いて全て覚えるという特技があり、ホテル内のお客さんに、名前と職業を聞いて回ります。

ホテル内には、医者やダンサー、警察官など、さまざまな人がいました。

トレントは、ホテルのマネージャーの甥である、イドリブと仲良くなります。

トレントは、イドリブから特殊な暗号で書かれた手紙を渡され、その暗号を解く遊びに夢中になっていました。

プリスカはこの旅行を最後に、ガイと離婚することを決めていました。

プリスカは、病を患いお腹に腫瘍ができていた為、心配したガイは離婚を考え直すように提案しますが、プリスカは応じません。

マドックスとトレントは、旅先で喧嘩をしているガイとプリスカに、呆れた様子を見せます。

次の日、カッパ一家が食事をしていると、ホテルのマネージャーから「この近くにプライベートビーチがある」と教えてもらいます。

マネージャーから「限られた人にしか教えていない」と聞かされたカッパ一家は、そのプライベートビーチへ行くことを決めます。

その瞬間、1人の女性が発作を起こして倒れます。

女性の名はパトリシアで、看護師の夫ジャリンと、近くにいた医者のチャールズが看護をします。

カッパ一家が、プライベートビーチに向かう車に乗ると、チャールズと妻のクリスタル、娘のカラ、祖母のアグネスも乗り込んで来ます。

プライベートビーチに到着すると、運転手から大量の食糧を持たされ「17時に迎えに来る」と伝えられます。

岩で作られた渓谷を抜け、教えられたプライベートビーチに到着します。

そこには、マドックスが大好きなラッパーの、ミッド=サイズド・セダンが座っていました。

マドックスとトレントは、カラと一緒にビーチで遊び、かくれんぼを始めます。

トレントが岩場に隠れていると、そこに女性の死体が流れて来たことで、楽しく穏やかな雰囲気は一変します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『オールド』ネタバレ・結末の記載がございます。『オールド』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

流されてきた女性は、ミッド=サイズド・セダンの友人でした。

チャールズは、セダンの犯行を疑いますが、セダンは「泳ぎに行って行方不明になっていた、何も知らない」と言います。

セダンは鼻血を出していましたが「自分は血液が固まらない病気だ」と言い張ります。

そこへ、ジャリンとパトリシアも、プライベートビーチへ到着します。

しかし、女性の死体が発見されたことでチャールズとセダンが揉めている為、ジャリンがホテルに電話をしますが、電波が届きません。

ジャリンが、渓谷を抜けて戻ろうと試みますが、途中で凄まじい頭痛に襲われ、意識を失い、ビーチに戻されます。

この事態に、全員が困惑している間に、アグネスの様態が急に悪化し死去します。

さらに、6歳のトレントと、11歳のマドックスの体がどんどん成長し、10代後半の見た目となります。

そして、プリスカのお腹にできていた腫瘍が急速に大きくなっていった為、チャールズがその場で手術をし、腫瘍を取り除きます。

ですが、手術を始めた頃から、チャールズは謎の独り言を喋るようになります。

実は、チャールズは日々のストレスから統合失調症となっており、精神が不安定になっていました。

チャールズの妻であるクリスタルも、低カルシウム血症であることが分かります。

一見、無関係に思えたプライベートビーチへの招待者は、全員が家族または本人に何かしらの病気があることが分かります。

さらに、女性の死体が骨になってしまったことで、博物館で仕事をしているプリスカは「ビーチでの30分は、通常の1年に相当する」と計算し、このビーチでは、約50年の時間が1日で流れていくことが判明します。

