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Entry 2023/06/15
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映画プレジデント|あらすじ感想と評価考察。ジンバブエ大統領選挙を通じて“真の民主主義国家を願う戦い”を映す|映画という星空を知るひとよ159

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第159回

映画『プレジデント』は、ジンバブエ共和国での大統領選を描いたドキュメンタリー。現職のムナンガグワに挑戦する野党MDC連合の党首ネルソン・チャミサの姿を通して、2017年の軍事クーデター後初となる大統領選の行方を記録しました。

自由で公正、かつ透明な選挙は本当に行われるのでしょうか。また、民衆が真の民主主義を勝ちとることはできるのでしょうか。殺害予告に銃声が響く異様な選挙戦に世界も注目。サスペンス映画さながらの緊迫した様相を記録しています。

本作を取りまとめたのは、女性監督のカミラ・ニールセン。前作『Democrats(民主主義者)』(2014)に続く、権力闘争の核心に迫ったドキュメンタリーとなりました。

『プレジデント』は、2023年7月28日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開です。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『プレジデント』の作品情報


2021(C)Final Cut for Real, Louverture Films & Sant & Usant

【日本公開】
2023年(デンマーク、ノルウェー、アメリカ、イギリス合作映画)

【監督】
カミラ・ニールセン

【製作】
シーネ・ビュレ・ソーレンセン、ジョスリン・バーンズ

【製作総指揮】
ファンディウェ・ニュートン、ダニー・グラバー

【撮影監督】
ヘンリック・ボーン・イプセン 

【編集】
イェッペ・ボッドスコフ

【出演】
ネルソン・チャミサ、エマソン・ダンブゾ・ムナンガグワ、ロバート・ガブリエル・ムガベ、ジャスティス・プリシラ・チグンバ、モーガン・ツァンギライ

【作品概要】
本作の監督は、デンマーク出身の女性監督カミラ・ニールセンです。

トライベッカ国際映画祭で最高賞を受賞するなど高評価を受けた前作『Democrats(民主主義者)』(2014)は、ジンバブエの新憲法制定に向けた権力闘争を追った作品で、本作はその続編とも位置付けられます。

ジンバブエの民主化を求める国民と与党の激しい対立を臨場感をもって映し出し、サンダンス国際映画祭でワールドシネマ・ドキュメンタリー審査員特別賞を受賞。

映画『プレジデント』のあらすじ


2021(C)Final Cut for Real, Louverture Films & Sant & Usant

2017年、ジンバブエ共和国に軍事クーデターが起こりました。1980年の独立以来、37年間にわたりジンバブエ共和国の政権を支配していた独裁者ムガベ大統領がクーデターにより失脚。

後継者として同国第3代大統領に暫定就任したのは、与党、ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF党)の代表エメルソン・ムナンガグワです。

ムナンガグワは、翌2018年に行われる大統領選において「平和で信用できる公正な選挙を行う」と口では公言します。

対する野党、民主変革運動(MDC連合)は、モーガン・ツァンギライ党首のもと選挙に備えますが、大統領選の4ヶ月前にツァンギライ党首が癌で死去します。

そのため、MDC連合の新党首として、若きカリスマと呼ばれるネルソン・チャミサが任命されました。

変わらぬ支配を目論む与党と、長年の腐敗に疲弊し、国内政治体制の変革を求める民衆に後押しされる野党。多くの国内外のマスコミや国民が注目するなか、国の未来を決める投票が始まるのですが……。

映画『プレジデント』の感想と評価


2021(C)Final Cut for Real, Louverture Films & Sant & Usant

『プレジデント』は、クーデター後初となる大統領選挙の行方を、現職のムナンガグワに挑戦する野党MDC連合の党首ネルソン・チャミサを通して追っていきます

ジンバブエは、リチウム、プラチナ、金、ダイヤモンドなど60種類もの鉱物資源がある国なのですが、国民は貧困に喘いでいました。それはなぜでしょう。1980年に独立して以来、ロバート・ムガベ大統領の独裁政権が政治を腐敗させていたからです

軍事クーデターのあと、ロバート・ムガベの後任者となったのは、与党・ZANU-PF党の代表エメルソン・ムナンガグワ。自分たちが支配権を握るのではなく、国民選挙で民主化を確保すると口では約束しますが……。

与党による長い間の独裁政治がそうたやすく変わるとは思えません。本作では、軍隊による民衆のデモ抑制風景や銃声、暴動で混乱する選挙前の町の様子を映し出します。これが独裁政権のやることなのです。

そこで、独立以来ジンバブエを支配してきた与党を倒すべく、40歳の弁護士であるカリスマ、ネルソン・チャミサが、真の民主主義を求めて立ち上がりました

独裁者に牛耳られた国とそこに住む民衆を解放すべく、民主主義国家成立目指して戦いに挑むチャミサ。与党が不利な状況となれば、自分たちの身を守るために与党による裏工作も考えられます。果たして選挙結果はどうなるのでしょう。

そんな状況も念頭に、「民衆の票を守る」とチャミサが誠心誠意をもって戦う姿をカメラは冷静に捉えています

ポスターのキャッチコピー「終わりじゃない、これは変革の始まり」からは、決して燃え尽きない自由への信念が読み取れました。

まとめ


2021(C)Final Cut for Real, Louverture Films & Sant & Usant

アフリカ・ジンバブエの2018年に行われた大統領選を題材にしたドキュメンタリー映画『プレジデント』をご紹介しました。

独裁政権をストップさせたい野党は民衆の力を得るため、動き出しました。一度民主主義に目覚めた民衆の力は侮れません。たとえ失敗しても、それは終わりでなく始まりといえる真の強さを持っているのです。

世界にはまだまだ独裁者が治める国が散在しています。それらの国にも民衆の力によって民衆のための民主主義の政治が行われることを願ってやみません。

『プレジデント』は、2023年7月28日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開です。

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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