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『帰れない山』あらすじ感想と評価解説。映画化で北イタリア・モンテローザを舞台に描く大人の青春劇|映画という星空を知るひとよ145

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第145回

第75回カンヌ国際映画祭にて審査員賞を受賞した感動作『Le otto montagne』が、邦題『帰れない山』として日本で公開されます。

イタリア文学のストレーガ賞やフランス文学賞・メディシス賞(外国小説部門)など、数々の文学賞に輝いた国際的ベストセラー小説『帰れない山』の待望の映画化です。

都会育ちの少年と山で生まれ育った牛飼いの少年の友情を紡ぐ物語は、北イタリアのモンテ・ローザ山麓を舞台に、主人公たちの友情と生き様を描きだします。

パルムドール受賞作『TITANE/チタン』(2021)の撮影監督ルーベン・インペンスによる圧倒的な映像美と、カメラワークで映し出す豊かな自然も魅力のひとつの本作。

映画『帰れない山』は2023年5月5日(金・祝)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開。その公開に先駆け、『帰れない山』をご紹介します。

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映画『帰れない山』の作品情報


(C)2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.

【日本公開】
2023年(イタリア・ベルギー・フランス合作映画)

【監督・脚本】
フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ

【原作】
『帰れない山』(著:パオロ・コニェッティ 訳:関口英子 新潮クレスト・ブックス)

【撮影】
ルーベン・インペンス

【キャスト】
ルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ、フィリッポ・ティーミ、エレナ・リエッティほか

【作品概要】
イタリアのパオロ・コニェッティによるベストセラー小説の映画化『帰れない山』。2022年・第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した大人の青春映画です。

ビューティフル・ボーイ』(2019)のフェリックス・バン・ヒュルーニンゲン監督と『オーバー・ザ・ブルースカイ』(2012)の脚本家シャルロッテ・ファンデルメールシュが、本作の共同監督・脚本を手がけました。

マーティン・エデン』(2019)のルカ・マリネッリが主人公ピエトロに、『ザ・プレイス 運命の交差点』(2017)のアレッサンドロ・ボルギがブルーノを演じています。

映画『帰れない山』のあらすじ


(C)2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.

都会育ちで繊細な12歳の少年ピエトロは、山を愛する両親と山麓の小さな村で夏休みの休暇を過ごしていました。

ピエトロは、その村で牛飼いをする、野性味たっぷりの同い年の少年ブルーノに出会います。

まるで対照的な2人でしたが、大自然の中を駆け回り、濃密な時間を過ごし、たちまち親交を深めてゆきます。

ブルーノが十分な教育を受けられないことを心配したピエトロの両親は、彼を町の学校に通わせようと援助を申し出ますが、ブルーノの父が反対し、彼を自分とともに出稼ぎに連れて行きました。

こうしてブルーノも村にいなくなり、ピエトロは味気ない村での毎日を過ごすことになりました。

やがて思春期のピエトロは父親に反抗し、家族や山からも距離を置くようになります。

時は流れ、父の悲報を受けて村に戻ったピエトロは、ブルーノと再会を果たします。

お互いの髭面を皮肉る2人……。

少年期から大人に成長した証を得て、やがて2人の間に以前のような友情が戻って来ました。

映画『帰れない山』の感想と評価


(C)2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.

幼い頃、山間の村で出会った2人の少年、ピエトロとブルーノ。山を駆けずり回り、川で遊び、牛と戯れて、いつしか2人は固い友情で結ばれていきます。

運命のいたずらで少年期の2人の仲が疎遠になっても、成人して2人が再会を果たすと、何者にも替えがたい親友となりました。

主人公のピエトロは、青春期になると父親との間に確執が生まれ、いつしか家族とも距離を置くようになります。

そんな彼が唯一心を開いた相手が、ブルーノでした。2人の絆を確かめるかのように、少年の頃ブルーノとともに過ごした夏の山での生活が、美しい自然と共に描かれています。

本作の撮影監督は、パルムドール受賞作『TITANE/チタン』(2021)のルーベン・インペンス。大自然の美しさを余すところなく見事なカメラワークが捉え、観る者の心に自然への賛美と憧れを植え付けています

2人の友情とともに繰り広げられる圧巻の映像美は、観客の子どもの頃の冒険心をかきたて、忘れ去った未来への夢すらも思いださせてくれるに違いありません。

雄々しい大自然はいつ見ても変わらないように見えますが、ゆっくりした動きで確実に姿を変えています。その一方で、少年から大人に成長したピエトロとブルーノの友情は、二度と戻らない‟あの頃”のままでした。

自然の中における人類はちっぽけな存在ですが、そんな中でも掛け替えのない友情を育む主人公たちに、いつしか自分の青春期と重ね、切ないほど懐かしい思いがこみ上げてくることでしょう。

まとめ

国際的ベストセラー小説を映画化した『帰れない山』をご紹介しました。

美しく雄大な北イタリアのモンテ・ローザ山麗を舞台に、都会育ちのピエトロと牛飼いのブルーノという、正反対の2人の男たちの友情とその半生を描いています。

「何者にもなれない」と人生に悩むピエトロに、「やりたいことをやればいい。人生は挑戦だ」と励ますブルーノ

美しい山並みを背景に、対照的な2人の生き様が交錯します。

ストーリーも意義深いものですが、自然の美しさを絶妙に切り取って映像に散りばめた撮影監督のルーベン・インペンスの手腕にも注目です。

映画『帰れない山』は2023年5月5日(金・祝)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

男たちの友情と大自然の美しさを存分にお楽しみください。

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。

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