大人達が、ビーチの謎を究明している間に、大人になったトレントとカラが恋人関係になり、カラが妊娠してしまいます。

その場で出産をしますが、取り上げた赤ん坊は死んでしまい、カラはショックを受けます。

ジャリンは、このビーチから泳いで脱出することを決めますが、途中で激しい頭痛に襲われ、溺死します。

ジャリンの死体を見たパトリシアも、発作を起こし、そのまま亡くなります。

赤ん坊を失い錯乱状態になったカラは、崖を登って脱出しようとしますが、途中で頭痛に襲われ転落死、脱出を試みた人たちが次々に命を落とします。

さらに、精神的におかしくなったチャールズが、セダンにナイフを刺して殺してしまいます。

チャールズから逃げたトレントとマドックスは、ビーチに残されたノートを発見します。

それは、前にこのビーチを訪れた人が書かれてたメモで、渓谷を作り出している岩が深海から伸びていて、人の老いを加速させる効果があることが分かりました。

さらに、ノートには、このビーチを訪れて以降、行方不明になった人の名前が書かれていました。

トレントとマドックスが、再び渓谷に向かうと、そこにはカラを失い、錯乱しているクリスタルがいました。

クリスタルは渓谷のあちこちに体を打ち付け、死んでしまいます。

一方、チャールズに襲われたガイは、老化の影響を受け太刀打ちできませんが、プリスカがビーチに落ちていた錆びたナイフをチャールズに突き刺します。

ナイフの錆びが毒になってチャールズの体を襲い、チャールズは倒れて死亡します。

最後に残ったカッパ一家は、海を眺めて家族の時間を過ごします。

ガイとプリスカは、お互いを許し合いましたが、2人とも寿命が尽きて死んでしまいます。

残されたトレントとマドックスは、50代になっていました。

ビーチからの脱出を諦めたように見えましたが、トレントはイドリブから渡された暗号の手紙を思い出し、最後に解き始めます。

そして出たメッセージは「おじさんは珊瑚が嫌い」でした。

このメッセージをヒントに、トレントとマドックスはビーチの近くにある、珊瑚でできた海底トンネルを抜けようとします。

ですが、マドックスの衣服が引っ掛かり、2人とも息が続かなくなります。

その様子を遠くで監視していた人物がいました。カッパ一家をプライベートビーチに連れて来た運転手です。

リゾートホテルに見えたこの場所は、実は製薬会社の実験場でした。

リゾートホテルのマネージャーである製薬会社の責任者は、何かしらの病気を抱える人を調べ、このホテルに誘導していました。

そして、歓迎のカクテルに入れた試作段階の薬を飲ませて、このビーチに誘導し、治験を行っていたのです。

今回はパトリシアに飲ませた発作の薬が、10年以上効果があったことが確認された為、製薬会社の研究員は大喜びします。

しかし、トレントとマドックスは生きていました。

トレントはホテルに来ていた警察官の男に、ビーチで入手したノートを渡します。

ノートに書かれていた人物が、全員行方不明者だった為、犯罪性があるとされ、ホテルに捜査が入ります。

保護されたトレントとマドックスは、警察のヘリコプターに乗り、プライベートビーチの上空を通過するのでした。

サスペンスを構築する要素①「1日で50年の時が流れる謎のビーチ」


(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

バカンスで訪れたビーチで、不可解な現象に遭遇する家族の恐怖を描いたサバイバル・スリラー『オールド』。

本作最大の特徴は、1日で50年の時間が流れるという、ビーチの存在です。

成長が終わっている大人たちは、見た目がなかなか変化しないのですが、子供達はどんどん成長していきます。

特に最初は6歳だったトレントが、成長しカラとの恋愛を経て、子供の出産を経験し、最後は両親の死を看取るという、本来なら長い人生で経験する出来事が、たった1日で起きる訳です。

本作のラストでは、トレントは50代になってしまっていますが、ビーチを出ても元に戻れないあたり、怖いですね。

ただ、このビーチだけ、時間の流れが早いというよりも、ビーチの周辺で渓谷を構成している岩が、人の老化を進める要素を持っています。

この岩がかなり厄介で、深海から突き出た岩の為、無理に渓谷を進もうとすると、酸素不足になり激しい頭痛に襲われ、気絶してしまいます。

それは、岩を登ろうが海を泳ごうが同じことで、このビーチにいる限り、老化がどんどん進行していくのですが、ハッキリ言って脱出する方法が無いという、絶望的な状況となります。

