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映画『裏か表か?』あらすじ感想と評価解説。最優秀監督賞受賞作が西部劇オマージュと共に描く“西部劇へのアンチテーゼ”|TIFF東京国際映画祭2025-9

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

映画『裏か表か?』は第38回東京国際映画祭コンペティション部門で上映!

実在の興行師バッファロー・ビルも登場するマカロニ・ウエスタンへのオマージュに溢れた映画『裏か表か?』が、第38回東京国際映画祭コンペティション部門で上映されました。

アレッシオ・リゴ・デ・リーギ監督とマッテオ・ゾッピス監督は、本作で最優秀監督賞を受賞しました。

2025年10月29日の1回目の公式上映後、監督・脚本のアレッシオ・リゴ・デ・リーギ、マッテオ・ゾッピスが参加して行われたQ&Aの模様を、作品レビューと併せてレポートします。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2025』記事一覧はこちら

映画『裏か表か?』の作品情報


(C)Ring Film, Cinema Inutile, Andromeda Film, Cinemaundic

【日本上映】
2025年(イタリア・アメリカ合作映画)

【原題】
Testa o croce?(英題:Heads or Tails?)

【監督】
アレッシオ・リゴ・デ・リーギ、マッテオ・ゾッピス

【脚本】
アレッシオ・リゴ・デ・リーギ、マッテオ・ゾッピス、カルロ・サルサ、マリアナ・チャウド

【撮影】
シモーネ・ダルカンジェロ

【編集】
アンドレス・ペペ・エストラーダ、ヤコポ・ラメラ・パイリン

【キャスト】
ナディア・テレスキウィッツ、アレッサンドロ・ボルギ、ジョン・C・ライリー

【作品概要】
監督を務めたのは、短編ドキュメンタリー『Belva Nera』(2013)『Il Solengo』(2015)からタッグを組み続けるアレッシオ・リゴ・デ・リーギ、マッテオ・ゾッピス。本作が2人にとって初の長編劇映画となりました。

農村に伝わる民話や伝承に興味があるという2人は、実在したガンマンにして興行師バッファロー・ビル(本名:ウィリアム・フレデリック・コーディ)の逸話を基に本作を制作しました。

そんなバッファロー・ビルを演じたのは『ゴールデン・リバー』(2019)のジョン・C・ライリー。逃避行をする男女を演じたのは『帰れない山』(2023)のアレッサンドロ・ボルギと『私がやりました』(2023)のナディア・テレスキウィッツ。

映画『裏か表か?』のあらすじ


(C)Ring Film, Cinema Inutile, Andromeda Film, Cinemaundic

20世紀初頭の北イタリアの農村地帯に、バッファロー・ビル率いる「ワイルド・ウエスト・ショー」の一座が訪れます。

地主のルイジは、バッファロー・ビルに対決を申し込みます。そして対決することになった牛飼いのサンティノに、自分はアメリカに賭けたからわざと負けるように指示します。

しかし、サンティノは雇い主であるルイジに従わず、アメリカのカウボーイに勝ってしまいます。そんなサンティノにルイジの妻であるローザは心惹かれますが、サンティノといるところをルイジに見られ揉み合いになります。

暴力的なルイジに耐えきれないと感じていたローザはルイジを撃ち殺し、その場にいたサンティノと共に逃げ出します。息子を殺されたルイジの父は、サンティノが犯人だと思い込み、サンティノの首に賞金をかけます。

追手が迫る中、ローザとサンティノがたどり着いた先とは。

映画『裏か表か?』の感想と評価


(C)Ring Film, Cinema Inutile, Andromeda Film, Cinemaundic

随所にマカロニ・ウエスタンのオマージュが感じられる映画『裏か表か?』ですが、本作のテーマはマカロニ・ウエスタンのアンチテーゼになっています。

暴力的な夫と望まぬ結婚をしたローザが、夫を殺し、サンティノとの愛の逃避行が始まる……と思いきや、本作は軽やかにマカロ・ニウエスタンのいわゆる“王道”な展開から逸脱していきます。

本作はローザの成長譚であり、ローザの冒険譚なのです。旅の主軸にあるのはローザであり、その多くが男性主人公を中心に描かれるマカロニ・ウエスタンというジャンル、そして男性中心に語られてきた歴史、英雄譚に対する鮮やかな反逆になっているのです。

そんな本作はマカロニ・ウエスタンだけでなく、クライム・ムービーやミュージカルと様々なジャンルが織り混ざり、映画自体が章仕立てのショーかのように展開していきます。

サンティノの身に起こる意外な展開、そこから始まるシュールでファンタジックな世界観の先に、ローザはある決断をします。

望まぬ結婚、そしてサンティノとの出会いを通して、自分の足できちんと立とうとするローザの姿は爽快感があり、勇気づけられることでしょう。

映画『裏か表か?』Q&Aイベントレポート


Q&Aイベントの様子/撮影:菅浪瑛子

Q&Aに登壇した監督のアレッシオ・リゴ・デ・リーギとマッテオ・ゾッピスは、「日本に来ることが夢だった」と話し、子どもの頃から日本のエンタメなどに関心を持っていたと気さくに挨拶しました。

農村に伝わる民話や伝承に興味があるという2人は、実在の興行師であるバッファロー・ビルの逸話を元に本作の制作を考え始めたと言います。

それは「バッファロー・ビル率いる『ワイルド・ウエスト・ショー』の一座がイタリアを訪れていた」という逸話です。しかもその際にイタリアと対決し、イタリア側が勝ったというエピソードも、現在のイタリアに伝わっている話だと言います。

またキャスティングについて、ローザの役はフランス人にこだわっていたわけではないけれど、イタリアではない処からきた、どこか異質な存在として描きたかったと言います。

ナディア・テレスキウィッツの繊細で力強い演技をオーデションで見た監督らは、ローザの役にぴったりだと感じたといいます。

バッファロー・ビル役を演じたジョン・C・ライリーは、わざわざイタリア語の歌を歌ってビデオ送ってくれたと言います。そのビデオを見て、ぜひ劇中で歌ってほしいと思ったと、ジョン・C・ライリーらしいエピソードも。

まとめ


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『ロザリー』(2025)でヒゲのマダムを演じ、映画プロデューサー殺人事件の“犯人の座”をめぐる騒動を描いた『私がやりました』(2023)では女優の卵を見事に演じたナディア・テレスキウィッツが、本作では望まぬ結婚から解放され、愛の逃避行をするヒロインを見事に演じています。

また『帰れない山』(2023)や『ダリダ あまい囁き』(2018)などに出演し、イタリアで人気を博すアレッサンドロ・ボルギ演じるカウボーイも見どころの一つです。

マカロニ・ウエスタンへの鮮やかなアンチテーゼを描いた映画『裏か表か?』は、第38回東京国際映画祭コンペティション部門で上映され、最優秀監督賞を受賞しました。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2025』記事一覧はこちら







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