連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第66回
杉谷庄吾【人間プラモ】による漫画『映画大好きポンポさん』が劇場アニメ化されました。
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は、2021年6月4日(金)EJアニメシアター新宿より全国ロードショー!!
『映画大好きポンポさん』は、映画の都・ニャリウッドを舞台に、伝説的映画プロデューサーである祖父の才能を受け継ぐポンポさんと、彼女によって映画監督に抜てきされた映画好きの青年ジーンの奮闘を描きます。
監督・脚本は『劇場版「空の境界」第五章 矛盾螺旋』(2008)の平尾隆之。主人公に声優初挑戦となる清水尋也。新人女優ナタリーを大谷凜香、ポンポさんを小原好美がそれぞれ務め、新人もベテランも揃って魅力的なキャストを演出しています。
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
杉谷庄吾【人間プラモ】(プロダクション・グッドブック)
『映画大好きポンポさん』(MFC ジーンピクシブシリーズ/KADOKAWA刊)
【監督・脚本】
平尾隆之
【声のキャスト】
清水尋也、小原好美、大谷凜香、加隈亜衣、大塚明夫、木島隆一
【作品情報】
映画を愛する青年と映画に愛された若きプロデューサーが映画制作を通して”自分”を見つけ出すという、アニメ漫画『映画大好きポンポさん』(原作:杉谷庄吾【人間プラモ】MFCジーンピクシブシリーズ/KADOKAWA刊)。
映画『映画大好きポンポさん』は、この杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックを劇場アニメ化した作品です。監督・脚本は『劇場版「空の境界」第五章 矛盾螺旋』(2008)の平尾隆之が務めました。
『渇き。』(2014)の清水尋也が主人公ジーン役で声優に初挑戦。新人女優ナタリーを『犬鳴村』(2019)の大谷凜香、ポンポさんをテレビアニメ『スター☆トゥインクルプリキュア』(2019)の声優・小原好美がそれぞれ演じています。
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』のあらすじ
大物映画プロデューサーの孫で、敏腕映画プロデューサーであるポンポ(小原好美)さん。
冴えない青年ジーン(清水尋也)は、そんなポンポさんのもとで製作アシスタントをしています。
映画に心を奪われて業界入りした彼は、観た映画をすべて記憶しているという映画通で、毎日のように女優のミスティア(加隈亜衣)たちと顔を合わせて仕事ができることに喜びを見出します。
ですが、ポンポさんの敏腕ぶりに圧倒され、自分には無理だと卑屈になる毎日でした。
ある時、ジーンはポンポさんから15秒CMの制作を任されました。映画を撮ることにも憧れていたジーンは、驚きながらも一生懸命に作り上げ、映画づくりに没頭する楽しさを知ります。
それからしばらくしたある日、ジーンはポンポさんから次に制作する映画『MEISTER』の脚本を渡されました。
伝説の俳優・マーティン(大塚明夫)の復帰作にして、ポンポさんの目利きにかなった新人女優ナタリー(大谷凜香)をヒロインに迎えた書き下ろし作です。
ジーンは、頭がしびれるほど興奮する内容に大ヒットを確信しますが……なんと、監督に指名されたのは、CMが評価されたジーンだったのです。
かくして、波瀾万丈の映画撮影が始まりました。
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』の感想と評価
ポンポさんとジーン
「ポンポさんが来ったぞぉー!」と、元気よく跳びはねて撮影所に駆け込む一人の少女。
やけに騒々しく自由奔放に行動する彼女こそ、映画の申し子のような敏腕映画プロデューサーのポンポさんです。
映画界の大御所プロデューサーを祖父に持ち、映画作りから鑑賞にいたるまで、映画というものを幼い頃から肌で感じて育ったポンポさんは、人を見る眼にも優れていました。
人気女優のミスティアの人柄の良さを見込み、オーディションで見つけたダイヤの原石とも言える新人・ナタリーの身柄を預けます。
そして、ポンポさんの周りには、一癖も二癖もありそうな映画人が集まり、いつもにぎやかです。
ポンポさんが主役なのでは?と思えるようなスーパーキャラですが、主人公はそんなポンポさんの元で自分の才覚に目覚めていくジーンなのです。
ジーンは‟夢を目指すきらきらした目”を持たない、夢を追うことに疲れ切った青年です。ですが、その奥に潜んでいる情熱にポンポさんは気がついていました。
ポンポさんの叱咤激励を受けながら、どんどん自分の殻を打ち破いていくジーンの変貌ぶりが見ものです。
映画を愛するジーンの成長
ポンポさん書き下ろしの脚本で初監督を任されたジーン。天性のきらめきを持っているナタリーの本質を活かしつつ、自分の感性を信じて撮影を進めます。
カメラが捉えた細やかなショットが感動的なシーンに繋がり、心を揺さぶるエピソードが出来上がっていきます。
撮影フィルムを覗き仕上がりに満足なジーンですが、最後の編集作業に悪戦苦闘。どの場面も作品の中では重大と思え、カットすることが出来ないのです。
どこを取ってどこを切り捨てるのか。ジーン監督は悩みに悩みぬいて完成させました。
新人監督がただ撮影するだけではなく、映画好きな人にどのように作品の素晴らしさ、面白さを伝えるのかと、後半は期待が高まってきます。
完成した映画で‟一番気に入っているところ”を述べたジーンの一言は、本当に映画が好きな人に向けたものでした。
まとめ
映画愛に満ちあふれ、多くのファンを生み出してきた漫画『映画大好きポンポさん』(原作:杉谷庄吾【人間プラモ】)が、平尾隆之監督を筆頭に充実したスタッフと声優陣によって、アニメーション映画となりました。
「幸福は創造の敵」「映画を撮るか、死ぬか、どっちかしかないんだ」「おバカ映画で感動させる方がかっこいい」など、奇抜な発言をしながらも、並外れた天分で人々を魅了するポンポさん。
ユニークなキャラも楽しめますが、舞台となる撮影所と映画界の裏の描写が興味深く取り込まれています。
脚本づくり、キャスト・監督・スタッフ探し、ロケーション設定、資金繰り、フィルムの編集作業、そして随所に秘められた映画愛。
本作は、知られざる映画製作のノウハウと、映画作りの苦労が万遍なく描かれ、掴めそうで掴めない夢にもいつか手が届くという希望をもたせてくれる作品です。
特に映画業界に興味がある方にお勧めしたいです。
劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は、2021年6月4日(金)EJアニメシアター新宿より全国ロードショー。