また、ビーチでの様子を見張っている、謎の人影が何度も映る為「いったい、誰が何の為にこんなことをしているのか?」という恐怖もありますね。

ビーチの謎、それを利用する存在、そしてビーチに集められた人達の共通点など、さまざまな謎が渦巻くのが、前半の主な展開となっています。

サスペンスを構築する要素②「錯乱した外科医、チャールズの恐怖」


(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

1日で50年が経過するだけでなく、一度入ると脱出不能となってしまうプライベートビーチ。

これだけも絶望的なのですが、同じくビーチへと入った外科医のチャールズが、精神に異常をきたし錯乱を始めるという、さらに恐ろしい展開となっていきます。

チャールズは、最初に登場した時は、冷静で頭のいい男に見えます。

ですが、老化が進むビーチの影響で、チャールズ自身も精神の疲弊が加速し、どんどん壊れていきます。

この壊れ方も、急に「マーロンブランドとジャックニコルソンが共演した映画って何だっけ?」と関係の無い話を始め、次第にミッド=サイズド・セダンを「近所の泥棒」と言い始め、持っていたナイフを振り回すようになります。

チャールズは医者で、切れ者のように見えた為、この壊れ方には恐怖しか感じません。

映画『CUBE』(1997)でも、本来なら頼りになるべき人間が、実は一番の敵だったという展開がありますが、不可解な事態に団結すらもできないという状況は、観客に不安と恐怖を生み出しますね。

サスペンスを構築する要素③「プライベートビーチに隠された陰謀」


(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

『オールド』では、クライマックスまで、ビーチから脱出する方法が見えません。

ですが、ホテルのマネージャーの甥っ子、イドリブのメモから状況が一変し、これまで不明だった、全ての謎が明かされます。

ここから、シャマラン作品の本領発揮ですね。

『オールド』のラストでは、カッパ一家たちをプライベートビーチに誘い込んだのは、製薬会社の陰謀だったことが判明します。

老化が加速するビーチは、自然と作られた場所ですが、このビーチを見つけた製薬会社が、治験の為に、このビーチに病気を持っている人と、その家族を誘い込んでいたのです。

ラストでは、製薬会社の研究員たちが登場するのですが「我々は、今から百万人の命を救う使命がある」という大義名分を掲げ、プライベートビーチでの犠牲者たちには、形だけの黙祷を行うのみです。

かなりタチの悪い、嫌悪すべき人間として描かれています。

シャマラン作品は、後味の悪い作品もあるので「『オールド』も、このまま終わるのか?」と思いましたが、最後にトレントとマドックスがキッチリと復讐してくれますね。

ただ、トレントとマドックスからすると、両親や年齢を失っているので、決してハッピーエンドとは言えません。

通常、治験は10年単位で進められるようなので、実際に1日で50年が経過するビーチがあれば、本当に治験に利用する製薬会社が現れそうですね。

ただ、作中の製薬会社は、ホテルに来た観光客に、歓迎のカクテルと騙して、試験用の薬を飲ませていました。

研究データの為に、何も知らない一般市民を犠牲にすることはあってはなりません。

あくまでフィクションの世界の出来事ですが、現実に製薬会社が研究データの為に、もし一般の人を騙していたらと思うと、恐ろしいですね。

映画『オールド』まとめ


(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

映画『オールド』は、閉鎖された空間で、脱出不可能な恐怖を味わえる作品ですが、同時に「家族の温かさ」も描いています。

序盤では、6歳のトレントと11歳のマドックスは、両親に守られる立場でしたが、後半では老人になった両親を逆に励ますようになっています。

成長したトレントとマドックスが、老人となった両親と夜の海を眺めるのは「家族の温かさ」を象徴する場面となっています。

ただ『オールド』は、設定が荒い部分も目立つ作品で、それぞれの老化のスピードがあまりにも違ったり、プリスカを長年悩ませていた腫瘍が簡易的な手術で治療されたり、成長した子供達が大人の知識を急に身に着けていたり、気になる部分もあるにはあります。

ですが、それら「詰めの甘さ」も含めてのシャマラン作品なので、シャマラン監督のファンはもちろん、これまでシャマラン監督の作品を、あまり知らなかったという人にも、おススメしたい作品です。

次回のサスペンスの神様の鼓動は…

次回も、魅力的な作品をご紹介します。お楽しみに!




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